狸に頼まれた雑事が終わった俺は、校舎內をブラブラ歩いていた。
どうせ狸は『理事長の孫』である俺には簡単な仕事しか振らないから、當然すぐに手が空いてしまう。
かといってそれ以上に仕事が振られるわけではないので帰ってもいいのだが、それでは他の先生たちに申し訳ない。
そんなわけで、俺は校舎內を當てもなくブラついてるわけだが……。
誠,暇だ……
早く家に帰ってエロゲがやりたい。
なんで時間の流れは、こんなに遅いんだろうか……。
そんなことを思っていると、教室から何か物音が聞こえた。
時間を確認すれば、部活動真っ盛りな頃だ。
誰か忘れ物でもしたのか……?
そう思いながら教室の中を覗くと、そこには四つんばいになってるほのかがいた。
誠,何か忘れ物?
ほのか,……っつ
急に聲をかけられ驚いたのか、立ち上がろうとした拍子に機に頭をぶつけるほのか。
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ほのか,う、うぅ……
誠,だ、大丈夫っ!?
ほのか,は、はい……
立ち上がったほのかの目には、涙が浮かんでいた。
結構、いい音したもんな……。
誠,ごめんね、驚かせちゃったみたいで
ほのか,い、いえ……周りを確認せずに立ち上がった私が悪いんです。お兄さんは、全然悪くありません
やっぱりいい子だな。
姫月だったら、1時間は罵詈雑言が続くに決まってる。
誠,何か探し物? 俺も手伝うよ?
姫月とは違う優しい態度に、自然とそんな言葉が出た。
ほのか,えっ!? あ、いや……その……
誠,?
なぜか慌てふためくほのか。
別に、変なこと言ってないよな……?
さっきの言葉を思い返してみるが、いたって普通のことしか口にしていない。
ほのか,さ、探し物はもう見つかったので大丈夫です
そんな言葉に、ふとほのかの手元に目をやる。
だけど、そこには何もない。
何かポケットにしまった様子はなかったし、鞄は手元にない。
とても探し物が見つかった狀況には見えないけど……。
ほのか,あの、ホントに大丈夫ですから
まるで言い訳でもするように、ほのかが言う。
何か、様子がおかしい。
そう思いながらも、ほのかに話を聞くのを躊躇ってしまう。
教師――俺は実習生だけど――には話しづらいことかもしれないし……何より、女の子特有の訳があるのかもしれない。
それだったら男の俺に話せるわけもない。
本當に困ってたら誰かに相談するだろうし……あまり詮索しないほうがいいか。
ほのか,それじゃ、私は帰りますね
ほのかと一緒に帰る
誠,あ、ほのかちゃん
ほのか,は、はい?
誠,よかったら、一緒に帰らない?
ほのか,え…………
ほのか,…………えええぇっ!? い、いいんですか?
誠,うん。もう仕事も終わったから
ほのか,そ、それじゃ……はい……よろしくお願いします
よろしくお願いしますって、何を……?
夕日で赤く染まった町をほのかと並んで歩く。
誠,あ、そういえばごめんね
ほのか,?? ごめんね、って何がですか?
誠,スピーチコンテスト、強引に誘う姫月に遠慮して、斷れなかったみたいだったから
ほのか,あ、あれは……
誠,なんなら、俺から姫月に話つけるけど?
ほのか,あ……い、いいんです……
ほのか,私……確かに、人前で話すのとか苦手ですけど……でも、姫ちゃんに誘われて、ちょっと頑張ってみようかな、って思って……
誠,そっか
ほのか,はい
靜かに頷いたほのかの表情は、穏やかなものだった。
ほのか,あの……1つ、聞いてもいいですか?
誠,うん? 何?
ほのか,えっと……どうしたら、お兄さんみたいに上手に話せますか?
誠,俺、上手に話してる?
ほのか,はい。クラス全員がお兄さんのこと見ても、ちゃんと話せてすごいな、って
誠,あー……あれは、あまり生徒の顔を見ないようにしてるから
ほのか,え? そうなんですか?
誠,うん。あんまり生徒を見たり、視線を意識すると上手く話せないから……こう、俯瞰で見てる、って言うのかな?
誠,あんまり生徒に視點を合わせないようにしてるんだ
ほのか,そうだったんですか
誠,うん
誠,って、生徒の前でする話じゃなかったね
ほのか,いえ、勉強になります
誠,あとは、そうだな……俺は試したことないけど、ベタなものだと人をカボチャだと思うとかかな……?
ほのか,私も聞いたことがありますけど……人をカボチャだと思うのは難しいです……
誠,じゃあ、動物に見立てるのはどう? 例えば、そのヘアピンについてるクマだと思ってみるとか
ほのか,クマ……
ポツリと呟くと、ほのかはその場面を想像するように目を閉じた。
ほのか,あ、これならあんまり緊張しないかもしれないです
誠,じゃあ、ついでにクマの眉が八の字にしてみようか
ほのか,クマさんの眉が……八の字……
ほのか,くすす、なんかしょんぼり顔がおかしいです
誠,みんながしょんぼりクマだと思えばいけるんじゃない?
ほのか,はい、なんかそんな気がしてきました
少しは自信を持てたのか、ほのかの表情が華やぐ。
それから俺たちは他愛のないことを話しながら家路についた。
姫月の練習を見に行
誠,気をつけてね
ほのか,はい
ほのかは律儀にぺこりと頭を下げ、教室を出て行った。
さて、少し姫月の様子でも見に行くか。
重い扉を開くと、冷たい空気と白銀の世界が俺を出迎えた。
誠,お、ちょうど滑ってる最中か
銀盤の上では姫月が繊細かつ優雅に滑っていた。
その姿はいつもの生意気なものではなく、『綺麗』という言葉がよく似合う。
昨日一度見てなければ、姫月が魅せる世界に引き込まれていたかもしれない。
誠,ん……?
視界の端に人影が映り、そちらに目をやる。
二階席は雪名と貓屋敷、他にも生徒が何人か姫月の姿を見つめてはしゃいでいた。
(おまえら、姫月に騙されてるぞ……)
確かに、スケートをしている姫月はどこか神秘的だ。
見た目は完璧だし惹かれるのはわかるが、アレは中身が酷いからな……。
そんなことを思いながら我が妹を見ていると、當の本人と目があった。
姫月,……っつ
俺と目があった瞬間、姫月は表情を歪ませ、わずかにバランスを崩した。
あー……これはわめきちらされるな……。
逃亡を図ろうかと一瞬思ったが、どうせなら人目がある今ゴチャゴチャ言われたほうがマシ、と思い至る。
周りに人がいれば、その人目を気にしていつもより怒りの規模が小さくなるはず。
いや、待てよ。かんしゃく持ちの姫月のこと、周りの目など気にせずにキレるかもしれない。
そんなことになったら……。
雪名,姫月ちゃんに怒られてる一之瀬先生、超笑えたんだけど
貓屋敷,妹に頭が上がらないなんてダサすぎだよねー
雪名,ホント、幻滅。って、元々なーんにも期待してなかったけどね
貓屋敷,あははははっ
俺、教育実習生だけど不登校になるかも……。
やっぱり、逃げるか。
と思ったが時すでに遅く……。
姫月,……ちょっと
正面から聞き覚えのある剣呑な聲が。
姫月,何しに來たの?
誠,いや、ちょっと『可愛い』妹の頑張ってる姿をだな……
姫月,っつ!!!???
姫月,きっ、キモイこと言わないでよね、変態馬鹿兄貴!!
誠,…………
可愛いを強調して褒めたのに、罵られるとか理不盡すぎだろ……。
これ以上、訳のわからない地雷を踏む前に退散するか。
誠,練習の邪魔して悪かったな
姫月,ちょっ、ちょっと待ちなさいよ
誠,ん?
姫月,何か用があったんじゃないの?
誠,いや、別にないけど
姫月,え? じゃ、じゃあ……ホントに……わ、私のこと、見に來ただけ……?
誠,あぁ
姫月,ふ、ふぅん……
誠,??
なんで急にしおらしくなるんだ?
誠,……じゃあ、俺は帰るから
姫月,あっ、ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!
誠,……今度は何だよ?
姫月,べ、別に、見ていってもいいけど
誠,いや、後で訳のわからない因縁をつけられても面倒だから帰るわ
姫月,は、はぁっ!? 何よっ、訳のわからない因縁って!!
誠,訳の分からないって言ってるのに説明出來るわけないだろ。お前、頭、大丈夫か?
姫月,っつ!!
姫月,キモイ目で見られたくないから、さっさと帰れ! ド変態馬鹿兄貴!!!
俊成,姫月ー、練習再開するぞー
姫月,あ、はーい、すぐ戻ります俊成さん!!
誠,…………
姫月,は、早く帰ってよね!
これ以上、姫月と喋ってもムカつくだけなので、俺は何も返事をせずにスケート場を後にした。
姫月,あ……
姫月,…………
誠,むぐむぐ、むぐ……
青い絵の具を塗りたくったような空の下で、俺は今日も弁當を食べる。
本人の性格うんぬんは置いといて、姫月の作った料理はうまい。毎日食べても飽きが來ないというのは何気に淒いことだと思う。
弁當の中身が半分ほど減ったところで、今日もがちゃがちゃと扉の鍵が開けられる音がした。
誠,……むぐ。毎日よく飽きないな
姫月,何が飽きないの?
弁當には飽きないがこのやり取りには飽きてくる。
予想通りというか何というか、視線を向けるとそこには偉そうにふんぞり返る姫月が立っていた。
いや、それは良いとしても……。
誠,お前さ、毎日俺のトコ來てるけどほのかちゃんはどうしてるんだ?
俺は昨夜のほのかの様子が気になり、姫月に尋ねた。
姫月,……ほのかは先生によく頼まれごとされてるから、晝休みの半分くらいは用事で色んな所に行ってるよ
誠,ふぅん? お前は頼まれないのか?
姫月,うん、だからいつもは私もほのかの頼まれごとを手伝ってたんだけど……
そう言って姫月はちらりと俺の顔を見る。
誠,? 何だ……?
姫月,べっ、別に! 何でもないもん! こ、この間だって言ったけど、ほのかが馬鹿兄貴のこと心配しないなら私だってわざわざこんなトコまで來ないんだから!!
誠,はいはい。分かってるって。お前が自ら進んで俺と一緒に晝食をとるわけないよな
姫月,そ、そうだよ! だから勘違いしないでよね!!
ふんっと姫月は鼻を鳴らした。
ツンデレキャラ御用達の『勘違いしないでよね!』の臺詞も、こいつが言うととことん可愛くない。
誠,しかし、まぁそうか……それならいいけど
姫月,なによ……?
誠,いや、なぁ。朝聞きそびれたんだが、ほのかちゃん何か変わったことないか?
姫月,…………別に、ないと思うけど
誠,そうか……
姫月の答えを聞いても、俺はイマイチ納得することが出來ない。
昨日のほのかの様子は明らかにおかしかったのだ。
姫月,……何? 何でそんなにほのかのこと気にするわけ!?
誠,は? そんなの當たり前じゃないか。何せほのかちゃんは俺に告白してくれた初めての女の子なんだから
姫月,っつ……!!!
俺の言葉に姫月の顔がひくりと引きつった。
姫月,何それ!! まさかほのかに手を出すわけじゃないでしょうね!!?? 教育実習の間はほのかに手を出さないっていう約束忘れたの!??
誠,お、お前何そんなに怒ってるんだよ。俺がそんな非常識なことするわけないだろ?
姫月,非常識なゲームばっかやってる兄貴が非常識じゃないわけないでしょ!!??
誠,何だよその偏見! エロゲ愛好家でも、やっていいことと悪いことの區別くらい付いてるさ!
姫月,噓吐き!! 大體さっきからほのかほのかって、妹の友達によろめいてキモイのよ! ロリコンとか超キモイ!!!
誠,っつ……
言っておくが俺はロリコンではない。
幼女から熟女まで、自分の好みのキャラ設定だったら何でも美味しく頂けるオールマイティーな人間だ。
それをただのロリコンにカテゴライズされてはたまったものじゃない。
姫月の言い草に俺はだんだんとフラストレーションが溜まっていく。
誠,何だよ。俺が変態なら、昨日屋上で下著姿のまま飯食ってたお前だって変態じゃないか
姫月,!!? な、あ、あれは兄貴がやれって言ったから……!!
誠,人のせいにするなよ。お前がそうなりたいって言ったんだろう? 好きな男のタイプである変態女になりたいんだって
姫月,ち、違……!! そ、そんなこと言ってない!!!
誠,それに近いことは言ったじゃないか。俊成のアブノーマルな趣味に付き合いたいんだったら、お前も変態になるしかないんだし
姫月,っつ………………
思い人であるコーチの名前を出すと、姫月は悔しそうに押し黙り、目に涙を浮かべた。
普段は何を言っても言い負かされてしまうが、この件に関しては俺のほうが有利だ。
俺の言葉に反論できなくて俯く姫月を見て、俺は少し気分が良くなった。
誠,あぁ、そうだ。そんな変態なお前にプレゼントがあるんだよ
姫月,…………プレゼン、ト?
誠,あぁ。ほら、これ
俺は機會を見て渡そうと、ズボンのポケットに忍ばせていたものを取り出す。
姫月,……首輪?
誠,そ、どこからどう見ても首輪だ
俺が姫月に手渡したのは黒い皮製の首輪だ。
姫月,なに? これ、どうするの? ペットでも飼うの?
誠,はは、そうだな。ペットなら既に飼ってるかもな
姫月,は? 何言ってるの。家にペットなんていないじゃん。金魚のぐーちゃんだって去年死んじゃったし……
誠,いやいや、いるだろ? 調教を必要としてる変態ペットが
姫月,……!?? ……そ、それって
誠,ほら、著けろよ。プレゼントだって言っただろ?
姫月,や、だ、駄目だよ!! だってこんなの著けて授業受けてたらおかしいじゃない!
誠,大丈夫だって。この學園って基本的にアクセサリーも髪染めるのも禁止されてないんだし
まぁ、俺としては髪を金髪だとかに染めるのは止めてほしいところなのだが、どうせ禁止されてても染める奴は染めるのだ。
姫月,そ、そういう問題じゃなくて! こ、こんな首輪、アクセに見えないよ……
誠,へぇ。SMとかじゃ首輪は當たり前なのに、姫月は拒否するんだな
姫月,うぅ……
誠,ほら、こういうのっていわゆる獨佔欲の表れだろう? それを拒否されたら、男は落ち込むと思うぞ?
姫月,獨佔欲…………。あ、兄貴も、その……がっかり、するの?
誠,ん? まぁ、著けてもらえるほうが嬉しいっちゃ嬉しいかな
姫月に対しては獨佔欲も何もない。
とは言え、好きになった女の子が自分の好みの服裝とか髪型をしてくれたら嬉しいだろう。
そう思って答えた俺に、姫月は眉を寄せて考え込んだ。
姫月,……分かった。著けるよ
そう言って姫月はゴツゴツした黒い首輪を自分の首に巻きつけ始める。
姫月,ん……っ……
自分では見えない場所で固い皮を折り曲げ、ベルト穴に留め金を入れるのは思いのほか難しいようだ。
姫月は眉をひそめて首輪と格闘している。
誠,……お前って意外と不器用だな。ったく。俺がやってやるから、上向いとけ
姫月,あ…………
俺は姫月の手を押さえ、ベルト穴に留め金を差し込もうとする。
誠,…………
姫月,…………
……失敗した。それはもう激しく失敗だ。
姫月に上を向かせたせいで、俺たちは近距離で向かい合う體勢になってしまったのだ。
姫月,ね、ねぇ。まだ? は、恥ずかしいんだけど
誠,ま、まだ……もう少しだ
俺だって実の妹とこんな所でこんな體勢でいたくない。
誠,えぇと…………、よし。出來た
無事に留め金をベルト穴に差し込むことが出來、俺はパッと姫月から體を離す。
白く細い首にゴツくて真っ黒な首輪がよく映える。ピンク色の制服とのアンバランスさが良い感じだ。
姫月,ど、どう? 似合う……??
誠,ん? あぁ、まぁ似合うんじゃないか?
姫月,そ、そう……
首輪が似合う、というのは褒め言葉になるのだろうかとは思ったが、姫月の表情が少しだけ和らいだので間違いではなかったらしい。
姫月,は。べ、別に、兄貴のペットになる気はないけど、も、目的のために仕方ないから! ほ、ほら! 今日は何するの!?
誠,おぉ。やる気満々だな。やっぱりお前も変態なんだなぁ
誠,げふっ!!!!
姫月,だから違うって言ってるでしょ!?? 耳付いてる??
誠,く……、ツンデレに毆られたりカッターで切り付けられたりする場面はよく見るが、実際にやられると痛いだけで何もいいことないな……
やはり[三次元/りある]は駄目だ。特に姫月は駄目だ。何かある度に蹴られたり毆られたりしては身が持たない。
ひとまず俺にはDV妹という屬性がないことだけはハッキリした。
姫月,はぁ。何バイオレンスなこと言ってるの。ゲームの世界を現実に持ち込まないでよ
誠,い、いや……お前も十分
姫月,ん??
バイオレンスだと思うぞ、と続けようとしたが姫月の笑顔が怖くて何も言えなくなる。
誠,いや、何でもない……。しかし、調教か……
昨日は下著姿で食事をさせ、一昨日はノーブラノーパンで食事をさせた。
姫月,な、何よ……
誠,うーん。じゃぁ質問だ
姫月,え? う、うん。何??
誠,晝食は食べたか?
姫月,い、一応食べた……
誠,そうか、じゃぁ今日の下著は何色だ?
姫月,は!???
誠,何色かと聞いているんだが。昨日散々下著を見せ付けてきたのだから、色を答えるくらい何てことないだろう?
姫月,ばっ!!!! み、見せ付けたって何よ! 兄貴が見せろって言ったから見せただけだもん!!
誠,振り出しに戻ってるぞ。お前が変態だということで落ち著いたんだからその話題はもういい。下著の色は何色だ?
姫月,うぅうううーー
俺の言葉に姫月は心底悔しそうに睨みつけてくる。
まったく、下著の色を言うくらいで何をそんなに恥ずかしがっているんだ。
姫月,い、色って言うか……あ、赤系の……チェック……
誠,ほほう。よし、それじゃぁ見せてみろ
姫月,は!!??? 何で!!??? 言ったから見せる必要ない
じゃん!!
誠,いやいや、もしかしたらお前が噓をついてる可能性だってあるしな
姫月,う、噓なんてついてないもん!!
誠,じゃあ見せられるだろう? ほら、昨日も見せてもらったんだから見せろ
姫月,うぅうう酷いぃーーー
誠,酷くなんてないし、誰も今日は下著は見ないなんて言ってないだろう?
姫月,うぐぅう……
早く脫げと急かすと、姫月は渋々セーラー服を胸の上までたくし上げた。
白いシャツの下からはフリルとピンクのチェック柄の上に赤いリボンが付いた、やけに少女趣味なブラジャーが出てきた。
姫月,うぅーー。何で二日連続で下著見せなきゃいけないのよぉ……
誠,そういうプレイだからだろう? しかし、今日はまた隨分と乙女チックな下著だな……
姫月,べ、別にいいでしょ!? 私がどんな下著著けてたって兄貴には関係ないし!!
誠,まぁそれはそうだが……
姫月,…………
誠,しかしあれだな。ブラジャーってやっぱ毎日違うの著けるもんなんだなぁ
姫月,…………何當たり前なこと言ってんの??
俺の臺詞に姫月は訝しげな表情を浮かべた。
誠,いや、確かに考えたらそりゃそうだよな
姫月,…………?
誠,うん。まぁそれはいいや。じゃ、次はブラを外してくれ
姫月,………………
姫月,はぁあああ???? ななななに言ってんの??? え?? 何!? 暑さで頭おかしくなっちゃったの!?? 元々おかしかったの
に!??
誠,……お前は一言も二言も多いな。……調教の過程として、次は下著を外すというのがこういう場合のテンプレだろう?
姫月,で、でも、え……だ、だって……そ、それって、む、胸、見せるってこと、だよね……
誠,そうだが?
姫月,で、でもここ、お、屋上だよ……? そ、外なんだよ??
誠,そんなことは分かってるさ。だけどお前の好きな奴が、こういう公共の場所でそういう行為を求める可能性は大いにあるだろう?
姫月,で、でも……でも
誠,でももヘチマもない。調教を継続していく気があるなら俺の言う通りにすればいいし、やめたいならやらなくていい
姫月,…………っつ……
姫月の顔には、悔しさと困惑を織り交ぜたような複雑な色が滲む。
諦めたように目を伏せた姫月がホックを外すと、空気を吸い込んだブラがふわりと浮き上がった。
誠,ほら、ブラを取ってこっちを見ろ
姫月,…………
姫月は2、3度視線を泳がせた後、伺うように俺を見上げながらブラジャーを床へと落とす。
布がコンクリートの地面を滑る乾いた音がかすかに聞こえた。
姫月,こ、これで、満足……っ!?
姫月の顔が火を吹きそうなほどに真っ赤に染まっていて、シャツを抑える手は緊張のせいかすっかり強張ってしまっている。
布に覆われていない狀態の姫月の胸を見たのは幼稚園の頃以來だろうか。
なだらかな曲線を描く白い膨らみの先端にある、ツンと上を向いたピンク色の突起がふるりと震えた。
誠,……乳首勃ってるな。見られて感じてるのか?
姫月,ばっ……!!! そ、そんなわけない! こ、これはあれだよ! きょ、今日ちょっと寒いから……だから!!!
誠,へぇ?
オーストラリアやニュージーランドならまだしも、日本の6月下旬の気溫が寒いわけがない。
どこまでも意地っ張りな妹の姿を見て、俺はその剝き出しになった乳房へと手を伸ばした。
姫月,ひゃっ!!!??
巨乳というわけではないが、程々の大きさをもったそれはふわりと柔らかな感觸だった。
初めて觸る女の子の胸。
姫月,あ、あぅ……兄、貴……
姫月,や、や……く、くすぐったい、よ……あ、兄貴ってばぁ……
ふにゅふにゅとしたマシュマロのような乳房。
全體をこねるように揉みしだきながら、引っ掻くように乳首を爪で弾くと、その度に姫月の體がビクビクと大きく揺れる。
姫月,っつ…………だ、駄目、だってば……
誠,どうして? 何が駄目なのか言ってみろよ
姫月,や、や……む、胸、さ、觸ったら……だ、駄目……
誠,うーん。胸って言い方は萌えが少ないなぁ
姫月,も、もえなくて、いいよぉ……
誠,いやいや萌えは大切だぞー? あ、ほら。おっぱい気持ちいいとか言ってみろよ
姫月,っつ!?? ば、馬鹿じゃないの! そ、そんなの言えるわけ……ふぁっ!!!
誠,ほら、觸られるのが嫌なら『おっぱい気持ちいいから觸らないで下さい』って言えよ
姫月,っひ……!!!
親指と人差し指でピンク色の乳首を挾み込む。
誠,ほらほら、どうした? それとも觸られ続けたくて焦らしてるのか?
姫月,そ、そんな、わけ……ない、でしょ! っく……お、おっぱい、き、気持ちいいから……さ、觸らないで……下さい
誠,うーん。よく聞こえないなぁ
姫月,っや!! 痛っ!!!
俺はぐにぐにと弄り回していた乳首を更に強くねじる。
電気が走ったように姫月の體がビクリと痙攣し、大きな目には涙が浮かんだ。
姫月,う、うぅ……お、おっぱい気持ちいいからぁ……! さ、觸らないで下さいっ!!
誠,乳首弄られて気持ちよ過ぎる??
姫月,うくっ……、ん、んっ! 乳首弄られて、気持ちよ過ぎて、駄目だからぁ……!!
誠,はは、そっか。そんなに気持ち良いならもっと良いことをしてあげないとな
姫月,え……?
いつもは勇ましい妹が、卑猥な単語を口にするたびに俺はゾクゾクとした奇妙な快感が背中を駆け抜けるのが分かった。
時折漏れる甘い吐息と蕩けたような姫月の表情。
俺はごくりと唾を飲み込むと、我慢できずに姫月の胸にむしゃぶりついた。
姫月,ひゃぁあああん!??
姫月,っひ!? や、やぁ!! だ、駄目っ!! 舐めちゃ駄目だ
よぉ!!!
舌先で乳首を転がしながら、空いているほうの胸を指で弄る。
姫月,やっ! 兄貴の、噓吐き!! き、気持ちいいって言ったら、やめてくれるって……!!
誠,うん? 觸られるのが嫌なら言ってみろって言っただけで、やめるなんて一言も言ってないぞ?
姫月,うく……っ!! ず、ずるいぃ……
誠,ははは。大人はみんなずるいもんなんだよ。お? さっきより乳首が固くなってきた
姫月,やっ!!! そ、そんなのっ、言わなくていいっ……!!!
誠,アホ。こういうのも調教プレイの一貫なんだから、イチイチ反論するなよ
誠,ほら、今度は『乳首舐めてもらえて幸せです』って言ってみろ
姫月,うぅう……な、何でそんなやらしいことばっかりぃ……
誠,何でと言われても、趣味だから……としか言えないなぁ
女の子が卑猥な言葉を言ってくれるのが男の夢と言っても差し支えないんじゃなかろうか?
姫月の言葉に、俺は乳首から口を離して思わず考え込んでしまう。
姫月,うわん! 変態! 変態ぃ!!
誠,はいはい、変態で結構だ。で、どうだ? 乳首舐められて幸せだろう?
姫月,うぅ……馬鹿ぁあ!! ち、乳首舐めてもらえて幸せっ、だよ!!!
誠,……色気も何もあったもんじゃないな
吐き捨てるように言った姫月の言葉には、羞恥心からくる投げやりさはあるのだがそれでは足りない。
もっと照れながら、乳首という単語に恥じらいを持って言ってほしいのだ。
誠,不合格。もう一度だ
姫月,うぐ……
誠,ほらほら、ちゃんと舐めてやるから言えよ
姫月,っひ……!! やっ! やだよ! 駄目っ!! んぅう……!
誠,じゅるっ……ちゅ、ちゅる、れろ
姫月,や、や……吸っちゃ駄目! ち、乳首、舐めてもらえて幸せだから……! も、やめてぇ……
姫月のコリコリと芯を持ち始めたピンク色の突起は、舌と指で刺激を與えられて赤く腫れてしまった。
歯で挾みこむように食むと、姫月の體はびくりと大きく跳ね上がる。
誠,ふぅ……、じゃ、まぁそろそろ上はいいか
姫月,はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はっ……
俺が口と手をそこから離すと、姫月が荒い息を吐きながら肩を上下させた。
唾液でべたべたになってしまった乳首は、ますます赤く熟れているように見える。
誠,さて、それじゃ……
俺は昨日同様、ポケットからクリップを取り出し、姫月のシャツを胸の上にまとめて留める。
姫月,ま、またこれするの……?? も、ヤダよ……
誠,もう丸見えなんだし、今更恥ずかしがっても仕方ないだろう? ほら、次は下だ
姫月,え!???
誠,え? じゃなくて、下も脫げよ。當たり前だろ?
姫月,あぁあ當たり前なんかじゃないよ!! 何當然みたいな顔して言ってんの!!??
誠,いやいや、上の次は下って相場が決まっているじゃないか。ほら、さっさと脫げ
姫月,無理だから! 超無理だから!! だって上だけでこんなに恥ずかしい思いしてるのに、下もとかホント無理!!
誠,お前は本當に無理だ無理だと。やる前から諦めてどうするんだ??
姫月,だ、だって……こ、こんな……兄貴はそうやって何事もなく服を著てるのに、私だけこんな風に胸出して……
姫月,こんなの、やだよぉ……
いつもの強気な表情はどこへやらで、姫月は今にも泣き出してしまいそうなほど顔を歪ませる。
なかなか良い顔だ。少なくとも人のことをゴミだ蟲だ言う時の顔よりも斷然良い。
誠,はは、そうやって恥ずかしがってる姫月はなかなか良いな
姫月,っく……!! ば、馬鹿にするなぁ……!
誠,馬鹿になんてしてないぞ? うん、結構可愛い
姫月,えぅ……!!???
誠,な? 俺でさえこうやって思うんだから、他の奴ならもっと可愛いって思ってくれると思うぞ?
姫月,……っつ、うぅう~~~。……わ、分かったっ、よ
誠,よしよし、いい子だ
姫月,あ、兄貴に褒められたって、全然っ……嬉しくなんてないんだか
らぁ!!!
涙が滲む目でキッと俺を睨み、姫月は立ち上がると同時にスカートのホックに手をかけた。
勢いよく引き下げられたスカートはばさりと鈍い音を立てて地面へと落とされる。
姫月,っつ…………
昨日とは違うチェック模様のパンツが俺の眼前に曬される。
誠,ん……??
姫月,な、何よ……
誠,いや、お前のパンツ、何か濡れてないか?
姫月,!!!!!!????
誠,ほら、ここ。染みが出來てるぞ。漏らしたのか?
姫月,ばっ!!!! この年になって誰が漏らすのよ!!
誠,いやいや、年齢は関係ないぞ。寧ろ加齢と共に締まりが悪くなると聞いたことがあるしな
姫月,私、そんなに年取ってないもん!!!
誠,そうかー。それじゃ、漏らしてないか見てやるからパンツ脫いでみろよ
姫月,へ????
誠,漏らしてないなら見せられるよな?
姫月,いやいやいや見せられない! 見せられないから!!! 漏らしてなくても見せられないから!!!
大事なことなので3回言いました。というわけではないだろうに、姫月は必死に抵抗する。
誠,いやいや、そこまで脫いじゃったらパンツ脫ぐくらい大したことないだろ?
姫月,大違いだもん!!!
どうやら最後の1枚を脫ぐのには抵抗があるらしい。
涙目になりながら訴える姫月に、俺は少し懐柔方法を変えることにした。
誠,ふぅ……。姫月、これはお前に教えなきゃいけないことの前段階なんだぞ?
姫月,ま、前段階……??
誠,そうだ。アブノーマルな男が最も好きなプレイの內のひとつを教えるために、まずはパンツを脫いでもらわないといけないんだ
姫月,最も好きなプレイの……ひとつ
誠,そうだ。教えて欲しくないか? きっとお前の好きな奴だって大好きだぞ?
姫月,っく………………
誠,さ、どうする?
姫月,っつ……ぬ、脫ぐ、から……だから、教えて……
姫月は今にも消え去りそうなほどにか細い聲で言い、震える手を下著へと添えた。
姫月,っく…………
誠,うん? どうしたんだ?
數センチほど下げたところで、姫月の手がぴたりと止まる。
困ったように眉を寄せて、顔を真っ赤に染めてカタカタと小さく震えている。
姫月,や……、あ、兄貴ぃ……は、恥ずかしい、よぉ……
無意識なのだろうが、姫月は普段から想像も出來ないような甘えた聲で俺に助けを求める。
誠,ほら、頑張れ
姫月,うぅ~~~、見ないで……見ないでぇ
姫月は頭を左右に振りながら、じわりじわりとパンツを下げていくと、近くで見ないと分からないくらい細く薄い下の毛が見える。
誠,お。毛が見えた
姫月,やっ!!! やぁだぁ!! そんなの言わないでよぉ!!
姫月の大きな目から、大きな涙がぼろりと零れた。
相當恥ずかしいのだろう。ひっきりなしに頭を振って俺の顔を見ようとしない。
誠,分かった分かった。もう言わないからさっさとパンツ下げろよ
いい加減姫月を宥める作業にも飽きてきたのだ。
元々俺は作業ゲーは好きじゃない。
姫月,ふっ、うぅ…………っつ!!!
姫月はぎゅっと目を瞑り、太ももの中間くらいまで一気にパンツをずり下げる。
誠,はは。最後は隨分と思い切ったな
姫月,う、うぅーーー! お、下ろした! 下ろしたんだからっ、は、早く、教えてよっ!!
[堰/せき]を切ったように姫月の目からはぼろぼろと涙が零れる。
半ば逆ギレしているように喚きたてるが、正直全く怖くない。
誠,あぁ、ほら。やっぱりお前、濡れてるじゃないか
姫月,え……??
俺は姫月の脫いだパンツに出來た染みを指して言う。
姫月,え、え? な、何で……??? 何で、下著……濡れてるの……??
誠,は?
姫月,だ、だって私、漏らしてないもん! ほ、ホントだよ! ホントに漏らしてないのに……!!
少しからかってやろうと思ったのだが、姫月が異常なほどにうろたえている。
誠,い、いや。お前が漏らしてないのは分かってるから……
姫月,ホントに?? ホントに???
こいつは何でこんなに必死になっているんだ?
感じたら濡れるのは女も同じだろうに。
と、そこまで思ったところで、俺は一つの考えにたどり著いた。
誠,……姫月。まさかとは思うが、何でそこが濡れてるのか分かってないわけ、ないよな?
姫月,え? あ、兄貴……、分かるの……?
いやいや、お前は一體どんだけ純粋培養なんだよ。
今時小學生でもそこが濡れることくらい知っているだろうに。
誠,はぁ、まぁいいや……今から教えてやるよ
姫月,う、うん……
とは言っても、俺もエロゲとか同人誌で読んだ知識しかないから上手く出來るかは分からないのだが。
誠,えぇと、ひとまず指でま○こを觸ってだな
姫月,………………
俺の言葉に姫月の眉間の皺が更に深いものとなる。
ん? 何か変なこと言ったか?
誠,姫月? どうしたんだよ
姫月,あ、あの、兄貴……その、ま○こって、どこ……?
誠,………………
そうか、そうだよな。
女の子の秘所が濡れることを知らない姫月が、ま○この名前を知っているわけがない。
仕方ないな、と俺は溜め息を吐いて自分で教えることにした。
誠,近付くけど、絶対毆るなよな!?
姫月,え? う、うん……わ、分かった
普段だったら確実に毆られるというか殺されるだろう行為を行うため、俺は一応の牽制をして姫月に近付く。
そして、自分の指で姫月のそこをくぱりと広げた。
姫月,っつ!!?? っつ!!!???????
およそ予想していなかった行為に、姫月は目玉が転がり落ちるのではないかというほど大きく見開く。
姫月,ひっ!!?? や、やっ!!!
誠,暴れるなって!
パニックを起こしそうになっている姫月に一喝すると、小さな口がぱくぱくと酸素を求めるように動く。
誠,ほら、ここのことをま○こって言うんだ。まぁでも俺は女の子にはおま○こって言ってほしいけどな
姫月,う、ぁ、あぅ……あぅ……
姫月がぱちぱちと瞬きを繰り返し、言葉にならない聲を発している。
誠,しかし、女子校生のま○こって初めて見たけど綺麗なピンク色なんだなぁ……
姫月,っひ、や……いやっ、やだぁあ……そ、そんなこと言わないでよぉお……やぁあー……うぇ、え……
俺が感嘆の聲を漏らすと、姫月は本格的に泣き出してしまった。
誠,や、綺麗だって褒めてるじゃないか。これなら好きな奴も絶対喜ぶぞ
姫月,う、うぅ……ぐす……あ、兄貴も、喜んでる、の?
誠,あぁ、今まで見た中で一番綺麗だと思う。ま、AV情報だけどな
姫月,うぐ……、わ、分かった……は、恥ずかしいけど、が、我慢する……から……つ、続けて……
誠,お。偉いな、姫月。それじゃ、次の段階だ
姫月,っつ……っ……
誠,このおま○こを開くと、ほら、ここに皮に包まれた豆みたいなのがあるの分かるか?
姫月,ん、う…………見える、けど……でも、でも……兄貴は見ないでよ……!
誠,……いや、この機會に俺も勉強させてもらおうかと思って
何せ女の子のココを生で見るなんて初めてのことなのだ。
妹のものであるということを考えると少しばかりがっかりしてしまうが、それ以上に俺のソコへの好奇心は大きかった。
しかも全く使われていない様子のそこは、黒ずんでも赤っぽくもない艶々としたピンク色。
男として興奮しないわけがない。
誠,ま、そんなわけだから続けさせてもらうぞ
姫月,やっ、やっ、ま、待って……! ひぁ!!!!
俺が姫月の秘所を広げながら、ぽつりとある豆に指を滑らせてやると切羽詰ったような聲が上がった。
誠,お。やっぱここが気持ちいいんだ?
姫月,や、やだっ、何!? 何したの?? 今……
誠,この豆がクリトリスっていう名前なんだけどな、女の子はここが一番感じやすいらしい。ほら、どうだ??
そう言いながら俺は姫月のぷっくりとした豆をくにくにと捏ねくり回す。
しとどに濡れたそこはぬるぬると滑り、指を前後させる度に姫月の體がびくびくと跳ねた。
姫月,や、やぁっ! そ、そこ、やっ……だ、だめぇ……
誠,そこ、じゃなくてクリトリスだろう? ちゃんと名前を言わないと分からないぞ?
まぁクリ、と略してもいいけどなと付け加える。
姫月,ひっ、ひっ……やぁ……っ! く、クリトリスっ……弄っちゃ、駄目なのっ! やぁ、あっ……!!
誠,へぇ、隨分とハッキリ言うんだな……もっと恥ずかしがるものだと思ってたけど
姫月,っふ……うぅ、んっ、んっ……、だ、だって……ぜ、全然、ピンと來なくて、は、恥ずかしいとか……分かんないだもん……
誠,なるほど、そういうものか……
まぁ確かにそういうこともあるのかもしれない。
例えば日本語のもしもしはドイツ語で女性器の名稱『Mushi』と聞こえるらしいし、パジェロはスペイン語で『オナニー好き』という意味を持つ。
だが、こういう話を聞いても大體の日本人は今後も電話に出れば「もしもし」と言うし、パジェロを見ればパジェロと言うだろう。
遠い存在過ぎて、逆に羞恥心が沸かないものなのだ。
誠,まぁ、でもそれだとつまらないからなぁ……
羞恥心なく隠語を言われると若干萎えてしまう。
誠,うーん。じゃぁ、これから俺がやることを、お前が口で説明してくれ
姫月,え……?? や、な、何する、の……?
誠,はは、心配するなよ。誰も処女を奪ってやろうなんて考えてないからさ
姫月,っつ!!!??? ば、ばか!! 何言って……!!!
誠,え? お前、まさかその年でもう非処女なのか!!!? 中古なのか!!!??
姫月,っち……! 違うよ!!! そ、そんなのしたことないもん!!!
誠,ん? 何をしたことがないんだ??
姫月,え、あ、あぅ……だ、だか、ら……
姫月,せ、せっく、す……なんて、したこと、ない……
誠,はは、そうかそうか。良かった。俺が彼氏だったら絶対処女じゃないと嫌だもんなぁ
姫月,…………
誠,じゃ、安心したところで続きだ。いいな? 俺がこれからやることをきちんと聲に出して説明するんだぞ??
そう言って俺は愛液でべとべとになった姫月のクリトリスを摘みあげた。
姫月,ひゃっ! あ、あぁっ、あっ! やだぁあ!!
誠,しっかりレポートしろよ。じゃないと痛くするぞ??
その言葉とともにピンク色の豆をギリリと摑む。
姫月,っひ!!!?? 痛い! 痛いよ……!!! やめて! 摘まないでぇ!
誠,何が嫌なのか、気持ちいいのかちゃんと言わないと分からないだろう? 酷いことされたくないなら言われた通りにしろよ
姫月,う……うぇ、やぁーっ、い、痛いの、やだぁあ……く、クリトリス、摘まれると、ビリビリってして……痛いよぉ
誠,ホントに痛いだけか? これはどうだ?
俺は少し指の力をゆるめて、くるくると円を描くようにそれを刺激し始める。
姫月,ふぁ、あっ、あっ、や……そ、それ、変、だよぉ……
誠,どう変なんだよ
姫月,く、くり……や、なの……クリ、トリス……そ、やって擦られたら、で、出ちゃいそう、なの……!
誠,何が出るんだよ? 女なんだから精液なんて出ないだろ?
姫月,せ、えきじゃ、なくて……、その……こ……
姫月,お、おしっこ!! で、出ちゃいそう、なの……!
誠,へぇ? いいじゃん。屋上で半裸でおしっことかなかなか良いシチュエーションだ
姫月,ぜ、全然っ、良く、ないよ馬鹿ぁあ!!! も、やらぁあ……!!
摘んだり捏ねたりを繰り返すたびに、姫月は體をびくびくと痙攣させ、こぽりと愛液が湧き出てくる。
クリトリスを弄られるのは相當気持ち良いようだ。
誠,それじゃ、気持ちよくなってるついでにこっちも……
姫月,ひぅ、う、うぇ……??
姫月,っひあっ、あっ!!!???
誠,うっわ、キツ……
俺は姫月がクリトリスから得られる快感に夢中になっている間にそこに指を突き入れる。
一本しか入っていないのに、そこはギチギチと俺の指に噛み付いてきてそれ以上中に進めない。
姫月,っひ、や……やっ! 痛っ!
誠,くっ……、姫月。力、抜け
姫月,やぁ……、やぁ、む、無理、ぃ……
処女の穴っていうのはこんなにもキツイものなのか。
それとも體格とか年齢的なものもあるのだろうか?
誠,やっぱまだ子供なんだなぁ……
姫月,っつ!!!!
こっちの開発は諦めるか、と思い、姫月の中から指を引き抜こうとする。
姫月,や! 駄目っ! ぬ、抜いちゃ駄目!!!
誠,は? だってお前、狹すぎてこれ以上入らないんだぞ?
姫月の中は狹過ぎて、指の第二関節までがようやく入る程度なのだ。
姫月,う、うく……だ、って……、こ、これが、ひ、必要、なん、でしょ……? だった、ら……平気、だから……
誠,お前はホント意地っ張りというか我慢強いというか……
姫月,っつ…………
誠,じゃ、確認するけど、このままおま○こぐちゅぐちゅしちゃっていいんだな?
姫月,う、うぅ……う、か、勝手にすれば、いい、よ……!
誠,いやいや、そうじゃないだろ?
姫月,う、んん、んっ……っつ……お、おま○、こ、ぐちゅぐちゅして、いいからっ……! は、はぁ、はぁ……続き、し、て……
誠,うん、素直でよろしい
悔しそうに涙を滲ませ、顔を真っ赤にして言う姫月に俺の気分は高揚してくる。
あまり無理に中に分け入ってはただ痛みを増すだけだと思い、俺はクリトリスを刺激しながら、第二間接まで入れた指で中をぐりぐりと刺激していくことした。
姫月,っつ……ん、……っふ、はぁ、はぁ、はっ……
姫月,っひ!!! んんっ! あっ、あっ!!!???
誠,お?
膣口から2、3センチの部分を探るように動かしていると、ある一點で姫月の反応が変わった。
痛みに呻く聲に、艶のようなものが混ざっってきたのだ。
姫月,や、やっ……な、何……!??
誠,なるほど、ここが姫月の気持ちいいところなのか?
姫月,やぁ……き、気持ちよくなん、て……ふぁっ、あっ!!
誠,でもさっきより汁が出てきてべちょべちょになってるぞ。ほら
俺は膣內に入れた指はそのままに、クリトリスを弄っていた右手を姫月の眼前へと差し出す。
太陽の光を浴びて、俺の手にべっとりと付いた姫月の愛液がぬらぬらと怪しく光る。
姫月,やぁ……! そ、そんなの、見せないでっ……!!
誠,それじゃ、ちゃんとおま○こぐちゅぐちゅされて気持ちいいって言ってみろよ
姫月,ひ、ひぅっ、うぅ……う……やあ、らぁ……
誠,じゃないといつまでもこのまま弄り続けるぞ? あぁ、姫月は変態だからそっちのほうがいいのか
姫月,やっ! ち、違うよ! 私……私……ふぁ、あ、あっ!!
姫月は何度も頭を左右に振り、きゅっと目を瞑って中と外を同時に弄られる快感に耐えようとしている。
誠,じゃぁちゃんとイったら、やめてやるよ
姫月,ほ、ホント?? んんぅ、んっ、んっ!
誠,あぁ。噓は吐かないさ
姫月,あ、は、はぁ、はぁ、はぁ……わ、私、お、おま○こぐちゅぐちゅされて、気持ち、いいよ……!!
誠,クリのほうはどうだ?
姫月,っひ、ひぅっ、く、クリは……い、弄られちゃったら、ぞくぞくってして……らめ、なのぉ……
誠,はは、偉いな。よし、じゃぁちゃんとイかせてやるからな
姫月,!!???
そして俺はクリを弄る手と、膣內を蹂躙する指の動きを早めた。
姫月,や! 嫌!! 兄貴の噓つき!!! 言ったら止めるって言ったのに……!! や、やぁ、あっ、あっ!!!
誠,馬鹿だな。俺はお前がイったら止めてやるって言っただけだよ
姫月,い、言ったよぉ……!! わ、私、おま○こ気持ちいいって……! は、はぁ、あっ、あ……ちゃ、ちゃんと……言ったのに……!! ひぁ、あっ、あっ!!
誠,イくって言うのは絶頂したらっていう意味だぞ? ははは。日本語は難しいなぁ、姫月
姫月,ひっ、や、やら!!! わ、分かんない! 分かんないよぉ……んん、あ、あ、やっ……!! ら、らめ! らめなの!! も、ほ、ほんとに!!!
姫月の體がぶるぶると小刻みに震えている。
そろそろイくのだろうか?
姫月,やっ! やー!! ぐちゅぐちゅ、しちゃ、らめぇえ!! やらぁあ!! らめなの!! な、何か來ちゃうよぉ!!!
誠,ほら、イってみせてくれ
女の子がイく瞬間というものに興味がある俺は、ごくりと生唾を飲み込みますます強く手を動かす。
姫月,っは、あっ、あ、あ、やっ、ら、らめ……らめ……や……
息も絶え絶えといった風に、姫月が切羽詰った聲を上げる。
體中の筋肉が痙攣を起こしているかのようだ。
姫月,も、やっ、もぉっ、やっ、やぁあああああああああああああああああ!!!!!!
びくびくと2度ほど大きく體を跳ねさせ、ゆっくりと力が抜けていく。
姫月,ひ……は、はぁ、はぁ、は……は……はぁ、あ……
誠,初めてイった感想はどうだ?
姫月,は、はぁ、はぁ……、そ、そんなの、分かんない、よ……ま、真っ白で、何も考えられなくて……
誠,気持ちよかった??
姫月,………………っつ
俺の質問に姫月は顔を真っ赤にしてぷいとそっぽを向いてしまったのだった。
誠,さてと、これでよし
狸に頼まれた簡単な仕事を終え、あとは実習録を出せば終わり。
帰ったらエロゲでもやるかと考えながら職員室へ向かっていると、下から楽しげな聲が聞こえてきた。
雪名,桜の顔、見た?
貓屋敷,見た見た! ノート見つからなくて、泣きそうになってたよね
誠,え……
思いも寄らぬ言葉に、俺の足は途中で止まった。
雪名,あれ、超ウケたよねー
貓屋敷,ねー。私、見てて噴き出しそうだったもん。あの子もいい加減気付けばいいのにさ。自分が姫月ちゃんに釣り合ってないって
雪名,そうそう。あ、でも気付くわけないか
貓屋敷,えー? なんで?
雪名,だって、あいつバカじゃん?
貓屋敷,あは。確かに
雪名,今頃、床に這い蹲ってノート探してるんじゃない? [好/い]い気味って感じー
貓屋敷,あははは
下から聞こえてきた會話を耳にし、昨日ほのかが四つんばいになっていた姿を思い出す。
まさか、昨日も……。
雪名,桜ってさぁ、真面目キャラのくせに成績そんなに良くないじゃん。それなのに先生たちから贔屓されててムカつくんだよね
貓屋敷,媚売りまくりで超うざいよねー。ちょっと男子に人気があるからって、なに調子に乗ってんの?って感じ
雪名,お前が人気あるのは顔じゃなくて胸だっつーの
貓屋敷,もしかして先生に人気があるのも、それが理由じゃないの?
雪名,ありえるー。ってか、絶対それが理由だよ。実は裏で援交とかしてんじゃない??
貓屋敷,うっわそれホントにやってそうで超キモイー!
耳障りな會話が少しずつ遠ざかっていく。
さっきの會話が示すものは、1つしかない。
誠,……っつ!
俺は慌てて走り出した。
誠,はぁっはぁっはぁっ
運動不足で上がった息を整えることなく、教室の扉を開く。
誠,ほのかちゃん
ほのか,きゃっ
ほのか,あぅっ……
昨日の放課後に見たのと、同じ光景。
ほのか,あ、お兄さん……
ほのかの目には、昨日と同じように涙が浮かんでいた。
頭をぶつけたからか。それとも、ノートを隠されたからか……。
誠,ほのかちゃん、大丈夫?
ほのか,え……? あ、頭なら、大丈夫ですよ?
誠,いや、そうじゃなくて……ノート
ほのか,……っつ
ほのか,の、ノートが……どうかしたんですか?
明らかに動揺しながらも、ほのかはまだ取り繕おうとする。
誠,ノート……見つからないんじゃない?
ほのか,っつ
ほのか,そ、そんなわけ、ないじゃないですか
誠,でも……
ほのか,ほ、本當に! なんでも、ないです
ほのか,私、用事があるので失禮しますね
そう言うと、ほのかは鞄を摑み逃げるように教室を出て行った。
誠,ちょっと待って!
誠,……っ、ほのかちゃん速すぎ……
教室まで走った影響か、はたまたスペックの問題か、俺はあっという間にほのかを見失ってしまった。
今すぐ話を聞きたかったが、ほのかの態度からして同じことの繰り返しになる可能性が高い。
俺もほのかも、冷靜になる時間が少し必要かもしれない。
明日、話を聞けそうだったら改めて聞いてみよう。
誠,はぁ~……
俺は大きく息を吐きながら、ベッドに倒れ込んだ。
何か今日は疲れたな……。
あー……スーツ著たまま寢たら、姫月がうるさそうだな……。
そう思いながらも、體がだるくて動く気になれない。
誠,まぁ、いいか
どうせ姫月に怒鳴られるのは慣れっこだ。
そう考えると、自然と眠気がやってきた。
俺はそのまま眠気に抵抗することなく、意識を闇の中へと溶かした。
…………
……
誠,ん……
目を覚ますと、部屋の中は真っ暗になっていた。
時計に目をやると、7時を過ぎている。
誠,腹減ったな……
俺はスーツを脫いで部屋著に著替え、リビングへと下りていった。
誠,……あれ?
リビングに顔を出すと、なぜか真っ暗だった。
変だな。いつもだったら、姫月の奴もう帰ってるはずなんだけど……。
キッチンを覗いてみても、料理をしていた形跡はない。
誠,……まだ帰ってきてないのか?
そんなことを考えていると、玄関の扉が開く音がした。
姫月,ただいま
誠,おかえり
誠,……帰りが遅かったけど、何かあったのか?
姫月,別に……
人が心配して聞いたというのに、素っ気なく答える姫月。
この反応を見る限り、ただ部活が長引いただけなのだろう。
姫月,著替えたら、すぐ晩ご飯作るから
誠,あ……ちょっと待て
踵を返して背を向ける姫月を呼び止める。
姫月,な、何?
誠,スカートの後ろにゴミがついてるぞ
姫月,え、噓! ちゃんと取ったつもりだったのに
誠,?? 何か制服が汚れるようなことでもしたのか?
姫月,え?
誠,今、『ちゃんと取ったつもり』って言ってたから
姫月,あ、いや、えと……ちょっ、ちょっと転んだだけっ
誠,ふぅん
やけにしどろもどろに答える姫月。
いつも身だしなみが整ってる姫月にとって、普段からだらしない俺に指摘されたのが恥ずかしいのだろう。
誠,とりあえず後ろ向け。ゴミ取ってやるから
姫月,っつ! いっ、いいっ!
誠,をい。そこまで全力で拒否るなよ……
姫月,あ、や……だって、変態な兄貴のことだから……ゴミを取るフリをしてスカートめくってきそうだし……
誠,…………
……まぁ、確かにちょっと考えたけどな。
晝休みにあげた首輪はしたままだから、下著も外したままか気になったし。
姫月,ほっ、本當にそんなこと考えてたの!? 変態っ、変態っ!!
黙ってる俺を見て自分の考えが當たってることを知った姫月は、顔を赤くして罵ってくる。
姫月,変態っ!!
最後にもう一度俺を罵ると、姫月は顔を赤くしたまま逃げるように走り去っていった。
誠,おっ、ノーパン
姫月が勢いよく踵を返したせいでスカートがふわりと舞い、真っ白で丸いお尻がチラリと見えた。
それにしてもスカートにゴミがついてるだけじゃなくてちょっと汚れてたけど、あいつはどこでコケたんだろうな……。
;0scene 5日目(朝)
姫月,遅いっ!
俺が家から出てくると、姫月は開口一番そう言った。
今日も朝から姫月様は絶好調だ。
誠,これでも急いだんだが
姫月,昨日のうちに準備しておけば、もっと餘裕を持って行動できるでしょ
誠,そんな時間があったら、エロゲするっつーの
姫月,…………
俺の言葉に、姫月が殘念そうな目を向けてくる。
これだから、エロゲの良さを知らないやつは……。
しかし、だからといって姫月にエロゲの良さを解こうなものなら――
姫月,キモイ!
だの――
姫月,変態っ!!
だのと、罵られるに決まってる。
そういう偏見は止めて欲しいんだけど……さすがに無理だろうなぁ。
年頃の……しかも、やや潔癖症なところがある姫月には刺激が強すぎる。
はぁ、エロゲを語り合える女の子いないかなぁ……。
いや、たとえいたとしても面と向かって話せないか。
となると、まずはメールとか文字でのやりとりからスタートか?
その前に、メアドとか聞けないだろ、俺……。
姫月,……きっ!
姫月,ちょっとっ! 兄貴っ!
誠,んっ?
ボーッとしていた俺は、姫月の刺々しい言葉で現実世界に戻された。
誠,なんだ? 姫月?
姫月,ちゃんとハンカチとティッシュ持ったの?
誠,は……?
姫月,だからっ! ハンカチとティッシュだってば!
誠,あぁ、ちゃんと持ってるぞ
ポケットからハンカチとティッシュを取り出し、姫月に見せる。
姫月,うん、よろしい
俺がちゃんと持ってることを確認すると、姫月は満足そうに頷いた。
誠,つか、今のやりとりはなんなんだ? お前は俺の母親か?
姫月,なっ!? 私、そんなに年取ってないでしょっ!!
誠,いや年齢じゃなくて、いちいちハンカチとティッシュを確認する行動を指してたんだけど……
姫月,まっ、紛らわしいこと言わないでよね……っ
自分の勘違いを指摘され、顔を赤くする姫月。
そうか。姫月は勘違いや間違いを指摘されると恥ずかしいのか。
姫月に対してそんなツッコミが出來ることなどほとんどないだろうが、俺は少しだけ優越感に浸った。
姫月,てゆかっ! 兄貴がしっかりしてれば、私こんなこと確認しないし!
誠,はいはい、俺が悪いんだよな
悪いのはいつも自分ではなく俺。姫月はそう思ってる。
朝からやり合うのも面倒なので、俺は適當に流した。
誠,ほら、さっさと學園に行くぞ
姫月,あっ!
俺が歩き出すと、姫月も続いた。
だけど、俺の隣に並ぶことはない。
そんなに俺と一緒にいるところを見られるのが嫌なら、別々に登校すればいいのに。
憎まれ口を叩いてまで、なんでそうするんだろうな、こいつは。
特に會話もなく歩いていると、姫月の攜帯から軽快な音が鳴った。
姫月,あ、ほのかからだ
ほのか――
その言葉が耳に屆いた瞬間、昨日の放課後の出來事を思い出す。
ほのか,ほ、本當に! なんでも、ないです
ほのか自身はああ言ったが、どう見ても『何でもない』ということはない。
姫月,ほのか、體調悪いのか……。大丈夫かな……
姫月,兄貴。ほのか學園へ行く前に病院に寄るから、今日は先に行ってだって
姫月は、ほのかが何をされてるか知ってるんだろうか……?
姫月,……兄貴?
誠,なぁ、姫月。ほのかちゃんのことなんだけどさ……
姫月,? ほのかなら遅れるってメール來たけど
誠,いや、そうじゃなくて……
姫月,??
俺が勝手に言ってもいいものなんだろうか……?
そう迷ったが……ほのかと姫月は仲がいい。それなら何か力になってくれるかも知れない。
誠,ほのかちゃん……何か嫌がらせされてたりしないか?
姫月,はぁ?? そんなことあるわけないじゃん。兄貴、何言ってんの?
誠,…………
なんで、最初から全否定なんだよ。
四六時中ずっと一緒にいるわけじゃないのに、嫌がらせなんかされてないなんて一蹴できるんだよ。
普通は、『なんでそう思うの?』とか聞いてくるだろ。
俺は內心そう思いながら、新たな情報を出す。
誠,昨日、ほのかちゃんがノートを隠されてたようなんだけど……
姫月,……ほのかがそう言ったの?
誠,いや、ほのかちゃんは否定したけど……
姫月,じゃあ、兄貴の思い過ごしでしょ
誠,っつ!
なんでそんなに俺の意見を聞き流すんだよ、こいつは。
誠,お前は、ほのかちゃんのことが心配じゃないのか?
姫月,心配も何も、ほのかがノート隠されたって言ってないんでしょ
姫月,てゆか、兄貴はなんなの? ほのかほのかって。ほのかのことが、そんなに気になるわけ? やっぱりロリコンなんじゃん! 変態っ!
なんなんだ、こいつは。人の話をまともに取り合おうとしないで罵倒とか、イラつくな。
あぁ、そうか。
誠,お前みたいに何でも完璧にこなすやつに、嫌がらせを受ける人の気持ちなんかわからないよな
姫月,何よ、それ……
姫月,私だって努力してるのに……兄貴が見てないだけじゃん……っ
姫月がぶつぶつと何事か呟く。
どうせ俺のことを罵倒か文句を言ってるのだろう。
俺は特に気にすることなく、ムカムカとした気持ちを抱えながら學園へと向かって歩き出した。
今日は姫月に急かされて少し早めに出た上に、ほのかを待つことなく學園へと來たせいか、ほとんど生徒を見かけない。
そんな中、俺は姫月に聲をかけた。
誠,姫月
姫月,何?
誠,ちょっとついてこい
姫月,?? うん
姫月は首を傾げながらも、俺の後についてきた。
あまり人が通らない廊下や階段を選び、俺と姫月は屋上へと來た。
今日は雲一つない快晴で、肌を柔らかく撫でる風が心地いい。
これからすることを考えて自然と頬が緩むのを自覚しながら、俺は姫月に向き直った。
姫月,な、何……? 何でニヤニヤしてんの……?
どこかおどおどした風に姫月が言う。
そんな姫月の態度に俺の嗜虐心が刺激される。
誠,姫月、制服と下著を脫ぐんだ
姫月,……はっ?
俺の突然の言葉に、姫月がきょとんとする。
誠,制服と下著を、脫ぐんだ
姫月,~~っつ!!!??? なっ、なんでっ! 意味不明なんだけどっ!
俺がゆっくりと言うと、姫月の顔が朱に染まった。それと同時に、俺から距離を取るように離れた。
嗜虐心が疼くのを感じながら、俺は魔法の言葉を口にする。
誠,意味なら分かるだろ? 調教だよ、調教
姫月,っつ! い、今は、朝じゃん……っ! 晝休みじゃない、し……
誠,そうだな。でも俺は、『調教するのは晝休みだけ』なんて、一言も言ってないぞ?
姫月,それ、は……そうだけど……
姫月,でもっ! 普通は朝からするなんて思わないじゃんっ!
姫月が必死に抗議してくるが、俺の中で面白いように次から次へと言い訳がわき上がってくる。
誠,普通ってなんだ? そもそもお前は、『アブノーマルなプレイにつきあえる女』になりたいんだろ? そう言ったよな?
姫月,あ、う……確かに、言った……けど……
誠,じゃあ、普通じゃなくても問題ないだろ
姫月,うぅ……
自分が言った言葉を持ち出されて反論できなくなったのか、姫月は小さく唸る。
そんな姫月に、俺はもう一度言う。
誠,姫月。制服と下著を脫ぐんだ
姫月,っつ!!
俺の言葉に、姫月の肩がビクリと震える。
自分の中の迷いと戦うように姫月の瞳が左右に何度も動く。
姫月,……っ
しばらくすると決意が固まったのか、姫月の手が制服へと伸びる。
靜かな屋上に、リボンを解く音がやけに大きく響く。
姫月はリボンを解くと、まずは上を脫いだ。
姫月の白い肌と、可愛らしいリボンのあしらわれたブラジャーが露わになる。
誠,そうか。姫月は上から脫ぐのか
姫月,っつ!! みっ、見ないでよ……っ
恥ずかしさからか、姫月の聲にいつもの強さはない。
朱色に染まった肌と愛らしいブラジャーを見ながら、俺はさらに脫ぐように促す。
誠,どうした、姫月? まだ終わってないぞ
姫月,っ……分か、ってる……わよ……
途切れ途切れに言いながら、姫月がスカートのホックを外す。
それから震える指先でチャックの取っ手を摑み、ゆっくりと下ろしていく。
スカートがぱさりと音を立てて地面に落ちると、姫月が下著姿になる。
姫月,うっ、うぅ……
一度見られてるとは言えさすがに恥ずかしいのか、顔を赤くしながら再び唸る姫月。
これだけでも十分楽しいが、今日はもっと先に進むのだ。
誠,ほら、姫月……次は、下著だ
姫月,っつ!!!
くりんとした目をさらに大きくし、姫月が俺を見る。
しかしそれも一瞬のことで、すぐに目をそらした姫月は観念したように下著に手を伸ばした。
姫月,っ……うぅ……
姫月はブラジャーのホックを外すと、そのまま抑えてしまった。
誠,……姫月
姫月,わ、分かってる、ってば……ちょっ、ちょっと心の準備が……必要、なのよ……
そう言うと、姫月はゆっくりと手を動かす。
たっぷりと時間をかけて手をどかすと、愛らしいブラジャーが滑り落ちた。
誠,んくっ……
露わになった姫月の白く柔らかそうな乳房。そして……その頂に佇むピンク色の乳首に、俺は思わず生唾を飲み込んだ。
昨日したことを思い出し、興奮してきた。
俺は生唾をもう一度飲み込んでカラカラに渇いた喉を潤し、姫月に先を促す。
誠,次は、下だ
姫月,…………っ
姫月はぎゅっと目を瞑ると、下著に手をかけた。
躊躇ったら脫げなくなると思ったのか、姫月は勢いよくパンツを下ろした。
姫月,こ、これ、で……いい、の……?
姫月が潤んだ瞳でそっぽを向きながら尋ねてくる。
俺は姫月の肢體を確かめるように、下から上へと目で體をなぞる。
腳線美という言葉がよく似合う、しなやかな足。
わずかな茂みのある、姫月の……女の子の、大切な部分。
小さなへそに、引き締まったウエスト。
やや小振りながらも、しっかりと膨らみのある乳房。そしてピンク色の乳首。
その體は兄である俺が見ても、魅力的なものだ。
ニーハイのみ殘ってるというのもぐっと來るが……何よりいいのが、黒くて無骨な首輪だ。
裸に、首輪。エロゲでしか見たことがなかったシチュエーションが、今、目の前で起こってるのだ。
俺は征服感と興奮で高ぶり……調子に乗ってさらに命令をすることにした。
誠,姫月、次だ
姫月,っつ!? まだするのっ!?
誠,あぁ
誠,今度は、俺が隠した姫月の制服と下著を探すんだ
姫月,っつ!!! ちょっ、ちょっと待って! それって、この格好で學園の中を……歩く、っていうこと?
誠,そういうことだな
姫月,そっ、そんなのあり得ないからっ! やだっ! ぜっったい、やだっ!
誠,大丈夫だよ、ちゃんと人があまり來ないところに隠すから
姫月,それって、もしかしたら來るかも知れないってことじゃん!
誠,そうだな。じゃないと、調教にならないし
姫月,なんか、いきなりハードルが上がりすぎだよ……
姫月が不安げな表情で呟く。
いつもの俺だったら反撃を考えて引くが、今の俺なら行ける。
誠,じゃあ、こうしよう
誠,授業が始まるまでに全て見つけられたら、姫月のお願いを何でも聞いてやるよ
姫月,!
誠,その代わり、時間內に見つけられなかったら……姫月が俺のお願いを聞く、ってのはどうだ?
姫月,…………
姫月としては何か思うことがあるのか、じっと考え込んでいる。
俺としては調教と一言で押しきるのもありだが……たまにはこういうのも悪くない。
姫月,……絶対に見つからないところに隠すとか、そういうズルはしない?
結論が出たのか、姫月がそう聞いてきた。
誠,あぁ
姫月,じゃ、じゃあ……うん……する
誠,よし、決まりだな
こうして、新たな姫月の調教が始まった。
誰もいない廊下を姫月と並んで歩く。靜かな校舎內に俺と姫月の足音しか聞こえず、まるで別世界だ。
姫月,んくっ……
姫月が生唾を飲み込む音が、やけに大きく聞こえた。
ニーハイ以外、何も身につけてない女の子が廊下を歩いている。その姿は、壯観だ。
姫月,っ、はぁ……んっ……
裸で學園內を歩いているという事実。そして誰かに見つかるかもしれないという恐怖。それらが姫月の足を震わせる。
いつもとはまるで違う姫月の弱弱しい姿に、全身がゾクゾクする。
この征服感、半端じゃないな。
姫月,ここにも……ない……
空き教室やロッカーを確認し、目的の物が見つからずに沈んだ聲を漏らす姫月。
誠,どうした? 早くしないとタイムアップになるぞ?
姫月,わっ、分かってる、わよ……っ
俺の方をキッと睨む姫月だが、この狀況が全身を縛り付けるのか、歩くスピードは全く変わらない。
設定したタイムリミットは、1時間目が始まるまで。
もっと長く裸で學園內をうろつかせたいところだが、時間を延ばして姫月に制服を見つけられては元も子もない。
姫月,もぅ……どこにあるのよぉ……
誠,もっと下の方も見た方がいいんじゃないか?
姫月,下……? ロッカーの一番下ってこと……? さっき見たけど……
俺の適當な言葉を真に受け、姫月が一番下のロッカーを確かめようとかがみ込む。
裸だというのに、いつもの癖でスカートを抑えるような仕草をする姿はどこか滑稽だ。
姫月,……ないじゃん
誠,奧の方にあるかもしれないだろ
姫月,奧……? ん、っと……
姫月が奧を覗き込む體勢になると、ちょうど俺の方にお尻が突き出される。
真っ白で、丸みのあるお尻に思わず目が奪われる。
姫月,何よ、ないじゃない
不満げに言いながら、俺をジト目で見る姫月。
姫月,? 何見てんの?
誠,ん? ちょっと姫月のお尻をな
姫月,!!!!????
真っ白だった全身が朱に染め、姫月はお尻を手で隠しながら俺から離れる。
姫月,どっ、どこ見て――
姫月が抗議しようとした瞬間、遠くから足音が響いた。
姫月,っつ!!??
足音の主の目的地はこちらの方なのか、徐々に近づいてくる。
姫月,どっ、どうしよう?
誠,せっかくだし、見せてやったらどうだ?
姫月,っつ!! そんなこと出來るわけないでしょっ!!
やや聲を抑えながら、きつく俺のことを睨みつける姫月。
その間も、足音はだんだんと近づいてくる。音の感じからして、もうすぐ角を曲がってこの廊下に來そうだ。
姫月,とっ、とにかく隠れなきゃっ!
そう言うと、姫月は教室へと駆け込んだ。
誠,はは、よかったな姫月。この教室使われてなくて。もし使われてたら、注目の的だったぞ
姫月,っつ!!
裸を見られてることを想像したのか、姫月の肌が再び赤くなる。
誠,ブラも、パンツもしてなくて裸だもんな
姫月,やっ、言わないでよ……
誠,なんなら、今から廊下に戻って見てもらったらどうだ? もしかしたら、新たな世界が広がるかもしれないぞ?
姫月,やっ……やだ……や、だぁ……
丸く大きな瞳を潤ませた姫月は、か細い聲で「やだ」と繰り返す。
誠,ごくっ……
エロゲをやってるときとは比べものにならないほどの征服感が俺の中に生まれる。
あの勝ち気な姫月が見せる弱弱しい姿に、俺は相手が妹だというのに勃起していた。
男子生徒A,昨日、あのバラエティ見た?
男子生徒B,見た見た。グラビアアイドルの胸が揺れまくっててヤバかったよな
男子生徒A,確かにヤバかった。でも、顔は一之瀬さんの方がいいよな
男子生徒B,だな。一之瀬さん可愛いし、胸もあるし、最高だよな
男子生徒A,あぁ、一之瀬さんの胸、揉みてぇぇぇ
男子生徒B,俺は吸いつきてぇぇぇぇ
姫月,っつ!!
廊下から聞こえてきた男子の思春期真っ盛りな話に、姫月が顔をしかめる。
まるで自分を守るようにぎゅっと體を抱きしめると、白く柔らかそうな乳房が寄せられて穀間ができた。
誠,あいつらに、今の姫月を見せてやったらどうなるんだろうな?
姫月,っつ!! へっ、変なこと言わないでよ!
誠,思春期の男の子は色々と大変なんだから、ズリネタを提供してやったらどうだ?
姫月,ずり、ねた……?
誠,分かりやすく言うと、『私の裸を見ながらオナニーして』とか、そういう意味だよ
姫月,!!!???
姫月,やっ、止めてよっ! 気持ち悪い……っ
姫月はさらに顔をしかめると、俺を睨みながら言ってきた。
いつもは恐れを感じるその眼差しも、今はどこか心地いい。
男子生徒A,一之瀬さんと言えばさ……この前、ノーブラだったじゃん?
姫月,っつ!!
廊下を歩く男子の聲に、姫月が息を飲む。
男子生徒B,あれ、よかったよなぁ。ピンク色の乳首が透けててさ……あの日、速攻で家に帰って思い出しながら抜いちゃったよ
姫月,!!??
姫月は思わぬ発言に目を丸くし、誰が見てるわけでもないのに胸を隠した。
自分が『性の対象』として見られてることにどう対応していいのか分からないのか、目が左右にせわしなく泳ぐ。
男子生徒A,俺、昨日気付いちゃったんだけどさ……一之瀬さん、部活中も下著つけてないんじゃね?
男子生徒B,マジでっ!?
男子生徒A,前にさ、『フィギュアスケートの選手は體のラインを綺麗に見せるために下著を著けない』って話をどこかで聞いた気がするんだよね
男子生徒B,やっべ、想像しただけで興奮してきた
男子生徒A,なぁ、放課後、一之瀬さんが練習してるところ見に行かね?
男子生徒B,いいね。雪名や貓屋敷も見に行ってるし、俺たちが行っても問題ないよな
誠,よかったな姫月、ますます人気に火がついたんじゃないか?
姫月,っつ!!
俺の囁きに、姫月が涙目で睨み返してくる。
いつもは恐れを感じるその眼差しも、今はどこか心地いい。
結局、男子生徒たちはこちらに気付くことなく、姫月の話を続けながら去って行った。
再び廊下に戻り探索を続けるが、姫月の足取りは重い。
誠,どうした姫月? 早くしないとまた誰か來るかもしれないぞ?
誠,それとも……裸、見て欲しくなったか?
姫月,っつ!! そんなわけないでしょっ!!
誠,ちょうどいい機會じゃないか? 學園の廊下を裸で歩き回る変態だって知ってもらうには
姫月,っつ!!!! 私は、変態なんかじゃ……ない……
自分の格好が格好なせいか、姫月の言葉は尻すぼみだ。
姫月,っつ!!
遠くから足音が聞こえると、小さな姫月の肩がびくっと跳ねる。
再び教室に戻ろうとするが、俺がドアを足で押さえてそうはさせない。
姫月,っつ! ちょっ、ちょっと兄貴っ! 足、どけてっ
誠,なんで?
姫月,なんでって、教室の中に隠れるからに決まってるでしょ!
誠,それは出來ない相談だな
姫月,っつ! もういいっ!
裸という狀況のせいか、姫月は早々に諦めて反対方向に歩いて行こうとする。
だが――
姫月,っつ!!!
左右から足音が聞こえ、姫月は固まってしまった。
姫月,やっ……來ないで……こっちに、來ないでぇ……
逃げ場をなくした姫月は、小聲で哀願を続ける。
その願い通り、足音はそのまま遠ざかっていった。
姫月,っ、はっ……
姫月は小さく息を吐いた瞬間に緊張の糸が切れたのか、その場にへたり込んでしまった。
それと同時に、始業のチャイムが鳴った。
姫月,あ……
誠,殘念だったな、姫月。タイムアップだ
誠,姫月、忘れてないよな? 約束
姫月,そ、それは…………う、ぅん……
姫月は消え入りそうな聲で返事をしながら、小さく頷いた。
顔が赤くなってるところを見ると、エロいことをされると想像してるのだろう。
その想像は間違ってない。
俺のお願い、それは……。
姫月,ね、ねぇ……兄貴…………ほ、本當に……する、の……?
怯えた表情を俺に向けながら、姫月が聲を潛めながら聞いてくる。
誠,當たり前だろ
姫月,う、うぅ……
約束は破れないのか、姫月は恥ずかしそうに唸りながらも靜かに足を広げた。
誠,はは、いい格好だな、姫月
俺は楽しい気分になりながらも、聲を潛めながら姫月を嘲る。
潛めた聲でも姫月の羞恥心を刺激するには十分らしく、綺麗な肌を染める朱が色濃くなった。
姫月,や、やぁぁ……
誠,クラスメイトが授業を受けてる教室の外で露出オナニーとは、変態街道まっしぐらだな
姫月,やだ……言わないでぇ……
姫月は足を広げて秘所を俺に見せながらか細い聲で言う。
俺はこの特殊なシチュエーションに興奮し、ズボンの中でペニスを硬くした。
誠,姫月、さっさとオナニーしたらどうだ? いつまでもそうしてたら、授業が終わってみんな教室から出てきちゃうぞ?
姫月,っつ!!
姫月は俺の言葉をリアルに想像したのか、肩をビクンと大きく震わせた。
一度だけこちらを見た姫月は、観念したように手を動かし始めた。
姫月,んっ……ふっ……ん、んっ……
白く細い姫月の指が、小さく震えながら割れ目をなぞる。
姫月の口からわずかに吐息が漏れるが……全くエロくない。
誠,姫月。前に俺がしてやったときは、そんなやり方じゃなかったろ?
姫月,それは、そうだけど……で、でも…………を、觸ったら……
誠,うん? どこを觸ったら、だって?
姫月,く……クリ、トリス……
昨日の調教で『クリトリス』がエッチな物だと理解したのか、姫月が恥ずかしそうに言った。
姫月,く、クリ、トリス、觸ったら……聲、出ちゃうかもしれないし……
誠,分かってないな、姫月。それがいいんじゃないか
姫月,え……?
誠,誰かに見つかるかもしれない狀況で、聲を抑えながらエロいことをする。それがこの調教の醍醐味だろ
姫月,醍醐味だろとか言われても……私、分かんないし……
誠,アブノーマルな人間は、そういうのが好きなんだよ。てゆか、そういうのじゃないと駄目なんだよ
誠,お前の好きな奴も、絶対にこういうのが大好物だと思うぞ
姫月,う、うぅぅ……
姫月,わ、分かった、よ……
俺の言葉が効いたのか、恥ずかしそうに唸る姫月だったが、最後には頷いた。
姫月,んくっ……
姫月は息を飲み込むと、ゆっくりとクリトリスへと手を伸ばす。
そして、小さく顔を覗かせるクリトリスに……姫月の指が觸れる。
姫月,んんぅ……っ!!
口をぎゅっと閉じながら、姫月が喘ぎをあげて體を震わせる。
誠,はは、敏感だな、姫月は
姫月,ちが、う……ちがうのぉ……
誠,じゃあ、手を休めてないで続けろよ
姫月,……っ、んっ……んっ! はっ、んんっ……くぅ、んっ……
言われたとおり、姫月はクリトリスを何度も擦る。
その度に姫月は口を閉じたまま喘ぎを漏らし、小さな體を何度もビクつかせる。
教室の中にいるクラスメイトに気付かれまいと口を閉じながらも喘ぐ姫月の姿は驚くほどエロい。
姫月,ふぁ、んんっ……や、だぁ……クリトリ、ス……觸ると……んっ……ぞくって、するぅ……
誠,本當に、姫月は変態だな
姫月,んっ、んんぅ……はっ、ぁぁぁ……ち、ちがう……ちがう、のぉ……んっ!
誠,何が違うんだよ? みんなが勉強してる教室の外でオナって、しっかり感じてるじゃないか
誠,そんなに喘ぐのも、教室の中の連中に気付いて欲しいんだろ? オナってるところ、見て欲しいんだろ?
姫月,っつ!!!! ん、んんぅ……ん、ふっ……は、んっ……んんっ……
俺が指摘すると姫月は息を飲んで口を閉じるが、それでもオナニーは止まらない。
目尻に涙を浮かべながらも、姫月はクリトリスをいじり続ける。
姫月,はっ、ぁん……んっ、あ、ぁぁ……やっ、な、何……? んんっ……ぞくって、感覚が……んっ、大きく、なってきたぁ……
誠,んくっ……
姫月の指先をじっと見つめると、ピンク色のクリトリスはしっかりと顔を出していた。
しかも何度も弄られたせいか、小さかった豆はぷっくりと膨らんでいた。
姫月,はぁ……んっ、んぅぅ……だ、駄目ぇ……んっ! こ、え……抑えられなくなっちゃぅ……
誠,そう言いながらも、しっかりオナってるじゃないか、エロ姫月
姫月,っ、んんっ……ち、がぅ……これ、は……んっ……兄貴、が……ふ、んっ、手を休めてないで、続けろって……言った、から……
誠,へぇ、大っ嫌いな兄貴の言ったことを律儀に守ってるのか
姫月,だ、って……んっ、あ、ぁっ……時間內に、見つけられなかったら……お願いを聞く、っていう約束、だから……っ
『教室前でオナニーをしろ』って言った時點で約束は果たされたものだと思っていたが、姫月の中ではそうじゃなかったらしい。
それなら、もっと楽しませてもらうか。
誠,姫月、もっとクリトリスを擦るんだ
姫月,……っ、んっ…………ん、ふくっ、んんんぅぅぅぅぅっ!!!
俺の言葉通り、姫月がクリトリスをさらに強く擦る。
瞬間、姫月の體がビクビクと震え、秘所からどろりと濃い愛液が溢れ出てきた。
姫月,は、はぁっ、んっ……あ、あっ……だ、駄目ぇ……んんっ……體がぞくぞくってするの、止まらないぃ……っ
誠,露出オナニー、気に入ったみたいだな
姫月,っつ! ん、んぅぅ……はっ、あぁ……気に入って、ない……んっ……これ、は……仕方なく、やってるのぉ……っ
誠,その割には、ずいぶん気持ちよさそうだけどな
誠,しっかり濡れてて、クリトリスも勃起してるし……はは、乳首も勃ってるじゃないか
姫月のピンク色の愛らしく小さな乳首は硬くなり、しっかりと自己主張していた。
興奮のあまり聲がいつものトーンになりかけるが、グッと堪える。
姫月,っつ! あ、はっ……やっ、やぁぁ……見ないでぇ……
誠,何を今更。オナってるところを見られてるんだから、乳首ぐらいどうってことないだろ
誠,てゆか、クリトリスばっかりで乳首が寂しそうだな
姫月,ん、んぅっ……そんなこと、なぃぃ……別に、寂しくなんか……んっ……ない、んだから……
誠,恥ずかしがるなよ、姫月。ほら、俺が気持ちよくしてやる
姫月,んぇ……?
俺はポケットからクリップを取り出すと、姫月の勃起した乳首につけた。
姫月,ふぐぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!
痛みを感じても聲を出したら中の連中に気付かれるという意識は働いたのか、姫月は口をぎゅっと結んで悲鳴を最小限の大きさに抑えた。
誠,ははは、乳首にクリップなんて、まるで変態だな
姫月,ん、ぐぅ……あに、きが……つけた、んじゃない……っ! んんっ……あに、き……これ、外して、よ……
誠,なんで? 気持ちよくないのか?
姫月,そんなわけ、ない、でしょ……っ! ん、んっ……痛い、だけだってば……っ!
誠,じゃあ、痛みを感じなくなるくらい……もっと気持ちよくならないとな
姫月,っつ!!! なん、で、そうなるの、よ……っ!
眉をハの字にしながら、涙目で俺を睨みながら姫月が言ってくる。
その反応は俺を興奮させるだけだと、姫月は気付いてないのだろう。
俺は姫月の言葉を聞き流し、さらにオナニーを続けるように言う。
誠,昨日、クリトリス以外にも気持ちいいところがあっただろ?
姫月,っ……し、知らない……
誠,クリトリスと一緒に弄られて、『らめぇ、らめぇ』って言ってたところだよ
姫月,っつ!!!
誠,それとも、気持ちよくなるより……姫月は痛い方が好きか?
姫月,っつ! そんなわけ、ないでしょ……っ!
誠,なら、オナニーしたらどうだ? 今のままじゃ、ただ痛いだけなんだろ?
姫月,むぅっ……
姫月は俺が折れないと悟ったのか、ぐっしょりと濡れた秘所へと手を伸ばした。
姫月,んっ……
割れ目を指先で押し広げて膣口を露わにすると、姫月はしっかりと位置を確認しながら指を挿入した。
姫月,ん、ふっ……あ、あっ……ゆ、指が……入って、くるぅ……
俺の指よりも細いからか、それとも膣內がしっかりと濡れているせいか、昨日のように痛がることはなかった。
姫月,はぁ……んっ……昨日、兄貴が觸ったところ……觸った、ところ……
場所を確かめるように姫月が指を動かす。
そして目的地に指先が觸れた瞬間、姫月の體がビクンと跳ね上がった。
姫月,ひぅんっ!! んっ、はっ、あぁぁ……ここ、と……クリトリス、を一緒に……
姫月は體を小さく震わせたまま、今度はクリトリスを擦りあげる。
姫月,んぁ――んんぅぅっ!!! あっ、はっ……あ、ぁぁぁぁ……
Gスポットとクリトリスの同時責めは快感が大きすぎたのか、姫月の甘い聲が一瞬だけ大きく漏れた。
姫月,く、んっ……はっ、はぁ……はぁっ……
誠,よかったな、姫月。気付かれなかったみたいだぞ
姫月,っつ!!
誠,……で、約束通り手は休めないんだよな?
姫月,わ、分かってる……よ……
姫月は靜かに目を伏せると、指を動かし始めた。
姫月,ふっ、んっ……あっ、はっ……んっ、あっ、ぁぁ……あ、んっ……あ、あっ……
誠,どうだ、姫月。乳首にクリップをつけながらのオナニーは
姫月,んんっ……ち、乳首、が……ビリビリして、痛いだけ、だよ……っ
誠,噓はよくないな、姫月。喘ぎ聲が出てるじゃないか
姫月,っつ!! そんなこと……んっ、な、なぃ……
誠,じゃあ、もっと手を激しく動かさないとな
姫月,っ……んっ、んぁっ! は、んんぅぅ……んっ、んんっ! んっ、はっ……あ、んんっ……
俺の言うことに逆らうことなく、姫月が手の動きを大きくする。
クリトリスとGスポットを擦るたび、華奢な姫月の體がビクビクと震える。
苦痛と快感の入り交じった表情も相まって、ぞくりと恍惚な電気が背筋を走る。
姫月,はっ、はぁ……んっ、あっ、は、んんぅ……やっ、やだぁ……んっ、私の中、熱くなってきたぁ……
誠,それだけ気持ちいいってことだろ
姫月,んっ、はっ……そんな、こと……んっ、あっ、あぁ……そんなこと、ない……んっ……
言葉では否定した姫月だが、感じていることは間違いない。
指を動かすたび膣內からねっとりとした愛液が溢れ出し、クチュクチュと卑猥な水音が聞こえてくる。
表情にはまだ辛さが殘っているが、瞳はじっとりとした快感を孕んできている。
姫月,あっ、ぅんっ……ん、んんぅっ……やっ……ち、乳首……んぁ……じ、じんじん、するぅ……
快感が全身に回ってきたのか、乳首の感覚も変わってきたようだ。
誠,姫月、おま○こはどうなってるんだ?
姫月,はぁっ、んっ……あっ、ぁっ……おっ、おま○こ、は……っぅぅぅ……
誠,どうなってるのか教えてくれよ、姫月
姫月,っ、んんっ……はっ、あぁ……お、おま○こ、は……んっ……ぐちゅぐちゅして……あ、ぅっ……き、気持ち、よく……な、ってるの……
姫月は恥ずかしがりながらも、しっかりと感じている事実を口にした。
それは姫月の中にある理性のたがをわずかに外したのか、姫月の手の動きが速くなる。
姫月,んぁっ……あっ、はっ……ん、んっ、んぅ……はぁ……んっ、あっ、ぁぁっ……
誠,ごくっ……
姫月の快感に濡れる瞳を見て、俺は生唾を飲み込んだ。
これをただ見てるだけなんて、惜しすぎる。
そう思った俺はポケットから攜帯を取りだし、姫月のオナニー姿を動畫撮影する。
姫月,っつ!! やっ、何撮ってるの……っ!? 駄目っ、駄目ぇ……っ!
撮影されてることに気付いた姫月は、必死に抗議してくる。
だが俺の方に近づけば教室內から裸の自分が見えてしまうと考えてか、こちらには來ようとしない。
誠,いいじゃないか、記念だよ、記念
姫月,っ、そんな記念いらない……っ!
誠,本當に、いらないのか? オナニー、続けたままなのに?
姫月,え……?
姫月,んぁっ……あっ、はっ……んんっ……え? な、なんで……どうして私、んっ、手を動かしたままなの……?
そう。姫月は俺に抗議しながらも、しっかりとオナニーを続けていた。
誠,露出オナニー、好きなんだろ?
姫月,っ、んんっ……ち、違うっ……はぁっ……好きじゃない……んっ、んんっ……
否定しながらも、姫月の手は止まる気配はない。
誠,エロい顔してるぞ、姫月
姫月,ぃや……あ、あぁ……撮らないで……んっ、あ、あぁっ……こんな姿、撮らないでよぉ……
誠,イったら、やめてやるよ
姫月,っつ……やっ……あ、あぁ……あんな姿、撮られたくないよぉ……
昨日の絶頂に達したときのことを思い出したのか、顔を赤くした姫月は首を左右に振りながら言う。
誠,じゃあ、やめられないな
姫月,っ、ぅぅ……は、んっ……ん、んぅ……ほ、ホント、に……んっ…………く、れるの……?
誠,うん?
姫月,はぁ、ぁふ……ホントに……んっ、ぁぁ……イったら……やめ、て……んっ……くれる、の……?
誠,あぁ、ちゃんとイったらやめてやるぞ
誠,ただ、どういうことをして気持ちいいか説明しながらイかないと駄目だぞ?
姫月,っ、ん……ず、ズルい……
誠,どこがズルいんだよ? イけばやめるとこに変わりはないだろ?
姫月,う、うぅぅ……
小さく唸りながら、逡巡する姫月。
姫月,わ、わか、った……んっ……ちゃんと、するから……はっ……だから……い、イっ、たら……やめてよ?
誠,あぁ、もちろんだ
俺が首を縦に振ると、姫月は手の動きを速めた。
恥ずかしい時間を短くするため、恥ずかしい姿を見せる。そんな矛盾したオナニーを姫月が大嫌いな俺に曬す。
姫月,んぁっ、あっ、はっ……ん、くっ……お、おま○こ……じ、自分、で……んっ、ふっ……ぐちゅぐちゅ、しちゃってるの……
誠,それで?
姫月,はっ、はぁっ……んんっ……おま○こ……ぐちゅぐちゅするの……んっ……気持ち、いぃ……っ
姫月の言葉にぞくりとし、俺は體を震わせた。
だが、これで終わりじゃない。もっと、もっと言わせたい。
誠,気持ちいいのは、そこだけか?
姫月,っつ! ん、んぅっ……はっ、あ、あぁ……く、クリ、トリス……んんっ、を、クリクリ、するのも……んっ……気持ち、いい……っ
姫月,んっ、あっ、あっ……おま○こと、クリトリス、が……んっ……気持ちよくなる、と……はぁっ……乳首がじんじん、して……體が、熱くなるの……
自身の言葉に呼応するように、畫面に映る姫月の姿が変わっていく。
止めどなく溢れる愛液。執拗なまでにクリトリスを弄る指先。嫌悪の表情のまま、蕩ける瞳。
姫月,は、ぅんっ……んぁ、ぁぁ……こ、こんなの……エッチなことしてるところを、撮られるなんて、らめなのに……ふぁ、んっ……わ、私……わたしぃ……
誠,どうした、姫月?
姫月,ひぁ……んっ、んぅっ……らめだって、分かってる、のに……あんっ……ん、ぁぁっ……分かってるのに、手が、止まらないの……っ
姫月,あ、あっ、あぁ……お、おま○こも……んぁっ……く、クリトリス、も……ち、ちく、び、も……全部が、気持ちいいの……っ
自分の言葉で本當にスイッチが入ったのか、それとも露出オナニーを撮影されるというシチュエーションに酔ったのか、姫月が亂れる。
姫月,くふ、んっ……はぁぁっ……わかん、ない……んぁっ……頭がボーッとして……あ、あっ、ぁぁぁ……わけ、わかんないの……
姫月の體がぶるぶると小刻みに震え始める。
昨日見た、アクメの兆候。
姫月,んぁっ、あっ……はっ、ぁん……んんっ……あっ、あっ、あっ、き、來ちゃった、よぉ……っ
昨日の今日だ。姫月も今感じてるのが何か分かってるのだろう。
俺は絶頂に達する瞬間を捉えようと、姫月の全身を畫面に納める。
姫月,っあ! あ、あっ……やっ、兄貴、撮らないで……んっ、あぁ、あっ……私が真っ白になるとこ、撮らないでぇ……っ
誠,今更何を言ってるんだよ。ここを撮らなかったら意味ないだろ
姫月,ふ、んっ、あぁっ……や、やぁぁ……んぁ、ぁぁぁっ……と、撮られちゃう……んっ、あぁっ……私が、イく、とこ……撮られちゃぅ……っ
姫月,っは、あ、あ、あっ……ら、らめっ……んんっ……イくとこ、撮られるなんて、死ぬほど恥ずかしいのに……ひぁ、あ、あっ……も、止まらなぃぃ……っ
誠,姫月、昨日みたいにイったときに大きな聲を出すと、モロバレするから気をつけろよ
姫月,っつ!!??? そんな、らめ……あ、あっ、はっ、あぁっ、あっ! らめっ、ら、めっ……んっ、あ、あっ、あぁぁ……っ
姫月,んんっ! んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ!!!!!!
口を必死に閉じたまま、姫月が絶頂に達する。
まるで痙攣したかのように體を震わせ、大きな瞳から涙をこぼす。
姫月,っは、はっ、はっ、はぁっ……
ゆっくりと體の震えが収まり、姫月はくたりと崩れ落ちた。
壁により掛かりながら、焦點の合わない瞳を俺に向ける。
姫月,はっ、はぁ……はぁ、はぁ……わた、し……イったところ……んっ、はぁ……本當に、撮られちゃった、んだ……
誠,すごくエロかったぞ
姫月,っつ……
俺は眉根を寄せる姫月を……そして、床にできた愛液の水溜まりをしっかりと撮ってからデータを保存した。
;0scene 5日目(晝)
午前の授業が終わり、晝休みを知らせるチャイムが鳴り響く。
誠,さて……
授業で使った教材を持ち、俺は教室を出ようと扉に手をかけた。
姫月,…………待って
後ろからかけられた言葉に後ろを振り返ると、眉間に皺を寄せた姫月が立っている。
誠,……な、なんだよ
まさか話しかけられるとは思わず、聲が上ずってしまう。
姫月,……お弁當。食べるでしょ……。どこで食べるのよ
誠,え、あ、あぁ……。そ、そうだな。えーと……
姫月,……決まってないなら裏庭でいい?
誠,お、おぉ。今日は暑いしな……いいぞ
姫月,……それじゃ、先行ってるから荷物置いたら來なよ
誠,……りょ、瞭解
珍しく罵倒も手も飛んでこないまま姫月はその場を去った。
口を開けば悪口しか出てこない姫月がしおらしくしている姿は正直不気味だ。
何か悪いものでも食べたのだろうか?
しかし姫月の朝食と同じものを食べた俺はどこも悪くはなっていない。
(表面上は)品行方正な妹が拾い食いをするとも考え難いし……。
ハッ。もしかすると朝の調教が尾を引いているのか。
流石に教室前でオナニーをさせるのはいき過ぎだったかもしれない。
ほのかに対する姫月の態度に、つい苛っとして行為がエスカレートしてしまった自覚はある。
恐らく
教室前オナニーヒドス!
→証拠ムービー隠滅しなきゃ!
→兄貴抹殺!!!n
という三段論法が姫月の中で成立してしまったに違いない。
裏庭というひと気のないところに誘われたことが何よりの証拠ッッ。
マズイ。これは非常にやばい展開。いわゆる死亡フラグ。この危機的狀況を打破する方法は……ッ!
中庭を通り過ぎ、あまり陽のあたらない場所に裏庭はある。
學生時代、真夏の屋上は座っているだけでHPを消耗してしまうため、特に暑い日などは木陰の多い裏庭に來ることが多かった。
少し入り組んだ場所にあるため、ほとんどというか全く人はいない。
姫月,…………
ひとつの大きな木の下に姫月が座っているのが遠目で分かった。
誠,すぅ……はぁ……
その姿を確認した俺はひとつふたつ大きく深呼吸して。
姫月に向かって全速力で走り。
誠,……サーセンっしたーーーーーーー!!!!!!
姫月,!!???
姫月が言葉を発する前に俺はスライディング土下座を実行する。
ずざっと地面を滑った膝小僧がやや痛みを訴えてくるがこの際気にしない。
姫月,え? え? な、何?? 何してんの???
予想外であろう俺の行動に姫月は慌てふためく。
誠,サーセン! 俺が悪かったです! マジ反省してます!! でも焼き土下座は勘弁して下さい!!
姫月,……な、何のこと? や、焼き土下座って……??
誠,いや、流石に今朝の行為はやり過ぎたかなって
姫月,っつ! ば、馬鹿! そんなの思い出させないでよ!!
誠,や、だってお前怒ってんじゃん
姫月,べ、別に怒ってない! いつ私が怒ったのよ!
誠,えーと、今……?
姫月,怒ってないもん! 言いがかり付けないでよ!
誠,怒ってないなら、さっきは何であんなにしおらしかったんだ?
姫月,さっき? ……あぁ、教室でってこと?
姫月,そ、それは……その。やっぱちょっと恥ずかしいし、気まずかったから……
誠,何だそうか……。てっきり俺は殺られるんじゃないかと思ってたぜー
はははと笑いながら、俺は姫月から持たされていた弁當を広げる。
ゲンキンなもので、心配事がなくなった途端に腹の蟲がぐぅと鳴った。
姫月,……そ、それはそうと兄貴、アレ、どうしたの?
誠,あれ?
姫月,アレだよアレ。午前中に撮った……私の……
誠,午前中に物取りなんてしてないぞ
姫月,誰がそんなこと言ってるのよ! 兄貴が撮った私のムービーのこと言ってんの!!
誠,あ? あぁ、お前のオナニー動畫のことか!
誠,いてっ!!!
姫月,そんな大聲で言うな!! 馬鹿!!!
誠,~~~っつ。そんな力いっぱい毆るなよ
姫月,兄貴がノータリンだから仕方ない! まったく、誰かに聞かれたらどうすんのよ
誠,ノータリンってお前は相変わらず昭和な言葉遣いをするな……
姫月,うっさい。カ○ジクラスの屑
誠,おお。さんきゅー! 俺あんなに勝負運強くないけど!
姫月,褒めてない! 嫌味言ってるの気付け!!
誠,だってお前の悪口なんて日常茶飯事だしなぁ。今更そのくらいのこと言われても……。てゆかお前、カイ○読んでんのか?
漫畫やアニメに興味のない妹様の口から出てきた単語に、俺は驚きつつも少し嬉しくなった。
姫月,? 読む? 観た、の間違いでしょ。映畫なんだから
誠,…………
リア充爆発しろ。
いや、別に姫月との間に共通の話題が欲しかったとかそういうんじゃないが。
好きな作品を語り合える仲間が出來るかも、とほんの少しだけ期待しただけだぞ?
ホ、ホントにそれだけなんだからな! 勘違いすんなよ! バボーン!
姫月,そ、そんなことどうでも良くて! だから、動畫はどうしたのよ……
誠,え? あ、あぁ。それならここにあるぞ?
思わず空想世界に旅立ってしまっていた。
姫月の言葉に俺はスーツのポケットから攜帯を取り出す。
姫月,いぃいやああああああああ!!!?? 何流してんのよ!! 死ね禿えぇええええ!!!!
誠,おぉう!!???
姫月が狂ったように突進してくる。
俺は弁當を死守しながらひらりと姫月のタックルを交わし、さっと立ち上がった。
姫月の膝の上にある弁當がひっくり返ることなくそのポジションをキープしているのは、流石というべきだろうか。
姫月,うううううーー。消してよ消去してよデリートしてよぉお!!!
攜帯から流れる自分のあえぎ聲に姫月は半ばパニックになりながら訴える。
誠,何でそんなに恥ずかしがってるんだ? あんなにしっかりがっつり教室前オナニーをしたというのに
姫月,ああああの時はどうしようもなかったの! 落ち著いてる今のほうが恥ずかしいの!!
誠,なるほど。確かにその通りかもしれないな。あれだよな、知ったかぶって堂々とブログに自説を説いたら、ものの見事にそれが間違いでした、みたいな
姫月,ちょ、ちょっと違うような気もするけど。まぁでもそんな感じ。だから消して!
誠,うーん。それはちょっと無理かな
姫月,何でよ!!
誠,いや、だってこれ結構貴重だしさ。何かあった時にこの動畫があったら、お前強く出れないだろ?
我ながら名案だ。
これがある限り姫月の橫暴さが今までより若干和らぐかもしれないのだから。
姫月,うぐぅううう……。最悪! 変態!
誠,ははは、変態という言葉は最早褒め言葉だな
ぎゃーぎゃーと喚く姫月を軽くスルーする。
それにしても。
今こうして元気に(と言うべきかどうかは謎だが)喚き散らす姫月の目の前で、オナニー動畫を見ているのは何とも不思議な構図だ。
動畫の中の少女と目の前にいる少女が同じ人間だと思うと少し興奮してくるな……。
姫月,ね、ねぇ……。もういいでしょ? 観るの、やめてよ
叫ぶ気力がなくなったのか、姫月がうなだれたように哀願してくる。
先ほどまで動畫に集中していた目線を姫月のほうに向けた。
ぺたりと座り込んだ姫月がくるんと大きな瞳で俺を見上げている。
困ったように頬を染めているその姿と、攜帯から漏れる姫月の喘ぎ聲。
誠,っつ……
日常と非日常の融合。
普段とは違った妹の姿に、俺の下半身がずくりと疼くのが分かった。
姫月,兄貴……。ねぇ、お願いだから……
よほど動畫を消して欲しいのか、姫月の聲はいつになく弱弱しい。
姫月,そんなの持ってても意味ないじゃん……。恥ずかしいだけだし……
震えるような聲が耳に屆き、俺の欲望がますます熱を帯びる。
やばいまじやばい。何だこれ。
いやいやいや待て俺。相手は妹だ。傲慢かつ傍若無人な姫月様だぞ?
姫月,ねぇ、兄貴ってば!!
誠,っひ??
姫月の小さな手が俺の服の袖をくいくいと引っ張る。
何だお前! 何で急にそんなアニメのヒロインみたいなことしてんの!?
姫月,な、何……? そんな驚くようなこと??
俺のあまりの驚きっぷりに姫月の肩がびくりと揺れた。
誠,や、待て。待ってくれ。俺は今人生の瀬戸際なんだ
姫月,何それ意味分かんない! 私だってその動畫消してくれないと安心して生活できないし!
誠,それはそうかもしれない! だが頼むから待ってくれ! そんなに俺に変態兄貴の烙印を押したいのか妹よ!
姫月,さっき変態は褒め言葉だって言ってたじゃん!
誠,それはそうだが違うんだ!!
姫月,何が違うのよ!!
誠,うぁ……だからだな……
妹の目の前で妹のオナニー動畫を見て興奮しました、なんて誰が言えようか。
いや、これは決して姫月に興奮したんじゃない。シチュエーションに興奮したんだ!
誠,その……。俺の息子がその存在を主張して、だな
姫月,? 息子? 子供なんていないじゃない
誠,……
今時の子はこうも性の知識がないものだろうか。
誠,だから、俺の相棒とでも言えばいいのか?
姫月,え? 兄貴友達いたの?
誠,……
流石わが妹。
俺の心にぐさりと刺さって抉り取るかのような一言を突き付けやがる。
姫月,ねぇ! 息子とか相棒とか何の話してるのよーー??
ぐいぐいと力強く服の袖を引っ張られ、俺は
誠,だからだなーー!!!
姫月,っつ……!!!????
先走りで濡れた俺の男性器を見せられ、姫月の目が零れ落ちそうな程大きく見開かれる。
誠,こういうことなんだよ!
姫月,え? え? な、何? 何なの? え???
いきなり兄の性器を目の前に突きつけられたせいか、姫月は何が何やら分からないと言ったところだろう。
誠,だから、これが俺の息子であり相棒だ
姫月,へ、変態!!! 露出狂!!! そんなの見せるなぁ!!!
誠,いや、露出狂は教室の前でオナニーしちゃうようなお前のほうだろ? ほれ
姫月,だから見せるなあああぁあああ!!!
誠,や、だってお前が人のことを露出狂だの何だの、失禮なこと言うから訂正してやろうと思って
姫月,じゃ、じゃぁこんな場所でそんなもの見せてる兄貴は一體何なのよ!
誠,……変態紳士?
姫月,…………死ね
誠,殘念。俺はホビロン派だ
姫月,意味分かんないことばっか言うな! てゆかそれさっさと仕舞え!!
會話の端々にネタを仕込んでも全く相手にしてくれない妹に、俺は少し寂しくなる。
誠,いや、そうは言っても膨れちまって中に戻すの痛いんだよな
姫月,し、知らないよそんなの!! そんな風にしちゃう兄貴が悪いんだから!
誠,うーん。じゃぁ仕方ない。頼む!
姫月,は??? 何を???
誠,いや、お前の前でオナニーするのは流石の俺も恥ずかしいだろ? だからお前に抜いてもらおうかと思って
姫月,はぁああ??? ななな何言ってんの??? 正気!!??
誠,もちろん正気だ
姫月,威張って言うな!!
誠,だってこうなったのってお前の目の前で、お前のオナニー動畫見て興奮したからであってだな? それはつまり元を正せばお前のせいというわけだ。よってお前はこれを処理する責任があるだろう?
姫月,もっともらしく言っても、私のせいじゃないじゃんそれ!
誠,何だよ、教室前オナニーは出來てもご奉仕は出來ないのか?
誠,言っておくがフェラ嫌いの男なんてこの世にいないからな? 付き合ったらフェラするのが當たり前だと覚えておくべきだ
……と、俺は期待している。
姫月,そ、そう……なの……?
俺の言葉に姫月の気持ちが若干揺れ動いたようだ。
誠,そうだぞ。お前の好きな奴だってきっとフェラ大好きだ。フェラが一級品なら、もうお前を手放したくないとさえ思うだろうよ
姫月,そ、そうなのかな……。で、でもこんな気持ち悪いの觸れないよ……
誠,気持ち悪い言うな。神聖なものだと思って觸ってみろ
姫月,うぅーー……
姫月は涙を浮かべた目で、恐る恐る俺の性器に觸れる。
誠,どうだ?
姫月,うぅう生ぬるいし何か妙にすべすべしてるし微妙に硬いぃいいい
誠,………………
わんわんと涙を流しながらの実況中継。
女の子に性器を觸られているのに、こいつの気の抜けるような臺詞で若干熱が冷める。
誠,はぁ……。お前に色気を期待した俺が馬鹿だった。とりあえず手を前後させてみろよ
姫月,こ、こう…………?
誠,いでででででで!!!! 痛い痛い痛い!!
姫月,へ??
強張った手で力強く肉棒を握られ、俺は思わずうめいてしまう。
姫月,あ……ご、ごめん
俺のあまりの痛がりように、流石の姫月も分かったのか素直に謝ってきた。
何とも間抜けな図だ……。
誠,ったく……。デリケートに出來てんだから初めはもっと優しく觸れよ
姫月,だ、だってどのくらい力入れたらいいか分かんないんだもん……
誠,……まぁそりゃそうか。その年でフェラの仕方を熟知してたら怖いもんな
姫月,そ、そうだよ! だから兄貴が教えるのがスジってもんでしょ!
誠,うぅむ。よし、それじゃぁ手のひらで柔らかく全體を握ってこすりながら、親指と人差し指で先っぽを刺激してみてくれ
姫月,手のひらで握りこんで……って、わっ、今ぴくってした!!!
誠,そりゃ生きてるもんだし……
姫月,そ、そうなんだ……。え、えぇと……この後は全體をこすりながら……親指と人差し指で先っぽを……
まるで科學の実験をしているかのように姫月がぶつぶつと呟きながら、俺の臺詞を反芻していく。
姫月,あぅ……ちょ、ちょっと大きくなった気がする……し、しかも先から液體が出てきてぬるぬるするし……
色気は全くないが、まぁ若い俺の欲望は直接的な刺激に弱い。
先走りの液體が次から次へと湧き出て、姫月の細い指を濡らしていく。
誠,お。さっきよりは気持ちよくなってきたぞ
とはいえ、ぎこちない手の動きでは大した快感は得られず、もどかしい刺激に物足りなさを感じてしまう。
誠,それじゃ、そろそろ口でしてもらおうかな
姫月,え……、ほ、本気でやるの……?
誠,調教するにしても姫月の性教育にしても、フェラは重要だ。好きな奴に好かれたいだろう?
姫月,うぐぅ……
俺の言葉に姫月は言葉をなくす。
姫月,ほ、ホントに口でしたら……、好きになってくれるの、かな
誠,さぁな。ま、少なくとも俺はフェラしてくれるような女の子が理想だな
姫月,あ、兄貴の理想なんてどうでもいいけど……。わ、分かった……
姫月は意を決したようにこくりと唾を飲み込む。
両手を俺のペニスに添え、ゆっくりとそれに舌を這わせた。
姫月,っつ……ぴちゃ……んん、変な……味……
亀頭からにじみ出た先走りを舐め、姫月はわずかに顔をしかめる。
誠,文句言ってないで、ちゃんと舐めながら手も動かせよ
姫月,んん……、じゅる、ちゅっ、んっ……れろ……んん
姫月は右手で下の皮からカリのほうへとコシコシと擦り上げる。
初めて體験する女の子の口の中。
妹とはいえ、その気持ちよさは想像以上だ。いや、妹だからこそと言うべきなのかもしれない。
普段俺の顔を見れば『キモイ』だの『うざい』だの言ってくる姫月が。
見た目だけは抜群に良くて、學園內のみならず全國にファンがいるような姫月が。
大嫌いな兄である俺の性器を口に含んでいるのだ。
兄と妹という関係が何とも言えない背徳感を生み出し、ゾクリと興奮をもたらす。
姫月,れろ、れろ……んちゅ……ちゅ……んん、ふ……じゅぷ……
誠,どうだ? 美味いか?
姫月,お、美味しいわけないでしょ!??
誠,はぁ……。駄目だなぁ。口を休めるのも美味しいって言わないのも両方ダメダメだ
姫月,んぐっ!??? ん、んん! じゅぷっ、ん
口を離した姫月の頭を抑え、俺は無理やり腰を動かした。
姫月,んぶっ、んんんーーー!! じゅる、じゅぷ、ん、んっ……ぷぁっ……く、苦し……!
誠,苦しかったらちゃんとおち○ぽ美味しいって言いながら舐めろよ
姫月,んんぅ、んぐっ……! 美味しい、なんて……そんなの……んぅっ
誠,淫語を話しながらのセックスは男の理想だぞ??
姫月,う、んんっ……んちゅ……ほ、ほんと……?
誠,そうそう。世の男たちの憧れだ
姫月,う……んん、お、美味しい……よ。んぐっ……れろ、おち○ぽ……美味しい……ちゅる、ちゅ
誠,もっと大きな聲で言わないと全然聞こえないぞ?
姫月,っふ……んん……、んちゅ、ちゅる……お、おち○ぽ美味しい……美味しい……
姫月はまるで自分自身に暗示をかけるかのように呟く。
誠,っは……どう美味しいか言ってみろよ
姫月,んん……ぅ、じゅる、じゅ……わ、わかんな……んぶ……ごふっ……!!
口を大きく開かせ喉奧まで肉棒を突き入れると、姫月の喉がごぷりと痙攣する。
姫月,げほっ……!! んぐぅっ!! ん、ん、んんんっ!
誠,なぁ、ほら。実況しながらフェラしてみろよ
姫月,っうぶ……ん……、ぷぁ……んちゅ……、あ、兄貴の……おち○ぽが……舐めるたびにびくびくってして……ん……れろ、いっぱいお汁が出てきて……ぴちゃ
姫月,んんっ……変な味なのに……、はぁ、はっ……頭、ボーってしてきちゃう、よ……
姫月はそう言いながら、口をすぼめてペニスを吸い込むように口いっぱいに頬張る。
口から流れ出る先走りとも唾液ともつかない液體が俺の欲望をしとどに濡らし、ぐちゅぐちゅという卑猥な水音が辺りに響き渡る。
姫月,ん、んっ……。んちゅ、ちゅる、んふ、じゅぷ、ぷ……れろ……
姫月の目がとろりと潤む。
夢中になって俺のものをしゃぶる妹の姿に、背筋がぞくりとする。
姫月,っふ……んぅ、れろ……ちゅ、ちゅる、んちゅ、れろ……ん、ちゅぷ
姫月,はぁ、は……、あ、兄貴の……んぶ……だんだん、味、変わってきた……
誠,そりゃ、まぁ……気持ちいいから、な……
姫月,っ……は、ん……き、気持ち、いい、の……?
誠,ん、気持ちいい、ぞ……
姫月,ふぁ……んん、れろ、んちゅ、ちゅ……れろ、れる……こ、れ、気持ちい、んだ……ふっ、む……
俺の言葉に、心なしか姫月の顔が嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。
まぁ、こいつは俺が喜んだら好きな奴にも喜んでもらえると思ってるし、そういうことだろう。
姫月,んぐ……、ぐぷ、んっ……、兄貴、の……おっきい、よぉ……顎、痛い……
俺のものはあくまで標準サイズだとは思うのだが、人よりも顔の小さな姫月は、恐らく口も小さいのだろう。
めいっぱい口を開いて奉仕していることで顎に負擔がかかっているようだ。
とは言っても、この生殺しの狀態で放置されては困る。
誠,まだ始めてそんなに経ってないじゃないか。最低10分くらいは咥えられるようにならないと駄目だぞ
姫月,んんぅ……、だ、って……んちゅ……、ぐぷ、ぢゅぷんっ……
誠,ほら、頑張れ。あとちょっとだ。諦めるな!
姫月,んぅ、うっ……わ、かった、ぢゅぷ、ぢゅ、ぐぢゅぷ……んん、ん、ぷぁ、はむ……じゅぷ
まるでスポ根もののようなノリになっているな……。
しかし元々スポーツ少女の姫月にとって、あとちょっとという言葉は起爆剤のようなものだったらしい。
先ほどまでより一層強く、激しく陰莖をしごき始める。
姫月,んぷっ、んちゅる……、ぢゅぷ、ぷ……れろ、ぐちゅ、んんっ、ぢゅっ……
右手で唾液で濡れた陰莖を上下しながら、舌先で尿道口を舐め始める。
ちろちろと小刻みに舌を動かされ、腰にずくりと快感が走った。
姫月,んんぐ……、んゆ……ぢゅ、ぢゅぷ、ぢゅぽっ、じゅ……
姫月,兄貴の……先っぽから、いっぱい……んん、出てきて……やらしい匂い、する……んぢゅぷ、ちゅっ、ぢゅ……
誠,はは、お前の顔も十分やらしいぞ
姫月,うむぅっ!! んっ、ぷはっ!! そ、なこと言わないで、よ……!
誠,何だよ、可愛いと思うぞ?
姫月,えぅ……あ、あぅ……
姫月は困ったように亀頭を咥えながら俺のほうを見上げる。
……上目遣いのフェラがイイって言うのはわりと本當だな。
妹の見たことのない表情に、俺は一瞬ドキリとしてしまった。
誠,ほ、ほら。続きしてくれよ
姫月,……ん……、っふ……、んちゅ、ぢゅぷ……、じゅぽ、はぅ、ん、ん……
姫月,は、はぁ、はむ……んんく……んちゅ、ちゅ、じゅぷ……
続きを促された姫月は再度俺のものを咥え込み、頭と手を前後に激しくゆする。
姫月,じゅぷ、ぢゅっ、ぢゅるる、ん、んっ……は、はぁ、はむ、んぐぅ……、ぐちゅ、ぢゅぷっ……
誠,っつ……っ……
姫月の口淫と手淫によって、俺の欲望が今までの比ではないほどに大きく膨れ上がる。
頭の中がスパークするように瞬き、限界が近いことが分かった。
誠,っつ……はぁ、は……な、姫月。精液飲みたいって言ってみろよ
姫月,んん、んっ、ふ……、ぢゅぷ、ぢゅ……ん、せ、せーえき飲みた……
既にこの狀況に慣れ切ってしまったのか、姫月は特に悪態をつくわけでもなく俺の言葉をリピートする。
誠,は、ちゃんと聞こえないぞ……? ほら、大っ嫌いな兄貴の汚い精液、飲みたいのかよ?
姫月,っふ、んぅ、ぢゅ、ぢゅる、んんっ、大…キ…な兄貴、の……、せーえき……飲みた、い……飲ませて……っ、んんっ……
誠,じゃぁしっかり飲めよ
姫月,んん、んぶっ、んぐぅ、ぢゅ、ぢゅぷ、ぢゅ……
俺は姫月の頭を両手で押さえ込み、腰を大きく動かし絶頂を目指す。
姫月,んぐぅっ、んんぅ! ん! んぢゅっ、ぢゅぷっ、ぢゅ!!
誠,は、はっ……うっ……くっ!!!
世界が真っ白に弾け飛び、俺は限界まで溜まった欲望を解き放った。
ぶるりと陰莖が震え、口に収まりきらなかった白濁が姫月の顔や服を汚す。
誠,はっ……、はぁ、はぁ……
姫月,んんぅ、ん……う……
誠,ほら、飲みたかったんだろ……? だったらちゃんと咀嚼して飲み込め
姫月,ん……、んん……ぐちゅ、ぐちゅ、ちゅ……
我ながら無茶なことを言っているなと思うのだが、姫月は大人しく俺の言うことをきいて精液を噛んでいるようだ。
姫月,ん、んん……ちゅ……ぐちゅ……ぐちゅ、んぢゅ、ふぅ、う……んん
誠,よし、飲み込んでいいぞ
姫月,んん……、ぐちゅ、ゴク……コク、コク……っふぁ……
姫月の喉がこくりこくりと小さく動き、俺の精液を飲み込んでいく。
誠,どうだ? 初めての精液の感想は? 美味かった?
姫月,うぇ……え、ぇぐっ……げほっ、げほ!
姫月は俺の言葉に、えずきながら頭を左右に振る。
まぁ、あんなものが美味いわけはないよな。
誠,うーん。姫月、こういう時はちゃんと美味しいって言わないと駄目だろう? 特濃ミルク美味しいです。くらい言えよ
姫月,う、ぅう……、あ、兄貴の……せーえき……熱くて、トロトロで……喉に絡み付いてきて……特濃みるく……おいし、かった……よ……
強要され俺の希望通りの感想を言う姫月の目には、とろりと淫欲の色が滲んでいる。
顔中に飛んだ白い欲望は細い顎を伝い零れ落ちた。
誠,……あ
姫月,……?
ぽつりと出た俺の言葉に姫月は地面へと目をやると、そこにあったのは。
食べかけのまま放置されていた姫月の弁當だった。
姫月,~~~~~~~~~っつ!!!!!!
誠,あ、や、わ、わざとじゃないぞ! 決してわざとじゃ!
姫月,こここここの屑兄貴ーーーーーーーー!!!!!
誠,いってぇえええええええ!!!!
こうして俺は、體はすっきり心はどんよりという奇妙な晝休みを過ごす羽目になってしまったのだった。
誠,お先に失禮します
誠,ふぅ……
堅苦しい職員室から出ると、自然と吐息がこぼれた。
職員室で過ごす時間が増えたとはいえ、やっぱり慣れないな……。
あの狸がいなければ、少しは違うのかもしれないが……。
誠,さて、と
俺は意識がマイナス側に向かう前に、意図的に聲を出して思考を切り替えることにした。
誠,これからどうするかな
誠,帰ってエロゲをするか、それとも姫月を調教するか
何をしようかニヤニヤしながら考えていると、ふと頭の中にほのかの顔が浮かんだ。
誠,……昨日のこともあるし、ちょっと様子を見ていくか
昨日見た嫌な光景が脳裏をよぎり、俺は急ぎ足で教室へと向かった。
教室の近くまで來ると、剣呑な聲が耳に屆いてきた。
雪名,あんたさ、まだわからないの?
ほのか,…………
貓屋敷,馬鹿にもほどがあるでしょ。てゆか、もう直接教えてやったほうがいいんじゃない?
雪名,だね
昨日、階段の下から聞こえてきたのと同じ聲。
そっと中を覗くと、うちのクラスの女子二人――雪名と貓屋敷がほのかの前に苛立たしげな表情で立っていた。
ほのかはそんな二人の態度に怯えているのか、下を向きながら縮こまっている。
雪名,お馬鹿なあんたに教えてあげるけど、姫月ちゃんに媚び売ってるのバレバレ
ほのか,わ、私、は……そんな……
雪名,何? 聞こえないからハッキリ喋って!
ほのか,ご、ごめんなさい……
雪名,あんた、自分が姫月ちゃんに釣り合ってるとか本気で思ってるの? もし思ってるんだったら、自意識過剰だから、それ
妬みめいた言葉の數々に、胸がズキリと痛む。
胸の奧に仕舞った陰口を叩かれていた暗い過去を思い出し、見えない手で首を絞められてるような息苦しさに襲われる。
ほのか,…………
ほのかはどんなに罵詈雑言を浴びせられても、何も言い返そうとしない。
いや……ほのかの性格からして、言い返そうとしてないんじゃなくて、言い返せないんだ。
理不盡な內容でもあれだけ強く、そして複數の人間に責め立てられたら、ほのかじゃなくても言い返すのは難しいだろう。
少なくとも俺には無理だ。……無理だった。
俺もほのかと同じように、どんなに陰口を叩かれても……言い返せなかった。
貓屋敷,今日も遅れてきてさ……あれって、姫月ちゃんにかまって欲しいから、わざと遅れてきたんでしょ?
ほのか,そ、そんな、つもりじゃ……
貓屋敷,いつもいつも自分は可哀想な子なんですアピールしててさ……そういうの、すっっっっごくウザイんですけど
ほのか,ご……めん、なさい……
立て続けに浴びせられる刺々しい言葉に耐えきれなくなってきたのか、ほのかの聲が涙聲に変わり始める。
雪名,何? 泣けば許されると思ってるの?
貓屋敷,そういうとこもウザイんだよね
ほのか,…………
ほのかの姿を見ていると、胸が苦しくなってくる。
何とかして、ほのかを助けたい。
そう思うのに、脳裏にこびりついた暗い過去が邪魔をして體を動かすことが出來ない。
(っつ! 何をやってるんだ俺は!)
(あんなの……昔の話だろ。今は、目の前のほのかのことだけ考えろ)
(あの頃とは違うんだ。俺は……もう大人なんだから)
そう自分に言い聞かし……勇気を振り絞って前へと進む。
わずかに震える手を扉に伸ばし、中へと入る。
誠,あれ? まだ殘ってたの? そろそろ下校時間だから、早く帰らないと小原先生に怒られちゃうかもしれないよ?
何とか聲を震わせることなく平靜を裝うことが出來、內心ホッとする。
雪名,あ、はーい
貓屋敷,先生、さようならー
誠,あ、う、うん……サヨウナラ……
さっきまでの悪意はどこへやら。雪名と貓屋敷は俺のやや無理のある噓に気付くことなく、笑顔で教室を出ていた。
じょ、女子校生こえええぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
數秒前とは180度違う態度に、どん引きしてしまう。
てゆか、こんなにあっさり終わるのか。
何か悩んでた俺が馬鹿みたいだ……。
いや待て。今はそんなことどうでもいい。
誠,ほのかちゃん、大丈夫?
ほのか,……っつ
俺の一言に、ほのかの表情が強張る。
その表情を見て、何となく察してしまった。
知られたくなかったのだと。
ほのか,ご、めんなさい……私も帰りますね……
涙に濡れた目を伏せ、ほのかは教室を出て行く。
誠,あ……
とっさに追いかけようとしたが、ほのかの悲しげな表情が脳裏をよぎり……俺の足は地面に張り付いたように動かなかった。
ふいに、今朝の姫月の言葉が蘇る。
姫月,はぁ?? そんなことあるわけないじゃん。兄貴、何言ってんの?
姫月。お前、本當にほのかのことちゃんと見てるのかよ?
;0scene 5日目(夜)
ふと気付くと、いつの間にか俺はスケートリンクの方へ足を運んでいた。
冷たい空気が肌を突き刺して、まるで俺の侵入を拒んでいるかのように感じる。
2階のほうに目をやると、數人のギャラリーが姫月の登場を今か今かと待ちわびているようだ。
誠,(男子にも女子にも人気だなぁ。わが妹様は……)
その様子を見て俺は心の中でひっそりと毒づいた。
姫月,兄貴?
ぼーっと周りを見ていると、スケート靴を履いた姫月がいつの間にか俺の側まで寄ってきていた。
誠,姫月……なんだよ。練習しないのか?
姫月,するけど、まだ俊成さんが來てないし、ウォーミングアップしないといけないの
姫月,それより何? 練習見に來たの?
誠,ん? あ、あぁ……。そうだな
姫月,へ、へぇ? じゃ、じゃぁその、ゆ、ゆっくりしていけばいいじゃない!
姫月,ど、どうせ兄貴なんて、家に帰ってもゲームやってるかゲームやってるかゲームやってるかしかないんだし!?
誠,いや、寢てる時だってあるぞ
姫月,……否定しなよ
俺のドヤ顔に、姫月は呆れたような表情で見つめてくる。
誠,それはともかく、コーチはまだ來てないんだな
姫月,あぁ、今日は俊成さんちょっと遅れてくるって。何か大學のほうで用事があるんだって
誠,あいつ大學生なのか……俺より年上なのかと思ってた
姫月,ん? 年上だよ。大學っていっても院のほうだもん
誠,へぇ……
院にまで行くということはそれなりに勉強をしている人間なのだろう。
院試はわりと面倒くさいと聞くしな。
顔も良ければ頭も良いのか……。まるで姫月男バージョンを見ているようで気分が悪い。
姫月,? どしたの? 変な顔して
誠,いや、何でもない。それよりコーチがいないなら、今のうちに調教メニューでも行っておこうか
姫月,こ、ここで!!??
誠,はは。ここでは流石に人目に付き過ぎるな……。更衣室とかないのか?
姫月,……ある、けど……
誠,それじゃ、そっちに移動しよう
そう言って俺は姫月に案內してもらったリンクに備え付けられている更衣室にやってきた。
誠,……何ていうか、どこまでも立派なもんだな
姫月一人のためにスケート場のみならず、こんな更衣室まで作るのか。
何だか金の使い方が荒すぎて頭が痛くなってくる。まぁ、じじいにとっては微々たる金であることは間違いないのだが。
姫月,そ、それで……何、するのよ
姫月がもじもじと恥ずかしそうに聞いてくる。
誠,そうだな……。それじゃ、まず下のタイツを脫いでもらおうかな。あんまりのんびりもしてられないだろうし、膝まででいいぞ
姫月,……わ、分かった……
誠,お? 珍しく素直だな
姫月,だ、だって、どうせ恥ずかしい思いするなら、ちゃちゃっと終わらせたほうがいいじゃない!
誠,はは、良い心掛けだ
姫月は顔を真っ赤にしながら、ひらひらとしたスカートの中に手を突っ込みきゅっと目を瞑ってずるりと下げた。
下著も一緒に下ろしたせいで、姫月の下半身が一気にあらわになる。
日に曬されない真っ白なソコには生えかけの淡い栗毛。
誠,さて、それじゃ……
姫月,っつ!!??? え、何?? 何するの……???
誠,さぁ。それは見てからのお楽しみだ
予想していなかったのだろうガムテープの登場に、姫月の表情が恐怖に凍りついた。
俺は20センチほどに千切ったガムテープをひとまず自分の腕に張りつけ、ポケットからある物を取り出す。
姫月,……な、何……? それ……
誠,ん? ピンクローターだよ
姫月,ピンク、ローター……?
名稱を聞いても、何に使う物なのか分からない様子の姫月は、眉を寄せて俺の言葉を反芻した。
誠,これをだな……
姫月,っひゃ!!!?? な、何して……!!
俺はピンクローターを、姫月のクリトリスに當たるようにセットし、その上からガムテープを張り付けた。
微動だにしないそれは、ただのプラスチック製品にしか見えないようで、姫月は訝しげに首を傾げるだけだ。
誠,よしっと……
誠,しかし、本來なら太ももにバンドを付けて固定するが、タイツだから目立つよなぁ……
誠,あぁ、そうか。それじゃ、尻のほうからこうやって……
姫月,っつ…………
自分の股下で俺がごそごそと作業しているのを見て、姫月は恥ずかしそうに目を伏せる。
大人しくされるがままの姫月は抵抗するそぶりも一切見せずに、俺はスムーズに準備を進めた。
誠,さて、出來た。もう履いていいぞ
姫月,え? もう??
誠,ん? 何だよ。もっと自分のま○こ見て欲しかったのか? はは。姫月はエッチだなぁ
姫月,バッ……!!! そ、そんなわけないでしょ!!! は、履くもん!!
そう言って姫月は慌てたようにタイツと下著を引き上げてローターを付けたそこを隠す。
誠,よし、あとはこの小型マイクをジャージの中に付けて……と
俺は市販の集音器を少し改造した物を、姫月のジャージの見えないところへと取り付けた。
音聲はそんなによくはないが、出來る限り軽量化を計ったのでほとんど重さは感じないだろう。
誠,さて。じゃ、リンクに行くぞ
姫月,う、うん……
姫月,あ。俊成さんもう來てる! じゃぁね、兄貴! ちゃんと見てってよね!
誠,あぁ、分かってる
姫月は嬉しそうにコーチの元へと駆けていった。
誠,さて、姫月の感じている顔を見てあの男はどうするのかな……
入念に準備體操をしてから、姫月はリンクの上に立った。
ざわめいていたギャラリーがしぃんと靜まり返る。
ぴん、と張り詰めた空気を纏った姫月が、力強い2つの[Gis/ギス]から成る和音と共に大きく動き始める。
今日もいつもの幻想即興曲だ。
懐かしいような、気がとがめるような不思議な感情を抱きながら、俺はリンクを自由自在に踴り回る姫月を目で追った。
アレグロ アジタートでざわめくように繋がっていく左手の分散和音と、右手のショパンらしい華やかで細やかな旋律。
三連符と16分音符の織り成す複雑な音が、姫月の繊細に見えてダイナミックなステップと絡み合い、ドラマチックな盛り上がりを見せる。
誠,(そういえば、姫月は昔からこの曲が好きだったな……)
遠い過去の記憶が呼び起こされ、俺の心がひりひりと痛みを訴えてくる。
誰もが知っているショパンの曲とそれに合わせて華麗に滑る姫月に、何だか胸を抉られているかのような息苦しさを感じた。
その感覚を振り払うように、俺は集音器から音を拾おうと片耳だけイヤホンを著ける。
がさりと耳障りな音が聞こえ、俺は眉を顰めながらポケットに入っている遠隔型のリモコンに手を伸ばした。
誠,(まぁ、まずは弱からかな)
これから起こることを想像して俺はワクワクと胸を躍らせ、そしてカチリと手元のスイッチを押した。
姫月,っつ……!!??
イヤホンから、ノイズ交じりの姫月の聲が聞こえてきた。
片足を大きく上げたまま、リンクの端から中央へとなめらかに滑る姫月の體がびくりと揺れた。
遠目からではよく見えないのだが、心なしか頬が赤く染まり苦しそうだ。
あからさまに反応を示した姫月に気を良くした俺は、リモコンのスイッチを弱から中へとスライドさせる。
姫月,っひぁ……、あっ!!!!
精細な動きから一転し、先程まで何回も成功させていたはずのジャンプも、飛び上がった瞬間に勢いをなくす。
俺の目で見ても1回転すら出來ていない様子だ。
そんな姫月に、コーチは眉をしかめてぷつりと音楽を止めてしまった。
姫月,っつ……っ……
最も敏感な場所をローターの振動に刺激された姫月は、顔を赤く染め、何かに耐えているかのようにぎゅっと拳を握った。
そんな姫月の様子に、コーチがリンクの中へと入っていく。
俊成,姫月。どうした? 怪我でもしたのか?
姫月,っつ、あ……。な、何でも、ない……です
俊成,そんなに顔を赤くして、何でもないはないだろう? 熱か?
姫月,っひ……! んっ!!!!
コーチの手が額に觸れた瞬間、姫月はふるりと震えて小さな聲を漏らす。
俊成,熱は……ないようだが、涙目だし、聲も體も震えているじゃないか……
姫月,あ……あ……。わ、私、ちゃんと出來ます、から……れ、練習……で、出來ますからっ!! ひゃぁっ!!!!
スイッチを中から強へと切り替えると、面白いほどの勢いで姫月の體が跳ねた。
俊成,ひ、姫月!!?? 大丈夫か???
姫月,す、すみませ……。な、何か急に、寒気がしてきちゃって……はっ、はっ、ふぁ、あ……
俊成,息も荒いし、今日はもう帰ったほうがいいな。練習は終わりにしよう
姫月,で、でも……大會、近いのに……
俊成,大會が近いからこそ、だ。無理をして大會に出れなくなってしまっては元も子もないだろう?
姫月,でも……でも、と、途中でやめたり、したら……
僅かに聞こえる聲で呟くと、姫月が泣きそうな目でこちらを見ている。
そしてそんな姫月の肩を抱えるようにして、俊成は俺のいる方向へと滑ってきた。
俊成,お兄さん。すみませんが、姫月さんの體調が優れないようなので、連れて帰って頂けますか?
誠,え? あ、あぁ。はい、いいですけど……
俊成,お願いします
話しかけられるとは思わなかった俺は、俊成のオーラのようなものに圧倒されてしまった。
何だこいつ。無駄にキラキラすんなよ。
しかも俺のことを姫月の兄だと認識してやがる。何故分かったし。
俊成,姫月。お兄さんの言うことを聞いて、暖かくして寢るんだよ
姫月,やっ……!! わ、私、ちゃんと出來ますっ! 練習出來ますから……!!
俊成,駄目だよ。今日はもう練習は終わりだ
誠,姫月。コーチを困らせたらいけないだろ? 一緒に帰ろう?
必死に食い下がる姫月を見て、俺はにこりと笑ってそう言う。
そんな俺に、姫月は少し戸惑ったような表情を見せ、そして小さく頷いた。
姫月,分かり、ました……帰ります
俊成への姫月の態度は、俺に対するものとは違って、年相応の子供らしい素直さがあった。
なるほど、好きな奴相手だとこんな殊勝な対応も出來るのか……。
俊成,うん、姫月は良い子だね
俊成,それじゃ、お兄さん。よろしくお願いします
誠,…………ほら、行くぞ
姫月,ん…………
俺は軽く會釈してその場を去る。
そしてコーチが見送る中、姫月を連れて學園を後にした。
夜の[帳/とばり]がおり、すっかり辺りを暗闇が包み込んだ公園。\
子供たちの聲に溢れた晝間の喧噪はそこにはなく、會社帰りであろう男たち數人とすれ違う程度だ。
姫月,…………
誠,…………
俺の後を著いてくる姫月を橫目で見やる。
その顔には苦悶の表情が浮かんでいて、頬が紅潮して息苦しそうだ。
姫月,は…………はぁ、……ね、ねぇ……、兄貴…………。ちょ、と……待って……
誠,…………
俺は振り返って姫月のほうに顔を向けた。
姫月,あ…………
誠,何だ?
姫月,っは……な、何って…………
誠,お前が呼び止めたんだろう? さっさと用件を言えよ
姫月,………………っつ
俺の言葉に、姫月は傷ついたような目を向ける。
誠,コーチに頼まれたし、ちゃんとお前を家まで連れ帰らなきゃいけないんだ。ほら、さっさと歩けよ
姫月,わ、分かってる、よ……でも………はぁ、は…
誠,でも?
姫月,はぁ…………こ、れ……はぁ、う……辛くて……も、歩けないよ…………
誠,これって何だ? 言わないと分からないだろう?
姫月,だ、だから…………はぁ……て、テープで、著けてる、やつ……!
誠,ん? テープ? 姫月は何を著けて歩いてるんだ?
姫月,あ、兄貴が…………著けろって、言ったんじゃん…………! はぁ、はっ……うぅ……
誠,さぁ? 俺には何を言ってるのかさっぱり
俺はそう言いながら、ポケットの中に入っているリモコンを親指で操作した。
姫月,ひゃうっ!!!!???
姫月,や、やぁ、あっ……ま、待って……お願っ……
姫月,ひぅ、う、あ……や、ぅ……うぁ、あ、あ……んん、ん……
姫月は目に涙を溜めながら、自分のスカートの上でもじもじと手を遊ばせている。
誠,はは、足がガクガクしてるぞ? 調子でも悪いのか?
姫月,し、白々しい、演技……やめて、よ……ぁう……あ、あ……は、はぁ、あ……んぅ、んっ……
誠,そうは言っても、俺には姫月がどうしたいのか分からないしなぁ
苦しそうな姫月を後目に、俺はリモコンのスイッチを上下させる。
姫月,ひっ!?? 嫌ぁっ! あ、あっ!!!
誠,姫月、あんまり大きな聲を出すと人にバレるぞ?
現にただならぬ姫月の様子を気にしているのか、通行人たちが橫目で姫月の姿を眺めながら通り過ぎていく。
誠,それともいやらしく悶えてる姿を見てほしいのか?
姫月,あ、あ……や、やだぁあ……見られたく、ない……よぉ……
誠,でも著けてる物は取ってほしいんだよな?
姫月,う、ぅあ……ん、おねが……は、外してよぉ……
誠,分かった
姫月,……ぁ…………
誠,……じゃぁスカートの中がどうなってるのか、今ここで見せてみろよ
姫月,え……?
誠,ほら、スカート上げてみて
姫月,え、む、無理だよ……だって、こんな……人いるのに……
姫月はきょろきょろと目だけを動かして周囲を見渡した。
誠,そんなに多くないし大丈夫だろ? そんなにきょろきょろしてると逆に怪しいぞ
誠,俺の調教を受けるんだろう? だったら早くしろよ
姫月,っつ…………
姫月の震える指先がひらひらとしたスカートの前をゆっくりと持ち上げる。
姫月,っく……う、ぅ……
日頃スケートで鍛えている無駄な脂肪のない白く細い足。
その付け根にある女の子の部分が、中から分泌される透明な液體によってテラテラといやらしく輝いている。
可愛げのないガムテープで張り付けられたピンク色の物體がぶるりと震えると、それに連動するかのように姫月の體が跳ねた。
誠,はは、濡れてんじゃん
姫月,ち、違……そ、そんなわけ……!
誠,違わないよ
姫月,ひゃあぁっ!!!??
誠,ほら、自分で觸ってみろ。ぬるぬるでおしっこ漏らしたみたいになってるの分かるだろう?
ほっそりとした姫月の手を取り、そこへと導いてやる。
姫月,うぇ、え……や、やだぁ、あ…………
誠,あ、勝手にスカートおろすなよ。俺がいいって言うまで見せておけ
姫月,っく……ぅう、で、でも……ずっとこんな格好してたら誰かに…………
誠,いいじゃん見られても。寧ろ見せとけば
姫月,よ、よくないに決まってるでしょ!!? も、もしこんな姿を友達に見られちゃったりしたら私…………ひぅ、う!!
誠,それなら止めるか? お前の止めたい時にいつでも止めていいんだぞ?
姫月,っつ……っつ……
姫月はその言葉を聞くと、ひくりと喉を鳴らし小さく首を振った。
誠,しっかしさっきも思ったが、まだまだ子供だと思っていた姫月にもちゃんと下の毛が生えてきてるんだなぁ
姫月,やっ!! そ、そんなこと言うなぁ……
誠,ん? いいことじゃん。大人になってるってことなんだしさ
誠,ま、生えてきたばっかで薄いし少ないけど
わずかに生えかかっている姫月の恥毛は髪の毛と同じ淡い栗色をしていて、ふわふわと柔らかそうだ。
誠,……でもさぁ。殘念ながら俺、パイパン派なんだよな
姫月,…………??
俺の言葉に、姫月は訝しげな瞳を向けながら首を傾げた。
誠,ん? なんだよ。まさかパイパンの意味知らないとか?
姫月,………………っわ、わかんない……
誠,うえ。マジで? 姫月は本當におこちゃまだなぁ……
姫月,だ、だって……そんな単語、日常生活で使ったことない……
誠,…………確かに正論だな。お前とほのかちゃんがパイパンについて熱く論議している姿は想像出來ないし
誠,よし。じゃぁこの心優しいお兄さまが、パイパンとは何か、これから実演してやろう
姫月,や、やだ……、してくれなくて、いい……兄貴の言うことなんだから、どうせ変なことに決まってるもん……!!
誠,変なこととは失禮な奴だなぁ…………まぁいい。お前の化粧ポーチ借りるぞ
姫月,え!? だ、駄目……!! 勝手に見ないで……!!!
誠,動くなよ。その格好のまま待ってろって
慌てふためく姫月を[後/しり][目/め]に、俺は姫月の鞄から小さなピンク色のポーチを取り出した。
姫月,っつ…………
誠,えぇと……
チャックを開き中を見てみると、リップクリームやハンドクリーム、制汗スプレーといった、女の子らしいグッズで溢れている。
誠,お。ナプキン発見
姫月,!!!!!
姫月,バカ! バカ!! 兄貴の変態!!! そんなの見るな言うな死ね!!!!
誠,何そんな怒ってんだよ。つかお前今生理なのか?
そう言い、むき出しになっている姫月の股に目をやる。
血は出ていないようでほっとした。
つか三次元の女は毎月股から血を流しているらしいが、そんなことよく耐えられるものだ。俺だったら確実に失神している。
姫月,ち、違うわよバカ!!!
誠,へー……じゃぁこれって常に持ち歩くもんなんだ
姫月,べ、別に……い、いつも持ってるわけじゃないけど……
姫月,わ、私はまだ……自分の、その……生理の週期みたいなのが分かってないから……保険というか予備というか……
誠,ふぅん? よく分からんが、何でお前そんなに恥ずかしそうに話すんだ?
話している內容よりも今のお前の格好のほうが恥ずかしいだろう。とはこの際ツッコまないでおこう。
姫月,は、恥ずかしいに決まってるよ!! そ、そんなの人に見せる物じゃないんだし……
誠,別に未使用のなんだからいんじゃねぇの?
姫月,ばっ……!!! そ、そういう問題じゃない!! そもそも使用済みを入れてるわけないでしょ!!??
誠,まぁそうなんだが………
ローターを自身の秘所に付けたまま、その姿をありありと見せつける妹がものすごい剣幕で怒っている。端から見ると何とも奇妙な光景だ。
誠,お。あった
ごそごそとポーチの中身を漁っていると、ようやく俺の求めていたものが見つかった。
姫月,……………?
俺の姿に姫月は首を傾げ眉を寄せた。
誠,ジャン これ何だ?
効果音付きで姫月の前に出したソレは。
姫月,…………………………毛抜き?
誠,そ。毛抜き
姫月,そ、それ……どうする、の……?
誠,ん? これでお前の下の毛を抜くんだよ
妹の疑問に、俺はさらりと何でもないことのように答える。
姫月,………………
姫月,…………………………
姫月,えぇえええええええ?
しばらく間を置いてから、姫月は絶叫に近い叫び聲を上げた。
姫月,や! やだ! 何でそんなことされなきゃなんないのよ!!
誠,え? さっき言っただろう? 俺はパイパンが好きだと
姫月,そ、それは、さっき聞いたけど……ぱ、パイパンって……
誠,察しの通り、毛の生えていないつるつるま○このことだ
姫月,………………
誠,つーか世の女は眉毛を抜くよりも先にこっちの毛を抜くべきだと思うんだよな
誠,小○生のようなつるつるま○ここそ至高だろJK。エロゲのヒロインたちはみなパイパンなんだぞ?
姫月,し、知らないよそんなの!!
誠,まぁまぁ、こんなところで下半身露出してるわけだし、今さらそんなことで恥ずかしがってても仕方ないだろう? ほら。あっちのベンチ行くぞ
姫月,ま、まさか[公園/ここ]で……その、ぬ、抜くわけじゃない、よね……?
誠,ん? ここでするに決まってるだろ??
姫月,や……!!! やだ! やだ!! 絶対無理!!!
誠,やだやだって駄々こねるなよ
姫月,い、家に帰ったらちゃんと処理しておくから……! そんなベンチで出來るわけないよ! 歩いてる人たちに絶対見られちゃうじゃない!!
誠,あぁ、まぁそうかもな
姫月,そうかも……って……
誠,まぁ人通りの少ない時間帯だし、お前がさっさと抜いてしまえば見られないかもしれないじゃん
姫月,で、でも……
誠,いいから座れよ。こんなことも出來ないで何が『私を調教して』だよ
姫月,う、あぅ……っつ……
姫月はキッと強く俺を睨みつけ、渋々ベンチへと腰を下ろした。
誠,ほら、毛抜き。見ててやるからさ
姫月,うぅう……、み、見なくていい……!!
誠,あはは。俺がいないと自主的に公園で恥毛を抜く変態露出狂だけど、それでもいいんだ?
姫月,こ、こんなこと自主的にやる人間いるわけないじゃない!!
誠,いやいや、世の中には露出癖のある女も実在はするらしいから分かんないぞー
実際ネットとかではよく見るしな。少なからず同じ趣味を持っている人間は存在するのだろう。
誠,まぁでも見なくていいって言うんだったら、離れたところで監視するってのもアリだな。それはそれで楽しそうだし
誠,こんな場所で変態行為して、もし誰かに見られたらあっという間に輪姦エンドだと思うけど、姫月はそういうのが好きなんだ? つくづくド変態だなぁ
姫月,っひ……や、やだ! そんなの……っされたくない、よ……
誠,何? じゃぁ俺に見ててほしいわけ?
姫月,……っつ…………っつ…………
涙を浮かべながらも、姫月は小さく頷いた。
誠,ん? 言葉にしてくれないとお兄ちゃんエスパーじゃないから分かんないぞ?
誠,見ててほしいならちゃんと言わないと。ほら、ーーーって言っておねだりしてみろよ
俺は姫月の耳元に唇を寄せ言葉を吹き込んでやる。
姫月,そ、そんなこと……!!!
誠,言わないなら放置プレイ決定だけど、どっちがいい? 俺は優しいからお前に選択させてやるよ
にこにこと笑って言う俺の姿に、姫月はぶるぶると肩を震わせている。
姫月,うぅう…………ひどい……っ…………
誠,酷いといわれても、このくらいはアブノーマルなプレイとしては一般的だと思うぞ。お前の好きな奴だってきっと大好きさ
姫月,…………っつ
誠,さ、姫月はどっちがいい?
俺の言葉に、姫月は悔しそうに目を細めて俺を睨みつけた。
姫月,……な場所で、お、んこの、を……抜……う、変態……なわ、私の……いやらしい姿を、見てくださ……
誠,は? 何言ってるのか全然聞こえないし
姫月,うぅ、う………こ、こんな、場所で……おま○この毛を抜いちゃう……変態な……姫月の、いやらしい姿を……見て、下さい…………
誠,だから聲が小さいって。それが人に物を頼む態度か? もっと大きな聲ではっきり言えよ
姫月,ひぅ、う、うぅ、うぇ……、こ、こんな場所で……! お、おま○この毛を抜いちゃう変態な姫月のいやらしい姿を見て下さいっ!! お願いします!!!
誠,はは。そんなに毛を抜くのを見てもらいたいのか。ホント姫月は変態だなぁ
姫月,ち、がうもん……ひっく……わ、私、変態じゃ、ない……もん……
姫月が頭を振る度に、甘い汗の匂いが鼻に屆く。
大きな瞳から零れる大粒の涙は、乾いた土の中へと吸い込まれていった。
誠,ふぅん。まぁ、そういうことにしといてやるか……
誠,じゃ、ほれ。股開いて、自分で抜いてみろよ
俺はポーチから取り出した毛抜きを姫月の手に握らせる。
姫月は手渡された毛抜きをきゅっと握りしめ、俺を不安げに見上げてきた。
姫月,ほ、本當に……する、の……?
誠,はは。ホントも何も、こんなことを冗談で言い合える兄妹がいたら素敵だな
姫月,………………
姫月の喉がこくりと鳴った。
幾度か目線をさまよわせ眉を寄せ、意を決したように。
姫月,っつ…………
おずおずと二本の白い足を左右に割り開いていく。
誠,もっと足開けよ。そんなんじゃ見えないだろ?
姫月,っく…………
姫月は悔しそうに口元を歪め、先ほどよりも大きく股を開いた。
先ほどからクリトリスを刺激したままになっているローターのせいか、そこは姫月の愛液で濡れそぼっている。
誠,うわ……。べっとべとだなぁ。公園で股広げて恥ずかしいやつ
姫月,っく……
誠,ほらほら、ちゃんと見ててやるからさっさと毛を抜いてみろよ
姫月,っつ…………わ、分かった……わよ……
姫月は自分の恥丘に左手を沿わせ、毛抜きを持った手をそこに近づけた。
姫月,っうぅ…………
姫月,ひぅっ……!!!
月の光を浴び、銀色に輝く毛抜きが一本の毛をはさみ込み皮膚から引き剝がす。
手の動きは限りなく小さなものなのに、姫月の體は大げさなほどにびくりと痙攣した。
誠,どうした? まだ1本抜いただけじゃないか
姫月,う、くぅ…………
姫月,ひっ……!!!
誠,抜くたびに面白いくらいびくびくするなぁ……
姫月,だ、だって…………
姫月,ひぁっ!! い、ぅ……
姫月,っつ…………痛、いぃ…………
姫月,ひっ!! う、んんっ……!!
栗色をした細い毛が抜け落ちるたびに、姫月は陸に上がった魚のように跳ね上がる。
抜いた直後のその部分はぽつりと赤い炎症を起こしてしまっていて痛々しく映った。
姫月,っふ……!! ぅ、あっ!!!
元々発展途上な量しか生えていなかったそこは、姫月の手によって平地へと姿を変えていく。
誠,結構抜けたなぁ。あと半分くらい? って、あれ?
姫月,うぅ……う……ひっ……ぅ
姫月,ぁう……っ!!
1本、また1本と毛が抜かれる度に、姫月の肉壺がふるりと震え、たらたらと涎をこぼしている。
姫月,うぁっ!! あっ……!!! はぁ、はっ……はぁ……
よく見てみると、姫月の息は荒く頬は紅潮し、涙を浮かべた大きな瞳は先ほど以上に甘く[蕩/とろ]けている。
姫月,ひゃぅっ……!!!
姫月,っあ!!! くぅ、ん…………
先ほどまで痛みしか訴えていなかった聲にも、次第に甘さが混ざっていく。
誠,へぇ……。お前、まさか毛を抜いて気持ちよくなってるんだ?
姫月,やっ!! そ、そんなわけない……!!
誠,そんなわけあるって。ほら、お前體柔らかいんだから見えるだろ? 超ぐっちょぐちょ
姫月,う、噓……! 違うもん……そんな……気持ち良くなん、て……
誠,ふぅん。じゃぁそういうことにしといてやるから、続きしろよ
姫月,っく……ぅ……
姫月は強く唇を噛みしめ、震える手で再度自分の恥毛を抜き始める。
姫月,っふ、ぁ…………あ……
姫月,ひぅっ……ぅ……はぁ、は……
姫月,ふぁあっ!! あっ……!!
1本、また1本と亜麻色の毛が抜かれていく度に、姫月の秘所がしとどに濡れていく。
姫月,っひ……!! ぅ、んんっ!! や、やぁ、あ……ん、な、何で……
姫月,ひゃうっ!! ふぁ、あ……ぁ……
姫月,ぅくっ!! ん、ん…………!!
誠,はは。洪水みたいになってる
姫月,ひゃぁああああん!!!
ぶるぶると小さな振動を繰り返すローターをそこから一気に剝がし取ると、姫月は我慢ならないとばかりに聲を上げた。
ガムテープを無理やり剝がしたせいか、暗闇の中でも分かるほど真っ白な土手部分が赤く腫れてしまった。
姫月,やっ! やぁ……!! い、いきなり剝がしちゃ、い、痛い、よぉ……
誠,痛いだけ?
姫月,ふぇっ、や……! あ、やーっ、やだぁあ
誠,嫌だって言うわりにはここは気持ち良さそうなんだけどなぁ
上々の姫月の反応に俺は口端をつり上げ、震える豆を指の腹で弄ぶ。
姫月,ひっ……! や、やだ……!! それ、弄っちゃダメぇえ……! やぁ……!! あ、ぁ……!
姫月,ひゃぅ、んっ! ふぁ、あぁ、あ……あ、んんっ……は、はぁ、あっ……!!
姫月,やだぁあっ! や、やめ、てぇ……グリグリしない、で……んぁうっ!!
ぐにぐにとソレをこねたり、摘んだりする度に姫月の體は電流が走ったようにびくりと震える。
誠,気持ちいいんだろ? ほら、手が止まってるじゃないか
誠,まだ三分の一くらいは毛が殘ってるぞ?
姫月,ふ、ふっぇ……うぅ、あ、あ……はぁ、はっ……んん!!
姫月,ひぁ! あっ!!! あぁ、んんっん……!!!
姫月,や!!! ぁ……んぁ……あ、や、やらぁ……んぅ、う……はぁ。はぁ……あ、あ……!!
姫月,やら、の……お、おねが……あに、きぃ……弄るの、やめ……てぇ……あぁ、あ……あぅ、ん!!!
誠,ん? クリトリス弄るのやめてほしいのか? こんなに気持ちよさそうなのに
姫月,ひぁあ、あ、あ! あっ! やぁ、あ!! グリグリしちゃらめぇっ……!! ふぁ、あぁ、あ!
ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら、小さな赤い突起の上に指先を滑らせてやる。
姫月,ひゃ、ぁう……! ん! んん、ぁ、あっ……!
姫月,や、ら……も、らめ……や、や……ぁ……クリ、やぁ、あ……
誠,ふぅん…………?
姫月,ひ、うぁ、んん、ん、ふ………ぇ………?
激しく前後させていた指の動きをぴたりと止めると、姫月が困惑した瞳を俺に向けた。
誠,ん? どうした? お前がやめろって言うからやめてやったんだぞ?
姫月,あ……あぅ……う……
誠,手も止まったままだし? これで作業に集中できるよな?
姫月,っふ、ふぇ…………ぇう……
俺の言葉に、姫月は信じられないとばかりに大きく目を見開いた後、ぐしゃりと顔を歪めた。
散々弄ばれたクリトリスは真っ赤に充血していて、イきたくて仕方ないといった[體/てい]だ。
誠,なんだよ。どうかしたのか?
姫月,……っつ……ん、っく……な、でも……ない……
姫月,っひ! あ、あぅ……んん……っつぅ……
姫月が作業を開始したのを見屆け、俺はじぃっと妹の秘部を凝視する。
膣近くにあるヒダの間から見える內部がひくひくと蠢いているのが分かった。
姫月,ひぁう!! ぁ、あ……あぁ……あ……
姫月の目からひっきりなしに涙が流れ、甘い聲を漏らす唇はがくがくと震えている。
壊れた蛇口のようにタラタラと蜜を零す下の口のせいで、姫月の座っているベンチはまるでお漏らしをしたかのようにびしょ濡れだ。
姫月,ひっ……! ん、んん、んーーっ!
びくりと體を震わせはするのだが、高みに到達するにはあと一歩刺激が足りないようだ。
震える指先では毛抜きを上手く扱えずに、2本に1本はつるりと滑って抜き損ねている。
姫月,んぅ…………あ、に……きぃ……、も、やだぁあ……
姫月は物欲しげに揺れる水晶のような目を俺に向ける。
誠,何が嫌なんだよ? 毛ぇ抜く度にイきそうになってんじゃん。それともクリも一緒に弄ってほしいってことか?
姫月,や、や……ち、違……そんな、こと……
誠,違うって言われても、マン汁でベンチべっしょべしょにしてるお前が言ったって説得力ないよな
姫月,あ……あぅ……こ、これ、は……
誠,こんな場所で毛ぇ抜いて、大嫌いな兄貴にクリトリス弄られて気持ちいいんだろ? 変態
姫月,ち、違う!!
誠,そんなに否定しなくてもいいじゃないか。お前の好きな奴は変態な女の子が好きなんだろう?
姫月,ひぁっあっ!!!??
俺はグリリとそれをつまみ上げる。
誠,ほら、気持ちよさそうじゃん。ホントは、俺にま○こ見られて嬉しいんだろ?
姫月,つっ……違う……もん……気持ち良くなんて……
誠,じゃぁ何でこんなぐちょぐちょになってんだよ。気持ちいいなら気持ち良いってハッキリ言わないと駄目だぞ?
姫月,違う……違う……、も……許して、よぉ……
學校や家で見せる勝ち気な姿はナリを潛め、姫月はその整った顔をくしゃりと歪める。
今まで何一つ勝てなかった完璧超人の姫月が俺に懇願して、許しをこう姿。
そんな妹は哀れで、なんとも言えない感情が胸に渦巻いていく。
誠,はぁ……。面倒臭いやつだなぁ……いいよ。俺が手伝ってやる
俺は姫月の小さな手から鈍く光る毛抜きを奪い取る。
姫月,え? え? や、やだぁ……!!
姫月,ひっ!!! や……嫌!! やめ……!! やーー!!!
俺が姫月のそこから毛を抜き始めた途端、先ほどまでとは打って変わって暴れ始めた。
誠,?? 何が嫌なんだ?
姫月,や、やだ……やだよ……ひっく……ひ……だ、って……兄貴にそんなの……抜かれるなんて……やだぁあ……
盛大にしゃくりあげる姫月だが、正直意味が分からない。
先ほどまで自分で抜いていたのに、俺が抜くとどうしてこんなにも嫌がるのだろう。
誠,………………
(あぁ、そうか……)
誠,………大嫌いな兄貴に抜かれるのはそんなに嫌?
姫月,……っつ!!!!
姫月,そ……そ、だよ……當たり前、じゃん……っつ……こんな恥ずかしい所……ホントは、誰にも見られたく……ないんだ、し……それが兄貴とか……嫌に決まってる……
誠,ふーん。まぁそんなこと俺の知ったこっちゃないけどな
姫月,きゃぁああああ!!!???
俺は姫月の恥丘に毛抜きを滑らせ、數本の毛を引きちぎるように抜いた。
姫月,や……や……い、痛い……
姫月,うぅ……う、う、うぇ、え……
よほど痛かったのか、俺に毛を抜かれるのが嫌なのか姫月は聲を抑えることも忘れたように泣きじゃくり始めた。
誠,あぁ、悪い。痛かったか? でもまぁあんまり大聲は出さない方がいいと思うぞ? ほら
姫月,っひ、ぅう……う、ぇ………?
通行人,何か悲鳴が聞こえたけど大丈夫ですか……って、え?
誠,あ~ぁ。バレちゃった
姫月,っひ!!?? や! 嫌!! 見ないでぇ!!
誠,折角俺が前に立って、周りから見えないようにしてやってたのになぁ……。姫月ってばそんなに見られたかったのか?
姫月,ち、違っ!! だ、だって兄貴が……!!!
誠,はいはい、言い訳はいいから
ぎゃぁぎゃぁと喚く姫月は放って置いて、俺は背後に立つサラリーマン風の男のほうに顔を向けた。
まだ年若いその男は、大きく股を広げ自分の秘部を曬す少女の姿に目を白黒させてしまっている。
誠,なぁ、アンタ
通行人,え? え? あ、あの……
誠,狼狽えなくていいから、もっと近くで見てみたいって思わない?
通行人,え?? い、いいんですか?? あ、いや、でも……あの……こういうのって犯罪なんじゃ……
やばいのに見つかったら通報される恐れがあうが、どうやら當たりを引いたらしい。
口では躊躇うようなことを言っているが、姫月の足の付け根あたりを舐めるように見つめたままだ。
誠,通報されなければ大丈夫だよ。ほら、折角なんだし特等席で見れば? こいつ、人に見られて感じる変態だからさ
姫月,や、違う……違うもん……見られたくない、よ……
誠,何だよ。學校の連中に見られるよりはマシだろ? ほら、今まで言ってきたみたいにちゃんとお願いしろよ
姫月,うぅ、う……く……
誠,ほら、早く。それとももっとギャラリーがいるほうがいいのかよ
姫月,や! やだ! 言うっ……! 言うからぁ……!!
姫月,……………っつ……っふ………
誠,ひーめき?
姫月,あ……あぅ………あ………
姫月,……ひ、姫月の………ぐちゃぐちゃな……いやらしいおま○こを……見て、下さい……お、お願いします……
誠,そんなにどこ見られたいのか、自分で見せながら言えよ
姫月,っつ……ぅ………
俺の言葉を聞いた姫月は、細い指を自分の秘所に這わせ左右に割り開く。
姫月,こ、ここ……姫月の……お、おま○こ……見て、ほしい……です……
通行人,うわぁ……。こ、こんな可愛い子がこんな卑猥な臺詞言うなんて……何? これ、AVの撮影か何か??
誠,はは。そんなんじゃないよ。こいつは自分から調教されたいって言ってきた変態なだけ
通行人,…………そ、そうなんだ……う、羨ましいな。こんなに可愛いのに……
食い入るように姫月の下半身を見つめる男は、ごくりと唾を飲み込む。
誠,そうだ。折角だからこの子の下の毛を抜いてあげてよ
通行人,え??
姫月,!!!??
誠,はは。こいつ変態だからさ、パイパンになりたいらしいんだよ
姫月,違……っ!! そんなの……!!
誠,姫月は黙っててくれるか? 俺はこの人と話してるんだから
姫月,っつ…………
誠,どう? 手伝ってくれる?
通行人,ま、マジで……?
誠,はは、マジマジ。ほら、毛抜き
俺は姫月の毛抜きを男に手渡した。
姫月,……………
通行人,じゃ、じゃぁ失禮しまーす
姫月,っく……………
姫月,ひぁっ!!!!
通行人,あは、可愛い聲だなぁ………
姫月,っひん……!!!
通行人,はぁ、はぁ、すごい……女の子の、下の毛抜くなんて……初めてだ……
姫月,はぅっ!! ふぁ……、は、はぁ……
姫月,ひっ……! う、んんっ……はぁ、あ……あ……も、や……ぬ、抜いちゃ、やぁ、あ……
通行人,うわ……な、何かおま○こからすごいいっぱいおツユが出てきたよ……
誠,はは。だからこいつ、こんな顔して変態なんだって。クリも一緒に弄ってやったらすぐイくんじゃないかな
姫月,っひ! や!! やめ……!!!
俺の言葉に、男は待ってましたと言わんばかりに姫月の小さな豆へと手を伸ばした。
姫月,ひゃああああ!! あ!!! あ!!!
男の無骨な指が姫月のクリトリスを摘み上げると、姫月は大きく身體をビクつかせた。
姫月,や! やぁ、あっ、あ……! やめ、て……やぁあ……あ、あっ!!! く、クリッ、觸っちゃ駄目ぇえ……!!
通行人,す、すごいヌルヌルでぷにぷにだ……
にちゃにちゃと粘膜質な水音を立てて、男は何度も姫月の豆に指を走らせる。
誠,そっちばかりじゃなくて、毛も抜いてやれよ
通行人,あ、あぁ……そ、そうだね……
姫月,っひ!! 嫌っ……!!
姫月,やぁあああああ!!! あっ! あっ……!!
誠,はは、楽しそうだなぁ
男の左手がクリトリスを執拗に弄り回し、右手で恥毛を抜き去る。
姫月,い、やぁ、あっ……! やぁ、あ……や、やめてぇえ……やら……ぐりぐり、するの……やぁあ……!!
姫月,ひぅうう!! やーー!! も、や……抜いちゃ……らめな、の……らめぇえ……!
通行人,はぁ、はぁ、はぁ、すごい……すごい……
びくびくと跳ね上がる姫月を見て、男は隨分と興奮しているようだ。
姫月のことなどお構いなしに、男は思うままに左右の手を動かし続けている。
姫月,ひぅ、っや……やぁ、あっ……も、らめ……や……やぁあ……い、イっちゃ……やらぁああ
誠,へぇ。毛抜かれながらイくとかなかなか面白いな
男が一心不亂に毛を抜いているおかげで、姫月のそこにはもうほとんど茂みは殘っていない。
姫月,ひゃぁあん!!! あっ! あっ! あぁ!!
通行人,イきそう?? イっていいよ??
男はそう言うと、クリトリスの上を前後させる指の動きを早くしていく。
姫月,ひぅうう!!! んぁ、あ!! や!! ら、めぇえ!! も、やぁ、やぁああ……!!
姫月,やぁら………!! や……あ、あにき……助け……やぁああ!!!
姫月が俺に助けを求めるように手を伸ばすが、それはただ空しく宙を摑むだけだ。
誠,はは。良かったな、姫月。すごく気持ち良さそうじゃないか
姫月,っひ……、や!! いやぁ!! あっ!! やぁっ、も、やらぁあ……っ!!!
通行人,はぁ、はぁ……あは……あと3本だよ………
殘り少なくなってきたところで、男はカウントダウンを始めた。
姫月,ふぁっ、あっ、あっ!! やぁ、あ!! あぅっ……あ、あ、んん!!! やらぁああ!! も、やめてぇえ!!!
通行人,はぁ、はぁ、はぁ……あと2本………
姫月,ひぁあああああ!! あ! あぁああ! やぁあ!!
敏感な豆を弄り回す指とちくりとする痛み。
姫月は涙と涎でぐちゃぐちゃの顔を左右に振り、言葉にならない聲を上げ続ける。
通行人,はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ふふ、こ、これでラスト………
姫月,やーーーー!!! あ………あぅ……! らめ……らめぇ……あ、あ……やっ、やぁあああああああああああああああ!!!
最後の一本が抜かれるのと同時に、姫月は一際高い聲を上げながら、びくびくと斷片的に身體を震わせた。
姫月,あ………あ………っふ、は……はぁ……はぁ……っひ……う、うぅ……うく……ぅ……
荒い息を吐きながら、姫月は聲を殺すようにして泣き始めた。
誠,……………
文句を言うでもなく罵るわけでもなく。
姫月はただひたすら涙を零し続けるだけだった。
;0scene 6日目(朝)
窓の外には、どこまでも鬱陶しいほどの青さをたたえる空が広がっている。
じんわりと汗ばむような陽気に俺は少しうんざりしてしまうが、雨よりかは幾分マシだと思い直した。
時計に目をやると、その針は8の數字を示している。
律儀に普段と同じ時間に目覚める自分の體が少し憎い。休日くらいゆっくり休んでおけという話だ。
誠,……よし、寢よう
姫月,あ~に~きぃ! もう8時だよ! そろそろ起きろー??
がちゃりと扉が開けられると同時に、やかましい妹の聲が響いた。
姫月,って、なぁんだ。起きてるじゃない
誠,お前はどうしてそうタイミング悪く、毎日毎日俺が二度寢しようと思った時にやってくるんだ
はぁ、と溜め息を吐くと、姫月の目がムッと釣りあがる。
姫月,たまたま手が空いた時間が、丁度そのくらいだからだよ。別に兄貴に合わせてるわけじゃないもん。てゆか折角起こしてあげてるのに文句言うな!
誠,いや、別に頼んでないし……
誠,ぎゃっ!!!!
口を開くたびに姫月の拳やら足やらが飛んできて、俺の體はぼろぼろだ。
誠,お、俺たちの世界には仙人の豆という便利な物はないんだから、ちょっとは手加減しろよ!!
姫月,何で?
姫月はきょとんと目を丸くし首を傾げる。
誠,や、何でって、普通は兄を足蹴にする妹なんていないだろうが
姫月,ここにいるじゃない。兄貴のくせに反論するなんて生意気ー
誠,………………
理不盡だ。とてつもなく理不盡過ぎて涙が出てくる。
誠,はぁ……。エッチなことしてる時とは、ホント別人みたいだよな……
姫月,!!??? な、何朝から変なこと言ってるのよ!!
ぽつりと俺の口から出た言葉をしっかりと拾い取った姫月が、顔を真っ赤にさせて怒り出す。
誠,いや、だってお前、昨日とか公園であそこの毛を抜いて挙句の果てにイッちまったってのに、寢て起きたらけろっとしてるじゃん
姫月,ななななななななっ…………!!!!
俺の言葉に、姫月は目を見開きわなわなと肩を震わせている。
ぱくぱくと空気を吐き出すように動く唇はまるで金魚のようだ。
誠,女っていうのはみんなこうも切り替えが早いもんなのかねぇ。こうやって怒鳴り散らすお前を見てると、あのエッチな姫月は夢だったんじゃないかって思えてくるわ……
姫月,ゆゆゆ夢なんかにしないでよ! あ、あんな、や、やらしいことしておいて!!
誠,ふむ。それじゃ、今日もしっかりエッチなことをしてみようか
姫月,………………
誠,ん? どうした? 何でそんないやそうな顔をしているんだ?
姫月,い、嫌に決まってるでしょ!? そ、そんなこと堂々と宣言しないでよ!
誠,はは。何を今更。ほらほら、それじゃぁ行くぞ
姫月,どこへ!??
誠,休みの日に出掛けるなら選択肢はひとつ!
オタクの聖地.秋葉原だ!
普段は買い物は通販で済ませてしまう俺だが、コミケ會場と秋葉原だけは別である。
俺の愛してやまないアニメやエロゲが星の數ほどあるこの土地は、まるで街全體が大きな寶石箱のようじゃないか。
姫月,ここが秋葉原かぁ……
誠,うん? 何だ、お前アキバに來たことないのかよ
姫月,ないよ。だって別に用ないし
誠,………………
ここ以上に楽しい街はないと思っている俺の橫で、我が妹は冷靜な目であたりを窺っている。
まぁ、俺だってリア充がうようよいそうな渋穀や六本木には寄り付こうとしないもんな。
用事がない、と言われてしまえばそれまでなのだ。
まぁしかし……。
誠,暑いな……
そういえば家を出る時に見ていた天気予報で、今日は午後から暑くなるって言っていたな……。
姫月,確かに暑いねー。しかも周りの人たち暑苦しいのばっかじゃん。見てるだけで暑苦しい
姫月,ふぃ~~……。で? ここに何買いに來たのよ
姫月が手で顔を扇ぎながら俺の方に向き直る。
誠,まぁ色々あるんだが、それじゃぁ姫月。命令だ
姫月,え? 何? 何買ってくればいいの??
誠,まぁ色々あるんだが、それじゃぁ姫月。命令だ
姫月,?? 何? 私に何か問題ある???
誠,大問題だ! 暑い中そんなキャミソールの上にパーカー著てたら蒸れて大変だろ? 耐えられないだろう??
姫月,へ? や、いや……別に耐えられないことはないけど……
誠,いや、こと日本の夏においては濕度の高さから熱中症になる人間が多い! それは室內でも同様にだ!
誠,それ即ちそんな風に重ね著していては汗が霧散することなく中に溜まって非効率的である!!!
誠,よって脫げ! 今すぐ脫げ! さぁそれを脫げ!!!
姫月,………………
俺の力説(まぁ適當な言葉を並べ立てただけだが)に、姫月は蔑むような視線を送ってくるだけだ。
誠,ふむ……。パーカーを脫ぐのは嫌なのか……。それじゃぁ仕方ないな。その代わりにズボンを脫いで笑顔でピースをしてみるんだ
姫月,はぁあああ????? なな何言ってんの??? 頭沸いたの??
誠,俺は至って正常だ。正常に健全にパンツが好きだ! というわけで脫いでみろ
姫月,……………
何だか姫月の視線が痛いが、周囲からは微妙に拍手をされているような気がする。
これはアキバ住民の民意を得たということなのだろう。
姫月,あ、兄貴が、その……ぱ、パンツ好きなのは、わ、分かったけど……!! こ、こんな大勢の人が見てる前でズボン脫げる訳な
い!!!
誠,大丈夫だって。暑いんだから、ズボンぐらい脫ぐ奴もいるよ
姫月,いるわけないでしょ!!!?? 馬鹿!!? 馬鹿なの!!??
誠,いや、馬鹿も何も俺が露出もの好きなこと知ってるだろ?
姫月,そ、それは知ってるけど……
誠,じゃぁ脫げよ。ほら、お前の好きな奴だって露出プレイ大好きかもしれないだろう?
姫月,うぐ…………
お決まりの脅し文句を言うと、姫月は言葉をなくしてしまう。
誠,さぁ、どうする?
姫月,っつ……ぬ、脫げばいいんでしょ……脫げば……
悔しそうな顔でギッと俺を睨みつけながら、姫月がズボンに手をかける。
だがそこで凍り付いてしまったかのように、姫月は微動だにしなくなってしまった。
誠,はぁ……、なんだよ。いつも偉そうに言っておきながらこんなことも出來ないのか?
姫月,っつ!!! で、出來るもん!! 出來るもん!!! このくらい出來るんだから!!! 馬鹿にするなぁ!!!!
そう言い放ち、姫月はずるりと履いていたズボンを脫ぎ捨てる。
白いパーカーの下から伸びる真っ白な足とパステルチェックのパンツが綺麗に晴れ渡った青空の下に曬された。
男A,え? あの子何で下脫いでんだ?
男B,ぱ、ぱんつ丸見えだお……純白ぱんつ萌え萌えだおーーww
姫月,っく……こ、このくらい、何でもない……何でもないんだから……!!!
通行人たちが口にする言葉に、姫月は頭を橫に振り恥ずかしくないのだと暗示をかけるように呟いている。
姫月,ほ、ほら。あ、兄貴の希望通り、ちゃんと脫いだでしょ!??
誠,うん、そうだな。それじゃ、寫メ撮るから笑顔でピースを頼むぞ
姫月,っぐ……
誠,ほらほら、はい。チーズ
姫月,っつ………ちぃー、ずぅ……
気の抜けるような軽快な音とともに寫メを撮るが、姫月の顔は引きつっていてとても笑顔とは言えない代物だ。
誠,ふぅ……。お前の笑顔はどうしてそんなに固いんだ……
姫月,だっ、だって仕方ないじゃない!!!! こ、こんなトコでパンツ出して歩いてるなんて、どう考えてもおかしいんだから!!!
誠,失格だ。そんな考えでは俺の調教に付いてくることは出來ないぞ
姫月,付いていってるじゃない! ず、ズボンだって脫いだし笑顔でピースもしたもん!!!
誠,どこがだ?? 少なくともお前の今の顔は笑っていない。よって罰を與える! パンツも脫げ!!!
姫月,罰って何よ!!! 何でそんな得意げに言ってんの!? ちゃんとやったもん!!!
誠,失格といったら失格だ。それに暑いならいっそパンツも脫いだほうがスッキリするだろう?
姫月,スッキリするわけないでしょ!!!?? こんな所でパンツ履かずに歩くなんておかしいに決まってる!!!!
誠,いやいやおかしくなんてないぞ。何故なら俺はトップレスよりボトムレス派だからだ
姫月,何ドヤ顔で言ってんのよ!! 意味分かんない!! どうして今の會話からそういう言葉が出てくるのよ!!
誠,いや、寧ろ俺は何故お前は分からないんだと言いたいぞ。 考えてもみろ。テレビの放送事故でぽろりはあっても、下半身が露出されるということは一切ないだろう??
誠,よって冷靜に分析すると、トップレスよりもボトムレスのほうが希少性が高いと言える! それゆえ俺はボトムレスを推奨するの
だ!!!
誠,さぁ、このまま調教を続けたいなら脫げ。そのパンツの下に隠しているものを今ここで解き放つんだ!!!
姫月,馬鹿馬鹿馬鹿ぁあああ!!! ないよ! 隠してるものなんてないよぉ!!!
誠,じゃぁ良いじゃないか。ほら、今度こそ笑顔でピースするんだぞ?
姫月,うぅうーーー!!
俺の必死の説得が功を奏したのか、姫月は顔を真っ赤にしてパステルチェックのパンツに手をかけ、そして一気に脫ぎ捨てた。
つるんとした割れ目が姿を現し、周囲から歓聲が上がる。
男A,すげ……パイパンだよパイパン!!
男B,つ、つるつるま○こ、すごいんだお。マジすごいんだお
誠,はは、みんなお前のま○こに釘付けだな。あ、寫真は撮らないで下さいねー
寫真に収めようとする男たちに聲をかけると、彼らは渋々ながらも納得してカメラを収めてくれた。
姫月,っく……!! 見ないで……見ないで……!!!
誠,ほらほら、駄目だぞ姫月。笑顔笑顔。はい、チーズ
姫月,え、え……???
俺のかけ聲に合わせて、かろうじてピースサインはするものの、姫月の顔は先ほどよりも更に酷いものになってしまっていた。
引きつった笑顔どころかすっかり強張ってしまっているのだ。
誠,はぁ……。お前は笑顔すら作れない奴なんだなぁ……。スケートでいつもみんなに見られてるんだから、このくらい平気だろう?
姫月,へ、平気なわけないでしょ!!?? スケートの時は衣裝著てるんだから!!
誠,まったく、あぁ言えばこう言うし。お前は本當に俺の調教を受けたいと思っているのか?
姫月,お、思ってる……もん……。じゃなきゃ、誰がこんなこと……
誠,ふむ。しかしなぁ……。さっきから俺のお願いごとはことごとく無視されてるわけだし、イマイチ信じられないよなぁ
姫月,お願い聞いてるじゃない!! 何言ってんの!!?? こんな格好させといて信じられないとか信じらんない!!!
誠,いやいや、そんな言葉遊びをするつもりはないぞ?
姫月,私だってしないもん!!!!
誠,でも笑顔でピースはしてくれないじゃないか。それで信用しろって言われてもなぁ。あぁ、そうだ。じゃあそのパーカーとキャミソールとブラも脫いでみろよ。そしたら信用出來るかもしれないぞ
姫月,何でそうなるのよ!!! それってわわ私にぜ、全裸になれって言ってるわけ!!??
誠,いや、全裸じゃないぞ? ニーソと靴は履いてても良いんだから良心的だろう?
姫月,馬鹿ーーー!!! そんな問題じゃないの!!! 今の段階だって恥ずかしいのに、何でそんなことしなきゃいけないのよ!!
誠,何でって、調教だからだろ??
姫月,~~~~~~!!!!
誠,ほらほら、脫いで笑顔でピースやってみろよ。じゃないと、俺はこの先姫月を本當に調教しても良いものか分からなくなりそうだよ
誠,お前だって好きな奴に気に入られたいんだったら、そのくらいの覚悟は見せないとな
姫月,うぅーーー!! 酷いよぉお……
誠,酷くない酷くない。よくあることだって
にこにこと笑って言うと、姫月は戸惑いながらもパーカーを脫いだ。
そしてキャミソール1枚となり、それも脫ぎ去ると白いブラジャーが現れる。
男A,ブラ1枚か~~淒いなあの子。マジで脫いだ
男B,ふぉお……やばいおやばいお。あの子色んな意味でやばいお!
姫月,っく……み、見ないでよ変態!!! あっち行けぇ!!!
男B,ぷふー。変態おにゃのこに変態言われちゃったお。もう一回罵ってほしいんだお-^^
姫月,うぅううう馬鹿! 変態! 見るな死ね!!!!
姫月が泣きそうになりながら周りのギャラリーたちに向かって怒鳴るのだが、その聲はか弱く震えていて全く怖くない。
誠,はいはい。そんなに怒鳴ってないで、ブラも取ってしまえよ。全部脫ぎ捨てたら楽になるぞ
姫月,ならない!! もういいから服返してよぉ!!
姫月は恥ずかしさの限界を超えたのか、駄々をこねる子供のようにわめき散らしている。
誠,はは、そんなに聲を上げているとますますギャラリーが増えるだけなんだけどなぁ。姫月はやっぱり見られるのが大好きなんだな
姫月,っひ!!!?? ち、違う!! そんなわけない!!!
誠,服を著たいんだったら早くブラを取って笑顔でピースをしてみろ。そうしたら渡してやるぞ?
姫月,うううーーー。馬鹿! 馬鹿!! こんな、こんなの……!!!
そう言いながら姫月は背中に手を回しブラジャーのホックを外した。
ぷちんとホックが外れ、ふわりとブラが浮き上がる。
姫月,く……!!
姫月はぎゅっと目を瞑り、ブラジャーをその腕から引き抜いて地面へと落とした。
アスファルトの上にパサリと落ちるとともに、大地を揺るがすような咆吼が辺り一帯から上がった。
男A,すげー! すげー!!! まさかこんな可愛い子の素っ裸見れると思わなかった!!
男B,かわいいおかわいいお!! 今日アキバに來てよかったお!! 感謝感激雨あられなんだおーー!!!
誠,それじゃ、姫月。服が欲しいなら分かってるよな?
姫月,え、笑顔で、ピース……すればいいんでしょ!??? と、撮るなら早くしなさいよ!!! ぐずぐずするなこの馬鹿兄貴!!!
誠,ははは。そんな格好での罵倒ならなかなか興奮して良いな
誠,それじゃ、寫真を撮るぞ。はい、チーズ
誠,ふむ……。相変わらずの固さだが、まぁ仕方ないか
姫月,じゃ、じゃぁ早く服頂戴!!! も、無理! ホント無理!!!
誠,うむ。ま、約束は約束だもんな。ほら、衣裝だ
俺は予め用意しておいた紙袋に入った衣裝を姫月に手渡す。
姫月,い、衣裝……??? あ、兄貴が持ってる私の服のほう頂戴よ!
誠,駄目だ
姫月,な、何でよ!!! 言われた通りやったんだから返してよ!!! 約束でしょう!!??
誠,俺は渡してやるとは言ったが、どの服をとは言っていないぞ。それに、少なくとも今の狀態よりはその衣裝のほうがマシだと思うが?
姫月,っく……
誠,何だ? 衣裝よりも素っ裸でいたいのか? まぁそれはそれで面白いから俺は構わないが……
姫月,っつ……!!! 著るよ! 著ればいいんでしょ著れば!!??
誠,はは、素直なのは良いことだ
例えどんな衣裝でも、裸よりはマシだという結論を下したのだろう。
姫月は慌てたように紙袋の中を探り始め、無我夢中でその衣裝に腕を通していく。
姫月,っつ……
露出多めの、黒色を基調としたゴシックロリータ風衣裝だ。
ひらひらとした黒いドレスの胸元と背中は大きく開いていて、首筋で結ぶリボンがポイントになっている。
紙袋の中に同梱していた貓耳カチューシャも姫月によく似合っており、我が妹ながら(見た目だけは)完璧である。
姫月,ちょ、ちょっと露出が激しいけど、でもないよりはマシだし……
ぶつぶつと姫月は文句らしき言葉を口にするが、とりあえず先ほどまで裸でいた女に露出雲々について言及する資格はないように思う。
誠,うん、その衣裝もよく似合ってるよ。姫月
裸のほうが面白いけど、とは心の中で思うだけにしておこう。
毆られたり蹴られたりしては困る。
そう判斷した俺が褒めてやると、姫月は眉を寄せながら心底嫌そうな顔をした。
誠,はは。そんな嫌そうな顔をするなよ。ほら、次の場所に行くぞ
姫月,ちょ、ちょっと……!! ど、どこに!!
まごつく姫月の手を取り、俺は目的の場所に向かって歩き始めた。
;0scene 6日目(晝)
姫月,あ、兄貴……。こ、ここって……
誠,うん? 何を隠そう、俺の愛するゲームたちを販売しているお店だ
二次元の可愛い女の子たちが白濁に[塗/まみ]れた姿で描かれたポスターや抱き枕.シーツが飾られ、棚には卑猥なタイトルのゲームが所狹しと並んでいる店內。
姫月,……げ、ゲーム買うなら、は、早く買ってきなさいよ……ま、待ってるから……
誠,うむ。買うことは買うが、その役目はお前にしてもらおうと思う
姫月,は? 何で私がそんなこと……!!!
誠,これも立派な調教メニューのひとつだぞ。ほら、欲しいゲームをメモに書いておいたから店員に探してもらえ
ただし、メモを渡すのではなく口で伝えるのだぞ、と付け加えて俺は姫月にメモを渡す。
姫月,?? って……な、何よこれ!!!!
猜疑的な目で俺を見ていた姫月だが、メモを受け取った瞬間、目を丸くして顔をひくりと引きつらせた。
誠,何って、欲しいゲームのタイトルだが?
姫月,そ、そんなの兄貴が自分で探せばいいじゃない!
誠,はは。分かってないなぁ。女の子が恥ずかしそうに卑猥なタイトルを口に出すことが大切なんだ
誠,それに、俺は俺で別に欲しいものを探さなければならないからな! 別々に探したほうが効率が良いだろう?
誠,ほら、つべこべ言ってないでさっさと探しに行けよ
姫月,く……っ、わ、分かったわよ……
悔しさに身を震わせながら、姫月はひとりレジに向かって歩き始めた。
肩と背中を剝き出しにした服裝で闊歩する美少女(性格はどうあれ)の存在に、ゲームのパッケージを持っている周囲の男たちが気まずそうに目を反らす。
俺は捜し物をするふりをして、レジが見える場所を確保し、姫月の様子をこっそりと窺うことにした。
姫月,あ、あの……すみません!
店員,は、はい? 何ですか??
リアル女の存在そのものが珍しい空間。そんな中で(顔だけは)アイドル級の美少女が話し掛けてきたことに、店員は驚きを隠せない様子だ。
姫月,あ、あの……げ、げぇむ、欲しいんです、けど……
店員,は、はい! お探しの、ゲームのタイトルは分かりますか??
姫月,うぅ……え、えぇと……その………、この、………と、………と、……が、欲しいんです、けど……
店員,え、えーと……大変申し訳ありません。少々聞こえ辛いもので、あともう少しだけ大きな聲で……
姫月,う~~。あ、う……『きょ、きょー……先生、お、お嬢さま……ぜ、……もん、つ……地獄、編』と……
姫月,『わ、私はみんなの、に……嗚呼、う、麗しき、は……世界』と『に、しんしょくひん、ざ……一丁』を、く、下さい!!
店員,え、えーと……大変申し訳ありません。少し聞こえないのですが……
恥ずかしがって大きな聲で言えない姫月に、店員が問いかける。
わざとなのかは分からないが、店員グッジョブと言わざるをえないだろう。
姫月,うぅう~~~! 『きょ、狂頭先生~お嬢さま絶頂悶絶地獄編~』『私はみんなの肉便器 嗚呼、麗しき孕ま世界!』『妊娠食牝.ざぁめん一丁』が欲しいんです!!!!
やけになったのか、姫月は叫ぶようにエロゲのタイトルを早口で捲し立てる。
美少女の口から発せられた卑猥な単語の數々に、店內にいた男性客全員がぽかんとレジのほうを見ていた。
店員,あ、は、はい! その3本でしたらございますよ。少々お待ち下さいね!
姫月,~~~~っつ
店員がわたわたと慌てたようにその場を離れ、姫月の口にしたタイトルのゲームを探しに行った。
誠,はは、なかなか思い切り言い切ったなぁ。店の中の男連中全員が姫月に注目してるぞ
姫月,だ、だってあの人が、ちゃんと聞き取ってくれなかったんだ
もん!!!
誠,うん、そうだな。なかなか興味深いやり取りで面白かったよ
姫月,お、面白いとか言うな! 私は全然面白くなんてないんだから!!!
耳まで真っ赤にした姫月が怒鳴り散らしていると、ゲームを持った店員が急ぎ足で戻ってきた。
店員,お待たせ致しました。こちらの3本の商品でよろしかったですか?
姫月,あ……ぁ………
店員が見せてきたゲームは、パッケージから既に匂い立つような大量の精液[塗/まみ]れの女の子たちが描かれていて卑猥なことこの上ない。
それらの絵を見た途端に姫月は聲をなくしてかくかくと口を小さく動かすだけだ。
誠,どうなんだ? メモのタイトルと合ってるか確認しないと
姫月,な、何で私が……! あ、兄貴の買い物なんだから、兄貴が確認すればいいじゃない!
誠,俺はお前に買ってきてくれって頼んだんだ。頼まれた仕事は最後まできちんとやり通さないと立派な大人になれないぞ
姫月,っつ……変態!!!
そう毒づいて、姫月は顔を背けながらもメモとパッケージに書かれたタイトルを確認していく。
姫月,うぅ……気持ち悪いよぉ…………
誠,気持ち悪いとか言うなよな。俺たちオタクのバイブルだぞ??
姫月,く………
店員,いかがです? こちらで合ってますか?
戀人同士の特殊プレイだと思ったのだろう。
初めの頃の慌てっぷりが噓のように、レジ前に立つ店員はにやにやと嫌らしい笑みを浮かべながら姫月の様子を観察している。
姫月,だ、大丈夫です。この3本で、間違いありません
店員,お買い上げでよろしいですか??
誠,はい、よろしくお願いします
店員,ありがとうございます。3本で21,540円です
誠,じゃ、これで
俺はゲームソフトを受け取り、店員に1萬円劄を3枚渡す。
店員,では8,460円のお釣りになります。ありがとうございました
誠,ほら、姫月。お前受け取れよ
姫月,え? あ、う、うん……
俺に促され姫月はその店員からお釣りを受け取った。
誠,……それだけ?
姫月,え……? な、何が……??
誠,頼まれたものを一生懸命探してきてくれて、販売してくれたこの店員さんに、お禮はしないのかってことだよ
姫月,そ、そんなの、だって、私が欲しい物じゃないし……!
誠,それでもお前がこの店員さんの貴重な時間を奪ったのは確かだろう? お前にはそういう心遣いはないのか?
姫月,っく……。さ、探して來て下さって、ありがとうございました! 助かりました!!
誠,何だ、その投げやりな言い方は。お禮すらまともに言えないとか、お前いくつだよ
誠,仕方ないなぁ……
姫月,え……??? ひ????????? きゃあ!!!
店員,え? ええ???
俺はスッと姫月の肩口へと手を伸ばし、胸を隠している布をはらりと外す。
途端に姫月の形の良いふたつの膨らみが俺と店員の前にさらけ出された。
誠,おっと。胸を隠すなよ。言葉でお禮が言えないなら、態度で示すしかないだろ?
姫月,い、言ったもん!! ちゃんとありがとうございましたって言ったじゃない!!!
誠,馬鹿か。上っ面だけの感謝なんてされても嬉しくないだろ。お禮は心を込めて行うものだ
誠,ほら、お禮にこう言って觸ってもらえ
俺は姫月の耳元でこそりと呟く。
姫月はその言葉に悔しそうに唇を噛むが、やがて決意したかのように口を動かした。
姫月,さ、さっきはありがとう、ございました。お、お禮に、わ、私の……おっぱいを、す、好きなだけ、觸って下さい……
店員,えぇ??? ほ、ホントに??? ホントに觸っちゃっていいの???
姫月の言葉にテンションが上がったのか、店員が敬語も忘れて聞いてくる。
誠,はは、どうぞ。好きなだけ觸って欲しいらしいので
姫月,っつ………
店員,そ、それじゃ……遠慮なく……!
姫月,っく………!!
男の手がその重さを確認するかのように、ふにりと柔らかい姫月の乳房を持ち上げる。
店員,や、柔らかい………
姫月,っふ、ぁ………や………
店員は嬉しそうな顔をして柔らかな弾力や手觸りを楽しんでいる。
時折乳首に指を這わせながら、ふにふにと柔らかい胸を揉みしだく。
姫月,っひ、んっ………は……
コロコロと転がすように乳首を捏ねられながら、乳房全體を揉み込むように男の手が蠢く。
きゅっと乳首を摘まれるたびに、姫月の身體がぴくりと小さく反応して、少しずつ息が荒くなっていく。
姫月,は、は……や、だ、駄目……そ、こ、そんなに、しちゃ……
店員,ど、どこが駄目なの? 何したら駄目なの??
はぁはぁと荒い息を吐きながら店員が尋ねると、姫月は嫌々をするように頭を左右に振る。
誠,姫月、ちゃんと答えないとお禮にならないだろう??
姫月,………っひ、うう、ん、ん……ち、乳首……コリコリ、したら……ぞくって、しちゃって、だ、駄目……なの……
店員,それは乳首を弄られると気持ち良いってことかなぁ??
姫月,き、気持ち良く、なんて……ない、もん……こんな、觸られたって、き、気持ち悪いだけなんだからぁ……
店員,えぇ?? そ、そうなの?? お、俺に觸られるの気持ち悪い???
姫月が感じているのは火を見るより明らかではあるのだが、この店員は『気持ち悪い』という言葉をそのまま受け取ってしまい手を動かすのをやめてしまった。
誠,こら、姫月。噓言っちゃだめだろう? ちゃんとおっぱい弄られて気持ち良いって言わないと
店員,え? ホント? ちゃんと気持ち良い??
姫月,っく……、き、気持ち、いい……お、おっぱい、弄られて、気持ち良いから……も、もっと、觸って下さい
店員,わぁ……き、君みたいな可愛い子にそんな風におねだりされるなんて幸せだなぁ……い、いっぱい觸ってあげるね!!!
姫月,っひ………!!!!
そう言って店員は両手で姫月の乳房を鷲摑み、荒々しく揉み始めた。
姫月,っひ……!! や、い、痛いっ!! あっ、あっ、んんっ……!!
姫月,は、はぁ、あ……や、ち、乳首、引っ張っちゃ……駄目っ!! い、痛……!!!
男の指と手が姫月の両の乳房を牛の乳を搾るような動きで、下から上へ持ち上げるように揉み込む。
姫月,ふぁ、あっ、あっ、あっ、だ、駄目……駄目……そ、な……えっちな、觸り方、しちゃ、駄目ぇ……
店員,気持ち良い?? 気持ちいい?? お、俺も觸ってるだけでイっちゃいそうだよ……
姫月,ん、んんっ、や……あ、嫌ぁ……駄目……駄目、あっ、んんっ、んっ、んーーっ!!
店員,はぁ、はぁ、マシュマロおっぱい、すごい可愛いよ……綺麗だよ……
姫月,や、やぁ……そ、なこと、言う、なっ……!!! ひゃんっ、んんぅ、あっ、やぁ……!!
姫月,ふ、はぁ、あ……あ、や、も、ち、乳首ばっかり……やぁあっ、んんっ、んーーっ!!!
男A,うわ……何やってんだあいつら……あの子乳丸出しじゃん
男B,何だよあの店員。仕事中なんだろ?? 俺と変われっつの
姫月と店員の行為に、わらわらと他の客達が集まってくる。
そろそろ場所を移動しないとまずいな。
誠,姫月。そろそろ次の場所に行くぞ
姫月,え……?? ふ、ふぁ、あっ、や……ま、待って……
とろりと目を潤ませて、店員の施す愛撫を受け入れていた姫月が、俺の言葉にハッと我に返ったように胸をまさぐる手を払いのける。
姫月,兄貴っ! ま、待ってってば!
はだけられた胸元を直しながら慌てて俺の後を付いてくる姫月と、周りの男達に聞こえるように、俺は聲を張り上げた。
誠,それじゃ、公園にでも行ってエロゲをプレイしようか
姫月,え……
誠,姫月は今までエロゲというものをプレイしたことがないだろう? 何事も経験だ。ほら、行くぞ
後をこっそりと追いかけるかのように付いてくる他の客たちを確認して、俺は狹い店內を後にした。
;0scene 6日目(晝)
俺と姫月は秋葉原から少し歩いた場所にある公園に向かって歩く。
女性A,うわ……何あの子。何であんな服裝してるの?
女性B,何かのイベントがあるのかなぁ
姫月,っつ………!
秋葉原を歩いていた時には気にならなかったが、一歩外に踏み出してみると途端に周囲からの奇異の視線が俺たちへと集まる。
まぁ、姫月は見た目だけアイドル並だし、そんな奴がこんな派手な格好してたらみんな見るよなぁ……。
姫月もその視線に気付いているらしく、恥ずかしそうに肩を震わせた。
ちらりと後ろを見ると、數人の男達が先ほどのゲームショップからぞろぞろと列を成して付いてきている。
姫月,ね、ねぇ。兄貴……なんか、さっきから変な人たちが付いてきてるみたいだけど……
誠,あぁ、姫月は気にしなくていいよ……
俺はそう姫月を言いくるめ、公園の中へと足を踏み入れた。
日曜ということもあり、公園內は家族連れや友達同士で遊びに來ている人たちで溢れている。
誠,さて。ここら辺でいいか
少し奧まった場所にベンチと機を見つけ、俺は持っていたリュックサックからノートパソコンを取り出す。
姫月,あ、兄貴……何するの? ほ、ホントにこんな外でゲームを始める気??
誠,あぁ、當たり前だろう? さっきも言ったじゃないか。一緒にエロゲをしようって。ほら、ゲームはやっぱりみんなでプレイしたほうが楽しいだろう?
姫月,げ、ゲームって言っても、兄貴が言ってるのは、その……女の子にやらしいことする、ゲームなんでしょ? わ、私そんなのしたくないもん……
誠,何を言ってるんだ。エロゲをプレイすることによって様々なアブノーマルなものに対する知識や耐性が付くのだから、寧ろ自ら進んでプレイするべきだぞ
姫月,う……そ、そんなこと、言われても……
誠,まぁそう固く考えるな。少なくとも裸で町中を歩き回るよりはエロゲをプレイするだけのほうが良いんじゃないか?
姫月,うぐ……た、確かにそうかもしれないけど……
誠,そうだろ? それじゃ、ほら。座って座って
戸惑う姫月をベンチへと座らせ、俺はパソコンの電源を入れた。
可愛らしい女の子たちのいるスタート畫面から、俺はコンフィグを開きヒロインの聲をOFFにした。
誠,さて、準備も出來たから姫月にバトンタッチだ
姫月,うえ、え……?? で、でも、これどうすればいいの??
誠,うん? 普通にSTARTボタンを押してプレイすればいいだけだよ。ノベル形式だからクリックして読んでいけばいい
誠,あぁ、だけど、周りのみんなに聞こえるように姫月が音読してプレイしてくれよ?
姫月,っく……わ、分かった、わよ……
姫月はそう言って、パソコンの畫面に向き合った。
マウスで操作しながら畫面をめくり、ヒロインの臺詞を音読しながらゲームを進めていく。
姫月,えぇと……え?? 『太郎さんの言葉に、私の頭の中に疑問符が駆け巡るけれど、どれだけ考えても一向に答えは出てこない』
姫月,『ご、ごめんなさい……。太郎さん、こんな時にどんな顔をすればいいのか、分からないの……』
誠,…………………………………
……ま、まぁ棒読みになってはいるが、この辺りはそれで許してやるか……。
こいつは聲優でも何でもないんだしな。それにこのゲームの本領はこれから発揮されるのだから。
開始直後こそ普通のゲームではあるのだが、抜きゲーらしくすぐに成人向けな內容になっていく。
そしてそういう內容になっていくにつれて、そのテキストを音読する姫月の聲も小さくなっていった。
誠,駄目だよ。姫月。ちゃんと読まないと、周りのみんなが聞こえないだろう?
姫月,っつ……。『に、にやりと人の悪い笑みを浮かべ、太郎さんは音を立てて、私の首筋に、胸元に、お腹に口付けを落としていく。』
姫月,『柔らかな感觸が何ともくすぐったくて、私は思わず身體を捩ってしまった。』
姫月,『んん、ぁ……た、太郎さん……』
姫月,『ドキドキと、心臓がまるで早鐘のように鳴り響き、私は自分の気分が高揚していることに気付いた。』
姫月,『はぁ、あっ、あ、駄目です……太郎さん、そんな風にされては……』
姫月,『太郎さんの指が私の胸の飾りに觸れた瞬間、私は息をつめて無意識にそれから逃れようと身體をくねらせる。』
姫月,『た、太郎さんが指で胸の突起を転がしたりひっかいたりする度に……』
姫月,『私の身體はびくびくと痙攣し、恥ずかしいほどの反応を示してしまった。』
姫月,『ここを弄られるのが好きなの? と聞かれて……、私は、あまりの恥ずかしさに、思わず……顔を伏せて、しま、った……』
姫月,『もしかしたら、こんな風にいやらしく、喘ぐ、……私に……呆れてはいないだろうか、と不安に胸が、押しつぶされ、そ、う……』
かちかちと畫面をクリックしながら音読している姫月の息が上がっていく。
もじもじと太ももを擦り合わせるように何度も座り直し、落ち著きがないように見える。
誠,はは、エロゲをプレイして興奮してきたのか?
姫月,そ、そんなわけないでしょ!!??
誠,そうか……じゃぁ、ここを弄りながらでも姫月は普通に朗読出來るよな?
姫月,え? あっ!!??? やっ!! だ、駄目っ!!!
俺は黒いスカートをめくりあげ、姫月の足の付け根へと手を差し込んだ。
誠,くく。濡れてるじゃないか
つるりと指を滑り込ませた割れ目は、既にぐっしょりと濡れそぼっている。
姫月,っひ……い、嫌……やめて……
誠,ふん。いいよ。嫌ならやめてあげるよ。その代わり、周りのみんなに觸ってもらおう
姫月,やっ!! 嫌だ! そんな……
姫月のそこから手を引いた俺の言葉に、今まで荒い息を吐くだけだった男達から歓聲が上がる。
男A,觸っていいの?? 俺らが觸っていいの???
男B,お、おま○まん觸っちゃうんだな!? クリクリしちゃうんだな!?
誠,はは、好きなだけ觸ってあげてよ。こいつま○こ弄られるの大好きな変態だからさ
姫月,ひっ……!!! そんなわけない!!! やめてっ、やっ、あっ、あっ!!!!
俺がそう言うと、周りの男達の無骨な手が一斉に姫月へと伸びる。
ぐちゅりと水音をさせて男の手が割れ目を擦りあげ、姫月の身體がびくりと震える。
姫月,っひ、やっ……いや……そこ、嫌……!!
誠,ほら、気持ち良くなってなってないで、ちゃんとゲームを続けろよ
姫月,あ、あぁっ、んっ……『た、太郎さんが、わ、私の……愛液に濡れた、クリトリスを、ちゅるりと舐めあげて……』
姫月,はぁ、は……『き、綺麗な、指を、私の膣の中へと埋め込んで行く……』んんっ、んっ、あ……
誠,姫月も指を入れてもらったらいいじゃないか
姫月,や、やだ……!! 指、痛いから、やだ……!!!
男B,だ、大丈夫なんだな。僕が優しく入れてあげるんだな
姫月,っひ……いやっ! いやあっ!!!
クリトリスを弄っているのとは違う男はそう言い、橫から姫月の下の口へと手を伸ばした。
姫月,ひぐっ!! あっ、やっぁあああああ!!!
ぐぶっと無理矢理內部へと押し入る音がすると同時に、姫月の口から悲痛な叫び聲が上がった。
慣れていないそこは指が入るのもかなり痛いらしく、姫月は目を見開きふるふると身震いしている。
姫月,やっ……やだぁ……い、痛い……痛いよ……!!!
誠,この間だってすぐに気持ち良くなったんだから大丈夫だよ。ほら、さっさとゲームを続けて
姫月,う、うぅ……ぐす……っひ……『わ、私は眉間にしわを寄せて目を瞑り、っは……し、靜かにその瞬間を待った』
姫月,っひ、んんっ、んっ、ふぁっ……あ……『気を遣っているのか、た、太郎さんはゆっくりと……わ、私を傷付けないように、身體を、っは……推し進め、た』
姫月,は、はぁ……『男の人の、物を……受け入れるなんて、初めての行為ではあったけれど……』
姫月,『い、痛みよりも、寧ろ……大好きな、は……人の物を受け入れることが出來たという、幸福感のほうが、大きい……』んんっ……
姫月,あっ、あぅ……や……『た、太郎さんの……息が、亂れ、はぁ、は……熱い、吐息が……私の心を亂して、いく……』
姫月,『中も、外も、気が遠くなるほどに熱くて、たまらない……。だけど、は……それら全てを、太郎さんが、私にっ……、與えて、くれている』
姫月,『身體の、奧の奧まで……突き上げられながら、太郎さんの手が、指、が……は、はっ……わ、私の乳房を、揉みしだく……』
姫月,『び、敏感な部分を、同時に……刺激されて、わ、私は意識が飛んでしまいそうなほどの、快楽に……びくんと、身體を震わせてしまう……』っは、ぁ……あっ……
姫月,『わ、私は……太郎さんのたくましい、ペニスを挿入されて、悅ぶ……卑しい、雌犬に……成り果てて、しまったのだ……』
姫月,っひ、やぁ……いや……あっ、あっ、駄目! 駄目!! 中、そこ、嫌ぁ……!!
姫月の豆を一人の男が擦り続け、一人の男が內壁をぐりぐりと蹂躙していく。
男A,気持ち良い?? もっと気持ち良くなっていいんだよ
男B,ぼ、僕に女の子がイくところを見せてほしいんだな
姫月,ひぅ、や、やぁ、ああ、駄目っ、駄目ぇえ……も、そこ、いじっちゃ、駄目なのぉ……
マウスを持つ姫月の手がぶるぶると震えていて、限界が近いことを物語っている。
姫月は幼子のようにぼろぼろと涙を零し、頭を左右に振る。
誠,ほら、姫月。朗読が止まっているよ。ちゃんと読まないと駄目じゃないか
姫月,う、うぇ……だ、だって……んん、ん……『た、太郎さんが私の、腰を……がっちりと摑み、まだ、息の整っていない私の身體を、激しく、上下させ始めた』
姫月,っや、やぁ、あああっ、あーっ、は、はぁ……は……『ず、ずぶずぶと、う、打ち込まれる、あ、熱い[楔/くさび]が……』あぁ、あっ、あっ
姫月,『わ、私の精神を蝕んで、いく……。む、無理矢理拡げられた肉壷は、す、既に……痛みよりも、快楽の、ほうを拾い、あげ……』ふ、ふぁ、あっ、あぁ、あああっ……!!! やっ……!!
姫月,やぁ、だ……も、やぁ……らめっ! らめぇ!! も、おま○こ、いじっちゃらめっ……!!!
姫月の切羽詰まったような聲に、男達の愛撫の手の動きが速くなっていく。
ぐちゅぐちゅと激しく律動する指に合わせて、姫月の腰がいやらしく動いていた。
姫月,やら、やらっ! イっちゃうの! そこ、おま○こ……クリと一緒に、くりくりされちゃ……らめ……っ
姫月,いやっ………いや! も、や……いやなの!! やっ、いやぁああああああああ!!!!
ぎゅっと目を瞑った姫月の身體がびくびくと、まるで電流が走ったかのように大きく跳ね上がった。
ぴんと張り詰められた身體が小さく痙攣を繰り返す。
姫月,っひ……は、はぁ、は……は……
淺い呼吸を繰り返し、姫月の身體から次第に力が抜けていく。
男A,イっちゃったの? 気持ち良かった??
男B,ぼ、僕の手マンが気持ち良かったんだな! きっとそうなんだな!!
姫月,ち、違う、も……ん!! き、気持ち悪い、こと……、言わないでよ!!!
俺自身が手を出していないからか、この光景を冷靜に見ることが出來る。
姫月がイったことは誰が見ても明らかで、例え本人が違うと言ってもそれは只の強がりとしか映らない。
そんな姫月を見て、俺は―――。
輪姦される姫月を見てみたい気がした
こんな風に沢山の男に弄ばれて、ぼろぼろになってしまった姫月の姿を想像してぞくりと鳥肌が立った。
もし、姫月がこのまま男達の玩具にされてしまったらどうなるのだろう。
生意気で、意地っ張りな妹が見ず知らずの人間たちに輪姦されてしまったらどうなるのだろう。
姫月の身體を幾つもの手が這っているのを見て、俺はそんな欲望に取り付かれてしまったのだった。
羞恥に頬を染める姫月は少し可愛いと思った
涙に頬をぬらしながらも、懸命に自身を保とうとしている妹の姿に笑みを零してしまう。
本當は怖いのに強がりを言う、虛勢を張る小さな子供のような頼りなさを感じた。
誠,(……いや、でも、あの姫月すら可愛いと思えてしまうのはきっと貓耳効果だな……)
一瞬でも姫月のことが可愛いと思ってしまった自分自身を否定するように、俺は頭を振った。
だけど、もう少しだけこのまま。
姫月との調教生活を楽しむのも悪くないのかもしれないと思ったのも事実だった。
;0scene 7日目_陵辱√_夜
誠,ふぅ。ご馳走様
姫月,お粗末さまでした
姫月の作った料理に舌鼓を打ち、俺は満腹になった腹をさする。
今朝は姫月に二度寢を邪魔されることがなかったため、全く眠くはない。
睡眠欲も食欲も満たされたなら、次に行うのは勿論アレしかないだろう。
誠,姫月。食後の運動に散歩でも行かないか?
俺は臺所で食器を洗っている姫月に聲をかけた。
姫月,別に、いいけど……
誠,それじゃ、洗い終わったら行こう
姫月,……うん
突然の俺の誘いに、姫月は怪訝な目をしながらも首を縦に振る。
そんな妹の姿に満足して、俺はソファーに戻り攜帯を弄った。
月の光に照らされた木々たちが、さわさわと揺れながら佇んでいる。
先日學園の帰りにやって來た時よりも幾分遅い時間のせいか、[人気/ひとけ]はほとんどない。
誠,………………
姫月,………………
しぃんと靜まり返った公園の中を、俺たちは二人並んで歩く。
そこには會話など何もなく、カツリカツリと足音だけが響く中、時折魚の跳ねる音が池から聞こえてくるだけだ。
ただ靜かに時が過ぎていき、ひんやりとした風が夏草の匂いを運んでくる。
誠,さて、と。そろそろいいか……
公園の中腹ほどまで來たところで、俺はつと立ち止まる。
姫月,……?
誠,姫月。今すぐここで服を脫いでみて
姫月,!!??
誠,散歩をしようって言っただろう? 姫月が犬になるんだ
姫月,え、で、でも……こ、こんなところで……
誠,大丈夫だよ。この間は學園內を裸で闊歩していたじゃないか
姫月,………………
俺の言葉に、姫月は悔しそうに眉を寄せて俺を睨む。
誠,どうした? やっぱりもう止めるか?
姫月,やめない……。やめないよ……。やめないけど……
姫月の目から大粒の涙が零れ落ちるのを見て、俺は何とも言えないぞくぞくとした快感が自分の內側からせり上がってくるのを感じた。
誠,うん、昨日も思ったけど、やっぱり姫月の泣き顔は可愛いな……。もっと泣かせてみたくなる
姫月,……わ、私の、泣き顔、可愛い、の……?
微笑みながら言うと、姫月は驚いたような顔をして俺を見る。
その表情には色々な感情が混ざっているように見えるが、俺には姫月が何を考えているのか分からない。
誠,ほら、脫いでみろ
そしてもっと泣いて、俺に縋り付けばいい。
姫月は涙を拭うこともせずに、自分のパーカーへと手を伸ばす。
パーカー、キャミソール、ズボン、と姫月はぶるぶると震えながら脫ぎ去っていった。
殘ったのは靴とニーソックスだけだ。
誠,姫月。今日のお前は犬なんだから、ニーソも靴も履いてちゃいけないだろう?
姫月,っつ……
優しく宥めるように言うと、姫月は唇を噛み締めながらも俺の言葉通りに動く。
靴とニーソを脫ぎ捨てた姫月は、生まれたままの姿で夜の公園に立っている。
姫月,これで、いい……でしょ……
誠,あぁ、良い子だね。姫月。それじゃぁ散歩をしよう
俺は姫月の真っ黒な首輪にリードを付ける。
誠,? 何してるんだ? ほら、早く四つん這いにならないと、犬にはなれないだろう?
姫月,!!?? や、そんな……
誠,だって二足歩行で歩く犬なんて、俺は見たことがないよ。それとも姫月はあるのかな?
姫月,な、ない、けど……。でも、でも、私……
どうやら四つん這いで歩くというのはよほど屈辱的なことらしい。
姫月は小さく左右に頭を振り、その場から動こうとしない。
誠,お前の好きな男がこういうプレイを好きだったらどうするんだ? やっぱり出來ませんって言うのか?
姫月,う、あぅ…………
誠,そんなに恥ずかしいのか? はは。こんな場所で素っ裸になっておいて、今更人間の尊厳も何もないだろう?
誠,ほら、いいから四つん這いになれよ
姫月,やっ……! 痛っ……!!!
姫月の頭を摑み、俺は無理やりその華奢な體を地面へと押さえつけた。
誠,はは、良い格好だな。姫月。ほら、そのまま手を付いて
姫月,うぅ……、こ、こんなの、やだ、よぉ……
そう言いながらも姫月は手と足を使って俺の橫を歩く。
4足歩行に慣れていないせいか、その歩みは亀のように遅い。
誠,もっと早く歩けないのか? そんなんじゃ家に帰る前に夜が明けちまうぞ
姫月,だ、だって……地面が、硬くて……手と、膝が痛い、よ……
誠,へぇ。犬も大変なんだなぁ。そう言えば家から出ない室內犬の肉球は柔らかいっていうもんな……
誠,はは。お前も毎日こうやって散歩してたら手と膝の皮が厚くなって、痛くなくなるのかな
姫月,うぅ、や、やだぁあ……そんなの嫌だもん……!!
泣きながらも一生懸命俺に付いてこようと手足で歩く姫月に、俺はくすくすと笑い出してしまう。
あの姫月がこんな情けない姿で俺を見上げている。
その異常な光景が、今の俺の目にはものすごく魅力的なものに映るのだ。
しばらく歩いていると、向こうから女の人が攜帯で話しながらこちらに向かってくるのが見えた。
俯き加減に、地面を見ながら四つん這いで進む姫月はそれに気がつかない。
女性,それでね、その時あの人ってば……きゃぁっ!!!??
姫月,え?
女性の叫び聲に、姫月はようやく顔を上げた。
誠,こんにちは、良い月明かりの夜ですね
女性,っひ……!!!
にこりと笑って言うと、女性の顔が恐怖に凍りつく。
まぁそれはそうだろう。裸の女の子にリードを著けて散歩しているような男に聲をかけられたら誰だって怖い。
女性,やっ……!!! こ、來ないで!!! 気持ち悪いっ……!!!!
女性は恐怖に目を見開いたまま、俺たちからじりじりと距離を取って一気に駆け出した。
ガツガツと響くハイヒールの音がだんだんと遠のいていく。
誠,気持ち悪い、か……。俺のことかな。それとも姫月のことだと思う?
姫月,あ、ぁ……や、や……ち、違う……わ、私……私が、やりたいわけじゃ、ないのに……
誠,あぁ。そっか。姫月は気持ち悪い、なんて今まで一度も言われたことないよな
誠,初めて気持ち悪いって言われた感想はどうだ?
姫月,っつ……っ……
俺の言葉に、姫月はぼたぼたと涙を零し乾いた地面を濡らしていく。
楽しい。楽しい。妹が壊れていくのを見るのが楽しい。
誠,でもさ、俺は何回も何十回も言われたことがあるよ。気持ち悪いって……
誠,妹であるお前にさ……
姫月,や、や……違っ……そ、それは……!!!
誠,違わないだろう? 姫月。言ったほうは覚えてなくても、言われたほうは永遠に覚えてるもんだ。いじめだってそうだろう?
苛めた人間は苛めた事実をその記憶から綺麗に抹消できる。
だけど、苛められた人間は一生そのことを忘れることが出來ず、心に大きな[歪/ひずみ]を抱えてしまうんだ。
誠,姫月はどうなんだろうな。俺みたいに歪んだ人間になるのか、あるいは……
そう思い、俺は今いる場所よりも比較的人が多い所を目指すことにした。
誠,ほら、おいで。実験をしてみよう
姫月,やっ……、ひ、引っ張らないで……!! い、痛っ……
姫月を四つん這いにして歩かせたまま、俺は公園の拓けた場所へと出てきた。
予想したとおり、そこには飲み帰りの若者が多くたむろしている。
男A,お。おい、あれちょっと見てみろよ
男B,ん? 何だよ……って、何だあれ。AVの撮影でもやってんのか??
男C,でもカメラなくね? カメラどこよ
男D,え? じゃぁこれ趣味で見せつけてんの?? すげぇなオイwww
俺と姫月の存在に気付いた彼らはにやにやと下卑た笑みを浮かべながらこちらを見ている。
姫月,っつ……ぅ…………
姫月にもその聲が屆いているのだろう、顔を真っ赤にしてぶるぶると震えている。
緊張しているのかとも思ったが、俺は姫月の身體のある変化に気付いた。
誠,へぇ……。お前、素っ裸で散歩してるとこ見られてま○こ濡らすような変態に育っちゃったんだなぁ
姫月,!!!!!
後ろから見ると、姫月のそこはダラダラと蜜を零していて、太もものあたりまでぐっしょりと濡れているのだ。
俺も姫月自身もそこには一切觸れていないのだから、見られて感じたと考えるのが自然だろう。
姫月,や……や、ち、違う……わ、私、感じてなんかないもん……!
誠,それじゃぁこれは何だ?
姫月,っひ……!!!!
俺は腰をかがめ、姫月の秘所に指を這わせた。
誠,何でこんなに濡れてるんだ?
くちゅくちゅと指を動かすと、姫月は切羽詰ったような聲を上げた。
男A,んー? てゆか、あの子かなりレベル高くね?
男B,どれどれ。お。ホントだ超可愛いんですけど!?
男C,あんなアイドルみたいな子がなぁ……世の中狂ってんなー
誠,はは、良かったな。姫月。こんな変態になってもまだ可愛いって言ってもらえてるぞ
姫月,っつ……そ、そんなの嬉しくなんて、ない……!!
誠,意地っ張りだなぁ。あいつらに見られて本當は嬉しいくせに
姫月,やぁ!! そんなことない! 見られたくなんてないっ……ひぁ、あっ、あっ、や、そこ、駄目っ……!!!
誠,何で? クリトリス弄られるの、好きだろう? 気持ち良さそうじゃないか
姫月,っひ……、い、嫌……ち、違うの……!! そ、じゃなくて……
誠,うん? 何だよ。イってもいいんだぞ?
姫月,やだっ……やだよぉ……!! い、イっちゃったら、私……私……
男D,何かあいつら、このまま見てたらセックスまでしそうな勢いだなw
男A,はは、こんなとこでセックスしてたらマジ変態じゃんwww
男B,いやいや、マッパで散歩してるだけで十分変態だってww
男C,ははは、確かにwww
姫月,っつ!!!!!
周囲の人間から侮蔑の言葉を投げつけられて、姫月はびくりと體を強張らせた。
指に當たるクリトリスが、こりこりと固くなっていく。
肉壷から溢れ出る蜜を全體に[塗/まぶ]しながら、にゅるにゅると滑るようにそこを愛撫してやると、姫月の體が面白いほどにびくびくと痙攣した。
姫月,やっ……や……嫌ぁ……イきたくないっ! イきたくないの……!!
姫月の涙に濡れた聲には耳も貸さず、俺はその割れ目を激しく擦り上げる。
姫月,ひゃっ、あっ、あっ……、駄目! 駄目だってばぁあああ!!!!!
甲高い聲で叫び聲を上げるとともに、姫月は激しく體を震わせながら絶頂した。
姫月,っひ……ひぅ……や、やぁ、ら、らめ……ぇ……
姫月,ふぁ、あああああ
ぶるぶると體を引き[攣/つ]らせたと思ったら、じょろじょろと溫かな湯気を立てながら姫月は放尿し始めた。
姫月,やだ! やっ、見ないでぇ……!!!
男A,うわ……、すげ……あの子おしっこし始めたぜww
男B,俺スカトロって初めて見たわ~wwww
男C,スカトロ趣味の女ってすげぇよなww どこまで変態なんだろww
姫月,やだっ! やっ! み、見ないで……おねが……!!
姫月,やーっ、あっ、あっ、と、止まんない……! お、おしっこ、止まらないよぉお……
大分我慢していたのか、姫月の尿はなかなか止まらず、地面がびちょびちょになっていく。
姫月,っひぅ……、うぇ、え……やぁ、あー……
次第に尿の勢いがなくなっていき、チョロチョロと止まった。
誠,へぇ。そんな格好で放尿プレイとは、姫月もなかなかやるなぁ
姫月,う……うぅ、うぐ……ひっく、うぇ、え……ひっく
外で排尿してしまったことに餘程ショックを受けたのか、姫月は聲を上げて泣き伏してしまう。
男A,あ~ぁ。かーわいそー。泣いちゃったwww
男B,おしっこ漏らして恥ずかしいのかなー??www
男C,まぁあの年でお漏らしとかしたら恥ずかしいよな~ww
男D,え~でもこの子、泣いてるフリしてるだけで実はおしっこ漏らして気持ちよくなってんじゃね??w
男A,ちょw おまww それ変態過ぎだろwww
姫月,っつ…………!
いつの間にか俺たちのすぐ近くまで來ていた男たちがゲラゲラと笑いながら[囃/はや]し立ててくる。
からかうような言葉に、姫月は顔を歪めて息を詰めた。
誠,そんなに泣かなくても良いじゃないか。なかなか面白かったよ
姫月,う……うぅ、お、面白く、なんて、ないよ……ひっく……ひっ……
誠,はは。姫月だって見られて気持ち良くなってんだから、本當はこの狀況を楽しんでるんだろう?
姫月,そ、なわけ……ないっ……
誠,そうなのか? でも折角みんな見てくれたんだから、ちゃんとお禮は言わないと
姫月,やぁ……そ、そんな、何で、お禮なんか……
誠,あぁ、そうか。姫月の言う通り、お禮じゃなくてお詫びのほうかな。こんな場所で漏らしちゃったんだし
姫月,っつ………うぅ……
誠,ほら、姫月
そう促してやると、姫月は視線を彷徨わせながらぎゅっと拳を握り締めた。
姫月,こ、こんな所で……、そ、粗相してしまって……ご、ごめんなさ……
誠,粗相なんて難しい言葉を使わないで、もっと分かり易く言えよ
姫月,う、うぅ……わ、私……こ、公園で、皆さんの前で、お、おしっこしちゃってごめんなさいっ……!!!
誠,おしっこしてる姿を見てもらえて嬉しかった?
姫月,う、嬉しかったです。み、皆さんに、おしっこしてるトコロを見てもらえて、嬉しかったです……!
男A,あはは、この子すげぇ。超ドMじゃんww こんな女マジでいるんだぁwww
男B,アイドルみたいな顔してんのに、エッチなこと大好きなんだねぇw
男C,なになに? 普段からこんなことばっかりやってるの??ww
姫月,っつ……っ……
誠,ほら、姫月。ちゃんと答えてあげないと駄目だろ?
姫月,うく……ひっ、ぅ……わ、私、え、エッチなこと、大好き、です……ま、毎日……こうやって、エッチなこと、いっぱい、してます……
男A,うへw マジかよww こんな変態行為を毎日やってるとかすげぇなwww
男B,全裸でうろつくような女、AVの中だけだと思ってたけどそうでもないんだなぁww
男C,折角可愛い顔してんのに、こんな変態に育っちゃってwww
姫月,う……ぅく……、ひっ……、ひっく……
せせら笑いながら見ている男たちの視線から逃れるように、姫月は顔を地面に向けて涙を零している。
誠,はは、よく言えました。それじゃ、次のステップに進もうか……
四つん這いのまま、手足を泥だらけにした妹の哀れな姿に、俺はにやりと笑って告げる。
誠,なぁ、姫月。お前、ここであいつらにマワされろ
姫月,ま、わ……?
その言葉の意味が分からないのか、泣き腫らした目で、姫月が不安そうに俺を見上げてくる。
誠,あいつらに犯されてみろよって言ってるんだよ
姫月,!!!???
姫月,やっ!! い、嫌だよそんなの!!! 何でそんなこと……
誠,犯されてるお前を見てみたくなったんだよ。ほら、あいつらに『犯して下さい』ってお願いしてみろ
姫月,やっ……!! 嫌だっ!! やっ……!お、お願っ……!! ほ、他のことなら何でもするから……!! だから……!!
顔を涙でぐちゃぐちゃに汚しながら、姫月は外聞もなく喚きたてる。
普段の生意気な態度が噓みたいに、今は俺に縋り付いて泣いている。
そんな姫月の姿を見ると、何となく落ち著くような、気が休まってくる気がする。
正直なところ、処女である姫月がこんなところでそんな言葉を口にするとは思っていない。
恐らくここら辺が潮時なのだ。
俺の命令に姫月が背き、そしてこの調教生活が終わる。
そして、俺達は元の何もない関係に戻るのだ。
誠,何でもねぇ……。でも、俺が今見たいのは、お前が輪姦されてぐちゃぐちゃになった姿なんだよ
誠,どうする? ここであいつらにヤラれるか、それとも調教を止めるか。お前が決めていいぞ?
姫月,っひ……、ぅう……やぁ、やだ、よぉ……助けて……助けて……
誰に助けを求めているのか。姫月はしゃくり上げながらその言葉を口にしている。
誠,ほら、お前に選択権をやるよ。このまま続行してもいいなら、―――っておねだりしてみな
姫月,…………ひっく……うぅ、うぇ……
體中の水分が全て出てきているかのように、姫月の目からは大量の涙が溢れ出ている。
誠,さ、どうする?? 止めて帰るか??
姫月,っふ、……うぇ、えぐ……や、やだ……い、言える、から……やめちゃ、駄目、なの……
その言葉に、流石の俺も驚いてしまう。
姫月は涙に濡らした瞳で、地面をじっと見つめながら言った。
姫月,……お、お願い、します……。え、エッチ大好きな、姫月とセックス……して、下さい
誠,聞こえないぞ?
姫月,お、お願いします! え、エッチ、大好きな姫月とっ、セックス、して下さい!!!! お願いします!!!
男A,え~。マジでマジで?? キミとエッチ出來るの??ww
男B,セックスしていいの? 俺らマジでセックスしちゃうよ!??www
男C,まとめて相手してくれるとかスゲェwww
男D,こんな可愛い子とセックル出來るとかマジサイコー!!
姫月の言葉に男たちの目がギラギラと輝きだす。
俺を姫月の飼い主だと思っているらしく、彼らがちらちらと視線を向けてくる。
どうやら俺の出方を伺っているらしい。
アナルを使わせる
元々この調教は『姫月が好きな男に振り向いてもらえる』ように始めたものだ。
こんな所で、こんな男たちに処女を捧げては逆効果になってしまう。
誠,そうだな、流石に前は可哀想だし。アナルのほうに入れてあげてよ
男A,アナルセックスまでOKとかどんだけ好きモノなんだよwww
男B,俺アナルセックスって初めてだw
姫月,っひ……や、嫌ぁ……
男C,それじゃ、いっただっきまっすwww
男D,いーっぱいセックスしまくろうねーwww
獲物に襲い掛かるハイエナのように、男たちは姫月の體を引き倒した。
姫月,きゃああ!! やっ、痛いっ!! やだぁああ!
男A,ケツまでOKなさせ子のくせに、可愛い子ぶるんじゃねぇってのww
男B,ほらほら、お兄さんたちがいっぱいお注射してあげますからねーw
姫月,やだ! やっ!! やめて! 助けて!! 嫌だってばぁあ!!
男C,おいおい暴れんなって。どうせケツま○こにち○ぽ入れられるの大好きなんだろ?
姫月,っひ……!! や、やぁ……!! 嫌っ!! 觸るな!! 馬鹿ぁあ!!!
男D,はは。自分から誘っておいてその態度はないだろ? あ、もしかしてそういうプレイ??
男A,何だよ。露出狂でレ○プ趣味とかすげぇ趣味してんなぁww
男B,とりあえずケツま○こ濡らしましょうねーっと
そう言って男はズボンのポケットからハンドクリームを取り出し、姫月の後孔に塗り付け始めた。
姫月,っひ!!!?? 嫌!! な、何???
男B,あはは。ただのハンドクリームだから安心していいよ
男D,てゆかお前、何でハンドクリームなんて持ち歩いてんのwww
男B,いや、何か最近肌荒れ酷くてさwww
男C,女かよww
男B,まぁいいじゃんw 今は役に立つんだしさww
男A,ははw 確かに役には立ってるなww 無理やり突っ込んで血ィ出たらキモイし??
姫月,ひぅ、うっ、あっ、あっ、や、やだぁあ……き、気持ち悪い……
男C,大丈夫大丈夫。アナルセックス好きなんでしょ? だったらすぐ気持ちよくなるって
男はハンドクリームのチューブの口を、直接姫月のアヌスに差し込んだ。
姫月,ひゃああっ!!! やっ! やっ……!! な、中、入ってくるっ……!!!
たっぷりのクリームを注ぎ込まれ、男の太い指が姫月の中に埋め込まれていく。
ぐぶりと空気が破裂する音が聞こえた。
姫月,やっ、やぁ……いや……指、動かさないで、よ……やだってばぁ、あっ……!!!
男A,とか何とか言って、本當は気持ち良いんでしょー?
姫月,き、気持ちよく、なんて、ないっ!! ふぁ、あぁっ、あ、ん
……!!!
男B,強がらなくてもいいんだよー。ほら、お尻の穴ぐちゅぐちゅにされて気持ち良いだろ??
姫月,ち、違う……違うよ……違う……こ、こんなこと、気持ち良く、なんて……ない!!
男A,ふぅ。強情だなぁ。ま、いいや。それじゃ、まずは俺からっと
姫月,え? え?? やだ! やめて!!! 待って……!!
散々中を弄繰り回されていた指を引き抜かれ、代わりに宛がわれた太いものに、姫月の顔色が変わった。
クリームでべとべとになったそこへ、男の物がずぶずぶとめり込んでいく。
姫月,ひぁあああああああああああああああああああああ!!!!!
俺たちの聲以外には何も聞こえない靜かな公園內に、少女の[慟哭/どうこく]が響き渡る。
姫月,い、嫌っ!!! 痛い!! 痛いいいい!!!!!
男A,ぐっ……、きっつ
男B,ちょっと力抜かないと駄目だろ? ほら、深呼吸深呼吸ー
姫月,っひ、ひ……、嫌、あ、ああっ、あぐっ、ぐ……、い、痛い……痛いよぉ……
初めての性交渉で、初めてアナルに男根を突き入れられた姫月はただ痛みに呻くだけだ。
その結合部からはぐちゅぐちゅといういやらしい水音が零れる。
姫月,はっ、はっ、はぁ、あぐっ……! う、ぐっ……、ひぎ、い、ぃ……!!
極限まで瞳を開き、涎を垂らしながら姫月が苦しげな聲を漏らす。
その悲痛な聲に、俺の心が少しだけざわめいた。
姫月,や、いやぁ、あ、あぐっ……、た、助けて……助けて……痛い……痛い、よぉ……
ぼろぼろと涙を零しながら姫月は助けを求め続けるが、そのかぼそい聲は肉と肉とがぶつかる卑猥な音によって掻き消されてしまう。
姫月,やだ……や、あ、ひぐ……っ、う、うぐ……も、やぁ、あ……う、動かない、で………っひぎ、あぁ、あ……
男A,っく、やっべ。超キツキツで食い千切られそうww
姫月,いやっ!! 痛っ!!! あぅう……!!! ぐ、ぃあ、ぁああ……!!!
靜かな公園にはそぐわない、姫月のすすり泣くような聲と淫らな粘著音が辺りにこだまする。
男A,っは、はっ、や……べ、俺も、出そっ……ほら、ほら、いっぱい出してやるからな!!
姫月,ひっ、あぐっ、や、やだ! やだぁああ!!! 出さないで!! やだぁ!!!
姫月は大粒の涙を零しながら、嫌だと泣き叫ぶ。
男達は姫月の悲鳴に耳を傾けることなく、好き勝手に腰を押しつけ、そして。
姫月,ひぎっ、いああ、あああああああああああああ!!!!
見知らぬ男の白い液體が姫月の體內へと注ぎ込まれていく。
中に入りきらなかった精液はごぼりと嫌な音を立てて尻の穴から零れ落ちた。
姫月,っひ、ひぅ、っぐ……も、や、も……嫌ぁあああ!!!
男B,なーに言ってるんだよ。まだまだ終わりじゃないんだぜ? ほら、次は俺のち○ぽを挿れさせてもらうよーwww
姫月,あ、あぁっ、ああああああああ!! ぎぅっ、い、あ、あああ!!!
姫月の身體の中で果てた男のモノがずるりと引き抜かれ、ほっと一息吐いたのも束の間。
順番を待っていたらしい新たな男の物で、姫月の身體は再度貫かれる。
ぐちゅぐちゅとしつこく粘膜を擦りつける音と、むせ返るような男達の欲望のすえた匂い。
姫月,っひ、や、も、嫌っ……!! 嫌ぁああ!! やっ、やぁあああ!!! 助けてっ! 助けてぇえええ!!!
飲みきれない唾液とぼろぼろと溢れ続ける涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、姫月は助けを求める。
しかし伸ばされた手は誰にも屆くことはなく、只空を切るだけだ。
一人の男が欲望を吐き出し、そして次の男がその場所へ入っていく。
男たちの欲望は留まることを知らず、入れ替わり立ち替わり姫月の尻の穴を犯していくのだった。
自由にどうぞ
誠,前でも後ろでも、キミたちの好きなようにすればいいよ
男A,マジでww 前も後ろもOKとかますますすげぇwwww
男B,俺アナルセックスって初めてだw
姫月,い、いや……や、やだ……私、私、やだ、よぉ……
男A,今更なに言っちゃってんのーw そんなカマトトぶらなくても、どーせヤりまくりのビッチなんだろ??
姫月,や、嫌……!! や、いやぁああああああああああ!!!!
一人の男が嫌がる姫月を押さえつけ、もう片方の男が慣らしもせずに後孔へと押し入っていく。
姫月,ひぎぃいいいいいいいいいい!!!!!!!
姫月,っひ……、嫌……嫌……痛いっ……痛いよぉっ!!!! 抜いて! お願っ……、抜いてぇ!!!
男A,っく……。何だ?? すっげ狹過ぎて……は、入んねぇんだけど……
男B,はー? んなわけないじゃんw 思い切り突っ込んじまえよ
姫月,ひぁああああああああ!!!!!! やーーーっ!!!! 痛っ……痛いぃ!! 裂けちゃう……裂けちゃうよぉ!!!
初めて受け入れる男根に、姫月は目を見開き悲痛な聲を上げる。
太くいきり立った男の物を伝って赤い液體が零れ落ちた。
男A,って、うわ……。こ、この子処女かよ!??
男B,はぁ?? 何言ってんの? お前ww マッパで外歩いてるような女が処女なわけないしwww
男A,いや、だってほら。見てみろよ……
男B,噓!! マジで?? 血ィ出てんじゃん
姫月,っひ、うぅ……やぁ、あー……痛い……痛……助けて……助け、て……
思いがけず処女膜を破ってしまい、慌てふためく男たちと、ただ虛ろな目をして助けてと呟く少女。
その滑稽な光景が面白くて、俺はくすくすと笑ってしまった。
誠,そんなに驚かなくてもいいじゃないか。このくらいの年齢なら処女でもおかしくないだろ?
男A,まぁ確かにそうだな……へへ。こんな可愛い子の処女膜破れるなんてラッキーwww
姫月,や……やぁ……痛い……痛い……、お、お願……も、やだ……抜いてよぉお……ひぐっ、うっ、うぁっ、やだ……やだ……、壊れちゃう……壊れちゃうよぉ……!!
男A,大丈夫大丈夫! すぐに気持ちよくなるって
男は嬉しそうにそう言うと、泣いている姫月の腰を摑み激しく體を打ち付け始めた。
こういうチャラい男たちでもやはり中古<<超えられない壁<<処女なんだろうな……。
姫月,ひぎっ、嫌っ、あぁあああ、やだ! 痛い!! やだぁああ!!
パンパンと肉と肉がぶつかる音が、月の光と靜寂に包まれていた公園に響き渡り、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が俺の耳にまで屆いた。
姫月,いや! いやぁ!! やだ! 抜いてっ……! 痛っ……!! 駄目ぇええ
男A,それは無理だなぁ。ほらほら、キミのま○こが俺のち○ぽにがっつり食いついてきて離してくれないんだよ
姫月,やっ………そ、んなっ……噓、[吐/つ]くな馬鹿ぁあ!!! ふぁ、あっ、あっ、んぁあーーーー!!!
男は容赦なくずりゅずりゅと姫月の膣內を犯し、內壁を拡張していくかのように腰を動かしていく。
姫月,っひ……、嫌、嫌ぁ……き、気持ち悪いよぉ……
誠,噓を吐いたら駄目だぞ、姫月。ちゃんと気持ちいいって言わないと
姫月,き、気持ち、よく……ない、い、痛い……も、もう、やなの……や、許して……お願……
誠,ふぅん……どう痛いのか説明してくれたら、助けてあげてもいいよ
姫月,っひ……う、うぅ……む、無理矢理、入れられて……さ、裂けちゃってる、の……お腹、痛いよ……苦し……
誠,何を? どこに? 駄目だぞ、姫月。主語と目的語をハッキリしないと
姫月,うぇ、え……お、おま○こに……お、おち○ぽ、入れられて、い、痛くて……おま○こ裂け、て……痛いよぉ……も、やだぁあ
よほど痛いのだろうか。鼻水と涙で姫月の綺麗な顔がぐちゃぐちゃになってしまっている。
誠,はは。酷い顔だな
姫月,だっ、て……痛い、の……中、ゴリゴリされて、內臓全部、引きずり……出され、る、みたい、で……苦しい……っ!
誠,そんなに苦しいものなんだなぁ……。な、姫月。ま○こからち○ぽを抜いて欲しいか?
姫月,抜いて……抜いて欲しい! お願いだからっ……も、許してぇ……ひっ、ぐ……
誠,だってさ
男A,? だってさって言われても……
男B,どういう意味??
誠,そこは痛いからやめてほしいんだってさ
男A,だからどういう意味だっつの。俺はこのまま膣內に出したいんだよ!
姫月,っひ、ひぎっ……いやぁあ、痛いっ! 痛いってばぁあ……!!!
俺の言葉に苛ついたのか、男は姫月の悲鳴を気にすることなく腰を打ち付ける。
まったく、だからDQNは嫌なんだ。
誠,はぁ。女の子にはもうひとつ穴があるんだから、そっちに出せばいいじゃないか
察しの悪い二人に呆れながら言うと、彼らは目を丸くして俺を見た後にんまりと嫌な笑みを浮かべた。
男A,なるほどなるほどw そういうわけかあww じゃぁ仕方ないから入れ替えてやろうかなw
男B,え~、お前ばっかりずるいぜー
男A,へへ~。両方お先で悪いねっw それじゃ、いっただっきまーす☆
姫月,っひ……!!???? いやああああああああああああああああああああ!!!!!!
ずぶりと姫月の雙丘に男のモノが突き刺さっていくと、辺りをつんざくような聲が上がった。
涙に濡れた姫月の顔は真っ青になっていて、身體はがくがくと震えている。
姫月,っひ……ぃぎ……ぁ、あぁ、あっ……は、は……
目を見開き、その衝撃に耐えている姫月の口からは乾いた聲が漏れるだけだ。
姫月,い、いぁ、あ…………た、助け……うぅ、ぐ……痛い……痛……
男A,あーあ。また裂けちゃったwww
男B,かーわいそー。お前が無理やりするからーww
姫月,ひぎっ!!!??? 嫌っ!! 嫌!! う、動かない、で……!!
男の先走りと鮮血が混じり合い、結合部からはとろりとしたピンク色の液體が零れ落ちる。
誠,姫月。どう? お尻の穴は気持ち良い?
姫月,や、やっ……痛い……痛いよ……や、だ……抜いて、お願……抜いてぇ……嫌ぁあ……
誠,そうか~。お尻だけじゃ嫌なのか……それじゃ、一緒に挿れてもらおうか
姫月,っひ、ぅあ……あ、あっ、あっ……や、やだぁ……
俺の言うことが分かっているのかいないのか、姫月はぼろぼろと涙を零しながら痛みに耐えている。
誠,ほら、ぼーっとしてないで、二つとも塞いであげるといいよ
男B,え、マジ? じゃ、じゃぁ俺が……!!
男C,ずりー! 俺もやりたいのにさー
男B,へへへ。失禮するぜーwww
男A,おっと。じゃぁこの體勢だと無理だな……
姫月,ひぁああああ!! やっ!! やーーーー!!!
うつぶせだった姫月の體を持ち上げ、男は下から突き上げるような體勢になる。
體の重さで先程までよりも更に深く突き刺された姫月は痛ましい叫び聲を上げた。
姫月,っひ、ひぁ、あっ、あっ……や、や……深っ……お、お腹、や、破れちゃうよぉ……
男B,それじゃ、遠慮なくパコらせてもらおうかーww
姫月,はっ、あ、嫌っ、嫌っ!! やめてやめてやめて!!! 嫌っ……
姫月,いやぁああああああああああ!!!
貫通式の済んだ膣の中へと、再度男の物が侵入していく。
前も後ろも赤く染まったそこに注意を払うこともなく、男たちは無我夢中で腰を動かす。
姫月,いや、や、やだ……やだ……!! 痛い!! 中、痛いよぉお
……!!!
男C,はぁ、はぁ……駄目だ。もう我慢出來ねぇ……! 俺のも可愛がってよー
姫月,うぶぅっ!!! んんぐっ!! うむ……!!! ん、は、はぁ、あぶっ……
我慢できなくなったのだろうか。先程まで姫月の體を弄っていた男が、姫月の口へ肉棒を突き入れた。
いきなり突っ込まれた苦しさからか、姫月はごぼりと低い咳を吐き出した。
姫月,んんっ、んっ……んぐ、う、うぶ……っ、ごふっ、は、はぁ、あ……やぁ、あ……
穴という穴を全て塞がれた姫月は、聲を出すことも出來ず、ただ男たちのされるがままに揺すられている。
過度のストレスと痛みから逃げ出そうと[脳內麻薬/エンドルフィン]が分泌されているのだろうか。
痛みしか訴えていなかった姫月の體と聲音が徐々に変化していく。
姫月,ひ、ひぁ、ああっ、あっ、あっ、んんっ、ふぁ、あーっ……
唸るように吐き出されていた聲に甘さが混じり、涙に濡れた瞳はとろりと情欲の色が浮かんでいるのだ。
誠,………………
男B,っく、く……、出る、出る……
姫月,あ、あっ……や、や……だ、出さないで……中、らめぇ……
男B,そんなこと言って、中に出してほしいんだろ?? ちゃんと出してやるからしっかり受け止めてよww
姫月,っひ、やぁ……あ……やぁ、ら……らめ、らめ……中、嫌ぁあ……
姫月の言葉に笑いながら、男たちはひたすらに腰を打ち付けている。
次第に早くなっていくその動きに、終わりが近いのだと思った。
姫月,ひゃ、あぁ……、あっ、あっ……嫌……らめ、らめなの……そ、外に……お、お願……
男B,だーめだよ! ほら、ちゃんといっぱい飲んでねwww
姫月,いや、いやぁっ、あっ、あっ、あ、やああああああああああああああ
男たちは姫月の奧深くまで一気に撚じ込み、腰を押しつけた狀態でビクビクッと大きく振動した。
男B,お、おお、おっほ……! ふ、う、うぅ……出る出るっ! お、ぉ、おお……すっげえ……っ
男A,お、俺も、俺も、すっげええ出る、うお、う、ほっ……! ケツま○こ最高……っ
男たちの大量の吐精を受け止め、姫月の身體がぴくぴくと細かに痙攣する。
肉棒がゆっくりと引き抜かれ、奧まで犯されていた穴から飲み込みきれなかった精液がどろりと溢れ出た。
姫月,……っふ、う、ぅくっ……つっ……!!
男B,やっべ、すっげ、すっげー……! 癡処女のミラクルスポットマジキんモチイイー!! 俺餘裕でもう一回イっちゃえるんですけどwww
男C,お、俺だよ俺俺! 次俺だって!
一人の男が欲望を吐き出し、そして次の男がその場所へ入っていく。
靜かな公園にはそぐわない、姫月の喘ぎ聲とぐちゅぐちゅという淫らな粘著音が辺りにこだまする。
男たちの欲望は留まることを知らず、入れ替わり立ち替わり姫月の二つ穴を犯していくのだった。
男A,ふぅー。気持ちよかったー。スッキリスッキリw
男B,可愛い上に具合も良いとかサイコーだったわwww
男C,また今度遊ぼうねwww
男D,ごちーwww
地面に橫になったままの姫月を置いて、男たちは[嘲/あざけ]るように言いながら立ち去った。
複數の男たちの餌食になった姫月の體は全身白濁塗れとなっていて、見るも無殘な姿になっている。
姫月,………………っつ……っ、ぅ……
姫月は悔しそうに唇を噛み締めて涙を流している。
こつりこつりと音を立てて姫月の側まで寄ると、その小さな體がびくりと跳ねた。
誠,お疲れ様、姫月
姫月,っつ……!!
姫月,う、うぇ、え……ひっ、うぇえ……え……
まるでゴミのように打ち捨てられた妹を抱き起こしてやると、途端に姫月がしゃくり上げるように聲を上げて泣き始めた。
幼い子供のように泣きじゃくる妹の姿を見て、俺は持っていたハンカチで精液を拭っていく。
ドロドロに汚れたその體は醜悪なほどに情欲の匂いを纏っているが、そんなことよりも早く姫月を綺麗にしてやりたいと思ったのだった。
誠,気持ちよかった?
姫月,…………っつ
俺の言葉に姫月はぎろりと睨みつけてくる。
こんな狀態になってもまだ俺のことを睨みつけるだけの元気はあるらしい。
誠,流石姫月だね。でも、そろそろ起きて帰ろう。ほら、あそこに水場があるから體を洗っておいで
姫月,っく…………う、うぅ……っつ……
姫月は痛みに顔をゆがめながら、フラフラとした足取りで水場へと向かっていく。
そんな気丈な姫月を見て、俺は、自分の心がどんどんと冷え込んでいくのを感じたのだった。
;0scene 8日目_陵辱_朝01
誠,さて、姫月。ちゃんとローターは著けてきただろうな?
姫月,い、言われた通り……やってるもん
誠,下著は?
姫月,……著けてない…………
誠,うん、姫月はいい子だな
姫月,…………そ、そんなこと褒められても……嬉しくないんだから!
誠,はは。分かってるよ。それじゃぁ行こうか
姫月,………………ん…………
誠,行ってきます
姫月,……行ってきます
俺と姫月は家の扉に鍵をかけると、誰もいない家に向かって挨拶をして學園へと向かった。
ホームに電車が到著し、俺たちは電車の中へと乗り込む。
中は空調が効いているため、適度な溫度が保たれていて心地良い。
誠,お、姫月。ひとつ席が空いてるから座れよ
姫月,え……、あ。う、うん……
姫月,…………っつ……
一人分空いた座席に座った姫月は、困ったように目を伏せて足をもじもじと動かしている。
誠,うん? どうしたんだよ、姫月。トイレにでも行きたいのか?
姫月,ばっ……!! ち、違うもん! そんなじゃなくて!!
俺の聲に、姫月は顔を真っ赤にして怒る。
誠,そっかー。じゃぁどこが悪いのか分からないなぁ。とりあえず觸診してみるから、胸出してみろよ
姫月の耳元で小さく囁くと、姫月の目が驚愕に見開かれる。
姫月,っつ…………何でそういうことになるのよ! そ、それに兄貴に觸診なんて出來るわけない、し……
誠,いやいや、お前よりは長く生きてるんだから觸診したら分かるかもしれないだろう? ほら、さっさと見せてみろ
姫月,や……、で、出來ないよ……こんな所で、そんな……
誠,出來ない? 姫月なら出來るだろう? 大丈夫だよ、周りにいるのは皆リーマンばかりだ
誠,毎日毎日會社と家との往復で疲れきってるおじさんたちに若い子の胸を見せてあげるサービス精神も、姫月には必要だと思うぞ?
姫月,サービス精、神……?
誠,そ。相手に盡くすっていう気持ちが姫月にはちょっと足りてない気がするんだ。ここでその気持ちを學ぶのも良い手じゃないかな
姫月,…………っつ…………わ、分かった……
誠,はは、物分りの良い姫月は好きだよ
姫月,………………
姫月,………………っつ
おじさんA,!?
姫月は俺に言われた通りに、セーラー服のシャツを胸元までたくし上げた。
力いっぱいシャツを握り締めている指先は白く色が変わってしまっている。
姫月,………………こ、これで、いい……?
瞳に涙を浮かべ、姫月は恥ずかしそうに頬を染めて睫毛を震わせる。
初雪のようにまっさらな白いふたつの曲線の頂上には、淡いピンクの突起がその存在を主張している。
姫月,っつ…………。み、見せた、から……も、もういい、でしょ……
姫月,ね、ねぇ……は、恥ずかしい、よ……
誠,うん? 何で恥ずかしいんだ? 俺だってプールに行ったら海パンひとつになるぞ?
姫月,そ、それとは違う……よ。はぁ……こ、ここはプールでもないし、そ、それに、私……女の子、だし……っは……
誠,そういう男女差別は良くないぞ、姫月。外國にはヌーディストビーチだってあるわけだしな
姫月,はぁ……はぁ……わ、私は……そんなとこ、行ったこと……
誠,話してるだけなのに、姫月はどうしてそんなに息苦しそうなんだ?
姫月,ぁ……、あ……、はぁ、はぁ……、だ、だって……、こ、こんな電車の中で……はぁ、はっ……、胸出して、て……それに……
そう言って姫月はもじりと足を擦り合わせる。
どうやら朝著けさせたローターが効果を発揮しているようだ。
誠,そうか、悪いのは下半身のほうなんだな。それならスカートを脫いで足を広げてみろ
姫月,!!?? そ、そんなの無理……!! だ、だってここ……で、電車だよ!?
誠,そんなことは見れば分かるさ。周りは姫月に興味があるおじさんたちばかりみたいだし、大丈夫だ
ちらりと周りに視線を這わせると、生唾を飲み込み姫月の胸を凝視する男たちに囲まれているのが分かる。
この様子なら通報されることもないだろう。
姫月,は……はぁ……、で、でも……こ、こんな所、で……はぁ……
誠,もう胸を見せちゃったわけなんだし、今更ま○こ見せたくらいじゃ何も変わらないよ。ほら、見せてみろよ
姫月,う、うぅ……、っつ……、はぁ、は……あ……
姫月は1、2度目を泳がせた後、震える手でスカートのホックに手をかける。
シュルリと軽やかな布の擦れる音がすると、電車の床にピンク色のスカートが落ちた。
誠,良い子だね、姫月。足をちゃんと開いて
姫月,っつ…………、っつ…………
おじさんA,…………っつ
おじさんB,………………ごくり
見せ付けるように姫月が大きく足を開くと、周囲の男たちの視線が一斉にソコへと集まる。
ピンク色の機械がブブ…と震え、姫月の陰核を刺激している。
家を出る時から刺激されていたせいか、姫月の愛液は座席のシートまでしっとりと濡らしてしまっているようだ。
姫月,っふ……、は……、はぁ、はっ……、あ……や……、み、見ない、で……お願……
誠,噓言うなよ。本當は見てほしいんだろう? 自分のイヤラシイ姿を全員に見せたいんだろ?
姫月,や……、や……、ち、違う、よ……そ、そんな……私、見せたくない……
誠,そのわりには尻どころかシートまでお前の汁が垂れてきてるじゃないか。姫月は見られるのが大好きなんだよな?
姫月,う、うぅ……そ、そんな……そんなこと、ない……はぁ、は……私……、やだぁ……あ、あっ……はっ……
誠,ふぅん? でもこのローターは気に入ってるみたいだけどなぁ
姫月,ひはっ! あっ、あっ! だ、駄目……! 觸っちゃ……!!
姫月の秘部に張り付けられたローターに手を伸ばす。
ブルブルと震えるソレをグリっと押し付けると、姫月の體がビクリと大きく痙攣した。
姫月,っひ……、ひ……! や、やぁ……そ、それ、やぁ……はっ、はぁ、あっ、あっ、あぁっ、あっ……!! ブルブル……やなのぉ……!
誠,はは、こんなに気持ち良さそうにしてるのに嫌なわけないだろう?
姫月,っふぁ、あっ、あっ、あぁ……! や、やぁあ……っんん……だ、駄目、も……!
誠,ほら、言ってくれよ。もっと見て、みなさんに觸ってほしいですってさ
姫月,っひ……うっ……やぁ……、そんな……そんなの……嫌ぁ……
誠,はぁ、結局お前にはサービス精神のサの字もないんだよなぁ
姫月,っひ……や、やぁ……、あ、ある、もん……はぁ、はっ……あ、あぁ、あっ……サービス、してる……もん……ふぁ、あっ、あっ……
誠,どこがだよ。サービス精神があるってんなら、ほら。日本を支えてくれているおじさんたちの疲れを取れるようもっと頑張れよ
誠,ほら、こうやって言ってみろ
誠,~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺は姫月にだけ聞こえるように、耳元で臺詞を伝える。
姫月,そ、んなの……い、言えない……はぁ、はっ……
誠,お前はどこまで口先だけの人間なんだ? サービス精神があるならこのくらいのことは人に教えられる前に言っておけよ
姫月,だ、だって……だって……そ、そんなこと……されたく……ない、よ……
誠,こういうアブノーマルなプレイが好きな奴が沢山いるんだぞ? 姫月はそういう要求にも応えられるようになりたいんじゃなかったのか?
姫月,くぅ、う……ぅ……、あっ、あぅ……、はぁ、あ……
誠,それとも好きな奴に好かれたいって言ってたのも噓だったのか?
姫月,う、噓じゃ……ないもん……は、はぁ……
誠,だったらほら、ちゃんとさっき教えた通りに言ってみろよ
姫月,う、うぅ……、う……ぁ……はぁ、は……、ど、どうぞ……
誠,うん?
姫月,わ、私の……ひ、姫月の……おま○こ、いっぱい……見て、沢山……觸って、はぁ……、はぁ、はっ……、つ、疲れを癒して……下さい……
姫月,はぁ、はぁ……姫月は……皆さんに見てもらえて……はぁ、あっ、あっ……いっぱい觸ってもらえるのが……はぁ、は……大好きな……変態女だから……
その言葉に、姫月の両隣に座っているリーマンたちの目線が俺のほうに集中する。
觸りたいけど本當に觸ってもいいのか分からない、そんな困惑の色を乗せた目だ。
誠,どうぞ觸ってあげてください。さっき自分で言っていたように、姫月は見知らぬ男性に體を捧げるのが大好きな変態なので
おじさんA,ほ、本當に?? 觸ってもいいのかい? お金とか取られない??
誠,あはは、勿論いくら觸っても無料ですよ。どうぞお好きなだけ
おじさんB,こ、こんな可愛い子に朝から悪戯出來るなんて夢のようだ……
誠,姫月は言葉で嬲られるのも直接弄られるのも大好きなので、遠慮なく苛めてあげてください
おじさんB,そうかー、姫月ちゃんって言うのか……可愛いねぇ、可愛いねぇ……それじゃぁおじさんはこのちっちゃい乳首を舐めさせてもらおうかなぁ
姫月,っひ……やぁ……っ! やっ!! 舐めないで! やぁ、あ!!
誠,はは、こういうプレイですのでお気になさらずに
おじさんB,じゅるっ、じゅるるる! じゅる! はぁ、はぁ、はぁ、じょ、女子校生の生おっぱい……! 美味しいなぁ美味しいなぁ
姫月,ひぁっ、あっ、あっ! やぁ! やっ! そ、そんなとこ吸わないで……、ふぁっ、あっ、あっ、あんん……
おじさんA,はぁ、はぁ……流石若い子の肌は張りが違うねぇ。実が詰まっててもっちりしてる
姫月,っふ、ふぁ、あ……あ、やぁ、ち、乳首……やぁ……さ、觸っちゃ……あっ、あぁっ、あっ……!!
おじさんA,お。乳首がコリコリしてきたねぇ。姫月ちゃん感じてきちゃったのかな??
姫月,っひ……! そんなわけ……! な、いぁ……っあぁ! あっ!!
気持ち悪い口調でねっとりと嬲ってくる親父たちの手によって、姫月の體はどんどんと熱く火照っていっているようだ。
白い肌がほんのりとピンク色に染まり上気している。
誠,はは。気持ち良さそうだな、姫月
姫月,ん、んん……はっ、はぁ、はぁ……き、気持ちよく、なん、て……ひゃんっ!!
誠,駄目だよ、姫月。あんまり大きな聲を出したら他のお客さんの迷惑だ
姫月,っつ……っ……だ、誰のせいだと……っ! ふぁ、あっ、あぁ、あ……んん!!
誠,姫月は素直じゃないなぁ。……それじゃ、こっちの口はどうかな
姫月,え……??
俺は鞄からいくつもの玉が連なった、數珠を思わせる器具を取り出す。
姫月,んんっ、ん……な、何……そ、れ……ふぁ、あん!
誠,はは、姫月の下の口が寂しそうだなぁと思ってさ
姫月,っひ……、や、や……やだ……やめ……
誠,それじゃ、ちゃんと美味しく食べろよな?
姫月,や、やめ……っ! あっ! ひぁっ、あっ、あああああ!!!??
姫月,っひ……! ひっ……!!! や、やぁ! い、痛ぁあ、あーっ!!
玉の1個半の所まで慣らすことなく突っ込むと、姫月のそこはぷちりと何かが引っかかるような抵抗を見せる。
誠,ふん……。キツイな……
姫月,ひぁっ! あっ! やっ……嫌っ!! 痛いっ! 痛いよぉ……!!
誠,まだ少ししか入ってないじゃないか。まだまだこれからだぞ
姫月,ひぅ! うぁ! あっ、や、やだっ! やめ……!! 待ってぇ!!
姫月,ひぁあああああ!!! あっ、あっ、はっ、はぁ、はぁ、は……
ズブズブと奧まで挿入すると、バイブを伝ってべとりと生暖かい液體が俺の手につく。
誠,ん……?
バイブから手を離して見てみると、少量の血液がたらたらと流れている。
姫月,ひ……ひぅ……、う、うぅ……、酷い……酷いよぉ……う、うぇ、え……えぅ……こんなの……う、うぅ……
誠,はは、悪いな。膜までは破るつもりなかったんだけど……
姫月,やぁ、あー……私、私の……初めて……こんなのや……だぁ……うぇ、え、ぇ……
誠,そんなに泣くなよ。大丈夫だって。お前の処女膜を破ったのはバイブで、男に突っ込まれたわけじゃないんだしさ
誠,大體普通は突っ込む前に指で広げるわけだし、そんなこと言ったら指が初體験の相手になるじゃないか
姫月,っひ……ひぅ、う、うぇ……でも……、でも……
誠,大丈夫、大丈夫。このバイブはち○こ突っ込まれる前の前戯なんだって思えば問題ないよ。な?
姫月,う、うぅ……で、でも、バイブが初體験なんて……やだ、よぉ……
誠,いやいや、アブノーマル好きならそれもまたいいんじゃないか?
姫月,ぐす……ほ、ホントに……?
誠,そうそう、それに大人の男なら処女は面倒だって付き合わない可能性だってあるし
姫月,そ、そう……なの……?
まぁ俺なら処女じゃないと絶対嫌だけどな!
しかしこの場合は処女膜を破ったのはバイブだが、男性経験はないってことになるよなぁ。
……それはそれで面白いような気がする。うん、問題ない。
誠,そうそう。だからもう泣くなよ。ほら、そろそろ駅に著くし、行くぞ
姫月,……ずっ……。ん……
誠,ほら、スカート
姫月,……ぐす、すん
姫月は鼻をすすりながら、俺の手渡したスカートを素早く履いて立ち上がる。
先程まで姫月の胸を堪能していた親父たちは照れくさそうに俯いてしまっていた。
誠,あ、でもお前の狹そうだから、今日一日バイブ入れて拡張してみろよ
姫月,で、でも……痛い……
誠,直に慣れるって。そんなんで痛いとか言ってたらセックスできないだろ?
姫月,うぅ……わ、分かった……
誠,よし、じゃぁ行こうか
そう言って俺は姫月とともに學園の最寄り駅に降り立った。
誠,はは、何痛がってるんだよ。昨日なんてもっと太いやつを何回も挿れられてたじゃないか
姫月,っひ……! や、嫌……! 言わな……で!! 嫌ぁ、あっ、あっ!!
誠,ほら、気持ちいいんだろう? おま○こも乳首も苛めてもらえて嬉しいよな? 姫月?
姫月,いやぁあ……やっ、う、嬉しくなんか……ない、よぉ……! 私……やぁらぁあ……あっ、ああっ、ん、んんんーっ!!
グブグブと無遠慮にバイブを動かすと、その度に姫月はびくりと體を大きく揺らして反応する。
誠,噓は良くないぞ、姫月。ほら、もうすぐ駅に著くんだから、ちゃんと『姫月のおま○ことおっぱいを觸って下さりありがとうございました。気持ち良かったです』ってお禮言わないと
姫月,ひゃっ、あっ、あっ……、やらぁあ……そ、そんな、こと……
誠,言わないとずっと止めてやらないぞ?
姫月,ひぃうううう!!! っは、はぁ、あっ、あっ……! ひ、姫月の……っ、お、おま○ことおっぱい……觸って下さり、ありがと……ございまし、た……っ!
姫月,き、気持ち良かった、ですっ! あ、うぁ、んんっ!!
おじさんA,おじさんも姫月ちゃんのおっぱい觸れて嬉しかったよ~。ありがとね!
おじさんB,幸せな通勤時間をありがとう、姫月ちゃん
姫月,っつ…………
誠,はは、喜んでもらえてサービスした甲斐があったなぁ。姫月
姫月,あ、兄貴……! い、言ったからこれ、抜いて……んっ、んんっ……
誠,ん? 抜いてやるとは一言も言ってないぞ? 今日はそれを入れたまま授業を受けるんだ
姫月,やっ……! そ、そんなの無理だよ!! 下著だって著けてないし、こんなの入れてたら落ちちゃう……!
誠,腹に力入れてたら大丈夫だろう? フィギュアやってるから腹筋あるだろうし
姫月,でも……でも……!
誠,大丈夫だって。ほら、スカート
姫月,うぅ……む、無理だよぉ……うくっ、んんっ……
文句を言いながら、姫月は俺の手渡したスカートを素早く履いて立ち上がる。
先程まで姫月の胸を堪能していた親父たちは健やかな表情で俺たちを見守っている。
誠,お。著いた
姫月,うぅ……、兄貴の意地悪……
誠,今更だな。ほら、行くぞ
そう言って俺は姫月とともに學園の最寄り駅に降り立った。
;0scene 8日目_陵辱ルート_朝02
女子生徒A,ねぇねぇ、あの噂聞いた? ほら、あの……
女子生徒B,あの話のこと?? 信じられないよね。だってまさか……
女子生徒A,あれ、マジらしいよ。私の友達がメール回ってきたって……
女子生徒B,あ、私寫メ持ってるよ。ほらこれ……
女子生徒A,え、ウソ! 見せて見せて! うわ……ホントだ
女子生徒B,でもこんなことして笑顔ってなくない? 合成なんじゃないかなって思うんだけど……
女子生徒A,え~、でもこの寫真、合成にしては違和感なさ過ぎじゃない?
男子生徒A,なぁ、……さんが……してるってあれ、マジかな
男子生徒B,いやいやそんなのデマだろ。お前なに信じちゃってんの
男子生徒A,いや、だってさぁ……こんなの送られてきちゃってさ……
男子生徒B,うっわマジでマジでマジで??? 何だよこれ! 俺にも転送してくれよ!
姫月,………………?
誠,…………?
學園の最寄り駅を出た頃から、何だかやけに周囲が騒がしい。
女子生徒A,あ、あれ……ほら、噂をすれば……
男子生徒B,わ~~、まさか……さんがなぁ
男子や女子が俺と姫月のほうをちらちらと橫目で見てくる。
正直少し鬱陶しい。
姫月,……な、何か……みんな私たちのほう、見てない……?
誠,そうだな……
周囲の生徒たちを観察してみると彼らの視線は俺たち、というよりも寧ろ姫月に集中しているように思える。
女子生徒C,あ、わ……。どうしよ……さんがいるけど……
女子生徒D,で、でもあんなのデマに決まってるよ……
誠,………………
學園に著いてからも、送られてくる視線は多くなっていく一方だ。
俺たちが一歩進むごとにざわめきが大きくなる。
姫月,あ、兄貴……。何か、今日の學園……おかしいよ……。じろじろ見られて、気持ち悪い……
誠,そう、だな……何があったのかは分からないが……
こうして廊下で話しているだけで、無遠慮な視線が俺たちを射抜く。
誠,とにかく姫月は教室に行っておけ。俺はひとまず職員室に行かなきゃいけない
姫月,…………
誠,職員室に行けば他の先生から、何かしら情報を聞けると思うから。な?
姫月,…………ん、分かった…………
不安げな様子で、俺のスーツの袖をきゅっと摑む姫月にそう聲をかける。
よほど心細いのだろうか、姫月は目を伏せたまま小さく頷いて教室のほうへと消えていった。
誠,さて…………
誠,おはようございます
がらりと引き戸を開き、俺は職員室へと足を踏み入れる。
俺の顔を見た途端、狸をはじめとした數人の教師たちが慌てて駆け寄ってきた。
小原,いいい一之瀬くん!! これは一體どういうことだね!!??
女性教師,これはアレでしょう?? いわゆるアイコラというものなのでしょう??
男性教師,一之瀬さんに限ってこんな……!
小原,ななななんとか言いたまえ一之瀬くん!!!
やたらと焦っているのか、普段は俺のことを『一之瀬先生』と呼んでいる狸が、俺がこの學園の生徒だった頃のように『一之瀬くん』と呼ぶ。
何やら相當に切羽詰った狀況らしい。
だが、とは言っても朝っぱらから暑苦しい顔を大アップで見せられては気が滅入る。
俺はひとまず彼らから一定の距離を取ることにした。
誠,皆さんいきなりどうなされたんですか? 何があったのか説明してください
女性教師,まぁ! 知らないの!!? 一之瀬先生には回ってこなかったの??
誠,えぇと。何がですか……?
ヒステリックに叫ぶおばさん教師は細い銀縁の眼鏡を人差し指で上げながら近付いてくる。マジうぜぇ。
説明しろっつってんだろうが。だから女は嫌なんだよ。
男性教師,これ! これだよ一之瀬くん!! 今朝僕の攜帯にこんなメールが……!!
誠,……見せて頂いてもよろしいですか?
俺は男教師から攜帯を借りてディスプレイに目をやる。
誠,!!!!
そこには先週末、姫月が秋葉原で行った癡態を収めた寫真が映し出されていた。
姫月が全裸でピースをしている様子が様々な角度から撮影されているのだ。
あの時寫真を撮ろうとしていた人間は出來るだけ排除したと思っていたが……。
(盜撮されてた……か)
小原,い、一之瀬君……。わわわ私は勿論、こんなことは何かの間違いだと思うのだがね、姫月くんはもしかして誰かに脅されているとか……
小原,それとももしかすると犯罪に巻き込まれてこんなことになっているんじゃないかい??
誠,……大丈夫です。問題ありません。僕のほうで対応しますので
もしそうであったら員警に……と言う狸を、俺はやんわりと制禦する。
小原,? ど、どういうことだね? じゃぁこれは先ほど山崎先生の言った通り、あいこらというやつなのかね??
山崎と呼ばれたおはさん教師は鋭い目付きで俺を見つめている。
誠,そうですね……その辺りは僕には分からないですから、後で姫月に確認してみます
小原,そ、そうかね……。ま、まぁ一之瀬くんがそう言うなら任せることにするよ
誠,はい。ご心配おかけしてすみません
元々面倒ごとは遠慮したいところなのだろう。
俺の臺詞に、先ほどまで鼻息荒く周囲を囲っていた人間たちが散り散りになって退散していく。
誠,ふん…………
俺は自分の機に鞄を置き、授業に必要な道具を持って職員室を後にした。
さて、どうしようか……。
朝の様子から察するに、どうやらほぼ學園中の人間が先ほどの寫メを受け取っているようだ。
姫月,…………
姫月,……ん、分かった…………
俺は今朝の姫月の様子を思い出す。
いつもは強気な光を放つ瞳が、不安そうに揺らいでいた。
誠,………………
精巧なアイコラ……もしくは姫月に似ている別人だと言い張ってもいいが、このまま成り行きを見守るのも楽しそうだ。
そう思い、俺は姫月の待つ教室へと向かった。
教室のドアを開けると、廊下のほうまで聞こえていた囁き聲はぴたりと止まる。
どことなくぴりぴりとした空気が漂っている中、生徒たちは再度小さく話し始めた。
誠,おはよう、小原先生はもうすぐ來るから少し待っててね
姫月,………………
生徒,………………
俺の言葉に教室中がしぃんと靜まり返り、姫月が困ったように俺の顔を見つめてきた。
姫月,………………
生徒,………………
雪名,せ、先生! あの、私聞きたいことがあるんです!
沈黙を破ったのは一人の女子生徒だ。
誠,…………なにかな?
雪名の聲に、俺は普段通りの笑みを浮かべて聞き返す。
雪名,あの……これ……これ、噓ですよね……
誠,うん? 何のこと?
雪名,っつ……! この姫月ちゃんの寫メ!! 噓ですよね!!!?
そう言って雪名は、先ほど職員室で見たものと同じ寫真を俺の目の前に差し出した。
誠,これは……
誠,えぇと。よく分からないけど、あいこらとか言うものじゃないの? 姫月は有名人だからなぁ
雪名,そ、そう……ですよね! そうだよ! これが姫月ちゃんなわけないし! こんな露出狂みたいなことするわけないもん!
誠,(…………それがするんだよなぁ……)
まぁ自発的に、というわけではないが。
少し畫像に詳しい人間が見ればこれがアイコラじゃないことくらい分かるだろう。
こんな圧倒的な証拠寫真を見てもまだこの子たちの姫月に対する妄信は変わらないのか……。
そう思うと、俺の中の黒い欲望がむくむくと大きくなっていく。
誠,それはそうと、どうして姫月じゃなくて僕に聞くんだい? 折角本人が近くにいるんだから、直接聞けばいいじゃないか
姫月,っつ……!??
雪名,あ……、そ、それはちょっと……聞き辛かったっていうか……
俺の言葉に、姫月は目を見開き、雪名の目を泳がせた。
誠,なぁ、姫月。どうなんだ? 皆この寫真が原因で朝から落ち著きがなかったみたいだぞ?
姫月,ぁ……あ……
教壇から降りて、俺は雪名から預かった攜帯を片手に姫月の元へと歩いていく。
誠,ほら、見てみろよ。これお前じゃないだろ?
姫月,やっ……やっ! 嫌っ!!!
攜帯を姫月の眼前に持っていくと、姫月はがたがたと震え手で払った。
誠,あーぁ、姫月。他人の攜帯をそんなに亂暴に扱っては駄目だろう?
誠,ほら、どうだ? これはアイコラで合ってるのか? 噓吐かずに正直に言うんだ
姫月,あぅ……ぁ……あ……
姫月の大きな瞳からは涙が溢れ、白い陶器のような肌はすっかり青冷めてしまいガタガタと震えている。
雪名,違うよね! こんなの姫月ちゃんじゃないよね!??
姫月,……っつ…………
姫月が助けを求めるように俺のほうを見る。
アイコラだと噓を吐くか、それとも真実を伝えるのか。
姫月はどちらを選択するのだろうか?
噓を吐くのが普通だ
恐らく姫月は噓を吐くだろう。
ここでこの寫真が自分だと認めてしまえば、今まで築き上げてきた己の功績が崩壊してしまうのだ。
薔薇色の學生生活が一転、暗く苛められる日々に変わってしまうかもしれないのだから。
雪名,ねぇ、姫月ちゃん……!!
姫月,ぁ……わ、わたし…………私は…………
誠,どうなんだ? 姫月……?
姫月の顔は顔面蒼白とばかりに血の気が引いてしまっている。
噓を吐くのが躊躇われるのか、今にも泣きそうなほど顔をゆがめる。
姫月,あ……ぁう……わ、私…………
姫月,こ、れ……わ、私……なの
誠,…………!??
雪名,……え?
姫月,この……寫真……わ、私、で……
雪名,う、噓……噓、だよね?
姫月,う、噓じゃ、ない……。これ、私で……
姫月,わ、私が……、あ、秋葉原で…………は、裸で……ピースしてた、の……
誠,………………
保身のために噓を吐くだろうと思っていた俺の予想は見事に外れた。
誠,ひ、姫月……? な、何でお前……そんな……なんで、これは自分じゃないって言わないんだよ……
姫月,だ、だって……、わ、私なんだもん……。う、噓なんて……吐けないよ……ぅ、うく……う、う……
噓くらいなんだよ。
吐けばいいじゃないか。何でそこまで潔癖である必要がある?
俺には分からない。姫月が何を考えているのか……。全然、分からない。
誠,っつ………
自分の立場が悪くなることなど分かっているだろうに、それでも清廉潔白であろうとする姫月に腹が立つ。
どうして。どうしてだ。
お前と俺とは兄妹で、染色體が異なっているだけで遺伝子情報なんてほとんど変わりないはずなのに。
誠,………くそ………
訳の分からない姫月の行動に、俺は小さく掃き捨てる。
こうなったらとことん姫月を追い詰めて、泣かして、ぼろぼろにしてやる。俺のいる所まで墮ちればいい。
そうだ。墮とせばいいのだ。いつまでも綺麗なままでいようとするこの妹を。
姫月,……………
涙をたたえたまま力なくうなだれる姫月を見て、俺はにやりと口端を上げる。
誠,……ここまでにしよう
姫月,っつ…………
雪名,………………
誠,……そうだな。小原先生が來るまで、少しビデオでも見て暇潰ししようか
真実を言うのか?
姫月の性格からして、恐らく噓を吐くことは出來ないだろう。
助け舟を出してもいいのだが、俺は、姫月が露出狂だとクラスメイトたちに認識されることによってこの先どうなるのかということに興味がある。
(もう少し情報を出してやる、か……)
姫月,っつ…………
姫月はこれ以上何も言えない。
誠,……はい、ここまでにしよう
姫月,っつ…………
雪名,………………
誠,……そうだな。小原先生が來るまで、少しビデオでも見て暇潰ししようか
姫月の態度に、俺は自分の中で何かドス黒い感情が渦巻くのを感じた。
俺は攜帯からSDカードを取り出し、教室內のモニタへとPCを繋いだ。
そして電源を入れ、映像を立ち上げる。以前俺が取った映像を。
姫月,…………!!!!!!???
雪名,え……?? こ、これ……???
貓屋敷,や、やだ……何よ、これ……
男子生徒A,授業中……? え? マジで??
男子生徒B,あ……これって、この間一之瀬さんが遅刻した時の……
姫月,い、いや……嫌ぁあああああ!!! やめて! やめてよ!! そんなの流さないで!!!
攜帯ムービーだけあって解像度はあまり良いとは言えないのだが、誰が映って何をしているのかくらいは十分に判別出來る。
教師が教鞭を振るう中、クラスメイトたちが真剣に勉學に勵んでいる様子。
そしてその教室の前の廊下で姫月が自分の秘所を弄り、オナニーをしている様子。
その動畫を見る生徒たちは目を白黒させて食い入るようにモニターを見つめている。
男子生徒A,すげ……一之瀬さんの、ぐちゅぐちゅ言ってる……
男子生徒B,うぁ……今ちょっとま○こ見えた……
男子生徒A,ってゆかこれって無修正だよな……俺、無修正って初めて見た……
雪名,やだぁ……こんなこと廊下でするなんて……信じらんない……
貓屋敷,あの首輪ってお灑落でしてたんじゃなくて、SMの道具だったんだ……
男子生徒C,うぇ……エグ……
男子生徒A,一之瀬さん、すごい気持ち良さそう……
男子生徒B,校內でこんなこと出來るって相當だよな……ゴク。一之瀬さんって見かけによらずエッチなんだな……
姫月,やめて! やめてやめてやめて!!! お願い!! こんなの嫌ぁ!!!
誠,はは。もっと皆にお前のことを知ってもらう良い機會じゃないか
姫月,ち、違う!! こんなの私じゃない! 私は……っ、私は……!!
姫月は自分の席から立ち上がり、足をもたつかせながらも教卓のほうに向かってくる。
誠,これもお前だし、街中で全裸でピースしていたのもお前だろう? さっき言ってたじゃないか。一度言ったことを撤回するなんて、姫月らしくないぞ?
誠,はは。何を言ってるんだよ。誰がどう見たってお前じゃないか
姫月,違う!! 違う!! こんなの違う!! 見ないで! 私を見ないでぇえ!!
よろよろと教卓まで歩いてきた姫月は、目から大粒の涙を流しながらPCとモニタの接続を引き千切った。
姫月,はぁ、はぁ、はぁっ、はぁっ、はぁ、はっ……はっ……
千切ったコードを握り締めて、姫月は荒い息を吐きながらぺたりと床に座り込む。
姫月,どうして……どうして、こんな……
男子生徒A,あれって、やっぱり一之瀬さんが……露出狂ってことだよ、な……
男子生徒B,一之瀬さんってあぁいう趣味があったんだ……
雪名,そんな……う、噓……噓……
今まで信じてきたものが崩れる瞬間。
姫月が今まで懸命に築き上げてきたものは、こんなにも簡単に崩落してしまう脆弱なものなのだ。
その光景を見て、俺は思わず笑い出してしまいそうになる。
誠,……噓じゃないよ?
雪名,え……?
誠,ねぇ、キミたち。姫月の本當の姿を見たくない?
俺は近くにいた男子生徒たちの肩にそっと手を置いて言う。
誠,姫月は恥ずかしい目に遭わされたりすることが大好きなんだよ
姫月,ち、違うっ!! 私は……!!!
誠,みんなで確認してあげればいいよ。姫月が本當に露出狂かどうか
男子生徒A,え……で、でも……そんなこと……
誠,キミたちはそういうことに興味がある年頃じゃないか。姫月を押さえつけて、見て判斷するといい。百聞は一見に如かずと言うだろう?
姫月,っひ……!???
俺の言葉に男子生徒たちの喉がごくりと鳴った。
誠,これは只の実験なんだよ。姫月が本當に露出狂じゃないかどうか、キミたちが判斷してあげるんだ
誠,どうする? 一之瀬姫月の癡態を、見てみたくないかな?
男子生徒A,お。俺、見てみたい!
男子生徒B,お、俺も!!
一人が立ち上がると、もう一人、もう一人と立ち上がる。
朝から異常な空間の中にいて、今現在の狀況がどういうものなのか彼らにはきちんと判斷が付いていないのだろう。
少年たちの中では既に倫理や常識といった世の理よりも、好奇心のほうが大きくなってしまっているのだ。
姫月,やだ……嫌だよ……や……
姫月はすっかり腰を抜かせてしまっているのか、床に座ったままじりじりと後ずさることしか出來ない。
男子生徒A,ごめんね! 一之瀬さん!
男子生徒B,ちゃんと俺たちで判斷してあげるからね!
姫月,ひ!! いや!! 嫌ぁあああああああああ!!!!
姫月,嫌!! は、離して! 離してよぉ!!! やだぁああああああああ!!!!
両手両足を男子生徒に摑まれ、姫月は身動きが出來ない。
それにも関わらず手足をばたつかせこの狀況から逃げだそうとしている。
姫月,離して! 離してってばぁああ!!! 嫌だ! こんなのやだぁああ!!
男子生徒A,一之瀬さん、ちょっと大人しくしておいてね
男子生徒B,これはちょっとした確認のためだけなんだ。一之瀬さんのためなんだよ
姫月,そんなこと頼んでない! 離して!! 助けてぇ!!
誠,姫月の足を開いて、スカートを捲ってごらん。面白いものが見られるよ
姫月,!!!???? や! 嫌!! 噓っ!! 嫌だ兄貴!!! やめさせて!! 助けて!! お願い助けてぇええ!!
涙でぐちゃぐちゃになった顔を歪ませて、姫月は一心不亂に助けを求める。
ここにいる中の誰も、助けやしないのに。
男子生徒A,そ、それじゃぁ一之瀬さん。スカート、捲っちゃうね?
姫月,嫌!! 嫌ぁ!!!! やだ!! やーーーーーーーー!!!!!
姫月の體が一層激しく抵抗を示す。
だが、いくら姫月が鍛えているとはいえ、所詮は女子一人対男子數人だ。
多勢に無勢。勝てるわけがない。
姫月,…………ぁ……あ……っ……
男子生徒A,ひゅぅ
男子生徒B,一之瀬さんってばえっろ……
雪名,………………
貓屋敷,……気持ち悪…………
姫月の女性器には、朝の通學途中の電車で挿入されたまま、ピンク色のバイブが深々と突き刺さっている。
それを見た男子生徒は色めき立ち、女子生徒は眉を顰めて目を反らした。
姫月,嫌……やだぁあ……見ないで……見ないでよぉ……
ひっくひっくとしゃくり上げながら、姫月は涙を流す。
姫月,うぇ……え、えぇ……。も、やだ……やだぁああ
男子生徒A,すげぇ……こんなにぐっぷり入るもんなんだ……
男子生徒B,一之瀬さんのここ、すごいひくひくしてる……
エロ本やAVなどでは見たことがないのだろうか。
初めて女性器を見る生徒たちは興味深そうに姫月のそこをじっくりと見つめる。
姫月,っひ……ひぁ、あ……あ……
男子生徒A,うわぁ……何かお汁がいっぱい出てきた……
姫月,ひぅんっ!!! ひゃ、あぅ……は、あぁあ!!
誠,はは、やっぱり姫月は見られると興奮する変態だったんだな。見られているだけだってのに、何ダラダラ汁を垂れ流してるんだ?
姫月,違っ……!! 違う……!! わ、私……変態なんかじゃ……
男子生徒A,いや~、一之瀬さん。こんなモンブッ挿したまま登校してる時點で十分変態だと思うよー?
男子生徒B,バイブがすげぇヌレヌレだし。これって一之瀬さんが濡れまくってるってことなんだよな?
男子生徒A,てゆかホントに女の子ってこんなにドロドロになるんだ……。これっておしっこじゃないんだよな?
姫月,うぇ、え……嫌、だ……見ないで……見ないでよぉ……
男子生徒A,しかも一之瀬さんって下の毛生えてないんだー。すげぇツルツル
姫月,やだぁあああ……そんな、こと……言うなっ……離してよぉ……
雪名,………………
貓屋敷,………………
涙を零しながら訴える姫月を無視して、男子生徒たちは淫具の入った場所に夢中になって群がり、女子生徒たちは嫌悪感でいっぱいという表情で遠巻きに見ている。
誠,ん? あぁ、駄目じゃないか姫月。バイブが少し抜けかけてる。締まり具合しか取り得がないのに、何を排出しようとしてるんだ??
姫月,ひぎっ!!! ひっ! ひぁっ! あぁあああぁああああああああ!!!!
俺は出掛かったバイブを足で押し込む。
膣の奧のほうまで屆いたのか、蹴ってもそれ以上は進めない。
姫月,っひ! ひぁ! ひっ! 嫌ぁあああ!! 痛い! 痛いいいいいい!!!!
誠,ふぅん? 違うだろ? 奧まで屆いて気持ちいいんじゃないか?
姫月,やだ! 嫌だよぉ!!こんなの……こんなのやだぁあああ
誠,へぇ?
バイブを動かす度にぐちゅり、と粘膜が擦れる音が聞こえる。
姫月,ひぁっ! あ、あっ、あーーーー!!! 駄目! 駄目! 駄目ぇえええええ!!!
びくびくと姫月の體が大きく痙攣する。
姫月,う、うぁ……あ、あぁ、あ、あ……
誠,はは。イっちゃったのか? ほら、皆やっぱり姫月はこうやって恥ずかしいことをされるのが大好きな子なんだよ
男子生徒B,い、今のがイったってこと……? びくびくって體がしなってさ……
男子生徒A,あぁ……一之瀬さん……一之瀬さんのこんな姿が見られるなんて俺……
姫月,嫌だ……やだ……助けて……お、お願い……兄貴ぃ……
誠,うん? もう一回足でイかされたいのか?
姫月,やぁあ! 違……! 違う! こんなのやだぁあ!!
嫌だ、と姫月は頭を左右に振る。
誠,はは。嫌だって言いながら乳首立ってるじゃないか
姫月,っつ…………ちがうもん……こんなの……ちがうもん……
ひくりとしゃくり上げながら姫月は言うが、ピンク色の乳首がシャツに薄っすらと透けて見え、つんと上を向いているのが分かる。
男子生徒A,え? あ、ほ、ホントだ。もしかして一之瀬さんってノーブラ??
男子生徒B,ノーパンでバイブ入れてるくらいなんだからノーブラなんじゃね??
誠,気になるなら見てみると良いよ。知的好奇心は人間の根源的欲求だ。恥じることじゃない
男子生徒A,えへへ……。そ、そうですよね……
男子生徒B,そ、それじゃ、失禮して……
姫月,やだ!!! 嫌ぁ!! やめてよ変態!!!!! 離して! 離せってばぁああ!!!!
男子生徒A,ごめんね、一之瀬さん!
姫月,う……うぅ……うっ……ひっ……うぅう……み、見ない、で……お、お願……見ないでぇ……
姫月はぼろぼろと涙を零しながら哀願するが、そんなものはただ男の嗜虐心を煽るだけだ。
必死に腕で隠そうと動くが、両手を生徒たちに摑まれ萬歳の格好をさせられてはどうしようもない。
ピンク色のセーラー服の下から、真っ白で柔らかな曲線を描く胸が現れた。
男子生徒A,うあ……一之瀬さんの乳首、マジピンク色……
姫月,嫌ぁ……あ、ぁ……見ないで……見ないで……
男子生徒B,すげ……ホントにノーブラなんだ……
姫月,違う……違う、よ……私は…………
雪名,……Cくらいあるのに、ノーブラとか……ホントに只の変態だったんだ……
姫月,違う……私、変態じゃ、ないもん……
貓屋敷,憧れてたのに……こんな変態行為して喜ぶ女だったなんてマジ幻滅なんだけど!!!!
姫月,やめて……やめて……言わないで……わ、私、こんなの、で……喜んでなん……て
誠,ないわけないだろう? ほらほら。足でバイブ動かされてイくくせに
姫月の女性器に刺さったままのバイブに、再度刺激を與えてやる。
ぐじゅぐじゅと蠢く道具に、姫月の體が面白いほどびくびくと跳ねる。
姫月,やっ……嫌だぁ……助けて……も、やなの……それ、抜いてぇえ……嫌ぁ……
誠,ホントに嫌なの?
姫月,やだ! やだよぉ!! お腹の奧まで來てっ! 苦しいからぁあ!!
誠,ふーん。抜いてほしいってさ。誰か抜いてあげる?
男子生徒A,お、俺抜きたいです!!
誠,うん、それじゃぁ抜いてあげて
男子生徒A,はい!!
男子生徒A,……一之瀬さん、抜くよ?
姫月,っひ、ひぁ、あ、あ、ああ、あーーー! やらっ! 嫌ぁあ
姫月,ひぅ! うぁ! あぁあああああん!!!!
生徒の手によって、姫月の下部からはバイブが取り除かれる。
登校途中から入れていただけあって、バイブも姫月の陰部も愛液でどろどろだ。
先ほどまでバイブをくわえ込んでいた陰唇はテラテラと光り、物欲しそうにくぱりと口を開けている。
誠,……そういえば、忘れてたけどさっきまでお前って処女だったんだよなぁ……
誠,……そういえば、忘れてたけど昨日までお前って処女だったんだよなぁ……
姫月,っふ……う、ぅえ……えぅ……
処女を奪う
このまま男子生徒たちに輪姦させるのも面白いと思ったのだが、一応妹の大切な初めてを適當な奴らにあげてしまうのは勿體無いような気がした。
(まぁ、もう既にバイブで破瓜してしまってるけどな……)
誠,うーん。処女を捧げた相手がバイブで、次はクラスメイトに輪姦されるってのは流石に哀れだよなぁ……
姫月,やっ! 嫌だ!! やっ……お願いだから……!! お願……お願い……やなの……嫌、だ……
俺の言葉に、姫月は真っ赤に腫れてしまった目で懇願する。
誠,それじゃ、責任持ってこの俺が初めに挿入してやろう
姫月,……え…………?
男子生徒A,あ、せ、先生! 後で俺たちも……
誠,うん、分かってるよ。僕の後で好きなだけ好きなことをすればいい。幸い姫月は前も後ろも使えるから、一度に3人まで相手が出來るしね
男子生徒A,やった! 流石先生!
俺の言葉に周囲が一気に沸き立つ。
ガタガタと震える妹の姿を見下ろしていると、まるで俺がこの教室內の中心にいるように思えてくる。
誠,なぁ、クラスメイトよりは兄のほうが良いだろう?
姫月,や……やだよ……嫌……こんな…………や、やめてよ……ねぇ、兄貴……っ!!
誠,ま、嫌だろうな。屑だゴミだって馬鹿にしてた兄に犯されるなんてさ
姫月,や、やぁ………だ……あ、兄貴……お、お願い……ま、待って……挿れないで……待って……兄貴……嫌だよ……こんなの……こんな……っひ
誠,嫌だね
姫月,ひぁ、あっ、あっ、あああぁあああああ!!!
誠,っく……、せ、狹っ……
何だこれ。オナホールなんかとは違う。
溫かくて狹くてヌルヌルしてて吸い付いてくる。
未開の土地に無理やり分け入ったような征服感。これがつい數時間前まで処女だった少女の膣なのか。
姫月,いっ……、ひ、ひぁっ、あっ、やぁっ、あっ……お、おっきぃよぉ……く、苦しっ……
誠,っは……まだ、全部入ってない、ぞ……
姫月,や……っ、嫌ぁ……も、無理……お、お腹裂けちゃうよぉ……
誠,ほら、大嫌いな兄貴のち○ぽを無理やり挿れられてどんな気分なんだ? 言ってみろよ、姫月
姫月,ひぅっ……うぅ……っつ……やぁ、あ……分かんな……中、熱くて……あ、兄貴のおち○ぽ大きくて……分かんないよぉ……
男子生徒A,うわ……一之瀬さんの口から『おち○ぽ』なんて出てくるんだ……
雪名,下品過ぎ……気持ち悪……
姫月,っつ!!!!!
誠,そうだよ、姫月は淫語を話しながらエッチなことをするのが大好きなんだ
姫月,ち、違う……!! そ、れは兄貴、がっ! あっ、ひあぁっ、あっ!!!
誠,違わないだろう? ほら、今まで散々悪口を言ってきた兄貴に突っ込まれて、気持ち良さそうに喘いでるじゃないか
姫月,やぁっ! 違……っ、私、私……あぁ、あっ、あっ! や、う、動かない、でぇっ!
俺は根元まで突き入れることはせずに、姫月の膣內の淺い部分で挿れたり出したりを繰り返す。
男子生徒A,ゴクリ…………
ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てながら姫月の小さな陰唇に男のモノが出入りするのを見て、男子生徒たちが喉を鳴らす。
先ほどまでひっきりなしに聞こえてきていた罵倒や嘲笑は、今やすっかり興奮の色を乗せた吐息に変化していた。
姫月,ひっ、ひぁっ、あっあっ……やぁ、あ……やら……そ、そこ……やぁあ……
姫月,やめ……てぇ……お、お願……こ、こんな……こんなのひどい、
よぉっ、っひ……!! 嫌! ゴリゴリしないでっ! 駄目ぇっ!!
誠,気持ちいいんだろう? 腰が動いてるじゃないか……はは。朝まで処女だったとは思えないくらいの淫亂っぷりだな
誠,あぁ、でもバイブでイっちゃうくらいなんだし、このくらいは當たり前か……ほら、奧まで挿れてほしいんだろう?
姫月,やっ! やーっ!! 挿れて……ほしくなんか……ないっ……ふ、ぅあ、あっ、あっ、あぁっ、あ!
誠,ふぅん……? それならこっちも一緒に弄ってやろうか
姫月,ひぁっ!!!???
俺はそう言って、姫月の陰唇へと手を伸ばす。
薄いピラピラに包まれた小さな突起は觸れるとビクリと震えた。
姫月,ひっ、やっ、嫌っ……! そ、そこ觸っちゃ……やぁあっ、あっ、だ、駄目……らめなのぉ……っ!!!
誠,うん? そこってどこのことだよ? 言ってくれないと、俺もみんなも姫月ほど頭良くないんだから分からないぞ?
姫月の愛液の助けもあり、俺の指は滑らかにその突起部分を上下する。
姫月,ひゃっ、あっ、あぁっ、あっ……、やぁ、あーっ……、く、りぃ…………い、弄らない、でぇ……
誠,んん? 聞こえないな
姫月,ひゃあああああああああ!!! や、やぁあっ、い、痛い……痛いよぉ……ひっ、ひぅっ、う……
姫月の聲になっていない言葉を聞き、俺はその突起をぎゅっと摑む。
よほど痛かったのか、姫月は悲鳴を上げて涙を止め処なく零している。
男子生徒A,はぁ……はぁ、はぁ……、や、やば……俺……
男子生徒B,はぁ、はぁ……お、俺も、ちょっと……前、キツイ……
誠,出したいなら姫月にかけてあげるといいよ。姫月は精液を飲むのもかけられるのも大好きだからね
姫月,な……っ! 何言って……!! 好きなわけ、ないよ……!! んんっ! あっ、あっ! やっ! そんな、のぉ……好き、じゃ、ない……!!
誠,はは、相変わらず姫月は素直じゃないなぁ。ちゃんと言ってくれないと分からないだろう?
姫月,っひ……!! 嫌! いやぁ! 痛っ!!
俺は姫月のピンク色をした小さな突起を弄り続ける。
爪でカリリと引っ掻いてやると、姫月の體はびくびくと震えた。
誠,な? もう痛いのは嫌だろう? だったらちゃんと自分のして欲しいことを言わないと。俺ももっと深い所まで入りたいし、みんなだって姫月に精液をぶっ掛けたいと思ってくれているんだよ?
姫月,っふ……、うぅ…………う……。わ、私……私の……クリ……弄らない、で……お、お願い……
誠,どうして?
姫月,あ……あぅ……、そ、そこ弄られる、と……わ、私……へ、変になっちゃうよぉ……あっ……、ふぁ、あ……んんっ、んっ
誠,へぇ……じゃぁお前のクリを弄らない代わりに、奧まで突っ込んでぶっ掛けていい?
姫月,そ、れは………………っひ!!!!???
誠,突っ込んじゃ駄目ならこのまま姫月が気絶するまでずーっとクリばっかり弄ってやろうかなぁ
ぐちゅぐちゅと音を立ててクリトリスを愛撫してやると、姫月の顔色が変わった。
姫月,やあああっ!! あっ! や、やぁ、らぁっ! ま、待って……お願……あっ、あぁ! あっ……い、いいから……! して、いいからぁ!!
誠,何をしていいんだ?
姫月,やっ! わ、私の……お、奧まで……突っ込んで……いいからぁ……!! せーえきっ、いっぱいかけていいからぁあ! も、も……やぁ、あーーっ!!!
誠,姫月の、どこに、何を突っ込んでほしいんだ?
姫月,っひ……、ひぁ……、あ……あぁ、あっ、あっ……ひ、姫月の……お、おま○こ……! おま○この……お、奧まで……兄貴のおち○ぽ……つ、突っ込んで欲しいのぉ……!!
誠,へぇ……。実の兄貴のち○ぽが欲しくてよがり狂うなんて、姫月は隨分と変態なんだなぁ
姫月,っひ……うぅ……う……、へ、変態なの……姫月、変態らから……! 兄貴のおち○ぽ欲しいからぁ!! も、クリクリするのやめれぇ……ひぁっ! あっ! ふぁあん!!
誠,分かった。じゃぁお望み通り奧まで入れてやるから、な……っ!
姫月,ひぁあああああああああ!! やっ、やっ、あーーっ!!!
誠,どうだ? 兄貴のち○ぽで膣內いっぱいにされた感想は?
姫月,ひっ、ひぁ……、やぁ、や……や……わ、分かんな……お、お腹いっぱいで……く、苦し……あぁ、あっ、ああっ、あーっ!
男子生徒A,はっ、はぁ……駄目だよ、一之瀬さん。先生の質問にはちゃんと答えなきゃ
姫月,っひ……、ひっ……、い、やぁ……、あっ、や……、らめっ、らめぇええ、ち、乳首コリコリしちゃ……らめっ! クリも……觸っちゃ……、らめ、なのぉ
少年たちに転がされ、弄られ続けている姫月の乳首は赤く熟れてしまっている。
俺は姫月の中を自由に荒らしながら、すぐ上にあるクリトリスに爪を立てた。
姫月,ひはっ……! あ、あぁっ、あっ、あっ!! いやぁ……! 爪、立てちゃ……っ! やぁあっ……!!
男子生徒B,じゃぁ先生の質問に答えてよ。はぁ、はぁ……ほら、じゃないともっとクリクリされちゃうよ?
姫月,ひぁっ! あっ、あっ、や、やらぁ……! も、そこっ、クリクリしちゃやなのぉ……!
姫月,わ、私のおま○こいっぱいに……っ、兄貴の、おち○ぽが入ってきて……、熱くて、硬くて……お、奧までゴリゴリって……
誠,はは。兄に犯されて気持ちいいのか
姫月,っひ、ひゃ……、あぁっ、あっ、んんっ! あ、兄貴に、犯されて……気持ちいいの……! 姫月、おち○ぽ……おま○こに挿れてもらえて……、嬉しい、から……! だからぁ……!!
誠,そっか。じゃぁ実の兄の精液を中出しされても姫月は嬉しいよな?
姫月,え……?? やっ! ま、待って……!! それ、らめぇ!! あ、赤ちゃん出來ちゃう……! らめなの!!!
俺の臺詞に、姫月はようやく正気に戻ったかのように再度激しく暴れ始める。
姫月,やら!! わ、私……まだ……妊娠なん、て……! んんっ、あっ、あっ!!!
誠,ほら、ちゃんとお兄ちゃんのザー汁零さず飲むんだぞー?
姫月,やっ! いやぁ!! やめて! 中、出しちゃらめなの!!!
男子生徒A,っく……い、一之瀬さん、エロすぎ……!
男子生徒B,やべっ……俺も、出そ……!
俺は姫月の必死な制止の聲を振り切り、腰の打ち付けを早くしていく。
俺たちの性交を見守っている周りの生徒たちの息が荒くなり、手の動きも早くなっていく。
誠,っつ……で、出るぞ
姫月,っひ!!??? やっ、やっ、あっ、あぁ、あっ、らめなの! らしちゃ……らめっ! らめぇえええ!!!
俺は姫月の細い腰をつかみ、前後左右に激しく揺さぶる。
絶頂を目指してぐちゅぐちゅと規則的な律動をひたすらに繰り返していくと、頭の中でフラッシュが焚かれたように突如世界が白く染まる。
誠,っく…………!!!!
姫月,ひぁ! あっ、あっ、やぁあああああああ!!!
男子生徒A,っつ…………!!!
男子生徒B,くっ…………!!!!!
最奧を何度も突き、俺は溜まりに溜まった精を妹の中へと注ぎ込んでいく。
周りの生徒たちの放った精で、姫月の整った顔や華奢な肢體は真っ白に染め上げられる。
姫月,ひゃ……、ぅ……あ……あぁ……あ……
ドクドクと俺の欲望が放たれると共に、姫月の體がびくりと大きく痙攣したかと思うと、ゆっくりと弛緩していった。
誠,はは。クラスメイトの見ている前で兄貴の精液注がれてイくなんて、とんだ変態だったな
姫月,っは……はぁ……は……ち、がぅ……はぁ、はぁ、はぁ……、う……、ち、違う……違うよ……わ、私……私は……
誠,違わないよ。お前は変態なんだよ。優等生の仮面を被って、誰よりも立派なフリをしていただけの、ただの雌犬だったんだ
そう、所詮は俺の妹なんだ。お前だけが特別なんかじゃない。
一皮剝いてしまえば、人間なんてみんなこんなものなのだ。
姫月,ちがう……ちがう……わ、私はただ……
誠,違わない。ほら、クラスメイトたちがみんなお前とセックスしたがっているぞ。相手をしてあげればいいじゃないか
姫月,っひ………!!
姫月の中からずるりと肉棒を引き抜くと、白く粘ついた液體がこぽりと吹き出す。
はくはくと口を開ける姫月の秘部は、俺の欲望が抜き去られることを惜しんでいるようにも見える。
誠,さて、次は誰がやる?
姫月,やぁ……、嫌ぁ……だぁ……、誰にも、されたくない……お、おねが……あに、き……やらぁああ
今までの行為で體力を消耗したのか、姫月は力なく指先をバタつかせる。
顔は既に涙でぐちゃぐちゃだ。
男子生徒A,お、俺! 俺やりたい!!
男子生徒B,わっ! ずるい! 俺だってやりてぇよ!!
男子生徒A,へへ 早い者勝ちだもんねー! いっただっきまぁっす!!
姫月,ひっ!!! あっ、あっ、あっ、やっ……!!!! いやぁぁああああああああああああああああ!!!!
姫月が目を見開いて絶叫する。先ほどまでの比じゃないほどに。
誠,姫月、うるさいぞ?
姫月,う、うぅっ、ひっく……ぅえっ……やっ……! あっ、あっ……やら……た、助け……兄貴……や、兄貴ぃ……
男子生徒A,うっ……い、一之瀬さんのおま○こ……き、気持ち良過ぎるよ……
姫月,やっ……嫌……嫌……、抜いて……抜いてよぉ……やらぁあああ
少年のものに貫かれて、姫月は一心不亂に頭を振ってそこから逃れようとする。
大きく開かれた両の目からは水晶玉のような大粒の涙が零れ落ちた。
男子生徒にプレゼントする
男子生徒A,え、ま、マジっすか! 一之瀬さんさっき処女捨てたの??誰に!??
誠,誰に……というより無機物かな。ほら、さっきキミが抜いたばかりのバイブだよ
男子生徒A,えぇええ! 一之瀬さんの初體験の相手はバイブなのかぁ……。ちょっとショック……
誠,はは、そんなに落ち込まなくても貫通したばかりだから、多分まだそんなに緩んではいないと思うよ。試してみればいい
男子生徒A,え、ま、マジっすか! 一之瀬さんって昨日まで処女だったの!?
誠,そうだね。だから多分まだそんなに緩んではいないと思うよ。試してみればいい
姫月,ひっ……!! や! 嫌っ……!! やめ……!!!
男子生徒A,わ、わ……い、いいんですか??
誠,勿論いいさ。好きなだけ犯せばいいと思うよ
男子生徒A,じゃ、じゃぁお言葉に甘えて
姫月,やだ! やっ! やめて……!! 兄貴……!! お、お願い!! も、嫌だよ! こんな……
男子生徒B,あ。一之瀬先生はしなくていいんですか?
誠,うん? 僕? 僕はいいよ
一人の少年が姫月の體を抑えながら問うてきて、俺は少し麵食らってしまう。
まぁ、確かにセックスというものがどういうものなのか知りたい気はするのだが、そもそも姫月とは兄妹だからな……。肉體関係を結びたいとは思わない。
姫月,やだ!! やっ! 離せってばぁああ!!!! 離してぇ!!!
誠,それに……
誠,好きな男以外に処女を奪われても喘ぐ女なんて汚いじゃないか
誠,見ず知らずの男に処女を奪われて喘ぐ女なんて汚いじゃないか
姫月,ひぁああああああああ!!!
男子生徒A,うわ……一之瀬さんの中、あったかくて……きゅうきゅう締め付けてくるよ……き、気持ちいい……!
姫月,ひっ! 嫌!! やだ!!! あっ、あっ、やぁ! 抜いて!! 抜けってばぁあ!!
男子生徒A,無理だよ……はぁ、はっ……こ、こんな、気持ちいいのに……、今更っ、抜けない……!!
姫月,やっ、やっ、やーーーっ!! う、動かないで! やだ! 気持ち、悪いっ……!! 中抉らないでよぉおお!!
少年が好き勝手に腰をグラインドさせる度に、姫月の目からは大粒の涙がこぼれる。
男子生徒A,あぁ……、一之瀬さん……一之瀬さん……! 俺、前からずっと一之瀬さんのこと……っ!!
姫月,っひ、ひぅ……! んっ、んんっ! あっ、やっ! 嫌っ! わ、わたしはっ! アンタなんかっ! 全然好きじゃっ……!!!
姫月,っは……、あぁっ、あっ! わ、わたしは……! わた、し……
は、ぁっ!!! ああああ!!
姫月,あっ、ああっ! や、だぁあ! 助け……助けて……お願……やぁ、あっ、あっ……あーっ、あっ……
男子生徒A,っく……っつ……一之瀬さんっ、一之瀬さんっ……出るっ、出るっ!!!
姫月,っひ!!!???? や! 嫌ぁ!! 中っ! 中には出さないで!!
姫月,嫌! 中!! やだぁああああ!!! 嫌ぁああああああああ!!!
男子生徒A,はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……
姫月,う、うぅ……ひっく……ひっ……
男子生徒B,ちょw お前早過ぎだろww
男子生徒A,し、仕方ねぇじゃん! 一之瀬さんの中って超気持ちいいんだからさぁ!
姫月,っつ……っ……
少年の陰莖が抜かれ、姫月の中は俺と少年のもので溢れかえってしまっている。
少年の陰莖が抜かれ、姫月の中から粘ついた白濁がごぷりと吹き出す。
男子生徒B,まぁ早漏はほっといて、次は俺! 一之瀬さん! よろしくお願いしまーす!!
姫月,嫌ぁああああ……やぁっ、あーっ!!!
男子生徒B,わっ、わっ……、ほ、ホントだ超気持ちいーー!!
姫月,っひ……、い、やぁ、あっ……、う、動かな……でぇ……お、お願……も、やぁ、あ……
男子生徒B,うぅ……っ、一之瀬さん……可愛すぎるよっ、一之瀬さん……!
姫月,や、やぁ……いや、やぁっ、あっ、あっ……中、やぁ、あっ……、助け……助けてぇ……
新しく姫月の中に分け入った少年は、姫月の聲など聞こえていないかのように無我夢中になって腰を打ち付けている。
ぱちゅぱちゅという粘膜質な音と青臭い精液の匂いが教室に充満していく。
入れ替わり立ち代り、クラスの男子たちが姫月を犯していく異様な光景。
姫月,っひ……ひぅ……う……、うぅ、も、もぉ、やぁ、らぁあ……や……やぁ……
姫月,っは……、ぁ、あぅ……、っふ、っは、ぁあ、あ、や……やら……、も、や……
何十回と犯され続けた姫月の全身は精液がこびり付いて真っ白になってしまっている。
姫月の體力も限界なのか、聲はカラカラに乾いてしまって悲鳴すら上げられない。
男子生徒B,ふぃーー……、気持ちよかったぁ……
男子生徒A,最後のほうはもう精液べたべたで、むしろ気持ち悪かったくらいだよなw
男子生徒B,はは、確かにw 一之瀬さんの穴は全部精液だらけになっちゃったもんなー。これが精液便所ってやつ?
姫月,っつ……ふ……、ひく……、う、ぅう……
少年たちの侮蔑の聲に姫月は呆然と天井を見上げながら涙を流している。
誠,…………姫月
姫月,っつ……!!!
真っ白な體を惜しげもなく曬し、床に転がっている姫月に歩み寄り聲をかける。
姫月,ぁ……あ……あぅ……
姫月の體は大袈裟なほどにガタガタと震えていて、俺は綺麗なものを汚してやった充足感と、ほんの少しの憐憫の情を抱いた。
誠,お疲れ様、可愛かったよ。姫月
姫月,っつ……っ……
誠,今日からは學園中がお前の敵だな。……どういう気分?
優しく微笑むと、姫月は涙をぼろぼろと零し始める。
誠,これからお前に話しかけてくれる奴なんていないぞ。獨りきりで便所飯を食べて、男子生徒からは性欲の捌け口として使われて、女子からはキモイって蔑まれながら生きていくんだ
かつて俺が味わった慘めな體験を、蟲のような生活を、お前もするんだ。
その光景を思い浮かべて、俺はくすりと笑った。
姫月,…………れ、でも…………し、は…………
誠,うん? 何か言ったか?
ぼんやりと目の焦點の合っていない妹が何かを呟いたが、俺はその言葉を聞き逃してしまった。
姫月,……………………
誠,……。まぁいいか。姫月のこれからの學園生活が楽しみだよ
姫月,……………………
疲れたのだろうか?
俺の言葉に何の反応も示さなくなった姫月は、ただ力なく涙を零し続けるだけだった。
;0scene AVの女王
姫月を學園で男子生徒たちに輪姦させた日から2ヶ月。
あの後すぐに姫月は消えてしまった。
誠,……今日も帰ってきてない、か……
姫月の部屋はあの日のまま何一つ変わっていない。
姫月ひとりが、まるで神隠しのように忽然と消えてしまったのだ。
誠,……靜かだな
以前までは常に姫月が側にいた。
朝も晝も夜も。口うるさく絡んできていた姫月を煩わしく思うこともあったが、今はそれが懐かしく思える。
人間とは常々勝手な生き物だ。
モーター音を響かせながらパソコンが起動する。
最近はゲームをすることすら面倒になってしまい、俺は日がな一日某巨大掲示板に常駐するようになった。
膨大なスレッドの數々、一日何千萬という人間が利用するだけあってそこには晝も夜もない。
大學を辭め、家から出なくなった俺の唯一のコミュニケーションの場所だ。
スレの一覧を見ていると、あるひとつのタイトルで俺の手が止まる。
『一之瀬姫月がマジ天使過ぎる件
誠,姫月……?
ただの同姓同名に違いない。
そう思いつつも、姫月の消息が知れるかもしれないと內心期待して俺はそのスレッドを開く。
誠,………………
AVデビュー? 姫月が?
ログを読んでいる間にもスレはどんどんと進んでいく。
マウスを持つ手が震える。
誠,そんな馬鹿なこと……
??,んんっ、んっ、……ちゅる、んん、んちゅ
動畫が再生され、女が男根を銜えているのが見える。
カメラが近すぎるため顔は分からないが、隨分若そうだ。
??,んん、ふぁ、あっ、美味しい……おち○ぽ美味しいよぉ んちゅ、じゅる、じゅっ、ぐちゅん
ふいに、以前學園の裏庭で姫月にフェラをさせた時のことを思い出した。
このAV女優の臺詞から、姫月に學校でフェラさせた時のことを連想してしまい頭の中で警鐘が鳴る。
誠,う、噓だろ……こんな……
??,ふ、んんっ、んじゅる、んぐっ、じゅぷ、じゅる……おち○ぽの先から……お汁が出てきたぁ……ん、んんっれろ、れろれろ、ぷぁ、あ……おち○ぽ汁も美味し……
喘ぐ聲が姫月に似ている。
だけどまさか、あの姫月がAVなんかに出るとは思えない。信じたくない。
男優A,おいおい、そっちばっかしゃぶってないで俺のも可愛がってくれよ
??,んふっ、ん、んっ……はぁい……えへへ……おち○ぽいっぱぁい……嬉しいっ★ れろ、じゅ、じゅるるっ
男優B,おお、いいねぇ姫月ちゃん。ノリノリだねぇ
誠,っつ…………!!!
姫月という名前が男の口から発せられ、俺はごくりと唾を飲み込んだ。
噓だ、噓だよな。姫月。これはお前じゃない、お前のそっくりさんなんだよな。
俺はそう思い、願う。
しかし現実は俺の思うとおりに行くわけもなく。
姫月,んんっ、だって……おち○ぽ美味しい、の……。んん、れろ、ちゅ、ちゅぷっ、んっ、んっ、ふ……せーえきも、大好きだから……早く、飲ませてぇ
誠,っつ…………
両手に男性器を持ち、嬉しそうにそれを頬張る少女は間違いなく俺の妹。一之瀬姫月だった。
姫月,はぷっ、んん……美味しい、美味しいよ……おち○ぽ……、おち○ぽ美味しいの……れろ、れろ、じゅっ、じゅぽ、ぐちゅ
姫月,はぁ、はっ……、せーえきっ、せーえき、飲みたい、の……。んちゅ、ちゅるっ、ちゅっ、んふぅっ、ん……
姫月,れろ、れろれろ……あは……、先っぽ、ビクビクしてる、ね……。気持ちいい? 姫月のお口……、気持ちいい??
男優A,あぁ、あぁ……、姫月ちゃんのフェラ最高だよ。気持ちいいよ
姫月,あは★ 嬉しい…… もっと、いっぱい舐めてあげるから……、もっと気持ちよくなって……?
そう言って姫月はにこりと笑い、男根を深く銜え込み激しく頭と手を動かしていく。
姫月,んぶっ、んっ、んっ、んぐっ、んちゅ、じゅっ、じゅる、じゅぶぶっ、ぐちゅ、ちゅ! はぁ、はっ、おち○ぽっ、おち○ぽ美味しいっ!
先端から裏筋、玉まで餘すところなく姫月はしゃぶり盡くしていく。
その間も両の手はいやらしく動き、男たちの欲望はますます膨れ上がる。
姫月,はぁ、はぁっ、はぁっ……、美味しいっ、おち○ぽ、美味しいっ、ぬるぬるしてて、あったかくて……、れろれろ、れろ……姫月のフェラで感じてくれて……
男優B,姫月ちゃんはおち○ぽ大好きなんだねぇ
姫月,ん、姫月……おち○ぽ大好き、だよ……。おち○ぽも、せーえきも、大好きだから……だから……
姫月の口が小さく動くが、何を言っているのかは分からない。
男優A,ん? 何か言った??
姫月,…………
一瞬姫月の顔から表情が消えるが、すぐに先ほどまで見せていた甘く蕩けるような笑顔を浮かべる。
姫月,……ん……姫月、おち○ちん……大好き んん、んちゅ、れろっ、ぐぽ、ぐちゅっ、ね……、こ、こっちにも……っ! おち○ぽ入れて……!
男優B,こっちってどこかなぁ??
姫月,やぁあ……、い、意地悪……しない、れぇ……っ! お、おま○こ……! 姫月のおま○こにも……! おち○ぽ入れてよぉっ……!
姫月,おち○ぽちょーだいっ! あっ、んんぐっ! れろ、ぐちゅ、じゅぷっ、ふゃっ、んぐぅっ、お、おひんひんっおひんひんほひぃ……っ
喉元まで男根をねじ込まれた姫月の臺詞は言葉を成していない。
聡明で明るかった妹の目は情欲に溺れ、快活な物言いをしていた口からはだらりと唾液が糸を引いている。
男優A,OKOK。可愛い姫月ちゃんのためだもんな。挿れてやるから、しっかり味わえ、よ!
姫月,あ、あぁ、あっ、は、はやく……! お、おひんぽ……! 早く入れてっ!
男優A,っく……! そら!!
ぐぶり、と男と少女が結合した耳障りな音が聞こえた。
姫月,ひぁあああああああああ!! あっ、あっ、あぁーーー!!
男の物を深く受け入れ、姫月は甲高い悲鳴を上げた。
雪のように白い體がびくんと大きく痙攣する。
姫月,は、入って……ひぁ、あっ! 淒いっ、お○んぽ入って……ひゃぁああん
男優A,おお? 中がびくびくって締まったぞ。姫月ちゃんってば、挿れられただけでイっちゃったの??
姫月,ひぁっ、ひっ、はぁ、あっ、あん! イ、イっちゃってるの……! 私、おち○ちん挿れられたっ、だけでっ、イっちゃうのっ! あっ、ひぅうっ!
男優A,あはは。姫月ちゃんはエッチだなぁ。でも、俺はまだイってないんだからちゃんと腰動かしてくれないと
姫月,ひぃっ、ひっ、ひんんっ! あぅっ、姫月っエッチな子なのっ! おち○ぽ大好きだからっ、ちゃんとおま○こ動かすからぁ!
姫月,や、ぁああっ! あっ、あっ! 気持ちいいっ……! おち○ぽ気持ちいいっ! お、奧までっ、屆いて……! 中、もっとぐりぐりして欲し……!
男優B,姫月ちゃんってばお口と手が止まってるよー。ほらほら
姫月,んむぐぅっ! ご、ごめんなさ……んんぅ! んちゅ、じゅるっ、じゅぷっ、うっ、むぅ……! はぷっ、んちゅ、ちゅっ……はぁ、はぁ……やぁあ、んっ
姫月,やぁ、やーっ、あ、あむっ、じゅぷっ、じゅる、おち○ぽ、美味しい……! おち○ぽ気持ちいいよぉっ! もっと! もっと動いて! 口もおま○こもどっちも気持ちいいの
姫月は笑顔を崩さないまま複數の男たちの欲望を受け続ける。
口から零れ落ちる、じゅぶじゅぶと粘液の擦れる音と、肉と肉が激しくぶつかり合う衝撃音が聞こえてきて耳を塞ぎたくなる。
姫月,あ、あっ、あっ! すごいっ! ぐちゅぐちゅ……っ、気持ち、いいっ! も、っと……もっと姫月を犯して……っ! せーえき、いっぱい欲しいよぉ!
姫月,気持ちいっ……! おま○こ、気持ちいいっ、もっと、奧まで入れてっ、中、もっと……ゴリゴリ抉ってぇ……っ!
姫月,あっ、あっ、あっ!! おち○ぽっ! おち○ぽ気持ちいいっ! んんぁああっ、あっあーっ! 駄目っ、らめぇ……!
姫月,や、や……! わ、私……っ! またっ、い、いっちゃうのっ! おち○ぽっぐちゅぐちゅされてっ……おま○こまたイっちゃうよぉお!
姫月,やぁ、あっ、あっ! あーっ! らめぇっ! おま○こ……っ、気持ちよくてぇ、溶けちゃう……っ! 溶けちゃうよぉおお!
姫月,あっ、あぅ! ふぁっあっあぅっ! きもちぃい……おま○こ! きもちいぃのっ! お腹の中っ、おち○ぽでいっぱいでっ……嬉しいっ、あっ、あふっ! んんぅ!!
男優A,っぐ……出る! 出るぞ!
姫月,あっ! あぅっ、出してっ! いっぱいせーえき飲ませてぇ……! おち○ぽみるくいっぱいちょーらいぃ
男優A,っつ……!!!!
男たちの切羽詰った聲とともに、大量の白濁液が姫月の體へと降りかかっていく。
姫月はその真っ白な肌に、淡い栗色の髪に、ピンク色の口に男たちの欲望を受け入れる。
姫月,ん、んんっ……気持ひいいよぉ……ん、んちゅ、ちゅる、ちゅっ、れろ……、おひんぽ気持ちいいっ……。せーえき、美味しい…… 好き……好きぃ……
男優A,お、おっ、そんな動いたらまた出ちまうよ……
姫月,んっ……いっぱい、いっぱいらして……いっぱいちょうらい……っ 姫月の、おま○こも口も……、せーえきれいっぱいに、してぇ……★
男優A,はは、姫月ちゃんそんなにいっぱい飲んでたら赤ちゃんできちゃうよ?
姫月,ん、ん……。赤ちゃ、ん……?
姫月,赤ちゃん、出來るの……? 私とぉ……の、赤ちゃん……欲しい、よ。欲しいから……もっと、犯して……。姫月のおま○こ、壊していいからぁ……っん、んちゅっ、じゅぷ
姫月は全身を真っ白に染めてなお、男たちに奉仕することをやめない。
寧ろもっともっとと強請るかのようにいやらしく腰を振り続ける。
姫月,赤ちゃん……っ、赤ちゃん、ちょーらいっ! 姫月に……赤しゃん……、ほひぃからぁ、ん、んっ、んちゅ、ちゅるっ、れろ、じゅぷ、じゅぶっ!
姫月はうわ言のように何かを口ずさみ、男根へと手を伸ばす。
以前までの生意気で、口うるさくて、やかましい妹は。
かつて命令をするたびに頬を染め、恥じらっていた姫月は。
姫月,あぁっ、あ、気持ちいいっ、赤ひゃんの……っ! ミルクっ! おひんぽからいっぱい……っ、きもひいいよぉ……んっ、んっ、んぅう! はっ、ふぁあああああああんっ!!
もうどこにもいない。
;AV結局結束.
;0scene 學園の犬
男子生徒たちと共に姫月を犯してから1年が経った。
あの後すぐに學園の理事長-俺と姫月の祖父-が病に倒れ、苦しむこともなくあっさりと他界した。
元々用意周到なジジイは既に遺言書を作成しており、相続問題で身內が揉めるということもあまりなかったようだ。
俺はギリギリの単位で大學を卒業し、ジジイが俺に殘した『白皇學園』の教師兼理事長に就任することとなった。
女子生徒A,先生こんにちはー
誠,はい、こんにちは
男子生徒A,先生ー。今度の試験に出る問題教えてよー
誠,いやいや、それを教えたらテストにならないじゃないか
男子生徒A,ちぇー。駄目かぁ
廊下を歩くと色々な生徒が聲をかけてくる。
皆明るくて良い子たちだ。
誠,はい、では授業はここまで。次の授業の時にさっき言った宿題を提出すること
生徒,はーい
內心渋々なのかもしれないが、生徒たちの返事に俺はにこりと微笑み教室を出て行く。
誠,ふぅ……疲れたな
大分慣れたとはいえ、1時間近く聲を出し続けるのはやはり疲れる。
凝った肩を回すとコキッという小気味良い音が響いた。
雪名,きゃっ!! なに?? 犬のくせにトイレ使うの!?? やめてよ気持ち悪い!!
姫月,…………
晝食を取りに理事長室に戻ろうと歩を進めると、トイレの前で女子生徒が姫月に対して喚き散らしている場面に遭遇した。
そういえば彼女はかつて、ほのかを苛めていた少女だ。
あの時以上の剣幕で顔を歪めている。
貓屋敷,何よ! 文句があるなら何か言えばいいじゃん!
姫月,………………
少女たちの悪意の篭った臺詞にも、姫月は我関さずといった無表情を決め込んでいる。
雪名,何か言いなさいよ! アンタ自分のこと人間だとでも思ってるわけ??
姫月,………………
雪名,うっざ……。どこ見てるのよ? こっち向きなよ!!
貓屋敷,何か言えって言ってんじゃん! 言えよ! 泣けよ!!
そう言って少女たちはどこかに隠し持っていた鋏を取り出す。
(少しやばい流れ……か……?)
流血騒ぎは流石にまずい。
そうなったら學園內だけの問題ではなくなってしまう。
俺はいざという時には飛び出そうと覚悟をしてなりゆきを見つめることにした。
雪名,何よ! 犬のアンタに制服なんていらないでしょ!? 何で私たちと同じ服を著てんのよ!
貓屋敷,いらないじゃんこんなの! どうせどんな時だって裸に剝かれるくせに!
ジャキジャキと金屬が噛み合う音が廊下に響く。
姫月,………………
少女たちの手によって、姫月の著ていた制服は大事なところが丸見えになってしまう仕様に改造されてしまった。
雪名,あはは! これでいつでも突っ込んでもらえるじゃん!
貓屋敷,良かったね! アンタ男に突っ込んでもらうの大好きだもんねぇ
姫月,………………
少女たちの行為にも、嘲りにも姫月は眉一つ動かさず、強制的に露出させられた胸や下半身を隠そうともしない。
貓屋敷,っつ…………!! こんなに、何されても怒んないなんて、アンタ頭おかしいよ!!
雪名,アンタみたいな変態に一時でも憧れてたなんて自分が恥ずかしい! キ○ガイ女!!!
姫月,………………
男子生徒A,えー? なになに? 何か揉めてんの?
男子生徒B,って、うはw 姫月ちゃん淒い格好してんねーww
ぎゃぁぎゃぁと騒ぐ少女たちの聲に、數人の男子生徒が聲をかけてきた。
雪名,べ、別に揉めてなんかないわよ。ただ、この犬が人間用のトイレ使いたそうに立ってたからお仕置きしてたの!
男子生徒A,あぁ、なるほどそっかぁ。それは姫月ちゃんが悪いよ。わんこはわんこ用トイレにおしっこしないとなぁ
姫月,……………………
男子生徒B,あ、そういや俺、昨日オナニーすんの忘れたから姫月ちゃんに抜いてもらおっかなー。折角そんないつでも犯してください☆みたいな格好してくれてるわけだし
男子生徒A,あ、じゃぁ俺もそうしよ。弁當食べながらフェラしてもらうのって何か癖になるよなぁ
男子生徒B,食欲も性欲も一気に満たせて一石二鳥ってやつか!
雪名,どうでもいいけど、やるなら汚いから外でやってよね
男子生徒A,はいはい、分かってるよ。ほら、姫月ちゃん行こう
男子生徒たちは姫月の首輪に付いたリードを引っ張り外に連れて行こうとする。
姫月,………………
俺が見ていることに気付いた姫月が、小さく口を開けたが、その言葉は空気に溶け誰にも屆くことはない。
姫月はひどく緩慢な動作でぼんやりと俺から視線を外し、少年たちの後ろを付いていく。
この後姫月が何をされるのかは、姫月本人は勿論、學園の全員が知っている。
女子からは罵倒され、男子からは公衆便所として使われるようになった姫月は、1年前まで生徒や教師から厚い信頼を得て、尊敬.憧れの対象だった。
それが今では學園の犬に成り下がり、踏みにじられ、人間の尊厳などないも等しい。
俺を見下していた妹はもう存在しないのだ。
茜色の校舎に鐘の音が響く。
放課後になると、運動場から部活に勵む生徒たちの聲が聞こえてくる。
その爽やかな音色を楽しみながら、俺は自分の仕事に手を付け始めた。
誠,ふふ……
機の上に置かれた資料に目を通し、俺は小さく笑みをこぼした。
俺が理事長に就任してからの1年間で、白皇學園は目覚しい進歩を遂げた。
ジジイの生きていた頃よりも學園全體の偏差値が上がり、全國模試に名を連ねる生徒が學園の半數にのぼるのだ。
おかげで學園の認知度が高まり、入學希望者が後を絶たない狀態になった。
それというのも、全ての嫌悪や欲望が姫月に集まることによって學園の秩序が守られ、生徒たちのストレスがなくなったことが大きいだろう。
誠,……姫月
姫月,………………
名前を呼ぶと、俺の足元に丸まっていた生き物がひょこりと顔を上げる。
それは、放課後になると『學園の犬』として裸で校內を歩くことを義務付けられた姫月だ。
自分を取り巻く環境の変化に戸惑い、言葉をなくしてしまった姫月の心は、既に壊れてしまっているのかもしれない。
だが、どんなに酷い目に遭わされても、姫月は俺の側から離れようとはしなかった。
俺から逃げ出すことだって出來たはずなのに。
誠,なぁ、姫月……。お前は何で俺の側にいてくれるんだ?
姫月,………………?
俺の言葉を理解出來ないのか、姫月は不思議そうな顔をする。
姫月は誰の問いに答えることもなくなった。
恐らくこの異常な狀況を受け入れるために、考えることを放棄してしまったのだろう。
何が姫月をこんなにも従順にしたのかは分からないが、それでも俺はそんな妹の姿を見て暗い喜びに浸る。
人は綺麗なものに憧れ、焦がれ、そして同時に汚したいという感情を持ちえる奇妙な生き物だ。
俺には出來なかったことを、手に入れられなかったものを易々とその手に収めてしまう姫月が、今こうして俺を見上げている。
何かを期待するかのように、小首をかしげじっと見つめる。
それはまるで親の庇護を求める子供のように。
誠,……今俺がここにいられるのは、姫月のおかげだよ
姫月,……………………
そう言って頭を撫でると、姫月は気持ち良さそうに目を細めた。
;0scene 7日目_晝
誠,…………眠い
カーテンから漏れる白い光は相変わらず凶悪で、俺は深い眠りから目を覚ます。
昨日公園から帰ってきた俺は、姫月が周りの人間に遊ばれている姿を思い出し…………。
……まぁ、何だか興奮してしまったのだ。
そして心を落ち著かせようと、粛々とエロゲをプレイしていたところ、気付けば朝方になっていた。
誠,2時間しか寢れてねぇし……
つくづく損な體質だと思う。
たまには一度も目を覚ますことなく12時間くらい爆睡してみたいものだ。
誠,…………よし、もう一回寢よう
姫月,だーーーっ!!! 駄目に決まってるでしょ!!?
ばふりと音を立てて再度布団の中へと潛り込むと、いつものやかましい生き物が來てしまった。
誠,…………
姫月,何よ。その嫌そうな目
誠,いや、実際とても嫌というか迷惑というか煩わしいというかうざったいというか??
誠,いでっ!!!
姫月,痛くない痛くない。ほら、さっさと起きて
誠,毆られたら痛いに決まってるだろ!!??
姫月,気のせいよ
誠,何が!!??? 何が気のせいなんだ!??
姫月,もう、兄貴ってば朝からうるさいよ。ご近所迷惑になっちゃうじゃない
誠,誰のせいだよ……
姫月,まぁそんなことは置いといて
誠,置いとくな!
姫月,………………
俺のツッコミに、『黙れ、死ねカス』と言わんばかりの鋭い眼光で姫月が睨んでくる。
はいはい。俺が悪いんですよね。電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、ぜーんぶ俺のせいなんですよね。
ん? でもそれが本當なら、逆に俺の影響力ってすごくね?
姫月,初めに言っておくけど、これはものすっごい不本意な結果なんだからね
誠,は??
姫月の言葉に、俺は特大サイズの疑問符を頭に浮かべる。何のことかさっぱり分からない。
誠,え、えー……と、何が……?
姫月,………………
口を閉じていれば美少女……のはずの姫月が、淒まじい仏頂面で俺を睨みつけ、その顔を臺無しにしてしまっている。
その姿は、某ゲームの言葉を借りて『微少女』と表すのが正しいのかもしれない。
身長という意味では明らかに俺よりも小さいくせに、その禍々しい負のオーラに圧倒されてしまう。
姫月,……今日、ほのかが泊まりに來るから
誠,?? 何でそれが不本意な結果なんだ? ほのかちゃんと喧嘩でもしたのかよ
知らぬ間に姫月の機嫌を損ねてしまっていたのかと心配していたのだが、俺が直接の原因では無かったようだ。
しかし、親友とのお泊りを楽しみにこそすれ、こんな仏頂面を曬す理由にはならないだろう。
俺は姫月の言葉の意味が分からなくて、思わず首を傾げてしまう。
姫月,は? ほのかと喧嘩なんてするわけないじゃん
誠,じゃぁ何だよ
姫月,何だよって、ほのかと変態性欲魔人の兄貴が一つ屋根の下で過ごすなんて、考えるだけで恐ろしいじゃない
誠,…………
姫月,そりゃね、萬が一にも間違いが起こらないように常に私がほのかの側にいて、兄貴が変なことしないように見張ってるけどさ!
誠,や、おま……俺のこと信用しなさ過ぎじゃないか……?
姫月,?? 兄貴のどこに信用出來る要素があるのよ???
誠,………………
何ていうか酷くね? 酷くね?? ちょっと俺が調教とか露出とか陵辱とかが好きなエロゲオタクだからってこの言い草は酷いだろ??
誠,そんなに言うなら何でほのかちゃんを泊まらせるんだよ。お前が泊まりに行けばいいだろ??
そうしたら俺だってこの生意気な妹の顔を見ることもなく、エロゲに熱中出來るというのに。
姫月,そうしたいのは山々だけど、今日はほのかの家に誰もいなくなっちゃうから駄目なんだもん
誠,??
姫月,はぁ……。兄貴ってば理解力ないにも程があるよ。ほのかのお父さんが出張の時に、お母さんも仕事が入って外に出なきゃいけなくなったの
姫月,で、家にほのか一人を殘しておくわけにもいかないから、私が泊まりに行こうかって言ったら、女の子二人なんてますます危ないってほのかのお母さんに言われたわけ
姫月,その點うちにはまぁケダモノ犬畜生と変わらないくらいイヤラシイ兄がいますけど、一応成人男性がいるってことでこっちに來たの。分かった?
誠,…………
ケダモノ犬畜生って、兄を表現する言葉にしては酷すぎると思うが、言い返したところで何にもならないというかもっと酷い暴言が飛んでくるだけだ。
姫月,そんなわけだから、その信頼を裏切るような真似したら許さないからね
誠,へいへい……
昨日までに散々恥ずかしいことをやらされたというのに、姫月はいつも通りの高慢さで俺に接してくる。
じろりと訝しげに見上げてくる姫月の目は疑心に溢れていて、相手をするのも疲れてきた。
少しからかってやろうかな……。
誠,そうだな。お前が今日もちゃんと俺に付き合ってくれるっていうなら、良い兄貴を演じてやってもいいぞ
姫月,は? 良い兄貴を演じるって、そんな高等技術を兄貴が持ってるわけないじゃない
誠,…………
まぁ確かに俺はコミュ症だ。だが仮性であって真性ではない!(と思いたい。)
俺にだってただ黙って本を読んでいることくらいは出來るのだから。
姫月,そ、それって良い兄貴って言うの?
心の中で思っていたのだが、どうやら俺は口に出していたらしい。
姫月が蔑むような目で俺に言う。
誠,良い兄貴かどうかは別として、お前の邪魔にはならないだろう?
姫月,まぁ、確かにそうだけど……。でも、今日はほのかがいるから変なこと出來ないよ
誠,それじゃ、ほのかちゃんが眠ってからでいいよ。夜、彼女が寢たらメールしてくれ。どうだ?
姫月,…………わ、分かったよ。その代わり絶対約束破らないでよ?
誠,分かってるって。ははは、姫月は心配性だなぁ
姫月,……馬鹿にしてるの?
俺の言葉に姫月がぎろりと睨んできた。あまりからかうのは良くないらしい。
誠,してないしてない。うん、腹減ったからご飯にしようかなー
俺はそう言いながら自分の部屋から出ようとドアノブに手をかけた。
誠,あ、そうだ。姫月
姫月,何?
誠,明日からお前、ノーブラノーパンで生活しろよ
姫月,は????
振り向きざまに言う俺に、姫月は目を丸くした。
姫月,ななななに言って……!!???
誠,ほら、調教を始めてからもう1週間経つだろ? そろそろそういうのも良いかなって思ってさ
姫月,ばっ!! 馬鹿!! 馬鹿!!! そ、そんなこと……!!
誠,『出來るわけない?』
姫月,~~~~~!!! で、出來るもん! 全然そのくらい大したことないもん!!
誠,よし、じゃ。約束な
顔を真っ赤にしてわめく姫月の態度に気を良くした俺は笑いながら廊下の階段を下りていく。
後ろから『兄貴の馬鹿!!』と叫ぶ聲が聞こえた気がしたが、気にしない。
パタパタとスリッパの響く音を聞きながら、俺は今日これから起こることを想像して口端を緩めたのだった。
;0scene 7日目.夜(調教ルート)
深夜2時――
ネットサーフィンをしながら時間を潰していると、機の上に置きっぱなしの攜帯が震えだした。
(來たか……)
俺は攜帯を手に取り確認すると、姫月から空メールが來ていた。
誠,さて、行くか
夜中のせいか、それともこれからすることを想像してか、俺は気分が高揚していた。
姫月,ちょっ、ちょっと、ノックぐらいしてよっ!
俺が部屋に入ると、姫月はやや聲を抑えながら抗議してきた。
誠,そんなことしたら、ほのかちゃんが起きちゃうかもしれないだろ
姫月,それは……そうかもしれないけど……でも、女の子の部屋に入るわけだし……
ぶつぶつと文句を言う姫月の隣では、ほのかが靜かに寢息を立てていた。
姫月,てゆか、ほのかが寢たらメールをしろって何なのよ。言っとくけど、ほのかにちょっかい出したら本気で殺すわよ
誠,あぁ、今日は調教できなかったから、これからしようと思ってな
姫月,…………はっ?
鳩が豆鉄砲を食ったような、間抜けな顔をする姫月。
その顔は妙におかしかったが、今はからかってる餘裕はない。
姫月,え? ちょ、調教……? えっ? まさか……ここで、じゃないよね?
誠,何を言ってるんだ? もちろん、ここでするに決まってるだろ
姫月,はぁ――っつ!!
大聲を上げそうになった姫月は、慌てて口を塞いだ。
姫月,ちょっ、ちょっと何考えてんのよ! ほのかがいるんだよ? 起きちゃったらどうするの!
誠,そう思うなら、ほのかちゃんが起きる前に終わらせた方がいいんじゃないか?
姫月,はぁっ!? 何でそんな発想になるの? 起きるかもしれないからやらない、って考えはないの?
誠,ないっ!
姫月,…………
きっぱりと斷言する俺に、唖然とする姫月。
いや、だってさ……。
誠,こんなおいしいシチュエーション、もう二度とないかもしれないだろ
姫月,?? おいしい、シチュエーション??
誠,そう! すぐ近くで友達や戀人が寢てるような狀況だ!
姫月,っつ!! 変態っ! 馬鹿兄貴、マジで変態っ! 死ねっ!!
眉をつり上げ、姫月が罵ってくる。
だけど今の俺にはそんなもの痛くも癢くもない。
誠,まぁ、でも……姫月がそこまで嫌がるなら、止めてやらないこともないぞ
姫月,え……? 本當に?
誠,あぁ、他にも出來ることあるしな
姫月,?? 何、それ?
誠,寢てる女の子に悪戯
姫月,!!!????
俺の言葉に、姫月が大きく目を見開く。
さすがの俺も寢てるほのかにそんなことするつもりはないが、姫月を煽るためのブラフとしては効果覿面だったようだ。
姫月,ちょっ、ちょっとっ、そんなの駄目だってばっ!!
誠,そんなこと言われてもなぁ……俺、もう我慢できないし
俺はそう言って、わざとらしく自分の股間へと目をやる。
そこはすでに準備萬端で、ズボンを押し上げて大きな膨らみができていた。
姫月,!!??
俺の視線を追った姫月は、大きく盛り上がったズボンを見て顔を真っ赤にした。
誠,どうする、姫月? 俺はどっちでもいいぞ?
姫月,っつ!
誠,…………
姫月,わっ……私が……する、よ……
誠,じゃあ、決まりだな
俺は仰向けのまま眠ってるほのかの顔の上に、硬く勃起した肉棒を取り出した。
姫月,っつ!! ちょっ、ちょっと兄貴っ!
誠,うん? なんだ?
姫月,なんだ? じゃないわよっ! なんで、ほのかの顔の上でそんなもの出してるのよっ!
誠,なんでって、言っただろ? 近くで友達が寢てるような狀況がおいしいんだって
姫月,だ、だからって……こんな近くで……
ほのかの顔を見た姫月は、言葉が尻すぼみになった。
誠,ほら、早くしないとほのかちゃんが起きちゃうかもしれないぞ?
姫月,わ、分かったわよ……
姫月,その……前にしたみたいに……口ですればいいの……?
誠,さすが姫月。よく分かったな
姫月,っつ!! そんなことで褒められても……嬉しくない……
顔を背けながら、小さく姫月が言う。
それでも姫月は四つん這いになってほのかを跨ぎ、屹立した肉棒に顔を寄せた。
姫月,んくっ……
誠,姫月、早くしてくれよ
姫月,わっ、分かってる……ってば……
姫月は聲を震わせながら言い、桃色の唇を開いて俺の陰莖を咥えた。
姫月,は、む……んっ……
誠,つ、ふ……っ
まだ咥えただけだというのに、俺の背筋にぞくりと得も言われぬ快感が走った。
思わずこぼれた俺の聲が気になったのか、姫月が上目遣いに俺を見てくる。
やっぱり、上目遣いってのはいいな。相手は姫月だって言うのに、可愛く見えて仕方ない。
誠,続けてくれ
姫月,う、うん……ぴちゃ……んっ、んん……れろ……ん、ちゅっ……
姫月は桃色の唇で亀頭を挾みながら、舌で先っぽをちろちろと舐めてきた。
わずかな時間しか訪れない舌の熱い感觸が、どこかもどかしい。
姫月,ちゅぴ……ちゅ、んっ……れろ……んん……やっぱり……変な、味……
誠,何が、変な味なんだ?
姫月,な、何って……そんなの、言わなくても分かるでしょ……
頬を朱に染めながら、姫月が上目遣いに言う。
俺は心の中でますます嗜虐心が大きくなるのを感じながら、口を開く。
誠,忘れたのか、姫月。淫語を話しながらのセックスは、男の理想だって教えたろ?
姫月,そ、それは……うん……
誠,じゃあ、何が変な味なのか……ちゃんと言えるよな?
姫月,んくっ……あ、兄貴の……お、おち○、ぽ……変な味が、する……の……
ヤバイ。これ癖になりそうだ。
やっぱり、淫語を言わせながらフェラをしてもらうのは最高だ。
誠,ほら、もっとするんだ
姫月,う、うん……分かった……
姫月,れろ、れろ……ちゅっ……ん、ふっ……じゅぷ……んちゅっ……
少しは緊張が解けたのか、わずかにフェラのテンポがよくなる。
誠,どうした? 今度は淫語を忘れてるぞ?
姫月,んっ、れるぅ……れ、ちゅ……兄貴の、おち○ぽ……すごく、熱くなってる……ちゅる……
姫月,ちゅっ、ちゅる……んちゅ……それに……お、おち○ぽ……おい、しいの……ぴちゅっ……
淫語を口にしたことで姫月も興奮してきたのか、徐々にペースが上がっていく。
それに合わせて俺の興奮度も上がり、自然と陰莖が震える。
姫月,んぁっ……兄貴……舐めづらいから、ビクンってさせないでよ……
誠,無理言うな。気持ちいいと、こうなるんだから
姫月,気持ち、いい……そ、そなんだ……
自分のフェラチオのテクニックが上達したのが嬉しいのか、わずかに姫月の表情が和らぐ。
姫月,で、でも……あんまりビクビクってされたら……口で、出來なくなっちゃうよ……
誠,だったら、もっとしっかり咥えればいいだろ。先っぽだけしか刺激しなかったら、いつまでも終わらないし
姫月,あ、うん……分かった……
姫月は従順に頷くと、小さな口を大きく開いてさらに深く咥え込んだ。
姫月,はぁ、む……
誠,っつ!
姫月が深く咥えると裏筋が熱い舌で擦られ、あまりの気持ちよさにまた聲が漏れた。
俺は背筋がゾクゾクと震えるのを感じながら、肉棒をしっかりと咥え込んだ姫月を見下ろす。
肉棒を咥えた姫月の下には、靜かに寢息を立てているほのかがいる。その狀況が、ますます俺を興奮させる。
姫月,ん、んん……兄貴の、おち○ぽ……おっきぃ……ちゅぴっ……
誠,ははっ、友達の前だっていうのに、よくこんなエロいことができるな
姫月,っつ!!?? そっ、それは兄貴がしろって言うから……
姫月,てゆか……ほのかのことは、言わないでよぉ……
眉根を寄せながらも、しっかりと顔は赤らんでいる。
姫月の奴……恥ずかしいと思いながらも、しっかりと興奮している。
これは……しっかりと煽ってやらないとな。
誠,ほら、さっさとフェラしろよ
姫月,……んっ……じゅぷっ、くぷ……れろ、ちゅる……んふっ、じゅっ、じゅぷ……
一度だけ上目遣いに俺を見たあと、姫月がフェラを再開した。
さっきまでの舌だけの動きとは違い、今度は顔も動かして亀頭を唇でしごいてくる。
舌と唇の二重の快感に聲が漏れそうになるが何とか堪え、俺は姫月を煽るための言葉を紡ぐ。
誠,はは……姫月、お前すごくエロい顔してるぞ? せっかくだから、ほのかちゃんに見せてやったらどうだ?
姫月,じゅぷ……んっ、はぁ……やぁ、そんなこと言わないでよぉ……
誠,ほのかちゃんに言ってないのか? 私、フェラで男をイかせたことがある、って
姫月,そっ、そんなこと、言うわけないでしょ……っ!
姫月,てゆか……こ、こんなエッチなこと……したことがあるなんて……誰にも言えるわけないじゃん……
恥ずかしそうに言う姫月を見ていると、ますます辱めたくなってくる。
誠,じゃあ、姫月が『おち○ぽ』なんて卑猥なこと言う女の子だってことも知らないわけだ
姫月,っつ! そっ、それは、兄貴が……
誠,俺は一度も『言え』なんて言ってないぞ? 俺は淫語を話しながらのセックスは男の理想だ、って教えただけだ。実踐したのは……姫月、お前だろ?
姫月,それは……そう、だけど……
姫月は瞳を潤ませると、目を伏せた。
誠,つか……いつまでサボってるんだよ
姫月,んぶぅっ!! んぐっ、ごぷっ……じゅぷっ、んんっ!
俺が姫月の頭を摑んで腰を振ると、下から苦しげな聲が漏れた。
肉棒の先端が喉奧に觸れると、口の中が一瞬窄まった。
姫月,あに、きっ……んんっ……くぷっ……くる、しぃ……
誠,……じゃあ、もうサボらないか?
姫月,うん……うん、サボらないから……だから、んぐっ……無理矢理、しないで……
姫月の哀願を受け、俺は腰を動かすのを止めた。
コホコホと小さく咳き込んだあと、姫月がフェラチオを再開した。
姫月,んっ、ちゅぴ……くちゅっ、ちゅる……んっ、ちゅぱ……
誠,はは、ずいぶんエロい音をさせながらフェラするな、姫月。実はほのかちゃんに見られたいんじゃないのか?
姫月,そっ、そんなこと……ちゅる、んふ……な、い……兄貴の、お、おち○ぽ、を舐めてるところなんか……んっ、んちゅ、れろ……見られたく、ない……
そう言いながらも、姫月はフェラを止めようとしない。
さっき俺と約束した、『サボらない』という言葉を律儀に守ってるのだろう。
せっかくだ、もっと煽ってやろう。
誠,でも、止めようとしないじゃないか
姫月,そ、それは……んっ、ちゅぴ……じゅぷ、んん……兄貴、に……うぅぅ……
フェラを止めないことを指摘してやると、姫月は恥ずかしそうに呻いた。
そんな反応を見せられると、ますます姫月を辱めたくなる。
誠,ほら、ほのかちゃんにもっとエロいとこ見せてやれよ
姫月,……っつ! んっ、じゅぷ、ぷ……んちゅ、れろ、ちゅる……ちゅぷ、んっ、ちゅくる……んっ、じゅちゅぅ……っ
誠,っつ!!
姫月はぎゅっと目を瞑ると、一気に激しくしてきた。
予想以上の気持ちよさに、聲と先走りが漏れる。
姫月,ぴちゃっ、んちゅ……ぷぁ……兄貴のおち○ぽが……んっ、びくびくってして……お汁、いっぱい出てきた……ちゅぴっ……
誠,そういえば、お前は先走り汁が好きな変態だったな
姫月,っふ……んぷっ、ちゅる……ち、違う、私、変態じゃない……んっ、んん……んちゅる……
誠,でも……お前、すごくエロい顔してるぞ
姫月,じゅぷ、ぷ……んっ……う、噓……そんなこと、ないもん……んんっ……
そう言いながらも少しは自覚しているのか、姫月は俺のほうを見ようとしない。
まるで自分を誤魔化すように、ただただフェラチオを続ける。
その姿は、エッチが好きな女の子にしか思えなかった。
誠,なんなら、ほのかちゃんに確かめてもらうか? おーい、ほのかちゃ――
姫月,!!!??? だ、駄目っ! お願い、ちゃんとフェ……フェラ、するから……だから、ほのかのことは起こさないで
誠,でも、お前は俺が言ってることが噓だと思ってるんだろ?
姫月,それ、は……お、思って……ない、よ……
誠,じゃあ、お前は自分がエロい顔をしてたって認めるんだな?
姫月,…………う、うん
ヤバ……。もう脳汁が止まらない。
誠,なら、俺にそのエロい顔を見せながらフェラしてくれ
姫月,う……うん……
姫月,じゅぷ……んちゅる、ちゅぷぷ……くぽ、れろ……ぐちゅっ、んんっ、ちゅぱ……
誠,っつ!!
じっとりと潤んだ瞳が、俺のことを見つめてくる。そんな上目遣いのフェラに、今までの比じゃないほどの強烈な興奮が俺を襲ってくる。
火照り始めた體からは汗が滲み、だんだんと喉が渇き始める。
姫月,じゅちゅぅ……ちゅぷ、んっ……兄貴のおち○ぽ、から……また、お汁が出てきた……
姫月,ぢゅっ、んんっ、ぐちゅ……お汁、さっきのよりも濃い……れろ、んん……ね、兄貴……これって……
誠,あ、あぁ……それだけ、気持ちいいってことだ……
姫月,ん、ふぁ……気持ち、いい……あ、むっ……じゅっ、じゅぷ、ぐちゅっ……ぢゅぷ、ぷ、ぢゅるるぅ……
姫月が先走りを啜った瞬間、頭の中が白くなりかけた。
すでに肉棒は俺の先走りと姫月の唾液でドロドロで、今にもほのかの顔へと零れてしまいそうだ。
誠,ほら、姫月……もっとしっかりしゃぶらないと、ほのかちゃんの顔を汚しちゃうぞ……っ?
姫月,っつ!? やっ、駄目っ……んっ、ぐちゅ、ぢゅぷぷ……ぢゅちゅぅぅっ……ぢゅぱっ、ぢゅくっ……
姫月の熱を帯びたフェラに、ずんずん限界まで押し上げられていく。
それでも俺は快感に身を委ねず、まだまだ姫月を煽る。
誠,ホント、エロい顔だな。ほのかちゃんだけじゃなくて、クラスの連中にも見せてやりたいよ
姫月,駄目っ、駄目ぇ……ちゅっ、ちゅる、んちゅ、ぢゅっ……こんな姿、ぢゅぷっ、はむ、ぐちゅっ、ぢゅぷっ……兄貴以外に、見せられない……っ
誠,っつ!!
姫月にしてみれば、もう誰にも見られたくない、という意味だったのだろう。
それでも単純な男が勘違いするには十分な言葉で、思わず気が緩む。
姫月,じゅぷ、ぢゅっ、んっ、ぢゅるるるっ……兄貴、兄貴ぃ……んっ、ぢゅちゅっ、ぢゅぱっ、ぢゅちゅぅぅ……あに、きぃ……
そんな意味はないはずなのに、俺を呼ぶ姫月の聲に愛おしさがこもってる気がしてしまう。
姫月,ちゅぷっ、ぢゅる、は……兄貴のおち○ぽ、おっきくなった……んっ、ちゅぴっ、ちゅっ、ぢゅっ……
姫月,んんっ……ちゅくっ、じゅろ、れるれちゅっ……ん、んっ……私の口の中……んっ……兄貴のおち○ぽで、いっぱいになっちゃってる……
誠,姫月……っ、もっと、激しくしてくれ……っ
姫月,ん、わかった……んっ、ぢゅぷっ、ぢゅくっ、ぢゅぷるっ、ぢゅむっ……は、んっ、ぢゅっ、ぢゅっ、ぢゅぷぅっ……
先走りと唾液が潤滑液となり、姫月のきつく窄めた唇が何度も陰莖を往復する。
膨れあがった快感は爆発寸前で、頭の奧でパチパチと火花が散る。
姫月,じゅぷっ、んぐっ、ぢゅるっ、ぢゅっ、ぢゅっ……んっ、あぁ……ぢゅちゅっ、兄貴のおち○ぽ……膨らんで、來た……っ
もう少しで、絶頂に達する。そう思った瞬間――
ほのか,う、うぅ~ん……
姫月,っつ!!?? やっ、ほのか、まだ寢てて……んっ、ぢゅぷっ、
ぢゅっ、ぢゅくっ……お願い、もう少しだけ……んんっ、ぢゅ
ちゅぅっ……
ほのかが起きそうな素振りを見せても、姫月はフェラを止めようとしない。
それどころか、ますます顔の動きを速くし、肉棒を何度も何度もしごきあげる。
姫月のフェラチオに加え、ほのかが起きるかもしれないというシチュエーションが俺をますます興奮させる。
姫月,ぢゅぽっ、ぢゅっ、くちゅっ、んんっ……兄貴、早く出して……んんっ、ぢゅちゅっ、ぢゅっ……せーえき、早く出してぇ……
誠,っ! そんなに、俺の精液が欲しいのか?
姫月,ぢゅちゅっ……んっ、ちゅぱっ、ちゅくっ、んむっ……ほ、欲しいの……兄貴のせーえき、欲しいのぉ……っ
誠,っつ!!
しっかりと上目遣いで俺を見たまま、姫月が甘い聲で言う。
それは俺の我慢を破るには、充分すぎる言葉だった。
誠,っつ……姫月、出すぞ……っ
姫月,んぅ、ちゅる、ぢゅっ、ぢゅっ……飲ませて……ぢゅちゅっ……兄貴のせーえき、飲みたい……
姫月,ぢゅくっ、ぢゅぷっ、ちゅっ、ぢゅっ……いっぱい……いっぱい、せーえきちょうだい……んっ、ぢゅちゅぅぅっ!!
姫月は前に俺が教えた言葉を律儀に口にし……一気に快感が爆ぜる。
姫月,んぐっ!?
勢いよく迸った精液が喉奧を突いたのか、姫月は苦しげな呻きをあげると同時に陰莖から顔を離した。
當然そんなすぐに射精が終わるわけもなく、吐き出され続けた精液が姫月の顔を汚した。
姫月,っ、はぁ、はぁ、はぁ……
緩やかに射精が収まり、勢いを失った精液は姫月の顔ではなく下に――ほのかの顔へと落ちた。
眠る女の子の顔に精液。その姿は俺を興奮させるには十分で、陰莖がビクリと震えた。
すると、中に殘っていた精液が零れ落ち、再びほのかの顔を汚した。
姫月,っつ!!!???
目の前で陰莖の反応を見ていた姫月は、ほのかの顔がどうなっているのか気付いた。
姫月,ちょっ! 馬鹿兄貴っ! 何してるのよっ!!
蕩けそうな顔がいつもの険しいものへと戻り、聲を抑えながら俺を罵ってくる。
慌てる姫月と眠り続けるほのかを見て、俺はあることを思いつく。
誠,悪いな、姫月。お前が綺麗にしてやってくれ
姫月,もうっ、本當に信じらんないっ! わぁん! ティッシュどこー!
誠,いや、ティッシュじゃなくて……舌で綺麗にするんだ
姫月,はっ……?
さっきまでの勢いはどこへやら。姫月は目を丸くして、俺を見てきた。
俺は自然と頬が緩むのを感じながら、何をするか説明する。
誠,舐め取るんだよ、舌で
姫月,はあぁぁぁっっ!!?? なんでそうなるのよ!
誠,だって、精液飲みたかったんだろ?
姫月,え……
一瞬きょとんとする姫月だが、すぐに射精直前に自分が何を言ったのか思い出したのか、顔を赤くした。
姫月,やっ、あれは……っ
誠,前もちゃんと飲めたんだ、今さらできないとは言わないよ?
姫月,うぅっ……
誠,どうした姫月? 早くしないと、ほのかちゃんが精液の匂いで目を覚ますかもしれないぞ?
姫月,うくっ……わ、分かったわよ……
姫月は精液で汚れたままの顔をほのかへと近づける。
そして赤い舌を短く出すと、ほのかの顔についた白濁を舐め取り始めた。
姫月,んっ……れろ……れろ……
ほのかが起きないか緊張してるのか、姫月の舌はぷるぷると小さく震えていた。
それでも何とか精液を丁寧に舐めており、口の中へと運ぶ姫月。
姫月,ん、くっ……んくっ……
このシチュエーションで興奮が大きかったせいか、精液が濃かったのかもしれない。
姫月は何度か喉を鳴らして、ゆっくりと精液を飲み込んだ。
誠,どうだ、久しぶりの精液の味は?
姫月,っつ!!
誠,うん? なんて言うか、忘れたか?
姫月,兄貴の、せーえき……熱くて、トロトロで……おいしかった、よ……
誠,そうじゃないだろ? ちゃんと、精液以外の呼び方も教えただろ?
姫月,っつ! と、特濃ミルク……お、おいし……かった、よ……
恥ずかしそうに、そして悔しそうに言う姫月。
俺はそんな姫月の顔を見ながら、続きを促す。
誠,ほら、まだミルクは殘ってるぞ
姫月,わ、わかってる、よ……
姫月,れろ……れる……れる……んっ……
姫月は時間をかけ、頬や口の近く、そしてまぶたに落ちた精液を慎重に舐め取る。
ほのかの顔を綺麗にし終えたあと、俺は姫月の顔についた白濁を指でぬぐい取った。
姫月,っつ!!??? なっ、何っ?
誠,ほら、まだ姫月が大好きなミルクが殘ってるぞ~
姫月,~~~~っつ!!!!
姫月,ほんっと、最低っ! 変態馬鹿兄貴っ!!
そう毒を吐きながらも、俺の指をぱくりと咥える姫月だった。
ほのか,すぅ……すぅ……
ふと隣を見てみると、ほのかが気持ち良さそうに丸まって眠っている。
昨晩は、眠っているとはいえほのかの目の前で兄貴と変な行為をしてしまった。
姫月,(ほのかの顔まで舐めちゃったし……)
なんちゃってレズプレイをしてしまったのだ。
そのことを思い出し、私はのぼせた頭を冷ますように激しく頭を左右に振る。
泊まらせないほうが良かったのかもしれない、と少しばかり後悔する。
姫月,(ごめんね……)
ほのか,んん……。すぅ……すぅ……
私の小さな謝罪の聲に答えるように、ほのかはすりりと身を寄せてきた。
そんな可愛い仕草にもう少しだけ眠らせてあげたい気分になるが、それでは遅刻してしまう。
私は心を鬼にして、ほのかを起こすことにした。
姫月,ほのか、朝だよ。起きてー
ほのか,うぅん……まだ、だよ……
姫月,ほのか! ほのかってばぁ!
ほのか,ふにゅー……んんー……むにゃむにゃ
……そうだった。
ほのかはこう見えて実はものすごく寢起きが悪いのだ。
ほのか,んー……くぅ……くぅ……
姫月,はぁ……まったくー。可愛い顔して寢ちゃって……。仕方ないなぁ。先にご飯作って兄貴を起こしにいこう
何だかいつもの倍、手がかかる気がしないでもないけど気にしない。
眠っているほのかを起こさないように、私は臺所に立つ。
ほのかは朝は和食派なので、朝食はご飯に味噌汁、焼き魚に納豆で決まり。
私は手早く準備をして魚をオーブンへとかける。
ボタンひとつで簡単に焼き魚が出來るのだから文明の利器は素晴らしい。
姫月,そういえば、最近お米で焼くパンが流行ってるって前にテレビで言ってたっけ……。ほのか的にはそれってご飯になるのかなぁ
獨り言を呟きながら味噌を溶かすと、ふわりと香り立つお味噌汁の匂いが食欲をそそる。
姫月,さて、と。そろそろ兄貴を起こさなきゃ
姫月,……
姫月,あーにーーきぃーーー!! 朝だよ!
………………。
耳を澄ませてみるけど、兄貴の部屋からは何の物音もしない。
姫月,ま、そんなものだよね
このくらいで起きるなら毎日の苦労なんて必要ない。
教育実習が始まった2~3日はわりと自分ひとりで起きていたけど、週を跨いで慣れてくるとこんなものだ。
ほのかに負けず劣らず、寢起きが悪い馬鹿兄貴だもん。
姫月,兄貴! 入るよー!
扉を開けて兄貴の眠っているベッドへと直行する。
姫月,起きろーーー!!!
誠,くーー……
布団を剝がしたくらいでは起きるはずもない。
姫月,まったく……。仕方ないなぁ。ねぇ! 兄貴ってば!! 起きないとこの『地獄天使ジブリーヌDVDボックス特裝版』燃やしちゃうよ!??
誠,……!!!!!
私の一言に、兄貴がムクリ、とゾンビが起き上がるかのごとく身を起こす。
あまり寢ていないのか、起きたばかりだというのに充血した目で見られるとちょっと怖い。
姫月,な、何よ。燃やされたくないならさっさと起きなさいよ!!
誠,うーー……うー…………
姫月,何うーうー唸ってんの?? ほら、著替えてちゃっちゃと下りてきてよ!
そう言って、私はクローゼットからシャツとスーツを取り出して兄貴に向かって放り投げる。
姫月,あ。絶対裸でうろうろしないでよ! ほのかがいるんだから忘れないでよね!! いい?? 絶対だからね!!!
誠,うぃ。うぃ。把握ー……
……本當に分かったのだろうか。この馬鹿兄貴は。
姫月,…………今すぐ起きないとDVDボックス叩き割るわよ
誠,っつ!! 起きた! 起きたぞ姫月! 今日も良い天気だな!!
姫月,曇ってるけど
誠,曇り! 曇りこそコミケ日和だな! 待機列に並んでも焼けるような暑さはないではないか!!
姫月,………………
相変わらず兄貴の言っていることはイマイチよく分からない。
オタクというものはみんなこういうものなのだろうか……。
姫月,はぁ……。ともかく、さっさと著替えて下りてきてよ
誠,お、おぉ! 瞭解だ
この後もう一人起こさなきゃいけないので、いつもみたいに兄貴にかかりっきりというわけにはいかないのである。
姫月,さて、次はほのかの番……と
私は少し前に起こすのを斷念したほのかへと再度向き直る。
今回の私は先程までの私とは一味違うのだ。
姫月,ほーのーかーーー。起きないとぉ……。くすぐっちゃう
よーーー!!
そう高らかに宣言して、私はほのかのわき腹に差し込んだ手をワキワキし始める。
コショコショコショコショ。
cl c
ほのか,っつ!!!!????
姫月,を? 目、覚めた??
ほのか,え、ぇ……!? ひ、姫ちゃん!??? ひゃはっ! あっ、あっ! やはっ、あははは! 何でくすぐって……!!
姫月,ほれほれー! ほれほれー! 起きないともっとくすぐっちゃう
ぞー!!
ほのか,ひゃっ! ひゃっ!! やっ! あは、やっ! ひ、姫ちゃ……!! あは、あははは!! だ、駄目!! 駄目ってばぁ!! やめ
てぇっ!!
姫月,はははー! 良いではないか良いではないかー!
コショコショコショコショ。
ほのか,ひゃっ!! あは、あははっ! やっ! やぁあ! あはははははは!! も、駄目! ひ、姫ちゃん!! お、起きたよ! 起きたからやめてぇ!!
姫月,よっし。じゃぁやめてあげる
私とほのかが完璧に目を覚ましたことを確認して、縦橫無盡に動かしていた手を止めた。
ほのか,あは、は、は、はふ……はふ……。はぁ、は……ひ、ひどいよ姫ちゃん……こんなハードな起こし方……
姫月,だってほのかってば、普通に起こしても全然起きてくれないんだもんー
ほのか,あぅ。ご、ごめん……
姫月,いえいえー 可愛い寢顔もいっぱい見れたし?
ほのか,はうう恥ずかしいよ……
姫月,ふふー。愛い奴よのうー① って、あ。そうだ! ご飯出來たから呼びに來たんだよ。早く著替えて下りよ!
ほのか,あ、うん! ちょっと待って
ほのか,姫ちゃん、お待たせ
姫月,う、うん。……ほのかは相変わらず朝の支度は早いのよね
ほのか,うん、だって支度が早く済むならギリギリまで眠っていられるから
姫月,ま、確かにその通りか。それじゃ、下にいこ
ほのか,うん
私はほのかが並んで階段を下りると、そこには。
誠,げ
姫月,っつ……!!!???
ほのか,ぁ…………
牛乳パック片手に、上半身裸でうろうろしている兄貴がいた。
姫月,だから…………裸でウロウロするなって言ったでショーーーーーーーー!!!!!!!
誠,ぎゃ、わ……! わ、悪い! 違うんだこれは!
ほのか,あわわ……わ……
ほのかは顔を真っ赤にして、慌てて両手で目を塞いでしまった。
姫月,何が違うってのよ!! さっき私著替えちゃんと渡したでしょ!!
誠,いや、そういえば昨日リビングに教材置いたまんまにしちゃった
なーって思ってついふらっと來ただけなんだ!
姫月,ふらっとするな!! 女の子の前でだらしない格好してなんなの
よーー!! この馬鹿兄貴屑兄貴塵兄貴----!!!
姫月,はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……全く、信じらんない。何考えてんのあの馬鹿
兄貴を2階の部屋に押し戻し、私はようやく一息つける。
ほのか,あはは、ホントに姫ちゃんとお兄さんって仲良しさんだねぇ
姫月,どこが!!??
ほのか,ふふ。全部だよー
姫月,ほのかの目にはあれが仲良いように映るんだね……
ほのか,うん、だって姫ちゃんすっごく楽しそうなんだもん
姫月,そ、そんなことないよ! 毎日毎日怒鳴ってばっかで疲れちゃうし……
姫月,それに……、兄貴だってきっと私のこと五月蝿いって思ってるに決まってるよ……
ほのか,そんなことないと思うけどなぁ……
姫月,っつ…………ま、まぁそんなこと良いじゃない! ほら、ご飯食べよ!
ほのかと兄貴について話をするのが怖くて、私は話題を変える。
ほのか,あ、うん。いただきます
ほのかは私にとって何でも話せて、何でも相談出來る親友だけど。
ごめんね、と私は朝から二回目の謝罪を心の中でそっと呟いてキッチンへと向かった。
姫月,くぅうううう!! まったくもう! 兄貴ってばどうしてそうも行動が遅いのよ!!
誠,あぁ、あぁ。悪かったって
姫月,全っ然悪いと思ってないでしょ!!
ほのか,あ、あの……姫ちゃん、私もご飯食べるの遅かったから……お兄さんばかり責めるのは……
姫月,ほのかはきっちり時間配分して食べ終えたじゃない! それなのにこの馬鹿兄貴は一人のろのろのろのろもちもちもちもち食べて
さぁ!!!
私たちは3人並んで、早歩きしながら駅を目指す。
本來であればのんびり歩いても十分間に合うはずだったのだけど、兄貴がノロノロと朝食を食べたせいで遅刻ギリギリの時間帯だ。
誠,起きたばっかりで腹が減ってたんだから仕方ないだろ?
姫月,だったらもっと早く起きればいいでしょ!? てゆか何自分を正當化しようとしてんの?? ありえないんだけど!!!
誠,いや、今朝の飯が普段以上に手が込んでて美味かったからさ
姫月,っつ…………!!!!
兄貴の言葉に私は一気に顔が熱くなるのが分かった。
そうなのだ。この人はこうやって何気なく私が喜ぶ臺詞を言ってくるのだから始末が悪い。
姫月,そ、それは、そうだよ。だってほのかが泊まりに來てたんだし、変なもの出せないじゃない……
誠,あぁ、美味かったぞ
ほのか,うん、すっごく美味しかったよ。姫ちゃんはお料理もすごく上手だよねぇ
姫月,うぐぅうううう……
兄貴とほのか、二人から褒められてしまうと何も言えなくなってしまう。
姫月,もう! ほら、二人とも早く行くよ! 電車來ちゃう!!
ほのか,あはは、はぁい
私はそんな二人を見られなくて、駅へと向かう足を速める。
何だか兄貴に良いように言いくるめられたような気がするけど、そんなに悪い気はしなかった。
早歩きというよりも寧ろ競歩に近い速度で歩いたおかげで、私たちは無事にお目當ての時間の電車に乗ることが出來た。
通勤時間帯ということもあって車內はほどほどに混んでいる。
姫月,きゃっ!
誠,っと…………大丈夫か?
急なブレーキにフラついてしまうと、後ろにいた兄貴に支えられた。
大きな手が私の背中に當たってほんの少しだけドキリとしてしまう。
姫月,う、うん……。大丈夫……
姫月,あ……ほのかは大丈夫??
私は何となく気恥ずかしくて、ほのかのほうに向き直った。
ほのか,うん、私は大丈夫だよ。ポール握ってたから
姫月,そ、そっか……良かった
ほのか,うん。心配してくれてありがと、姫ちゃん
姫月,あ、うん……
ニコニコと嬉しそうに笑うほのかにちくりと胸が痛む。
姫月,………………てゆか、兄貴は何でいつまでも背中に手を回してるのよ
ほのかと話している間も兄貴の手は私の背中に添えられていて、正直居心地が悪い。
他の乗客でほのかからは見えないにしても、やっぱり少し照れくさい。
誠,うん? お前がまたふらついたら危ないからな
姫月,ふ、ふらつかないもん!
誠,さっき思いっきりふらついたぞ
姫月,さ、さっきのはたまたまなんだから! 大丈夫だもん!
ほのか,でも姫ちゃん、お兄さんに支えてもらってたほうが安全だよ
姫月,そ、そうかもしれないけど……
そうは言っても気になるのだ。
だって、何か。何となくなんだけど、兄貴の手が背中から、私のお尻のほうへ移動している気がして……。
姫月,っつ…………!!??
兄貴の指が、スカート越しの私のあそこに觸れた。
姫月,あ、兄貴……
誠,うん? どうかしたか?
ほのか,どうしたの? 姫ちゃん
姫月,っつ……。な、何でもないよ。えと、何かちょっと車內が暑いなって思っただけ……
ほのか,そう言われてみれば少し暑いかも……
誠,節電中だから、もしかしたら少し空調が弱いのかもしれないね
ほのか,あ、確かにそうですね。學園でも空調の設定溫度を28度推奨してるみたいですし
誠,28度ってクーラー付ける意味あるのかってくらいだけどねぇ
ほのか,ふふ、そうですね。十分暑いくらいの溫度です
姫月,(っつ……、何楽しそうに談笑しながら人のお尻觸ってんのよ
……!! 頭沸いてんじゃないの!??)
兄貴の手が私のお尻を包み込んで、柔らかく揉みしだく。
下著を履いてない分兄貴の手の動きがダイレクトに伝わって足が震え、怒りで頭が沸騰しそうだ。
姫月,っつ……んん…………っ
兄貴の手がアソコとお尻の境目をするりと撫でるたびに、背筋に電流が走るみたい。
姫月,(駄目……駄目だよ……、こんな……ほのかがいる前で、気付かれたらどうするつもりなのよ……!??)
私は顔だけを兄貴のほうに向けてギッと睨みつけるが、當の本人はどこ吹く風と言わんばかりに飄々としている。
この二重人格っ!! と毒付くけれど言葉にはできない。
姫月,(どうしよう、どうしよう……。こんな風にされたら、私……)
姫月,ひぁっ、んっ…………!!
スルスルとスカートがたくし上げられて、兄貴の手が直接私のお尻を包み込む。
兄貴の少し冷たい手に、私は思わず聲を上げてしまった。
ほのか,姫ちゃん? どうしたの? 気分悪い?
姫月,あ……、う、うぅん。全然、大丈夫……だよ?
ほのか,でも、顔が赤いよ……?
姫月,ほ、ホントに何でもない、よ……っつ……
こうしてほのかと話していても、兄貴の指は私の股を行ったり來たりともどかしく動き回る。
敏感な部分を避けるようにしてさすり上げられる感覚に、じわりじわりと私の體は熱くなっていく。
ほのか,………………
姫月,(恥ずかしい……やだ……、友達が見てる前で……こんなことされて……私、駄目……見ないでぇ……)
ただ純粋に、私のことを心配しているほのかの目が見れない。
私は槁にもすがる思いで、私の下半身を觸り続ける兄貴に視線を送った。
誠,…………
私が見ていることに気付いた兄貴は、柔らかく微笑む。
自分のことを好きだと言ってくれた女の子の前で、別の女の子の下半身を觸る。
そんな異常な行為を、どうしてそんな蟲も殺せないような顔をして行えるのか私には分からない。
ほのか,姫ちゃん、ホントに大丈夫? 途中で降りる?
誠,大丈夫だよ、ほのかちゃん。姫月は普段スケート場にばかりいるから、電車內が暑く感じるんじゃないかな
そんな馬鹿な、と思うけれどこの場合は兄貴の言い訳に乗っておいたほうが良さそうだ。
姫月,う、うん……そ、そうなの……ぁ……う……わ、私、意外と暑がりだし……
ほのか,そうなの?
姫月,だ、大丈夫だから……き、気にしないで……
ほのか,ん。分かった。でも、気持ち悪くなったりしたら言ってね?
私の言葉にほのかが、にこりと花開くように可愛く笑う。
本當に心配してくれているのだろう、ほのかは私の一挙一動を見逃さんとばかりにじっと見つめてくる。
姫月,っつ…………ん……っ!!
つぷり、と小さな水音を立てて兄貴の指が私の中に入ってくる。
姫月,(やだ、やだ……、こんな所で……指、入れちゃ駄目なのに……ほのかに見られちゃうかもしれないのに……)
姫月,っふ……ぁ…………っは……はぁ、はっ……
兄貴の骨ばった指が、ぬるりと內壁を撫でるように蠢く。
神経が尖っているせいか、1ミリ指が動くだけでも腰が砕けるような痺れが私の中を駆け巡る。
姫月,(駄目……、駄目……、指、動かしちゃ……駄目なの……も、これ以上されたら、私……)
姫月,はぁ、はっ……は……はっ、んんっ、ん……
口元を押さえ聲が出ないようにするが、くちゅくちゅというおよそ朝の通學風景にはそぐわない濕った水音が體の芯を通って私の耳まで屆く。
誠,姫月、大丈夫か?
誰のせいよ誰の!!
困ったように微笑みながら聞いてくる兄貴に、そう大聲で叫んでやりたいが今の私にそんなことは出來ない。
姫月,うぅ……、ん、ん……だ、大丈、夫……ふぁ……あ……
兄貴の指が次第にスピードを増して、先程よりも荒々しい動きで私の中を蹂躙する。
中を抉られるように動かされると、ぞくぞくとした快感が背中を駆け上がっていく。
姫月,っつ…………
姫月,(や、やだ……で、電車の中で……いっぱい人いるのに、私……)
誠,はは。姫月はいやらしいな……ほら、中から汁が垂れてきてるぞ?
姫月,っつ…………!!!
兄貴が私にだけ聞こえるくらいの小さな聲で、ふっと耳元で囁いてくる。
その息遣いすら私にとっては毒のようで、ぞくりと背中から腰に向かって快感が広がっていくのだ。
姫月,(どうしよう……私、私……こんな、電車の中で、ほのかが見てる前で感じてる……)
姫月,ふぁ、は……、はぁ、ぁん、んっ……
必死に喘ぎ聲を抑えようとするが、どうしても息が荒くなるのを止められない。
むしろ耐えようとすればするほど下半身が敏感になっていってしまうのだ。
姫月,っつ……!!!!!
兄貴が私の中を掻き回しながら、器用にクリトリスに指を這わしてきた。
內部を弄られるのとは違う、直接脳に響くような刺激が私を襲った。
姫月,(っひ……、駄目、駄目駄目駄目!! そ、そんな風に弄られた
らっ、い、イっちゃうよぉお……)
こんな電車の中で絶頂を迎えるのは嫌だ。
そう思うのに、兄貴はなおも中と外両方に刺激を與え続ける。
姫月,(やだ、やだぁあ……、ふ、普段はどんくさいくせに、何でこんなことだけ器用なのよぉ……)
緊張と高揚、焦燥と興奮、色々な感情が混ざり合って、私はどうすればいいのか分からなくなる。
誠,そろそろイきたい?
姫月,(違う! 違うよ! こんな所でイきたくなんかない!)
姫月,んっ、んん、んっ、っふ……、はぁ、はっ、はっ……
兄貴の言葉に私は頭を振る。冗談じゃない。
そう心の底から思うのに、同時にこのもどかしい快感から抜け出したいという思いが頭の片隅に浮かんでしまう。
姫月,(でも、でもこんな沢山の人がいる前でイくなんて、ほのかが見てる前でイくなんて……!!)
昨晩もほのかがいる前で兄貴といやらしいことをしてしまったのだが、それとは狀況が違う。
昨日はほのかはぐっすりと眠っていて、見られる心配はあまりなかったけれど今はしっかりと起きているし、じっと私のほうを見ている。
姫月,(でもイきたいよぉ……)
兄貴の指がいやらしく蠢くたびに、クリトリスを引っ掻くように擦られるたびに私のあそこがきゅんと痺れる。
イきたい、でもイきたくない。相反する欲求が私を苦しめる。
誠,大丈夫だよ、姫月。聲を出さないようにしてイってみろよ
姫月,(そんなの、無理っ! 簡単に言わないでよ……!! 馬鹿兄貴の馬鹿ぁあ!!!)
姫月,はぁっ、はっ、んっ……うぅ、ん……ん……
姫月,(も、もう……どうすればいいのか、分かんない、よ……き、気持ち良過ぎて……おま○こ、溶けちゃう……)
姫月,(ほのかが見てる。ほのかが快感に溺れる私を見てる。みんなが私を見てる。私の癡態を、兄貴にイかされそうになってる私を……)
周りの人に、親友に気付かれてはいけないという思いが、私の興奮を更に煽り立てるのだ。
姫月,(見られたくなんてないのに。こんな格好悪い私を、誰にも見られたくなんてないのに……)
姫月,(どうして、私、こんなに気持ちよくなってるのよ……っ!!)
姫月,っふ……っつ……、は、はぁ、ぁ……
誠,ほら、姫月……
姫月,っつ……んんっん、んっ……
私は思わず、後ろにいる兄貴の胸に顔を半分押し付けてきゅっと目を瞑る。
そして、それが合図かのように兄貴の指が、ラストスパートをかけるように私の中と外を一気に擦り上げた。
頭の中で真っ白な光がぱぁんと弾ける。
姫月,(駄目っ、も、駄目!! 私、私ーーー!!!)
姫月,んっ……!! っふ……! はっ、ぁっ、っつーーーーーっ!!!
高い聲を微かに上げて、私はイってしまった。
姫月,はっ、ぁ……、あぁ、ぁ……
ぶるぶると體が震え、硬直し、そして體中の力が抜けるように一気に弛緩する。
ガクガクと足がもつれそうになる私は、兄貴に抱きかかえられるようにして支えられた。
誠,……大丈夫か?
姫月,…………っつ、は……はぁ、はぁ……
どうしよう。恥ずかしくて兄貴の顔が見れない。
だってこんな電車の中でみっともなくイかされて、更に腰が抜けて一人で立てないなんて情けないじゃない。
ほのか,お、お兄さん……姫ちゃん、どうかしたんですか?
誠,あぁ、何か立ちくらみしちゃったみたい
ほのか,えぇ?? だ、大丈夫? 姫ちゃん、や、やっぱりどこかで降りて休んだほうが……
姫月,だ、大丈夫……、ちょ、ちょっと……めまいがしただけだから……、すぐ直るから……
ほのか,で、でも…………
誠,……そうだな、うん。それじゃ、僕と姫月は次の駅で休憩してから行くから、ほのかちゃんは先に行っててもらえるかな?
姫月,え??
兄貴の言葉に驚いてしまうが、確かに腿までぐっしょり濡れてしまったまま學園に向かうのは嫌だ。
私は大人しく二人の會話を見守ることに決めた。
ほのか,え、あ、はい。分かりました
誠,ん、ごめんね。先生に説明お願い
ほのか,はい! 任されました! ちゃんと説明しますから!
姫月,ご、ごめんね。ほのか……
ほのか,ううん、大丈夫だよ! 私、頑張れるから!
姫月,あ、ありがと……
誠,お、著いた。それじゃ、ほのかちゃん、悪いけど後はよろしくね
ほのか,はい、お兄さんも姫ちゃんをお願いします
誠,うん、大丈夫。任せて
ほのか,姫ちゃん。また後でね。あ、でも無理はしないでね
姫月,ん、ありがと。また後でね……
ほのか一人を學園に向かわせるのは少し憚られたが、そう言って私と兄貴は途中下車をした。
姫月,はぁ……人でなしの兄貴のせいで、朝から散々……
誠,何だよそれ。一人で立てないお前をちゃんと支えてやっただろ?
姫月,當たり前でしょ!? 誰のせいでこうなったと思ってんのよ!!
誠,俺だな
キッパリと言い放つ兄貴に、私はぐったりとうなだれてしまう。
何だかとても暖簾に腕押しな気分。
姫月,そ、それはそうと……、お手洗い……行きたいんだけ、ど……
誠,ん? おしっこか?
姫月,ばっ……!!! し、下が気持ち悪いから拭きたいだけだよ!!!
誠,あぁ、そうか。はは、お前ヌレヌレで足まで愛液でべったりだもんなー
誠,いって!!
姫月,うっさい馬鹿ハゲ!! 殺すわよ!!???
誠,いや、だってほら見てみろよ。俺の手、お前のマン汁でべっちょべちょだし
誠,ごふっ!!!!
姫月,……死にたいの?? 死にたいのね!? だったら今すぐあの世に送ってあげるわよ!!??
身も蓋もない兄貴の臺詞に、怒り心頭に発して私は思い切り蹴りを入れる。
誠,う、うぐ……い、今のはかなり本気の蹴り、だったな……
姫月,ふん!! 兄貴の馬鹿!!!
見事に鳩尾に蹴りが入り床に這い蹲る兄貴に罵聲を浴びせ、私は構內に設置されてあるトイレへと向かった。
姫月,はぁ……。とりあえず濡れた気持ち悪さからは解放されたけど……
とにかく恥ずかしい。
何せほのかが見てる前で、しかもあんなに大勢の人がいる場所でイってしまったのだ。
姫月,まったくもう……兄貴の変態さ加減にはホンット呆れちゃうわ……
どうしてあんなにも変態になってしまったのだろうか。
昔はもうちょっとマシだったはずなのに、と思うが、考えていても兄貴の変態さは変わらないのだ。
はぁ、と私は諦めの溜息を吐いて、兄貴が待っているだろうプラットフォームへと戻ることにした。
誠,おー。おかえり。遅かったなぁ……大か?
姫月,っつ………!!!!!????
誠,っで……!!!
姫月,この馬鹿! この馬鹿! この馬鹿ぁ!!! 10億回死ね!!! 女の子にそんな下品なこと言うな!! そんなんじゃないもん!!
ふんっと鼻を鳴らして私はそっぽ向く。
馬鹿兄貴にデリカシーなんてものがあるとは到底思えないけど、これはいくら何でも酷い。
そもそも誰のせいでこんな狀況になっているの思っているのか。
誠,はは、まぁ俺もスカ大は好きじゃないからなぁ
姫月,すかだい……?? それってスイカの仲間??
誠,……うーん。お前はもう少し知識を付けた方がいいぞ?
姫月,うわ……なにそれ。兄貴にだけは言われたくないんだけど。どうせそのすかだいだって大した意味を持たないんでしょ? 俗語ばっか覚えてないでもっと有益な知識を身に付けなさいよ
誠,何を言うか。かの有名なヴォルフガング.アマデウス.モーツァルトだってスカトロ趣味だった程スカトロという名詞は有名なんだ
ぞ?
姫月,す、すか……???
誠,まぁソースはの○めだけどな!
の○めは知っているけれど、その聞き馴染みのない単語に私は眉をひそめる。
姫月,…………ま、まぁとにかく、多分私には必要ない単語だと思うからもういいよ。何か周りの人の視線も痛いし
誠,ふむ。確かにそうだな
誠,あぁそうだ。姫月。ほら、これやるよ
姫月,え? わっ……? 何? ……ジュース?
ぽいっと事もなく投げられた物を私は慌てて受け取った。ついと視線を落とすと、普通の1本の缶ジュース。
姫月,くれるの?
趣味にはお金を惜しまないが、その他のことに関してはとことん切り詰める兄貴にしては珍しい。
しかし裏に何があるのか分からないため、私は素直に喜ぶことが出來ない。
姫月,……何か変なことたくらんでるんじゃないでしょうね
誠,いやいや、缶ジュースにどうやって細工するんだよ
姫月,ん~~、まぁ確かにそうだね。プルタブも開いてないし
渡された缶ジュースを斜めにしたり裏返したりして見てみるが、特に何もおかしな所は見受けられない。
愛媛のぽむジュースと書かれているだけの何の変哲もないジュースだ。
誠,ほら、さっきはちょっとやり過ぎたかなって思ってさ。お詫びだよ。詫び
姫月,ふ、ふぅん?? そ、それじゃ、も、貰ってあげても、いいけ
ど!?
兄貴にしては珍しく気が回るじゃない、と言う聲が震えてしまう。
誠,ほら、飲めよ
姫月,え、あ、う、うん
プルタブを引くと、プシリと言う小さな破裂音が爽やかに響いた。
姫月,い、頂きます
誠,おう。飲め飲め。俺のおごりだ
姫月,も、元々は兄貴が悪いんだからそんなに偉そうに言うことじゃないし!
誠,ふふん。なんとでも言え。おごりはおごりだ
姫月,ふんっ。ばぁっか! ……こく、こくん……ん、美味しい
火照った身體に冷たいジュースが広がっていく。
少し酸っぱいけれど、その酸味すらも心地良い。
誠,俺も飲もうっと
誠,ごくごくごく。……っかー。キンッキンに冷えてやがる……!
姫月,……親父くさ
誠,ほっとけ
姫月,あはは、変なの
珍しく和やかなムードで、私は兄貴とそんな風に何気ない會話をしながら次の電車が來るのを待っていた。
先程までどんよりとしていた雲が広がっていた空はいつの間にか晴れている。
微かな笑い聲と肌を緩やかに撫でる、涼やかな風が私たちを包んだ。
;0scene 8日目_調教_朝02
途中下車の上、電車が遅延したこともあり、すっかり遅刻してしまった俺と姫月が學園に著いたのは3時間目の途中だった。
誠,(? 何だ……?)
何だかいつもとは違う奇妙な空気が學園を包んでいるような気がした。
そしてその違和感は教室に足を踏み入れてからも続いていて、幾許かの焦燥が俺の心に芽生える。
さり気なく姫月のほうに目を向けると、やはり何かしら感じているようで困ったような表情を浮かべていた。
授業の終わりを告げる鐘の音が響く。
授業を終えた狸が職員室に向かったのを見屆けて、いつもの姫月親衛隊のような二人組みが姫月に詰め寄った。
席を立とうとしていた姫月は進路を阻まれて少し驚いた顔をしている。
雪名,ひ、姫月ちゃん!
姫月,あ、雪名さん。おはよ
雪名,あ、おはようー……ってそうじゃなくて!
姫月,ど、どうしたの? 何か今日は學園全體が変な感じするし、雪名さんも変だよ?
雪名,え、えっとね……あの……
姫月の言葉に雪名は困ったように視線を彷徨わせ、隣にいる貓屋敷に助けを求める。
わき腹を小突かれるようにされた貓屋敷もどこか言い難そうだ。
誠,(何だろう? よほど言いにくいことなのだろうか……)
俺は教卓の周りの整理をするフリをしてその様子を見守る。
教室內を見渡すと、オロオロと表情を曇らせるほのか以外の全員が、姫月たちのやり取りに聞き耳を立てているように見える。
貓屋敷,え、えっとね! ぜ、絶対そんなことないって思うんだけどね!
雪名,わ、私も全然信じてないんだけどね!?
姫月,うん、何?
雪名と貓屋敷のくどい言い方に、姫月は少しイライラしてきているように見える。
貓屋敷,そ、その……ひ、姫月ちゃんって露出狂なの!!??
誠,!?
姫月,っは????
姫月の取り巻きのような女子生徒が詰め寄るが、その內容に姫月は眉をしかめ怪訝な表情を浮かべる。
姫月,わ、私が露出狂?? 何言ってるの??? なわけないし
まぁ確かに、好きな男に合わせようとしているだけで姫月自身は露出狂ではないな……。
雪名,あ、ご、ごめん。そ、そうだよね……! 姫月ちゃんがそんな変態なわけないよね!
貓屋敷,あは、そうだよねぇ。姫月ちゃんがそんなことするわけないのにー!
姫月,変なの。何でそんな話になってるの?
雪名,え、あ……
雪名は貓屋敷と目を合わせて、こくりと頷いてポケットから攜帯を取り出した。
じゃらりと付いたストラップが重そうだ。
雪名,こ、これ……
貓屋敷,け、今朝メーリングリストで送られてきて……
姫月,? ……っつ!!!!!!??
雪名から受け取った攜帯の畫面を見た姫月が目を見開く。
姫月の手から攜帯が滑り落ち、硬いリノリウムの床にぶつかる音がしんとした教室に大きく響いた。
先程までの會話と姫月の様子から、俺は何となく違和感の正體に気付いた。
ほのか,ひ、姫ちゃん!! 大丈夫!!???
先程まで困ったように3人のやり取りを見ていたほのかが姫月に駆け寄った。
姫月,ご、ごめん。ちょ、ちょっとビックリしちゃって……
ほのか,ま、まだ體調悪いの?? 保健室に行ったほうが……
雪名,っつ……!!
貓屋敷,…………!!
ほのかが出てきたことで雪名と貓屋敷の顔色がサッと変わる。
誠,(マズイ流れだな……)
このまま姫月がどう出るか見守るのも楽しそうかもしれない、と思っていたのだが、このまま放っておけば矛先がほのかに向かう可能性がある。
仕方ないと諦め、俺は姫月の席まで歩を進めた。
誠,姫月、駄目じゃないか。人の持ち物を亂暴に扱っちゃ…………ん?
俺は良き兄を演じてやんわりと注意しながら、不自然じゃないようにそれを拾い上げて畫面を見る。
雪名,あ……
貓屋敷,わ…………
誠,これは…………
雪名,あ、あの、ち、違うんだよっ、センセ! わ、私たち別に姫月ちゃんを疑っているわけじゃなくて
貓屋敷,そ、そうなの! ハッキリしないと気持ち悪いから確認したかっただけで!
雪名と貓屋敷は慌てて弁解する。
誠,う~~ん、ぼけててよく分からないけど確かに露出狂の人っぽいね。でも、どうして姫月に聞いたの?
俺はこれ以上彼女たちを興奮させないように優しく尋ねる。
貓屋敷,え、えっと、何かこの畫像と一緒に、これって一之瀬さんじゃない? っていう內容の本文が書かれてて……
雪名,學園非公式の掲示板のメーリングリストに登録してた人みんなに送られたみたい……、ひ、姫月ちゃんがこんなことするわけないって思ってもやっぱり気になっちゃって……
誠,なるほどね……
まぁ、この寫真は十中八九姫月だろう。
『一之瀬さんじゃない?』と疑問系なのは恐らくこの寫メを撮った人間がこの學園の者ではないから。
仮に學園の者なら例え畫像がブれていても、肉眼で確認したのだからもっと確信を持ってメールを流すはずだ。
先週末に秋葉原で姫月の寫真を撮った人間がどこかにアップしたものを、この學園の生徒が見つけてメーリングリストに流した、というのが妥當なところだろう。
誠,世の中には変な趣味を持っている人がいるからなぁ
貓屋敷,そ、そうだよね! 変だよね! こんな街中で素っ裸で歩くなんてホント理解出來ない!
雪名,てゆか超キモイよね! 頭おかしいとしか思えないんだけど!
姫月,っつ…………
貓屋敷,つかこの露出狂も、なにも姫月ちゃんみたいな髪型にしないでいいのに! も、ホント紛らわしいしキモイ!!
雪名,てゆかこのメール流した奴も最悪じゃない?? 姫月ちゃんがこんなことするわけないのにさ! ねぇ、姫月ちゃんも怒ってるよね??
姫月,え……? あ、う、うぅん。わ、私は、別に……
二人の言葉に姫月の唇がぶるぶると震えている。
自分が行った行為が、他人から見たら『気持ち悪い行為』なのだと改めて認識したのだろう。話を振られた姫月の顔がひくりと強張った。なかなか興味深い光景だ。
雪名,え~~。姫月ちゃんってばやっさしいー。私だったらこんなことされたら超ムカつくけどなぁ
貓屋敷,さすが姫月ちゃんだね! 人間出來てる~~☆
姫月,そ、そんなことないよ……
雪名,謙遜するとかホント淒いよー。も、ホント姫月ちゃんって天使みたいだよね
貓屋敷,顔も可愛いし頭もいいしスポーツ萬能だし性格も超いいし!
姫月,ほ、ホントに、謙遜なんかじゃないから……
ここぞとばかりに褒め稱える二人に、姫月は居心地が悪そうに身をよじる。
先程姫月を心配して二人の前に出たほのかも、今は彼女たちに押し退けられて蚊帳の外だ。
誠,あ、ほらほら。チャイム鳴ったよ。先生が來るからみんな席に著いてね
雪名&貓屋敷,はぁーい
姫月,…………
ほのか,…………
俺の言葉に雪名と貓屋敷はスッキリした顔で、姫月はどことなく心苦しそうに、ほのかは心配そうに著席する。
俺はそんな彼女たちを見てふぅっと人知れず息を吐き、次の授業の教師が來る前に教室を後にした。
;0scene 8日目_調教_晝01
兄貴がいなくなって、入れ替わりのように國語の佐々木先生が教室へと入ってきた。
女子生徒,起立、禮、著席
日直の子が號令をかけて授業が始まる。
佐々木,はい、皆さん。では今日は前回の続きからしましょう
大學を出てすぐにうちの學園の教師になった佐々木先生は、分厚い教科書を開きながら落ち著いた聲音で言う。
優しくて綺麗で、クラスの男子にも女子にも人気がある。
姫月,(いいな……。にっこり微笑まれたら、きっと誰だって好きになるんだろうな)
そういえば少しほのかに似てる、そう思うと何だか少し苦しい。
だってそれはすなわち――の好みだということだから。
姫月,…………
姫月,(…………?)
授業もあと10分ほどで終わる頃、私は何となく下半身に違和感を感じた。
何だか無性にトイレに行きたくなってくる。
姫月,(さ、さっき駅でトイレに行ったばかりなのに……??)
姫月,(まだ我慢出來るくらいだけど、行ったほうが良い気がする……でもあと10分くらいで授業も終わるし……)
遅刻しておいて更に授業の途中、しかも終わりかけにトイレに立つなんて少し恥ずかしい。
私はそう思って我慢することにした。
だけど人間というものは不思議なもので、行かないと決めたら急に行きたくなるものだ。
姫月,(わ、わ……マズイよ……)
缶ジュース一本だけしか飲んでいないというのに、どうしてこんなにもトイレに行きたくなるのだろう。
1秒進むごとに尿意が増してくる。
姫月,(ど、どうしよう。と、トイレに行ったほうがいいよね。恥ずかしいとか言ってる場合じゃないもん)
今朗読している子の番が終わったら行かせてもらおう。
そう思って機會を待ち、ようやくその時が來たと思って手を上げようとすると。
佐々木,はい、よく出來ました。では次に一之瀬さん。読んで訳してみて?
姫月,え??
尿意を我慢することでいっぱいいっぱいの私は、佐々木先生の間の悪さをこの時ばかりは心の中で思い切り呪った。
佐々木,どうしたの? 一之瀬さん、154ページの3行目からよ。読んで訳してもらえる?
姫月,あ、は、はい……。わ、分かりました
ガタリと椅子を引き立つ。只それだけの動作にも子宮がきゅうと締め付けるように動く感覚。
姫月,っつ…………
私はお腹に力を入れて、授業に集中しようと教科書を手に取った。
姫月,か、限りとて……別るる道の、悲しきに……いかまほしきは、命なりけり……、いとかく思ひ、たまへましかば
姫月,(どうしよう。どうしよう。トイレに行きたくて聲が震えちゃう……)
姫月,と、息も……絶えつつ、聞こえ、まほしげなることは、ありげなれど……、いと苦しげに、たゆげ……なれば、かくなが、ら……、ともかくも……ならむを禦覧じはてむと思し召すに……
姫月,(まだ? まだ私の番は終わらないの? どこまで読めばいいの??)
ぐるぐると目が回りそうなほどの尿意。
私は助けを求めるように佐々木先生を見るが、彼女はにこやかな顔で私の朗読を聞いている。
姫月,っつ……『今日始むべき、祈りども……さるべき人びと、うけたまはれる……今宵より』と、聞こえ急がせば、わりなく思ほしながら、まかで……させたまふ
姫月,(うぅうう、急がせたいのは寧ろこっちなのにぃ……! 昔の人ってどうしてこんなにまごろっこしいのよぉ!!)
私は文章を読みながら、心の中でそれに対して文句を言う。紫式部は悪くない。悪くないけど!!
佐々木,はい、そこまで
姫月,(よ、良かった……)
佐々木,それじゃ、訳をお願いね。一之瀬さん
姫月,え??
無事に読み終えることが出來てホッとしたのも束の間のことで、佐々木先生は訳せと言ってくる。
姫月,(そりゃね! 読んだだけで終わるなんてこと、考えたら分かるんだけど、でも今は困る~~~~~!!!!)
佐々木,……? 一之瀬さん? どうかしたの?
姫月,あ、あぅ……、な、何でもないです
佐々木,そう。それじゃ、訳してくれるかしら?
姫月,は、はい……
佐々木先生の綺麗な微笑が、今ばかりは悪魔の微笑みに見えてしまう。
私は再度下腹部に力を入れて教科書を摑み直した。
姫月,ひ、人の命には限りがあるもので、あなた様とお別れしていく、この……死出の道が悲しい気持ちで、いますが……
姫月,(うぅうう足がプルプルしてきたーーー! 早く授業終わってよーー!)
言葉を紡ぐたびに下半身がきゅうきゅうするのだ。我慢し過ぎて私のあそこが熱を持ったように熱い。ちらりと時計を見れば、お晝休みまであと3分。
姫月,わ、わたしが行きたいと思う道は、生命の道でござい、ます……。ほ、本當に、このようなことになると、存じておりましたなら、ば……
桐壺の気持ちに切なくなるが、今はそれよりも私のほうが切ない狀況だ。
姫月,(本當に、どうしてこんなことになってるの……。何の苦行なのよこれぇ……)
私は泣きたい気持ちで訳し続ける。
下腹部に力を入れすぎて気持ち悪い。
佐々木,はい、ありがとう。一之瀬さん。相変わらず完璧な訳だったわ
姫月,あ、はは……、あ、ありがとう、ございます……
佐々木,あら、丁度授業が終わったわね。じゃぁ次のページから200ページ目までは次の宿題だから、ちゃんとやってきてね
佐々木,あ。あと、今日の分のノートは後で國語係が屆けてね
にこりと優しく笑って、佐々木先生は軽やかな足取りで去っていく。
ようやくこの苦しみから解放されるのかと思うと少し気が楽になった。
しかしまだ安心は出來ない。何故ならまだこれからトイレに行かなきゃいけないのだから!
姫月,っく……神は乗り越えられる試練しか與えないって言うけれど……!!
この狀況はいささか厳しい。少し歩いただけでも膀胱が破裂してしまいそうだ。
誠,姫月!
一歩一歩、私が慎重に廊下まで歩いてきたところで兄貴に聲をかけられた。
正直今は會いたくない人No1だ。
姫月,な、何……? わ、私、ちょっと急いでるんだけど……!
私は聲が裏返らないように気をつけながら言う。
誠,ん? だってお前、ものすごくノロノロ歩いてたじゃないか
姫月,あ、足はノロノロしてても、気持ちはものすっっっごく急いでるの!!!
誠,まぁまぁ、急がば回れって言うだろう? そんなに生き急ぐなって
姫月,うぅうう今はそれどころじゃないの!!!
どこまでも鈍い兄に、私のイライラは頂點に達してしまいそうだ。
かと言ってもいつものように兄貴を蹴ったりしたらその反動できっと漏らしてしまう。
姫月,っつ…………!
私は蹴りたい衝動をぐっと我慢した。
こうなったら適當に兄貴に付き合って適當にあしらうしかない。
姫月,そ、それで、一體何なのよ! くだらない用事だったら本気で蹴り殺すわよ!??
誠,あぁ、そうそう。ほら、昨日の夜話しただろ? 今日はほのかちゃんと3人で學食で食べようってさ
姫月,い、言ってたけど……
誠,あ、桜さん! ちょっといいかな?
兄貴が未だ席に座ったまま、鞄から何かを取り出そうとしているほのかを呼ぶ。
桜さん、と呼んだのは教生としてなのだろう。
兄貴に名前を呼ばれたほのかは、嬉しそうにぴょこぴょこと私たちのほうに歩いてきた。
ほのか,はい、お兄さん。何ですか??
誠,ごめんね、呼んじゃって。俺たちこれから學食に行くんだけど、ほのかちゃんも行かない?
ほのか,え?
誠,あ、いや。嫌なら斷ってくれてもいいんだけど、ほら。ほのかちゃん昨日うちに泊まったから、お弁當持ってきてないでしょう?
ほのか,わ、わ。ぜ、全然嫌じゃないです! 寧ろ嬉しいです!
誠,そう?
ほのか,は、はい。む、寧ろ、私がお邪魔しちゃってもいいんですか……?
誠,勿論だよ。さ、行こう
ほのか,あ。で、でもごめんなさい。私、國語の係で、これからノートを屆けに行かなきゃいけないんです……
誠,そっか。じゃぁ屆けたら學食に來てもらえる?
ほのか,はい、分かりました。じゃぁ屆けてきますね
誠,ん。行ってらっしゃい
誠,さて、と……
ほのかを見送った兄貴が私のほうに向き直る。
誠,それじゃ、俺たちは先に食堂に行くか
姫月,だ、だから私は……!!
誠,ほらほら、行くぞー
姫月,や~~~~~
誠,ほら、姫月は何にするんだ?
姫月,うぅ……な、何でもいいよ……
今は何が食べたいとかそういう欲求よりも何より、とにかくトイレに行きたいのだ。
食事を注文したらもう速攻トイレに行きたい!
誠,んーー。俺は日替わり定食にしようかな
姫月,っ……。じゃ、じゃぁ、私は日替わりパスタで……
メニューに悩む時間すら勿體無い。
私は券売機の一番上の段左上のボタンを押した。
今日の日替わりパスタはきのこと山菜の和風スパゲティとガーリックトースト、オニオンスープのセットのようだ。
値段は580円と格安で、ボリュームもあり味もなかなか、と生徒や教師から評判の學食らしい。
一般に向けて食堂を開放すれば一躍人気店になれるに違いない。
私は購入した食券を、廚房で忙しそうに働いているおばさんへと手渡した。
おばさん,はいはい、ちょっと待ってねー
おばさん,はいどうぞー
姫月,あ、ありがとうございます……
あまりの速さに少し麵食らってしまうが、ひとまず日替わりメニューを受け取ることが出來た。
ほかほかと出來立ての香ばしい香りが鼻先をくすぐる。
尿意という餘計な付屬物さえなければ最高のランチタイムだったのに。
そもそもここに來る前にトイレに行けていればこんなに困らなかったのに!
そう思って、私は隣で廚房のおばちゃんから日替わり定食を受け取っている兄貴をぎろりと睨む。
誠,美味そうだなぁ……
姫月,…………
そんな視線などには全く気付かない兄貴が暢気にそんな感想を述べて、私はがっくりとうなだれた。
姫月,(って、わぁん!! まずいよー! 何かますますトイレに行きたくなってきた……!!!)
姫月,あ、兄貴!! は、早く席取らないと!!!
誠,お。そうだなー。あ、あそこ空いてるぞ
兄貴が指した方向に目をやると、少し奧まった場所にある一番端の席がぽっかりと空いていた。
姫月,(もうとにかくどこでもいいから、早くパスタ置いてトイレに行こう!!)
私はそう思い、その席へと向かいパスタを機に置いた。
これでやっとトイレに行ける。
姫月,あ、兄貴……。わ、私、ちょっとトイレ……
本當は駆け出していきたいけど、走ると出ちゃいそう。
一応斷りを入れておかないと駄目だよね。
そう思い、私は兄貴に聲をかけた。
誠,え、料理冷めちゃうぞ。食ってからにすれば?
姫月,や、だって、急にトイレに行きたくなっちゃったんだもん……
女の子がトイレに行くって言ってるんだから黙って行かせなさいよこの馬鹿兄貴!!!
そう心の中で悪態を吐きながらも、私は穏やかに返答する。
誠,ふむ……。どっちだ?
姫月,え?? どっちって……何が?
兄貴が言いたいことが分からず、思わず聞き返してしまう。
誠,だから、大か小かどっちかって聞いてるんだよ
姫月,ばっ……!!!!!
この人はどれだけ學習能力がないのだろうか。
先程駅のホームであれだけこてんぱんにされたばかりだと言うのに、どうしてこうも下の話題ばかり口にするのか。
だけど悔しいことに、今の私には兄貴を叩きのめす餘裕はない。
誠,ほら、どっちか言えよ
ここで黙ってたら大きいほうをしに行ったと思われるかもしれない。
私はもう今更だ……と諦めて答えることにした。
姫月,っつ……………う
誠,聞こえない
姫月,~~~~~!!!!! ちっさいほう!!!!!
私は出來るだけ大きな聲で、でも周りの人には聞こえない程度の音量で兄貴に伝えた。
姫月,っこ、これで満足した?? じゃぁ私行ってくるから先に食べててよね!
そう言って、今度こそ席を立とうとした私の腕を兄貴が摑んだ。
姫月,? 何……??
まだ何かあるのだろうか。
そんな嫌な予感がして問いかけると、
誠,おしっこなら問題ないよな。ここでしろよ
兄貴はにこりと笑いながら、さらっと恐ろしいことを口にした。
姫月,は????
誠,だから、トイレなんて行かずにここですれば問題ないじゃないか
姫月,ば…!! 問題大ありだよ!! こんなところで出來るわけないじゃない!!
奧まった席で見えにくいとは言っても、見れない場所ではない。
姫月,こんなところでお漏らしなんてしちゃったら、私明日から學園來れない!
誠,お漏らししろなんて言ってないだろ? ほら、これ
そう言って兄貴が渡してきたのはトールサイズの透明カップ。
姫月,ま、まさか………
誠,そ。これにしろよ
姫月,む、無理! 無理無理無理! 絶対無理! こんなとこでこんな容器におしっこなんて絶対無理!!
誠,大丈夫だって。お前、下著著けてないんだし、ちょっと體をずらして機の下でおしっこすれば出來るさ
姫月,そ、そんな簡単に……
出來るわけないよ。
すぐ近くに同じ學園の生徒たちの話し聲がして、食事をする音が聞こえてくる中で。
誰かに見られてしまうかもしれない場所で。
誰にも見られたくない排泄をしなければいけないなんて……。
姫月,お願……兄貴……。トイレ、行かせてよぉ……
きゅうきゅうと湧き上がってくる排泄感に、私は堪らず哀願してしまう。
誠,そうだな……行きたいなら行けばいいぞ? 姫月の好きな男のタイプにはなれないってだけだしな
姫月,うぅう~~~………っつ……
兄貴の言葉に涙が零れそうになる。
こんなとこでおしっこなんて出來ない。
でも出來ないと兄貴は……。
それは駄目なの……。
姫月,っつ………
私は震える手でテーブルの上に置かれたコップを手繰り寄せる。
尿意は既に限界を超えている。
こっそりと周りを伺いながらコップを機の下へと持っていき、おしっこを出しやすいように體を前にズラした。
自分の尿で汚れないように、私は自分のスカートを持ち上げて秘部を曬す。
兄貴の命令で下著を著けていないため、まっさらな下半身が私の目に飛び込んできた。
姫月,うぇ、え……う、ぅ~~
恥ずかしさと情けなさと見られるかもしれない恐怖。
色んな感情が頭の中をぐるぐると駆け巡り、私はぼろぼろと涙を零してしまう。
誠,ほら、早くしろよ
溫かな湯気をたてるお味噌汁をすすりながら、兄貴は私を急かす。
機で隠れているから直接は見えないにしろ、私が排泄してる所を見ながら食事が出來る兄貴はおかしいと思う。
でもやらなきゃいけないんだ……。
姫月,う、ぅう………
ちょろちょろちょろ。
張り裂けそうな膀胱から小さな放物線を描いて、おしっこがコップの中に溜まっていく。
およそ食堂にはふさわしくない音と匂い。
姫月,(やだ。やだ。誰も見ないで。お願いだからこっちに気付かないで)
姫月,っつ………
しょー………
長い間我慢し続けたためかなかなか尿意が収まらない。
どうしよう。コップの中も既に3分の2ほどおしっこが溜まってしまっている。
姫月,(これがいっぱいになったら溢れちゃう……。そ、そんなことになったら回りの人にバレちゃう……!)
一旦止めて他の入れ物に、と思ったところでようやくおしっこが止まった。
姫月,は……はぁ……は……
心臓が痛い。
まるで早鐘のような鼓動の音が、體の中でバクバクと鳴り響く。
誠,全部出たなら、機の上に置いて見せてみろよ
姫月,っつ……、う、うぅ……
誰かに見られていないだろうか、と私は恐る恐る金色の液體が注がれたコップを機の上に置いた。
パスタの橫にある自分のおしっこ。
冷靜に考えたら卒倒しそうなくらいシュールな映像だ。
姫月,こ、これで、いいでしょ……
誠,ん。お疲れ様
にっこりと兄貴が笑って言う。
周囲の喧騒も相変わらずで、どうやら誰にも見られなかったみたい。
良かった、と胸を撫で下ろした時に、兄貴が私の尿が入ったコップに手を伸ばした。
誠,はは。出したばっかりだから溫かいな
姫月,っつ……そんなこと、言わないでよぉ
こんなの恥ずかし過ぎる。
健康診斷の時でさえ恥ずかしいのに、よりによって兄貴に私のおしっこ入りのコップを持たれるなんて……。
その光景を見たくなくて、私はスカートをぎゅっと握り締めて俯いてしまう。
誠,あぁ、そういえば姫月がモタモタしてるから折角のパスタが冷め
ちゃったな……
誠,そうだ、これをかけたらあったかくなるんじゃないか?
姫月,え………?
正直食欲なんてとうになくなってしまっていた。
目の前に並ぶ食事も少し食べて殘してしまいそうなので、溫かくても冷めていても大して変わらない。
ぼんやりとそんなことを考えていると、兄貴は何を思ったのか躊躇うことなくコップの中の尿をパスタにかけ始めたのだ。
姫月,ちょっ……!! 何して……!
誠,何って冷めたパスタを溫め直してやってるだけだぞ
姫月,溫めって、そんなのかけたら食べらんないよ!!
私の制止の聲を振り切って、兄貴はパスタにおしっこを全てかけてしまった。
すっかり冷め切ってしまっていたパスタは、私のおしっこの熱によってほかほかと湯気を立てている。
姫月,し、信じらんない……。食べ物粗末にするなんて……
自分の尿がナミナミと注がれたパスタを見て、元々なかった食欲が更に減退してしまう。
気持ち悪い……。
誠,粗末になんてしないさ。これは姫月が食べるんだから
姫月,っ!? や、嫌だよそんなの……! 食べられないよ……!
兄貴のあまりの言葉に私は目を丸くしてしまう。
自分の排泄物を口に入れるなんて気が狂っているとしか思えない。
誠,そうは言っても、一口も食べてないじゃないか。育ち盛りなんだから晝食はしっかり食べないと體に悪いぞ
誠,ほら、食べろよ
いかにも正論を言っている風だけど、災害時でもない限り自分の尿に口を付けることなどないだろう。
兄貴の命令でもどうしても抵抗がある。
誠,あ……
姫月,………?
私がフォークを片手に固まっていると、兄貴は何かに気付いたようにガタリと音を立てて立ち上がった。
ほのか,お兄さん……! 良かった、どこにいるのか分からなくて……
誠,あぁ、ごめんね。ちゃんと待ち合わせ場所を決めておけばよかったね
姫月,…………ほの、か……
走ってきたのだろうか。ほのかの綺麗な黒髪が少しだけ亂れている。
ほのか,姫ちゃん、隣いい??
姫月,あ、う、うん。勿論……
ほのかの様子はいつもと変わらず和やかだ。
もしかしておしっこしている所を見られたかも……と思ったが、どうやら大丈夫らしい。
私はほっと一息ついて、ほのかに笑顔を見せる。
ほのか,……あ。姫ちゃん日替わりパスタにしたんだね。スープパスタなら私も日替わりにすれば良かったな
ほのかの視線が私の目の前のパスタへと注がれる。
にこにことあどけない笑顔で首を傾げるほのかは、同性から見てもとても可愛いらしい。
でも今は見られたくない。自分のおしっこに塗れたパスタを見られて、私は自分の顔がどんどんと熱くなっていくのが分かった。
誠,姫月はあんまり食欲がないらしいから、ほのかちゃんが少し食べてくれたら丁度いいんじゃないかな
ほのか,え……?
姫月,っつ……!??
兄貴の提案に、私の體はぎくりと硬直してしまう。
一口食べたらかかっている液體はおしっこだとバレてしまう。
ほのかに食べさせるわけにはいかないよ……。
ほのか,姫ちゃん、食欲がないって……體調でも悪いの? 大丈夫??
姫月,あ……。う、うん、あ、ありがと。でも、大丈夫! パスタに間違って林檎ジュースかけちゃったからブルーになってただけだから
姫月,こんなゲテモノほのかに食べさせられないし、ちゃんと責任持って食べるよ!
ほのか,え、そうなの? ふふ、林檎ジュースかけちゃったなんて、姫ちゃんってば意外とおっちょこちょいだね
いや、おっちょこちょいも何も、罰ゲーム以外でそんなミスをする人はいないと思うよ……。
そう心の中でツッコミを入れながらも、私はほのかの天然さに感謝した。
ほのかが來たことで、一口も食べずに捨てるということが出來なくなってしまったのだけれど……。
ふと兄貴のほうを見ると、相変わらず爽やかな笑みを顔に貼り付けたまま私を見ている。
姫月,(この二重人格! サド!! 馬鹿!! 変態!!)
心の中でそんな風に悪態を付きながら、私は意を決して銀色に輝く
フォークを手に持った。
姫月,い、頂き、ます……
フォークにパスタを巻き付けて口元まで持ってくると、つんと鼻につくアンモニア臭に顔を顰めてしまう。
姫月,っつ………
意を決してパスタを咀嚼すると、何とも言えない味が口の中いっぱいに広がった。
誠,美味しい? 俺にも少し食べさせて
姫月,え……!!???
斷る間もなく、兄貴は私の皿からパスタを掬い取り口の中へと放り込んだ。
姫月,やっ…………!!!!
普段であれば少しくらい兄貴にあげても気にしないけど、今日のパスタは私のおしっこでべたべたになってしまっているのだ。
姫月,だ、駄目……!! 吐いて!!!
もこもこと動く口が憎らしい。兄貴におしっこを飲ませてしまったようなものだ。
ほのか,姫ちゃん……?? そんなに慌てなくても……。林檎ジュースがかかっちゃっても、美味しいんじゃないかな……?
林檎ジュースだったらこんなに慌てないよ!
私のおしっこを兄貴に飲まれるとか恥ずかし過ぎて死んじゃいそうなんだもん……!
誠,ん、ちょっとしょっぱいけど、美味しいよ。姫月
くすりと笑う兄貴の笑顔はホントのところ嫌いじゃない。
でも、私のおしっこ飲んでそんな笑顔を見せないでよ……!
兄貴が笑顔でいてくれると嬉しいけれど、こんなことでしか笑顔を見せてくれなくて切ないよ。
もっと兄貴と一緒にいたいだけなのに……。
もっと笑顔を見せてほしいだけなのに……。
私は溢れ出しそうになる涙をぐっと堪えて、パスタを口へと運び続ける。
その反芻運動を何十回も繰り返して、私は自分の尿まみれのパスタを食べ終えた。
;0scene 8日目.夜
姫月,あっ! 兄貴!
誠,ん……?
職員室に戻る途中、馴染みのある聲が俺を呼んだ。
さすがに、晝のアレはやり過ぎたか……?
こんなところで毆られたりしないだろうな……。
そんなことを思いながら振り返ると、姫月はどこか焦った表情をしていた。
姫月,はぁっ、はぁっ……
走ってきたのか、姫月の息が荒い。
姫月は呼吸を整えることなく、慌ただしく話しかけてくる。
姫月,兄貴、ほのか見なかった?
誠,いや、見てないけど……何かあったか?
姫月,ほのかがいないの!
誠,いない……?
一瞬、姫月が何を言ってるのか分からなかった。
誠,いないって、どういうことだ?
姫月,ほのかがいないんだってば!
誠,待て。少し落ち著け
姫月,でもっ
誠,いいから落ち著け。お前がテンパってたら、話が見えない
姫月,う、うん……
俺の言葉で少しは冷靜さを取り戻したのか、姫月は胸に手を當てて小さく息を吐く。
誠,落ち著いたら、俺にも分かるように説明してくれ
姫月,うん……
姫月はもう一度だけ息を吐くと、自分でも考えを整理するように一つ一つゆっくりと話し始めた。
姫月,私たち、5時間目は體育だったんだけど、まだほのかが戻ってこないの
誠,ただ単に、著替えに時間がかかってるだけじゃないのか?
姫月,更衣室を見に行ったけどいなかったの
誠,じゃあ、先生に授業で使った道具の片付けを頼まれてるとか?
姫月,普通、頼むなら日直か體育委員に頼むでしょ
誠,ってことは、今日ほのかちゃんは日直じゃないんだな?
姫月,うん
誠,なら、體調を崩して保健室に――
姫月,それも確認済み
俺の考えを否定するたびに焦りが生まれてくるのか、姫月は俺の言葉を途中で遮って答えた。
誠,それも違うとなると……
他の可能性も思いつくが……口にして良いものか躊躇ってしまう。
姫月,何? 何か心當たりがあるなら教えて
誠,いや、その……なんだ……
姫月,兄貴っ
そう切実な表情で呼ばれてもだな、言いにくい答えなんだよ……。
とはいえ、頑固者の姫月が諦めるわけもない。
俺は一発ぶん毆られることを覚悟して、思いついた答えを口にする。
誠,……トイレ、じゃないのか?
姫月,トイレも確認したけど、いなかった
俺の予想に反して、姫月は手を出してこなかった。
今更ながら、なぜ姫月がここまで焦ってるのかという疑問が生まれた。
誠,なぁ、まだ休み時間だろ? 何でそんなに焦ってるんだよ?
姫月,だ、だって、ほのか……いっつも5分前行動は當たり前で……それなのに、もうすぐ授業が始まるっていうのに、まだ教室に戻ってきてないから……
姫月,それに……攜帯にかけても出なくて……だから……
姫月のそんな言葉に、嫌な予感が胸の中にわき上がってくる。
確かに、生真面目なほのからしくない行動に思える。
前に姫月が、「ほのかは先生によく頼まれごとされてるから、晝休みの半分くらいは用事で色んな所に行ってる」と言っていた。
今回もそうなんじゃないかと思うが……どうしても嫌な予感がしてしまう。
ノートを隠され、辛らつな言葉をぶつけられ……涙を滲ませるほのかの姿が思い浮かぶ。
誠,……わかった。ほのかちゃんは俺が探すから、お前は教室に戻れ
姫月,なんで! 私もほのかのこと探す!
誠,駄目だ
姫月,どうして!
誠,もしかしたら授業前に戻ってくるかもしれないし、ただ単にお前とニアミスしただけかもしれないだろ?
姫月,そう、かもしれないけど……
誠,仮にほのかちゃんが戻ってこなかったとして、それでお前まで授業にいなかったら騒ぎになるだろ
姫月,うっ……確かにそうだけど、ほのかがいなくても騒ぎになるかもしれないじゃん……
納得しきれないのか、食い下がる姫月。
誠,だからこそ、お前には教室にいて欲しいんだよ
姫月,どういうこと?
誠,もしほのかちゃんが授業までに戻ってこなかったら、保健室で休んでるとか適當に言い訳して欲しいんだ
誠,そうすれば、ほのかちゃんが戻ってこなくても問題にはならないだろ?
姫月,あ……
誠,これは、お前にしか出來ないことなんだ
誠,だから、お前は教室に戻れ
姫月,……ん、わかった
姫月,ほのかをお願い……
ほのかを心配する姫月は、しおらしい態度でぼそぼそと言う。
普段から、こうならいいんだけどな……。
そう思ったのも束の間。
姫月,ほのかのこと、見つけなかったら許さないからねっ!
なんで、最後まで素直でいられないんだよ……。
やっぱり可愛くない奴。
まぁ、今は姫月のことはどうでもいい。優先すべきはほのかだ。
誠,まずは體育の授業が終わったあとに寄りそうなところを片っ端から見ていくか
ふと外を見れば、空が鉛色へと染まりかけていた。
誠,……っつ、見つからないな……
グラウンド、更衣室――さすがに中には入らず、ノックをして中に人がいるかどうか確認しただけ――に保健室。
そこにほのかの姿はなく、わずかな希望を胸に教室を見に行ったが戻ってはいなかった。
鉛色だった空からは雨が降り注ぎ、物靜かな廊下に雨音だけが響き渡る。
それがまた、俺の不安を駆り立てる。
俺は自分の不安な気持ちを見ないようにし、次にするべきことを考える。
誠,あと探してないところは、空き教室と屋上くらいか……
??,くしゅっ
誠,ん……? くしゃみ……?
気のせいか?
くしゃみらしきものが聞こえた空き教室の中を覗いてみるが、そこには人の姿はなかった。
誠,やっぱり、気のせいか……?
??,くしゅんっ
首を傾げていると……さっきよりもハッキリと、そのくしゃみは聞こえた。
くしゃみがしたほうに目をやれば、そこにあるのは掃除用具がしまってあるロッカーが一つ。
(おい、まさか……)
誠,ほのか、ちゃん……?
??,ち、違います……っ
ロッカーに向けて恐る恐る聲をかけると、聞き覚えのある聲で返事があった。
やはり、中にいるのはほのかだった。
誠,ちょっと待ってて、すぐ開けるから
そう言ってロッカーを開けようとするが――
誠,ん……? 鍵がかかってる……?
最近は掃除用具をしまうだけのロッカーにも、鍵付きのものなんか使ってるのかよ……。
おそらく、盜難や悪戯を防止するためなんだろう。
(仕方ない……)
鍵を取りに行くのも面倒だし……何より、鍵を借りる理由を聞かれたらやっかいだ。
俺はいつでも屋上に行けるようにと、ポケットに入れて持ち歩いている安全ピンを取り出す。
一度軽く息を吐いて指先に意識を集中し、安全ピンを鍵穴へと差し込む。
ほのか,え……お、お兄さん、ロッカーの鍵を持ってるんですか?
誠,いや、持ってないけど……このくらいなら、簡単に開けられると思う……
ロッカーの鍵はシンプルなタイプらしく、ほのかの質問に答えるのと同時に鍵を開けることに成功した。
誠,よし
ほのか,え……? えっ? 開いた……?
そんなほのかの戸惑いの聲を聞きながら、俺はロッカーを開けた。
ほのか,あ……
誠,え……
ロッカーの中で、ほのかは體育座りをしていた。
何も身につけてない、生まれたままの姿で。
刹那、ほのかの表情が悲しげなものに変わり、辺りを気まずい雰囲気が覆う。
戸惑いや怒り、様々な感情がわき上がってくるが、今することはただ一つ。
俺はスーツの上著を脫ぎ、ほのかに羽織らせた。
ほのか,え……
誠,ちょっと待ってて、ほのかちゃんの服、探してくる
それだけ言い、俺はほのかに背を向けて教室をあとにした。
ほのか,あ……
思いつく限りのところを片っ端から探し回り、制服と下著を空き教室のゴミ箱から見つけ出した。
埃を払い落とし、足早にほのかの元へと戻る。
誠,はい
ほのか,あ、ありがとうございます……
ほのかは上著を手で押さえて肌が見えないようにしながら、制服と下著を受け取った。
誠,じゃあ、俺は外に出てるから
ほのか,あ、はい……
誠,ふぅ……
壁により掛かり、小さく息を吐き出す。
誠,あ、姫月に報告しないと……
ポケットから攜帯を取りだし、今が授業中だったことを思い出す。
(さすがに授業中にメールを送るのはマズいか……)
攜帯をポケットにしまうと、ちょうどドアが開いて制服に身を包んだほのかが出てきた。
ほのか,あの、これ……ありがとうございました
誠,ううん、気にしないで
俺はそう答えながらほのかから返された上著を受け取り、軽く肩にかける。
ほのかの制服を探して駆けずり回ったせいか、まだ體が熱い。
ネクタイも緩めたままだが……まぁ、誰が見てるわけでもなし、しばらくこのままでも問題ないだろう。
ほのか,あと……制服、探してきてくれて、ありがとうございます
誠,いや、當然のことをしたまでだから
ほのか,でも、ありがとうございます
誠,……うん、どういたしまして
ほのかのお禮を素直に受け取り、これからどうするか考える。
まだ授業が終わるまで時間があるし……。
ほのか,あと……
誠,うん?
ほのか,ロッカーに閉じこめられてるところを助けてくれて、ありがとうございます
誠,う、うん……
なんというか……してもらったこと一つ一つにお禮を言うとか、律儀すぎだろ……。
しかも毎回毎回、ぺこりと頭を下げるし。
ほのからしさに緊張が緩み、わずかに苦笑いがこぼれる。
ほのか,お兄さんには、また助けてもらっちゃいましたね
誠,え……
ほのか,それじゃ、私は戻りますね
呆然とする俺を餘所に、ほのかは再びぺこりと頭を下げると、小走りに去っていった。
今のほのかの言葉……「また」って、どういうことだ……?
以前、雪名と貓屋敷の二人に辛らつな言葉を浴びせられていたときのことか?
でも、あれは聲をかけただけで……助けたとは言えない。
何より、あの時のほのかの顔は、「知られたくなかった」と悲しげなものだった。
じゃあ、ほのかが言っていた、「また」っていったい何のことなんだ……?
誠,あ……
そう言えば……かなり昔、女の子を助けたことがあった。
どこか狹いところに閉じこめられている女の子を助けたくて、俺は必死に鍵穴を弄り回して何とか開けた。
でもその女の子は泣きやんでくれなくて、罪悪感や無力感に襲われた気がする。
なぜ罪悪感や無力感を覚えたのかは、よく思い出せない。
女の子の顔もぼやけていて、いまいちハッキリしない。
そんな朧気な記憶が不意に蘇った。
誠,もしかして、あの時の女の子がほのかちゃん……?
;0scene 8日目_夜02
兄貴に言われて、私は授業に戻る。
隣の席は空いたままだ。
姫月,(ほのか大丈夫かな……)
ちらりと雪名さんと貓屋敷さんに目を遣るが、彼女たちは普段と変わらない様子で授業を受けている。
何となく、ほのかと彼女たちの関係がぎくしゃくしているような気はするし、ほのかの持ち物がよく無くなることも分かってる。
だけど……。
姫月,(……ほのかに嫌がらせをしているのが彼女たちだっていう確証はない……)
私が直接その場面を見ていないのだから、彼女たちを疑うわけにはいかない。
ほのかは私にとって、とても特別な存在だけど。
雪名さんと貓屋敷さんもまた、私の友達であることに変わりはないから。
勿論ほのか本人から相談を受けたなら、私は全力でほのかの力になりたいと思ってる。
それによって、たとえ雪名さんたちとの関係が悪くなってしまっても構わない、その覚悟はある。
何度か間接的に問いかけたこともあった。
だけどほのかは、何も言わない。だから私もほのかを信じたいんだ。
からり、と控えめに扉が開かれる音が教室內に響いた。
音のした方を見ると、そこには申し訳なさそうな表情のほのかが立っている。
姫月,(ほのか……!!!)
私の視線に気付いたほのかは困ったように微笑んだ。
ほのかは授業の邪魔をしないよう靜かに教室の中へと足を進め、私の隣に座る。
授業が終わるまで待っていられなくて、私は一筆書いたノートの切れ端をほのかの機に回す。
姫月『どうしたの? 何かあった?
ほのか『ごめんね。ちょっと気持ち悪くなって中庭で休んでたの
姫月『中庭にいた? あれ? 私も中庭に探しに行ったんだけど……
ほのか『そうなの? ごめんね、ちょっと分かり難い所にいたの
姫月『…………
ほのかの返事を見ていて、私はこれ以上続けても無駄だと思った。
おっとりしてて優しくて、大和撫子を具現化したような子だけど、ほのかは実はとても芯が強いのだ。
一度こうと決めたらてこでも動かない。私はそれ以上ほのかに尋ねることを諦めた。
姫月『……そっか。でも、とにかくほのかが無事で良かった
ほのか『うん。心配かけちゃってごめんね
ほのかの絵文字を見てくすりと笑い、私たちは黒板のほうへと目を向けた。
よぼよぼのお爺ちゃん先生が一生懸命天體の模型を片手に講義している。
少ししわがれた聲が心地良い。
姫月,(そういえば、兄貴にも心配かけちゃったな……)
姫月,(……後で、ちゃんと、お禮言わないと……)
どういう風に言えばいいかな………いつもみたいな感じじゃなく、もっと素直に………と考えたところでハッと我に返り、兄貴の殘像を振り払うように私は授業に集中し始めた。
ショートホームルームが終わり、帰りの支度を整える。
姫月,ほのかは今日茶道部だよね
ほのか,うん。ちょっと遅くなっちゃったから、早く行かなきゃ
姫月,そっか。頑張ってね
ほのか,ありがと。姫ちゃんも頑張ってね。また明日ー
姫月,ん、また明日
軽く手を振り、私はほのかを見送る。
姫月,さて、と。私も練習しなきゃね
ほのかに負けないように。昔教えてもらった通りに。
ふぅ、っと気合いを入れて私はスケートリンクへと向かった。
誠,姫月!
姫月,……兄貴?
突然聲をかけられて、私は少しビックリしてしまった。
急いで來たのか、兄貴は少し息が上がっている。
誠,これから部活か?
姫月,え? あ、うん。そうだけど……
誠,そうか……
もしかすると、私の部活を見に來てくれるのだろうか。
家に帰ってからにしようかとも思っていたけれど、ほのかの件でお禮を言うチャンスかもしれない。
さっきはありがとう、心強かったよ、とか……う、うまく言えるかな……。
ドキドキしながら私が口を開こうとした時。
誠,その……お前、ほのかちゃんから何か聞いたか……?
兄貴から先に、ほのかの話題を切り出してきた。
……元々私からお禮を言おうと思っていたのだから、何てことない。
私よりも先に、兄貴の口からほのかの名前が出ただけ。
そう思い直して、私は小さく深呼吸してから兄貴の質問に答える。
姫月,……5時間目の後のこと?
誠,あぁ
姫月,気分が悪くなったから、中庭で休んでたって言ってた……
誠,……それで、お前はそれを信じたのか?
兄貴の目がほんの少し険しくなって、私を責めているみたいに見える。
姫月,信じてるよ。……だって、ほのかが言ったことだもん。私が信じないで、誰が信じるの
誠,………………
ほのかの様子からも、本當は何かがあったのだと思う。
だけど、ほのかが隠したいって思ってることを、どうして私が無理矢理暴くようなことが出來るの?
誠,っつ……ほのかちゃんは……!
そこまで言って、兄貴はハッとしたように押し黙ってしまう。
自分が言ってしまっても良いのか分からない。そんな表情。
姫月,……何よ
誠,…………いや、何でもない
姫月,言いたいことがあるならハッキリ言いなよ!! ウジウジして男らしくない!
煮え切らない態度の兄貴に腹が立つ。
ほのかのことが心配で心配でたまらない。ほのかに対しての私の態度が気に入らない。
兄貴の目にはそんな感情が含まれているように思えて、私はつい聲を張り上げてしまった。
違う。違う。こんなことを言いたいわけじゃないのに。
ほのかを助けてくれてありがとうって言いたいだけなのに。
誠,何でもないって言ってるだろ!!??
姫月,っつ…………!!!
兄貴の怒鳴り聲に、私は言葉を返せなくなってしまう。
分かってる。兄貴が何を言いたいのか。分かってるけど……!!!
誠,……俺、帰るわ
姫月,あっ………………
私の顔なんて見たくもないという雰囲気で、兄貴がここから去ろうと踵を返した。
誠,……なんだよ
姫月,……え?
誠,袖、摑んでる。……離せよ
姫月,あ……ご、ごめん……
無意識の內に私の手が兄貴のスーツの袖の部分を摑んでいた。
兄貴に言われて、私はパっとその手を離す。
誠,……それで、何なんだよ
誠,何か用があったから引き止めたんじゃないのか?
面倒くさそうに兄貴は言うけれど、向き直って私の言葉を待ってくれている。
イライラしていても、結局人を無礙に出來ないのだ。
姫月,あ、その……今日は、スケート……見に、來ないの……?
誠,別に俺が見に行ったって何の役にも立たないだろ
姫月,そ、そうかもしれないけど……
姫月,でも、でも……
姫月,あ…………
誠,……出れば?
兄貴の言葉に、私は躊躇いながらも攜帯電話の通話ボタンを押した。
姫月,……はい
??,……姫月? ごほ。ごめん、今大丈夫?
姫月,え、あ。俊成さん? えと、うん。大丈夫……
電話をかけてきた相手はスケートのコーチをしてくれている俊成さんだった。
練習前に電話をかけてくることなんて初めてだ。何だかいつもと違う。
ふと兄貴の顔を見ると、何だか先程までより更に不機嫌そうな様子で眉を潛めている。
姫月,俊成さん……どうしたの? 何か聲、枯れてる気がする
俊成,げほげほ。ん、何か、風邪引いちゃったみたいで……げほ、今日、行けそうにないんだ
姫月,そうなんだ……。うん、分かった。じゃぁ今日は軽く流しておくだけにするよ
俊成,ごほごほ……悪いな。大切な時期なのに……
姫月,ううん。気にしなくて大丈夫だよ。それじゃ、俊成さんはゆっくり休んでね
誠,……コーチは休みなんだな
姫月,あ、うん。何か風邪引いちゃったみたい
誠,へぇ。それなら看病に行ってやればいいじゃないか
姫月,そ、そんなの駄目だよ……
誠,何でだよ。風邪引いてる時なんかは心細いんだし、好感度上げるチャンスじゃないか
姫月,…………
姫月,で、でも、私、練習しなきゃいけないもん……
誠,ふぅん……
兄貴の冷たい視線が突き刺さる。
私のことを薄情だとでも思っているのだろうか。
姫月,そ、そうだ。と、俊成さんがいないんだから、代わりに兄貴が練習見てよ
誠,何でだよ。さっきも言ったけど、素人の俺が見ても何のアドバイスも出來ないぞ
姫月,そうだけど、でもやっぱり他の人に見てもらうことって、大事だし……
しどろもどろに言う私の顔を兄貴がじっと見つめてくる。
誠,……そうだな。分かったよ、見に行けばいいんだろ?
姫月,……そ、そうだよ。見に來ればいいの!
何か思いついたのか、先程までの不機嫌さはすっかり収まり、顔には笑顔すら浮かんでいる。
兄貴の怒りが収まったことに、私は內心ホッとしたのだった。
姫月,…………な、何でまた兄貴が更衣室まで付いてきてるの?
誠,お前が人に見てもらいたいって言ったからだろ?
姫月,ち、違うよ! 私はリンクで滑ってる私を見てって言っただけで著替えるところを見てって言ったわけじゃ……!!
誠,まぁ俺に気にせずに著替えろよ。えーっと……練習用のタイツはこれか
そう言って兄貴は私の練習著を手に取った。
姫月,な、何するの……??
誠,うん? 見られている意識を高めてやろうかと思ってさ
姫月,??
意味深な言葉に首をひねっていると、兄貴はどこからか大きな斷ち切りバサミを持ってきた。
姫月,な、何?? 何でハサミ……???
誠,はは。そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だよ。少し切れ込みを入れるだけだ
姫月,き、切れ込みって……
言っている意味が分からずに見ていると、ハサミを持つ兄貴の手がタイツの股の部分へと伸びた。
姫月,!!???
兄貴は楽しそうにハサミを動かし、ジャキジャキと遠慮なく股部分を切り裂いていく。
姫月,や、ちょっ……!! 何して……!!!
誠,ほら、これを履いて滑ってみろよ。勿論パンツは履かずにさ
姫月,な、何でそんな……
誠,見られている意識を持ったほうが良いだろう? これを履くことによって周りから見られているというプレッシャーに打ち勝つことが出來ると思うんだ
にこりと笑いながら言われ、私は目の前が真っ暗になってしまう。
だって、私がスケートをしている姿を、學園の生徒たちが見に來ているのだ。
こんなタイツを履いていたら、スパイラルやビールマンスピンをすると私の恥ずかしい部分が丸見えになってしまう。
誠,ほら、出來ないのか? 見舞いにも行かずにこういうことも出來ないなんて、お前の気持ちってその程度だったんだなぁ
姫月,……っつ!!!
挑発的な言葉に、私は兄貴をキッと睨み、引っ手繰るようにして練習著を奪い取る。
姫月,著ればいいんでしょう!? こ、このくらい出來るんだから!!
誠,あぁ、それじゃ。俺は先に行ってるよ
姫月,………………
私を置いて、兄貴は更衣室から出て行ってしまった。
著替えを見られるのかとも思ったのだけど、そうではなかったらしくて少しホッとする。
姫月,……き、著替えなきゃ
自分に言い聞かせるように呟いて、私は練習著に著替えた。
誠,お疲れ。ちゃんとあのタイツ履いたか?
姫月,は、履いたよ……
誠,へぇ。どれ……
姫月,っつ…………!!!?
壁にもたれていた兄貴が體を起こし、私の下半身へと手を伸ばしてきた。
布が切り取られた場所に兄貴の少し冷たい指が滑り込み、私の恥ずかしい所を探るように觸ってくる。
姫月,っふぁ……ん……!
緊張している私の體はその刺激を敏感に拾い上げ、濡れた聲を漏らしてしまう。
割れ目を撫でるように滑る指がクリトリスを掠め、ぞくぞくと甘い痺れが腰から背中へと駆け上がっていく。
姫月,っつ……ゃ、あ……
こんな誰に見られるか分からないような場所で兄貴に觸られている。
肌を刺す空気はこんなにも冷たいのに、私の下半身は燃えるように熱くなっていく。
誠,うん、ちゃんと下著も著けてないみたいだな
兄貴はそう言って、あっさりと私のそこから手を離してしまった。
姫月,はっ……はぁ、は、は……
中途半端な狀態で投げ出され、私はもっと強い刺激を求めるように、もじもじと足を動かしてしまう。
誠,ん? どうした? もう確認したからいいぞ。練習してこいよ
姫月,あ、あぅ……
誠,それともさっきの続きをして欲しいとか? 姫月はこんな場所でま○こ弄られたいのか?
姫月,ち、違うよっ……!!! そんなわけないもん!!!
誠,それじゃ、行ってこいよ。ちゃんと見ててやるからな
誠,あぁ、音楽もちゃんとかけてやるから安心しろ
姫月,っつ…………! 馬鹿!!!
兄貴の言葉に思わずたてついてしまった私は、ぞわぞわともどかしい感覚を抱えたまま銀盤へと向かった。
私が銀盤の上に立つと、既に待機していた生徒たちが小さな拍手を送ってくれる。
いつもなら、その歓迎ムードが私の気持ちを穏やかにしてくれるのに、今日はそういうわけにはいかない。
彼らに私のあそこを見られてしまうかもしれないと思うと不安で、緊張してしまうのだ。
シャラシャラとエッジが氷の表面を削る音が僅かに聞こえる。
ウォーミングアップを兼ねて、私は自由にリンクの上を滑っていく。
みんなが私の一挙手一投足に注目している。
ただの練習なら、足を上げないよう注意していれば、あんな所に切れ込みが入っているとは気付かれないだろう。
だけど一度曲がかかってしまえば、プログラム上、技を決めないわけにはいかなくなってしまう。
姫月,(どうしよう……どうしよう……どうすれば……)
ちらりと兄貴のほうに目をやると、くいっと軽く顎を上げ、演技を始めるように指図してきた。
姫月,っつ…………
姫月,(とにかく、人がいる方向からは見えないように角度を変えるしかない……)
そう決意して、私はリンクの中央に立った。
音楽が流れるのと同時に、私は大きく體を動かしていく。
華やかなショパンのメロディーラインに合わせて體を反転させ、アクセルジャンプを決める。
極限までの不安と緊張で、トリプルアクセルがダブルアクセルになりコンビネーションジャンプを飛べなくなってしまった。
観客席のほうから殘念そうな溜息が漏れるのが分かった。
姫月,(でも、怖い……!)
みんなが私の體を隅々まで見ている。
いつも滑っている銀盤の上が、まるで全く知らない未開の地のようにすら思えてくる。
トリプルフリップ、ダブルループを決めて私は次の技へと移らなければならない。
左足を後方に上げ、上體を前に倒すアラベスクスパイラル。
真後ろから見れば、きっと私のあそこが丸見えになっているに違いない。
姫月,(嫌だ……恥ずかしい! 恥ずかしいよ!! こんな體勢、見ないでぇ……!)
兄貴が見ている。周りの皆にも気付かれているかもしれない。
姫月,(どうしよう、嫌だ、嫌だよ……恥ずかしいのに……體、熱い)
音楽が終盤に差し掛かり、見せ場のひとつであるストレートラインステップを踏む。
真っ白なリンクを端から端まで真っ直ぐに縦斷していく。
力強くステップを踏むたびに先程兄貴に觸られた下半身が熱を帯び、電気が走るように私の脳髄を犯す。
姫月,(何で……? どうして? 毎日見られながら演技しているのに……、今日……いつもと、違う……)
息が上がる。胸の鼓動がバクバクと五月蝿い。
姫月,(恥ずかしい……恥ずかしい……でも、ちゃんと踴らなきゃ……)
片足を軸に、くるくると回転しながらフィニッシュを迎える。そして、音楽が鳴り終わった。
パチパチと溫かい拍手が聞こえる。
正直なところ、普段の6割程度の出來栄えだったのに、見てくれていた人たちはいつもと変わらない、惜しみない拍手を送ってくれた。
どうやら上手く死角になったようで、2階と3階の観客席からは、私の足の付け根はよく見えなかったらしい。
私はホっと一息ついて、兄貴の見ているところまで滑っていった。
姫月,はぁ、はぁ……はぁ、は……
誠,やっぱり上からだと切れ目を入れても分かり難かったみたいだな
姫月,は、はぁ……はぁ、は……そ、そうだね……
おかげで誰にもバレることなく演技を終了することが出來たのに、どうやら兄貴は不満だったらしい。
誠,はぁ、そっか……殘念だけど、まぁ仕方ないか……
姫月,な、何よ! 殘念って! バレなかったんだから良いことじゃん!!
まるで暴露されてほしかったような聲音。
誠,そうだな……はぁ。仕方ない……帰るか
姫月,ちょっ……!! ま、待ってよ!!
心底殘念そうに言い、兄貴はがっくりと肩を落としてその場を去る。
そして私はそんな兄貴を追いかけて、今日の部活を終了したのだった。
;0scene 9日目.朝
誠,はぁ~、かったるい……
カレンダーを見れば、今日はまだ火曜日。何度見ても、火曜日。
あと10回くらい見たら、木曜日に変わったりしないかな……。
姫月,兄貴ーっ! 早くしないと遅れるよーっ!
馬鹿なことを考えながら朝の準備をしていると、下から姫月が俺を呼ぶ大聲が響いてくる。
時間を確認すると、まだかなり餘裕がある。
姫月,兄貴ーっ!!
誠,あー、すぐ行くーっ!!!
あんまり待たせて機嫌を損ねたら何をされるか分かったのものじゃない。
俺はネクタイと鞄を摑んで部屋を出た。
姫月,遅いっ!!
家を出ると、そこには目をつり上げた姫月が待っていた。
誠,……あのさ
姫月,何?
誠,別に一緒に行く必要なくね? 子供じゃないんだから、一人で行けるっつの
姫月,とてもそうは思えないけど
姫月はじろりと俺を見ると、呆れ顔で言った。
なんでこいつは俺を見下すように見るのかね……。
誠,參考までに一応聞いてやる。どこら辺が、そうは思えないんだ?
姫月,まず朝からドタバタしてるところ
誠,あれはお前が急かすからだろ。俺的には、まだ時間の餘裕があるのに
姫月,はぁっ? 何それ、兄貴が駄目駄目だから、仕方なく面倒見てあげてるのに!!
(餘計なお世話だっつーの)
とは言えない。絶対に怒るし、そうなったらめんどくさい。
姫月,ネクタイだってしてないし、すっごくだらしないんですけど
誠,これも、お前が急かしたことが原因なわけだが
姫月,急かさなくても変わんないでしょ。いっつもネクタイ曲がってるし
誠,うぇっ!? マジで!?
誠,お前、何で今頃言うんだよ。気付いたときに言えよな
俺は一週間以上、ネクタイを曲がったまま學園に行ってたのか。
あー……女子とか、絶対に陰で笑ってたろうな……。
姫月,普通、鏡を見れば気付くじゃん
誠,寢癖ついてないか確認する時くらいしか、鏡なんか見ないし
姫月,はぁぁ……
これだからヲタは……と言わんばかりの冷たい目をしながら溜め息をつく姫月。
鏡を何回見ても自分の顔が変わるわけでもないし、そんなの時間の無駄だろ。
その分、エロゲをやってるほうが何萬倍も有意義だ。
そんなことを考えていると、姫月が手を突き出してきた。
姫月,ほら、貸して
誠,いや、この前アキバに行ったときに色々買ったから、貸せるほど持ち合わせないんだが……
姫月,はっ……?
誠,……ん? 金を借りたいんじゃないのか?
姫月,なんで私が兄貴なんかに借りを作んなきゃいけないのよ! ばっかじゃないの!
誠,ぐっ……だったら、わかるようにちゃんと言えよ
姫月,ちゃんとって……話の流れでわかるでしょ? 私が貸してって言ったのはネクタイだって
誠,すいませんね、わからなくて
姫月,ほら、ネクタイ貸して
姫月は俺のイヤミったらしい言葉をスルーして、さらに手を突き出してくる。
俺が敬語を使うのは當たり前とでも思ってるんだろうか……。
いくら調教しても、姫月の上から目線は全く変わらない。
姫月,ちょっと、早くしてよ。腕が疲れるじゃん
ふと、ある疑問が浮かんだ。
こいつ、なんでそこまでして俺にネクタイをしようとするんだ?
一週間も放置してたんだ。今さら體面が気になるとは思えない。
ま、まさか……っ!?
誠,お前……このネクタイで俺のことを絞め殺すつもりだな!
姫月,はあああああぁぁぁぁぁっ!!?? どうしてそんな考えになるのよ!!!
誠,だって、お前が『自分から』俺のために何かしようなんて、明らかにおかしいだろ! 何か裏があるとしか思えない!
姫月,なっ!? べっ、別に、そんな、兄貴のためじゃないわよっ!!!
俺の指摘に動揺したのか、姫月は顔を赤くしながらしどろもどろに言う。
やっぱり図星か? 俺、殺されるのか!?
姫月,たっ、ただっ、見ててイライラするし、私までだらしないと思われるのが嫌なだけっ! それだけなんだからっ!!
誠,今更……? 一週間も放置してたのに……?
姫月,うっ、うっさい、馬鹿っ!!!
さらに顔を赤くしてそう言うと、姫月は俺の手からネクタイを奪い取った。
姫月,ほっ、ほらっ……ネクタイ通すから、シャツの襟を立てて
誠,…………本當に、絞め殺すつもりじゃないよな?
姫月,5秒以內に襟を立てなかったら、絞め殺しちゃうかもね
え、笑顔だ。すげー笑顔だ。
俺は慌ててシャツの襟を立てた。
姫月,ん
身長が小さい姫月は、つま先立ちになりながらネクタイを俺の首に回した。
ふわりと女の子の香りがし、一瞬胸がドキリとする。
お、落ち著け、俺。相手はあの姫月だぞ。
少しでも気を紛らわせようと、姫月から目をそらす。
姫月,あとは、これを通せば……
姫月は俺の反応に気付かず、ネクタイを結んでいた。
姫月,はい、出來た!
よほど上手にネクタイが結べたのか、笑顔で満足そうに頷く姫月。
顔は、可愛いんだよなぁ……。
姫月,……ん? 何?
誠,あ、いや、別になんでもない
姫月,?? 変な兄貴
姫月,まぁ、いいや。それじゃ行こっか
誠,あぁ
俺は小さく息を吐き出し、姫月と並んで歩き出した。
姫月,♪~~♪♪♪
朝の星占いの運勢でもよかったのか、姫月はご機嫌だ。
いつもこうなら、俺の心的ストレスもぐっと小さくなるんだけどなぁ……。
そんなことを思ってると、隣から軽快な音が鳴り出した。
姫月,あ、ほのかからメールだ
誠,なんだって?
反射的に聞き、しまったとすぐさま後悔する。
「何、女の子同士のメールの內容を聞こうとしてるの? キモイんだけど」とか罵られるに決まってる。
だが……。
姫月,……ほのか、今日は風邪で休むって
特につんけんすることなく、姫月は淡々と答えた。
誠,風邪……
そう言えば、昨日ほのかはくしゃみをしていた。
でも、本當に風邪なのか……?
今までほのかが受けてきたことを知っている俺は、どうしても簡単に納得出來ない。
いじめられてる人間は、學園に行きたいとは思わない。
いや、思えない。
誠,……なぁ、ほのかちゃん……本當に風邪なのか?
姫月,はぁっ? ほのかが自分で風邪って言ってるじゃん
どうして、こいつは何でもかんでも鵜呑みにするんだろうか?
ほのかはずっと何でもないと言い続けていたけど、実際はいじめられていた。
弱い人間は周りに迷惑をかけたくなくて、真実を隠そうとする。
誠,…………
姫月,……っつ、ほのかほのかってなんなの? 兄貴、ほのかのストーカーなんじゃない?
誠,はぁ?
姫月,ほのかに手を出さないとか言っておきながら、我慢出來なくなっちゃったの? これだから、エッチなゲームやってる人間は駄目なんだよ
誠,何だよ、それ。俺はただ、ほのかちゃんを心配してるだけだろ
誠,つか、エロゲやってる人間が犯罪者とか、犯罪者予備軍とか、そんな話を真に受けるほど脳みそ足りてないのかよ、お前は
姫月,……っつ
姫月,とにかく、ほのかほのかってキモイ。あんまりしつこいと、本當にストーカーとして員警に突き出すからね!
そう言うと、姫月は俺の反論を聞くことなく、駆け足で去っていった。
何なんだ、あいつは……。
ほのかのこと、心配じゃないのかよ……。
;0scene 9日目.晝
姫月,はぁ……
朝から殘ったままの自己嫌悪に、私は何度目かの溜め息をついた。
姫月,(兄貴ってば何なのよ……ほのか、ほのか、って……)
姫月,(私だって……)
姫月,兄貴の馬鹿……
小聲でポツリと漏らすと、美術室のドアが開いた。
誠,授業を始めるから、みんな席に著いてー
姫月,はっ……? 兄貴?
入ってきたのは美術の田所先生ではなく、なぜか兄貴だった。
雪名,あれー? なんで先生がいるの?
誠,実は田所先生が風邪で休みだから、今日は代わりに僕が授業を見ます
誠,といっても、僕には美術の授業は教えられないから、ただの自習なんだけどね
兄貴のおどけた言葉に、周りから笑いが漏れる。
どこにでもあるような風景なのに、胸がムカムカする。
貓屋敷,じゃあ、この時間は何をしてもいいんですか?
誠,いや、一応美術の時間だから、何か美術っぽいことしようか
男子生徒A,えー、自習でいいじゃーん
誠,まぁまぁ、とりあえず好きなものをデッサンする、ということにしようか
男子生徒B,はいはーい、外の風景をデッサンしたいでーす
男子生徒A,とか言って、サッカーするつもりだろ
男子生徒B,おまっ、バラすなよ!
誠,はいはい、美術室の中のものでデッサンするように
男子生徒B,ちぇー
そんな普段とは違う軽いノリで、美術の授業が始まった。
だけどそんな雰囲気でまともな授業が出來るはずもなく、十分もすれば男子が騒ぎ始める。
姫月,ちょっと男子! 授業中なんだから騒がないでよ!
朝の苛立ちが殘っていた私は、思わずきつめの口調で注意していた。
姫月,(あー……また自己嫌悪に陥りそう……)
男子生徒A,う……
男子生徒B,でも、美術室にあるもの描いても面白くないし……
姫月,……っつ、だからって遊んでいいわけないでしょ
誠,じゃあ何をやりたい?
私のトゲトゲした言葉に怯んだ男子を見かねたのか、兄貴が聲をかけてきた。
男子生徒A,あ、はいはい! ヌードモデルを描きたいです!
男子生徒B,おっ、賛成ーっ!
誠,ヌードモデル、か……
兄貴が何か考えるように、ポツリと呟く。
姫月,(ホント、男子って馬鹿ばっかり……)
姫月,(なんでエッチなことにしか興味がないんだろ)
姫月,(あ、でも、『リアル』の女の子に興味を持つだけ、まだマシか
な)
そんなことを考えてると、兄貴が私のほうを見た。
姫月,な、何……?
誠,なぁ、姫月。お前、ヌードモデルをやってやれば
姫月,…………は?
今……兄貴、なんて……?
頭の中で、さっきの言葉を思い出してみる。
ぬーど……もでる……?
ヌード……モデル……。
ヌードモデルっ!?
姫月,はあああぁぁぁぁっ!!!???
姫月,なんで私がそんなことしなくちゃいけないのよ!!
誠,だって、お前スケートやってるんだし、こうやって見られるの慣れてるだろ? これもトレーニングの一環だよ
ほんの一瞬、兄貴の顔に笑顔が浮かんだ。
私を調教するときに見せる、あの笑顔。
姫月,……っつ
誠,美術の授業に集中出來るし、姫月のスケートのトレーニングにもなる。一石二鳥だと思うんだけど
兄貴が全員の意志を確認するように、周りを見回しながら言う。
男子生徒A,お、俺は別に反対じゃないけど
男子生徒B,俺も……
男子たちはだらしない顔をしながら賛成する。
雪名,姫月ちゃんのためになるなら
貓屋敷,うん、私たちも賛成かな
男子に続いて、雪名さんと貓屋敷さんも兄貴の意見に賛成する。
こんなの、ぜっっっっっったいにおかしい。
そう思っても、なぜか私のことをアイドルのように見る彼女たちは、『私のため』と言われればどんなにおかしくても首を縦に振ってしまう。
こうなれば、女子の意見は決まったようなもの。
彼女たちはクラスの中心にいる子で、彼女たちが『YES』と言えば、他の子の答えも『YES』一択。
もうそこには、「NO」と言う人はいないのだ。
誠,姫月
姫月,う、く……っ
男子になんか、裸を見せたくない。
でも……。
でも、兄貴の言葉は……斷れない……。
姫月,わか、った……
姫月,でっ、でもっ、裸とか無理だから……その、布とかで體を隠したい、んだけど……
誠,わかってるよ。一生徒に、そこまでさせるわけにはいかないからな
兄貴が穏やかな表情で言いながら、私の肩に手を置いた。
誠,……でも、肌を隠しすぎるのはなしだぞ
もしかしたら聞き逃してしまうんじゃないかと思うほどの小さな聲で、兄貴が囁いた。
姫月,……っつ
意地悪な言葉にキッと睨みつけるが、兄貴は笑顔を崩さない。
姫月,わか、った……
私は視線を落とし、そう答えた。
私がシーツのような長い布地で大事な部分を隠しながら美術室に戻ってくると、空気が一変するのがわかった。
姫月,(みんな……私のこと見てる……)
男子も、女子も……兄貴も……みんなが、私のことを見ている。
フィギュアスケートの時とは全く違う視線が、體中に絡みついてくる感じがする。
誠,ほら、姫月
まるで私を急かすように、兄貴がテーブルに目をやる。
姫月,わ、分かってる、わよ……
私は大事な部分が見えないように、ゆっくりとテーブルの上に移動する。
誠,それじゃ、みんなは好きな場所に移動して
そんな兄貴の言葉に、クラスメイトが思い思いの場所へと席を移す。
正面、斜め、後ろと、私は囲まれてしまう。
姫月,(あ……後ろ、隠せてない……)
胸とあそこを手で押さえてる分、後ろは無防備だ。
背中やお尻は、全て見えてしまってる。
姫月,……っつ
姫月,(見られ、てる……。絶対、お尻とか舐めまわすように見られちゃってる……)
あそこを押さえてる手を後ろに回そうと思っても、もし布がめくれてしまったら……と思うと、手が動かなくなる。
ぎゅっと強く私の體を隠す布地を強く握る。
姫月,早、く……いつまでも、見て、たら……授業に、ならない、じゃん……っ
恥ずかしさで口が上手く回らず、途切れ途切れにしか言葉を紡げない。
それでも私は何とか最後まで言葉にし、密集する視線を少しでも軽くしようと試みる。
誠,じゃあ、みんな好きな風に描いて
兄貴の一言に、全く動かなかったみんなの手が、まるで魔法から解けたかのように動き始めた。
靜寂だった室內に、鉛筆がスケッチブックを擦る音が重なりだす。
姫月,(は、ぁっ……)
ほんの少しだけ心が軽くなり、強張っていた體が動くようになった。
姫月,(兄貴ぃ……)
兄貴を捜そうと顔を動かすと、目の前の女子――榊原さんと目があった。
姫月,あ、う……あっ
気まずさと恥ずかしさから私と彼女は同時に目をそらした。
だけど、そらした先には男子がいて……今度は彼――松永くんと目があった。
姫月,っつ……あっ
今度は反対方向に目をそらす。
でも、そこにもクラスメイトの目があり……ばっちり視線がぶつかってしまう。
姫月,(やだ……見られてる……私、見られちゃってるよぉ……)
再び、見られてるという意識が強くなる。
全身に視線を感じるくらい、感覚が敏感になっていく。
研ぎ澄まされた感覚が、鉛筆の音の他に誰かの息づかいまで拾ってしまう。
姫月,(……っつ)
興奮してるような、淺い息づかいが私の耳に否応なしに屆いてくる。
一人だけじゃない。二人、三人……ううん、男子全員が私を見て興奮している。
男子生徒A,んくっ……
姫月,(……っつ!)
生唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえ、肩が震えそうになる。
姫月,(駄目……考えちゃ駄目だよ、姫月……これは、『ただの』授業なんだから……)
少しでも気を紛らわすため、內心で自分に言い聞かせる。
姫月,(そうだ……顔が見えるから、意識しちゃうんだ……)
姫月,あ……
みんなの顔を見ないように視線を下におとすと、男子の大きく膨らんだ「ソコ」が目に飛び込んできた。
とっさに目をそらすと、そらした先の男子のソコもまた、大きく膨らんでいた。
姫月,(みんな……私の裸を見て、大きくなっちゃったの……?)
姫月,(やだ……駄目、駄目なんだから……これは、授業なんだから
……)
姫月,(別に……え、エッチなことじゃ、ない……んだか、ら……)
男子全員に、女の子として……性的な対象として見られてる。そう思うと、いつもの私と違う、弱い自分が出てくる。
どんどん大きくなっていく不安感をとどめたくて、胸をきゅっと押さえる。
姫月,(え……)
布地が胸に擦れた瞬間、私は自分に起きた変化に気付いた。
姫月,(え……? え? 何で……?)
姫月,(何で……乳首、勃っちゃってるの……?)
私は訳が分からなかった。
男の子なんかに、性的な対象で見られたくない。
私は、ただ一人だけに求められたいのに……。
それなのに、私の乳首は勃っていた。
姫月,(……っつ!!!)
誰にも知られたくない。見られたくない。そう意識が働いた瞬間、私はより強く布地を押さえつけ、胸を隠す。
姫月,(誰も、気付いて……ない……よ、ね……?)
確かめたくても、怖くて目は見られない。
私は意識を耳に集中し、クラスメイトの反応を窺う。
雪名,姫月ちゃんの肌、すごく綺麗だよね
貓屋敷,うん。色白だし、細いし……ますます憧れちゃう
雪名,太腿も、足首も細くて……モデルみたい
姫月,(あ、あぁ……女の子にも、ジロジロ見られちゃってる……)
男子だけじゃなく女子にも見られてる。そう思うと、恥ずかしさがより大きくなるのか、體が熱くなる。
心臓も爆発しそうなほど大きく跳ね、周りに音が聞こえるんじゃないかと不安になる。
それでも私は、誰にも乳首が勃ってることを知られてないか確かめたくて、また耳を澄ました。
男子生徒A,一之瀬さん、可愛すぎるわ。俺、頬ずりしてぇ
男子生徒B,あの、小さくて丸いお尻が最高すぎる。俺、このポジションにしてよかった
男子生徒A,あぁー、でもやっぱり胸が見たいわ
男子生徒B,一之瀬さん、おっぱい結構デカいしな
姫月,……っつ
姫月,(見ちゃ……駄目ぇ……)
背後からの男子の聲に、まるで視線でがんじがらめにされたように體が動かなくなる。
姫月,(あに、きぃ……)
弱々しい私の呼びかけが聞こえたかのようなタイミングで、後ろから兄貴の聲が屆いた。
誠,へぇ、よく描けてるね
誠,僕は美術のことはよくわからないけど、この腰のラインとか綺麗に描けてると思うよ
姫月,(……っつ、あ、あぁ……)
兄貴の聲が耳に屆いた瞬間、背筋がぞくりとした。
誠,こっちは、お尻のラインが綺麗に描けてるね
姫月,(あっ、あっ……)
これは芸術だからエッチなことじゃないんだ。そう主張するかのように、兄貴の聲はいつもの聲と同じボリュームだ。
それはやっぱり恥ずかしくて……でも、どこか心地いい。
羽のように軽い見えない手が、兄貴の聲に合わせて私の體を撫でてる気がしてしまう。
誠,大嶺さんは絵が上手だね。こんなに綺麗だと、思わず見入っちゃうよ
姫月,(あっ、はっ……あぁぁ……)
兄貴が綺麗だと褒めてるのは私じゃなくて、クラスメイトの絵だ。
そうわかっているのに……どうしても、兄貴が私のことを綺麗だと褒めてくれてると、錯覚してしまう。
その度に私の心臓はドクンとひときわ大きく跳ね上がり、體が……下腹部が熱くなる。
誠,…………
ぐるりと回りながらクラスメイトの絵を見ていた兄貴は、私の正面まで來ると立ち止まった。
姫月,っつ
誠,…………
立ち止まった兄貴が、じっと私を見つめてくる。
まるで私の內面まで覗こうとするように、じっと……じっと……。
姫月,(……っつ、そんなに……見ちゃ、駄目ぇ……)
兄貴の視線を感じるたび、下腹部の熱はどんどん酷くなっていく。
誠,…………っ
姫月,あ……
兄貴の喉が、わずかに動いた。
私のことを見て、生唾を飲み込んだんだ。
姫月,(~~~っつ!!!)
下腹部の熱が一気に爆発し、全身に広がる。
火照った體は自分でもわかるほど肌が朱に染まり、じわりと汗が滲む。
そして……私の大事な部分からも、「汗」が滲みだしてきた。
姫月,(あっ、待ってっ! 駄目っ!!)
姫月,(こんなところで……人が見てるところで濡れちゃうなんて、駄目なんだから……っ!!)
そう思うのに、餘計に意識してしまうのか……どんどん濡れてきてしまう。
姫月,……っつ
とっさに布地を押さえつけ、溢れてきた愛液をぬぐい取る。
姫月,(駄目……だ、めぇ……)
何度そう思っても、狀況は変わらない。
膝頭を擦り合わせながら、私はより強く體を押さえつける。
誠,…………
私の反応を見て今の狀況に気付いたのか、兄貴は小さくほくそ笑んだ。
再び歩き始め、私の正面に座っている阪本さんの絵を覗き込む。
誠,あまり筆が進んでないみたいだね
女子生徒A,きゃっ!
背後から兄貴に聲をかけられた驚きで、阪本さんは筆記用具を落とした。
誠,あ、ごめんね。驚かせちゃった?
そう言いながら、兄貴が落ちた筆記用具を拾おうとしゃがみ込む。
次の瞬間、私の體を隠していた布地が引っ張られた。
姫月,え……
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
ふと視線を下げると、そこには私の胸があった。
その瞬間、兄貴が布地を引っ張ったのだとわかった。
姫月,きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!
胸を押さえてうずくまる。
誠,大丈夫か、姫月
何食わぬ顔をして、兄貴が剝ぎ取った布地を肩にかけてくれる。
そして私の耳元に顔が近づくと――
誠,もっとサービスしてやればいいのに
姫月,っつ!!
私が兄貴をキッと睨みつけるのと同時に、終業のチャイムが鳴った。
誠,きっと、家に帰ったら速攻でお前のことを思い出してオナるだろうな、男子全員が
チャイムの音で聲を隠すように、兄貴は楽しそうに言った。
姫月,う、うぅ……
一瞬、脳裏に自分の體中に白く粘ついた液體がかかってる姿が浮かんだ。
その映像を頭の中から追いやり、私は去っていく兄貴の背中を見つめた。
姫月,(兄貴……)
;0scene 9日目_夜
姫月,はあぁ~~~~……つっかれたーーー
何だか無駄に體力を消耗してしまった気がする。
姫月,(これもあれもそれもぜんっぶ兄貴のせいだ!!!)
機に頭を乗せながら、私はぷくりと頬を膨らませる。
貓屋敷,ひーめっきちゃん!
姫月,ひゃっ!!??
考え事をしている時にいきなり名前を呼ばれ、私は大げさなほどにびくりと體を揺らしてしまう。
貓屋敷,にゃ?? 驚かせちゃった??
姫月,あ、あはは。だ、大丈夫だよ。どうかしたの?
顔を上げると貓屋敷さんのくりくりとした大きな目がすぐ近くにあった。
貓屋敷,さっきは大変だったね~。ハプニング有りでビックリしちゃったぁ
雪名,私もびっくりしたけど、あれも特訓の一貫なんだったら仕方ないよね
二人の臺詞に私は苦笑いだ。
兄貴のあんな説明で、本當にこの二人は納得したのだろうか。
何か上手い言い訳はないかと、私はぐるぐる考え込んでしまう。
姫月,あ、あは。や、あれだよ! 何か私、プレッシャーに弱いみたいで、あぁいう恥ずかしいことをすれば度胸が付くかなって!!
貓屋敷,へぇ~そうなんだぁ。流石姫月ちゃんだね!
何が流石なんだろう、と一瞬思ってしまうが、上手く誤魔化せたならこれ幸いだ。
姫月,わ、っと……ちょっとごめん
斷りを入れてから、私はポケットの中でブルブルと震える攜帯電話を取り出した。
二つ折りの攜帯をパカリと開けメールを開くと、
『ごめん。インフルだった……。しばらく行けないので前言ってたところを練習しておいて下さい。 俊成
という至極短い文章が表示された。
姫月,(あちゃ……俊成さん、インフルエンザになっちゃったんだ……)
夏にインフルエンザにかかるなんて気の毒だなぁと思う。
姫月,(えぇと……、『大丈夫? 練習內容瞭解ー! ちゃんと休んでしっかり治してね! 姫月』)
姫月,送信……と
簡単にメールを作成して、私は攜帯をポケットの中に仕舞い込んだ。
雪名,……ねぇねぇ、姫月ちゃん。今のメールって、もしかして……
姫月,ん? スケートのコーチだよ
貓屋敷,スケートのコーチって、あのハーフっぽい顔の人??
姫月,あぁ、うん。でもハーフじゃなくてクォーターだったと思うけど……
貓屋敷,へぇ、そうなんだぁ。あの人超カッコイイよねー! ユッキーってば初めて見た時からずっとかっこいいかっこいい言っててうるさいんだよー
雪名,や、やだ! ねここ五月蠅い!!
姫月,あはは。そうなんだ。それじゃ、今度コーチが來たら紹介するよ
雪名,え? いいの?
姫月,勿論いいよ? 今はインフルエンザでダウンしちゃってるから、多分來週以降になっちゃうと思うけど
雪名,…………
姫月,……?
私の言葉に雪名さんが驚いた顔で黙り込んでしまった。
どうしたんだろう。私は何か変なことを言ってしまったのだろうか。
誠,姫月ー
姫月,え?
首を傾げて雪名さんを見ていると、兄貴がにこやかに聲をかけてきた。
……何だか嫌な予感がする。
姫月,な、何、よ……
誠,リンクに行くんだろう? ほら、さっさと行くぞ
姫月,や、あの……で、でも、うん、も、もう兄貴は見に來なくていいよ……!
昨日みたいなことをされたら練習どころではなくなってしまう。
自分から頼んでおきながら勝手ではあるのだけど、私は兄貴に斷りの言葉を告げる。
誠,はは。遠慮するなんて姫月らしくないぞ?
姫月,や! ホントに遠慮なんかしてないから! 結構だから!!!
誠,『結構、か……』。『優れていて欠點がないさま(byデジタル大辭泉)』だな。よし、それじゃぁ行くぞ
姫月,違う! 違うってば! 馬鹿ぁあ!!! そんな時だけ無駄な知識を披露するな!!
誠,ははは。姫月、そんなに大聲を出すと目立っちゃうぞ?
姫月,うぐぅ…………
このままでは埒があかない。
私は諦めて兄貴とともにスケート場へと向かうこととなった。
廊下に出たところでふと教室內に目をやると、雪名さんと貓屋敷さんが困った笑顔を浮かべながら手を振っているのが見えた。
姫月,……それで? 今日は來なくていいって言ったのに、何で來てるのよ!
誠,ほら、さっきも同じことをやっただろ? プレッシャーに打ち勝つための特訓だよ
姫月,さ、さっきも同じことって…………
誠,ヌードデッサンのことだ
にこりと笑って言う兄貴に、私の思考はぷっつりと停止してしまう。
姫月,やだやだやだ!!! 絶対無理!!!! 裸でスケートなんて本気で無理なんだから!!!!
誠,ははは。姫月は意外と想像力豊かだな。流石の俺も、裸でスケートしろなんて鬼畜なことは言わないよ
姫月,………………
ヌードデッサンをさせたくせに何を言うのだこの人は。
私は白々しく笑う兄に、じろりと冷たい目を向けた。
誠,ただ、いつもとは違う衣裝で滑ってみたらどうかなと思っただけだよ
姫月,…………いつもと、違う、衣裝……?
やっぱり何か嫌な予感がする。
兄貴がこんな笑い方をしている時は、ろくでもないことを考えているに決まっているのだ。
誠,ほら、これ。お前のために買ってきてやったんだぞ?
そう言って兄貴が渡してきた紙袋を覗くと、
姫月,??? ただのリボンじゃない。どこに衣裝が入ってるのよ
誠,だからそれが衣裝だ
姫月,………………は????
姫月,や、待って。本気で意味分かんない。これはリボンだよね? 誰がどう見たってリボン以外の何物でもないよね!!??
誠,そうだな。リボンだが、同時に衣裝にもなり得る優れものだ
姫月,ならないよ!!! なるはずないよ!! だってリボンだよ!!!???
誠,いや、エロゲのパッケージにもよくあるじゃないか。大切な部分を見事に隠してリボンを巻きつけている構図は絵描きなら誰でも一度は描いたことがあるはずだ!
姫月,兄貴はいつから絵描きになったのよ!! それにそんなパッケージ知らないし!! どうやってこんなので衣裝を作るのよ!!!
誠,うん、頑張れ
姫月,………………
駄目だ。この人は駄目だ。日本語が通じない。
多分これは絶対著ろってことなんだ。
いや、著ろという言葉はおかしいよね。何? リボンを身に著けるということに対しての動詞って何??
そもそもリボンを著るって何なのよ!!
誠,それじゃ、後は任せたぞ。俺は先にリンクのほうに行ってるから
姫月,………………
爽やかな笑顔を浮かべて兄貴が立ち去り、一人殘された私は呆然としてしまう。
今までも散々無理難題を吹っ掛けられてきたけれど、これは酷い。
だってどうすればいいのか分からない。ただひたすら長いリボンを、どうやって服にすればいいのだろう。
パニックに陥るが、私は何とか身に付けることが出來る形にしようと実験を始めた。
姫月,………………
何とか形にはなった。なったけれど、果たしてこれで正解なのだろうか。
するすると滑るリボンは思いの他使い難くて、私は結局極端に布地の少ない水著のような形の服(?)にしか出來なかった。
姫月,(ほ、ホントにこんな格好で滑らなきゃいけないの……!!??)
ギリギリで大切な所は隠せているけど、激しく動いたらリボンが外れてしまいそうなのだ。
姫月,(うぅう……きょ、今日も練習を見に來てる人いるよね……)
その光景を想像すると體が震えてくる。
こんな露出の高い格好で練習する私を見て、みんなどう思うだろう。
足が重い。スケート靴を履いているから、という理由ではなく、心理的な意味合いで足が重いのだ。
更衣室を出て、私は兄貴の待つスケートリンクへと足を踏み入れた。
誠,はは。なかなか淒い格好になったな
姫月,うぐぅううう!!! あ、兄貴のせいじゃない!!! こ、これでも頑張ったんだからぁ!!!
誠,あぁ、露出度が高くて良い格好だと思うぞ
姫月,そんなこと褒められても本気で全っ然嬉しくない!!!!
誠,まぁまぁ、いいじゃないか。ほら、みんなお前が練習するのを待ってるぞ?
姫月,うぅ…………
今までにも何度か練習がキツくて嫌になった時はあったけど、今日ほどリンクに立ちたくないと思ったことはない。
まるで地面に足が張り付いてしまったかのように動かなくなった私を、兄貴がぐいぐいと押していく。
男子生徒A,うっを。何あれ何アレ!! 今日の一之瀬さんの格好マジエロいんだけど!!!
男子生徒B,すげ! すげ!! 超エロエロじゃん!! てゆか下乳見えてるし!!!
男子生徒C,うはwww 既に鼻血出ちまったwwwww
男子生徒A,ちょっwww おまwww
女子生徒A,え、ちょっとあの格好はいくら何でも……
女子生徒B,ありえなくない……??
女子生徒C,あ、でも今はプレッシャーに打ち勝つためにわざと恥ずかしい格好してるんだって話してるの聞いたよ
女子生徒A,そうなの? それじゃ、あれも特訓なんだ……
女子生徒B,へ~。淒いね。やっぱり姫月ちゃんクラスになると色々な特訓しなきゃ駄目なんだねぇ
しんと靜まり返ったスケートリンクは思いの他話し聲がよく響く。
男子たちは私のいやらしい格好に喜び、女の子たちは私のことを信じて良いように解釈してくれている。
姫月,(うぅう……でもやっぱり恥ずかしい……!)
何せ體の表面の1割程度しか布地がないのだ。
しかも男子たちは、透視でも始めるのかというくらいにじっと私の體を見つめてくる。
リボンに浮き出る乳首の輪郭、はみ出した胸、そして割れ目すら隠せていないむき出しのお尻。
それら全てに一斉に視線が集中して、私の體は火照ってきてしまう。
姫月,はぁ、はっ、はっ……は……
まだ演技を始めていないというのに、既に息が上がってしまっている。
こんな狀態で、果たしてまともに演技なんて出來るのだろうか。
私は緊張した筋肉をほぐそうと軽く銀盤の上を滑ると、リボンがひらひらと風に乗りなびく。
姫月,(恥ずかしい。恥ずかしい……。だけどここで恥ずかしがってたら変に思われちゃう……。毅然としないと駄目……!)
いつもと同じ幻想即興曲が流れ始める。
露出は多いけれど、昨日とは違って大切なところは全て隠せている。
だから私さえしっかりとしていれば、これはただの水著なのだと思えば、大丈夫。
そう思って、トリプルアクセル、トリプルトーループのコンビネーションジャンプを飛ぼうとするけれど、やはり上手くいかない。
男子生徒A,一之瀬さん、今日も調子悪いんだなぁ
男子生徒B,そりゃ、あんな格好して滑ってたら調子も上がらないって
男子生徒C,でも逆にあの格好で良い滑りが出來たら、大會だって餘裕じゃね??
姫月,っく……はぁ、はっ……
姫月,(見ないでよ……。みんなここから出て行ってよ……!! こんな格好して滑ってるなんて……)
兄貴の視線が私の體に注がれて、體がリボンと同じ真っ赤な色に染まっていく。
みんなが私の體を嘗め回すように見てる。
姫月,(駄目、駄目……集中出來るわけない!)
お晝にヌードモデルをした時に、男子たちのあそこが膨らんでいた。
きっと今も、みんな私をそういういやらしい目で見てるんだ。
姫月,っつ……っく……!
姫月,(どうしよう、私の體、おかしくなっちゃったのかな……)
姫月,(體、熱い……みんなの視線が私に集まってる……兄貴が見てる……)
気にしないようにしようとすればするほど體が熱くなっていく。
姫月,はぁ、はっ……は……
姫月,(早く終わって……あと少し……あと少し我慢すれば……)
私は懸命に踴り続ける。
周囲の視線から少しでも意識を反らせようと。
曲の終盤にあるドーナツスピン。
左足を後ろから頭に付けて、くるくると回るため胸を思い切り反らす形になる。
姫月,(やだ……こんな風に胸を反らしたら、乳首の形が分かっちゃうよ……!)
リボン1枚しか身に付けていない胸は、その形も大きさも丸見えなのだ。
姫月,(やだ……やだ……、こんなことして、本當に兄貴は楽しい
の……??)
ふと浮かぶ疑問に、私はリンクの外にいる兄貴のほうへ目を遣る。
慌てふためいている私を見て、兄貴はにこやかな笑顔を浮かべていた。
その顔は楽しげに歪んでいて、私は背中にぞくりと電流が走る。
姫月,(兄貴が、いやらしいゲームをしている時と同じ顔で、私を見てる……)
姫月,(私のことをじっと、見てるんだ……)
何とも言えない喜びが全身を駆け巡ると同時に、音楽が鳴り終わった。
ドキドキと胸が高鳴ってる。
決して満足のいく演技ではなかったのに、この高揚感は一體どこからやってくるものなのか。
私には分からなかった。
;0scene 10日目.朝
誠,ふわぁ~ぁ……
今日も昨日と同じように、姫月と並んで學園へと向かう。
その途中、遅くまでエロゲをやってた俺は、大きなあくびを漏らした。
姫月,ちょっと、恥ずかしいからあくびとかしないでよっ! 私までだらしない人間だと思われるでしょっ!
誠,へいへい、悪かったよ……
姫月の悪態を右から左へと流す。
今日は昨日より暖かく、簡単に眠気が取れそうにない。
むしろ、餘計に眠気が大きくなりそうだ。
姫月,……そんなに眠いの?
誠,んー、まーな……
姫月,じゃあ、私がとびっきりの眠気覚ましをしてあげよっか?
誠,効くのか、それ?
姫月,ばっちり
授業中に居眠りするのもマズいし、ここは頼んでみるか。
誠,よし、じゃあ頼む
姫月,任せて
そう言うと、なぜか姫月は腕をぐるぐると回し始めた。
誠,……ちょっと待て
姫月,ん? 何?
誠,一回、確認させてくれ。お前の言う、『とびっきりの眠気覚まし』ってなんだ?
姫月,え? ただのビンタだけど?
びんた……?
あの何度か食らった、鼻の奧がつんとするやつ……?
誠,いやいやいや、なんでそうなる!!
姫月,え? だって思いっきりビンタされたら眠気も吹っ飛ぶでしょ?
どんだけスパルタなんだよ、お前は……。
誠,やっぱ遠慮しとく
姫月,え? なんで?
誠,ビンタされたくないからに決まってるだろっ!!
姫月,えっ? 兄貴、ビンタされるの好きじゃないの?
誠,んなわけあるかーっ!!!
姫月,でも、アブノーマルの人ってそういうの好きなんでしょ?
誠,そういう奴もいるけど、俺は好きじゃないから
これだから知識がない奴は……。
アブノーマルな趣味にも色々あって、全員が全ての嗜好を持ってるとは限らない。
俺は『露出』とか『調教』とかは大好物だが、『SM』には全く興味がない。
誠,俺が、そんな叩かれるのが好きなような男に見えるか?
姫月,うん
誠,即答かよ!!
姫月,だって、兄貴って変態じゃん!
誠,はぁ……
もう頭が痛い。
何なんだ、朝っぱらからこのアホなやりとりは……。
でも幸か不幸か、眠気は消え去った。
俺が嘆息してぐったりしていると、隣から軽快な音楽が流れてきた。
姫月,あ、ほのかからメールだ
昨日の朝と、全く同じ言葉。
それを聞いた瞬間、軽かった気持ちが一気に重くなる。
姫月,……ほのか、まだ風邪が治らないから、今日も休むって
誠,……本當に風邪なのか
波風が立つとわかっていても、俺は昨日同じことを口にしていた。
姫月,はぁ? 兄貴、ほのかの言葉を疑うの?
誠,絶対に噓だとは言わないけど、鵜呑みには出來ない
姫月,何それ、最低。そんなに疑ってばかりだと女の子に嫌われるよ
姫月,あ、兄貴には彼女いないから、別に関係ないか
誠,っつ! お前なぁ、ほのかちゃんはいじめられてるんだぞ!!
姫月,そんなこと――っつ!
勢いよく食いかかろうとした姫月は、なぜか途中で唇を噛んでそっぽを向いた。
姫月,たとえそうだとしても……それは、ほのかが乗り越えなきゃいけない問題じゃん
誠,何だよ、それ……
お前、友達がいじめられてるってわかっても、手を差し伸べないのかよ……。
姫月,ほのかなら、絶対出來るのに……
俺から目をそらしたまま、姫月がポツリと言う。
誠,みんながみんな、お前みたいに強いと思うなよ
姫月,別に、私は強くないし……
姫月,私なんかより、ほのかのほうがずっと強いんだから……
姫月の話し方は弱弱しいものだったが、その言葉には力強さを感じた。
何があっても、ほのかを信じてる。そんな強い絆のようなものが見えた。
雪名,あ、姫月ちゃん、先生、おはよー
學園までやってくると、反対側からやってきた雪名が聲をかけてきた。
姫月,おはよう
誠,おはよう
今までと何も変わらない、普通の朝。
貓屋敷,姫月ちゃん、數學の宿題ってやってきた?
姫月,うん、やってきたよ
貓屋敷,あ、じゃあ見せてもらっていいかな?
姫月,もちろん
姫月にヌードモデルをやらせても、エロい衣裝でスケートをやらせても……姫月に対する信頼は変わらない。
何をしようと、姫月ならば許される。蔑んだ目で見られることはない。
劣等生だった俺とは大違いだ。
誠,…………
別に、姫月が悪い訳じゃない。
それはわかっているのに……胸の中がざわつく。
(今日は、姫月に何をしてやろうか……)
そんなことを考えると、荒んだ心が少しだけ落ち著いた。
;0scene 10日目_Bad√_夜
誠,……さて
授業の終わりを告げる鐘の音が鳴り、俺は椅子から腰を上げる。
今までの溫い調教では、周りの人間の姫月に対する認識を変えさせることなど出來なかったのだ。
(それなら……)
(調教のレベルをもっと上げるしかないだろう……?)
小原,はい、それではホームルームは終わりだ。みんな気をつけて帰るようにー
耳障りな聲で狸がそう言うと、教室內は一気に騒がしくなった。
色々なところで、今日はこれからどうするか等の會話が聞こえてくる。
小原,さて、それじゃぁ私は戻るよ
誠,はい、分かりました。僕は少し姫月に話があるので
小原,おぉ。そうかそうか。分かったよ、一之瀬先生。それじゃ、お疲れさま
誠,はい、お疲れ様でした
でっぷりとした體を揺らしながら狸が去っていくのを見送り、再度教室內へと視線を戻した。
誠,熊井君、清水君、田中君、阪本さん。それと姫月。ちょっと前に來てもらえるかな?
清水,え~~。俺らもう帰るのにー
俺の言葉に、既に帰り支度を始めていた少年から不満の聲が上がる。
誠,はは、ごめんね。少しだけだから
そう言うと、「仕方ないなぁ」といった風に、名前を呼ばれた生徒たちが俺の近くにやってくる。
勿論姫月も同様に、だ。
姫月,………………用があるなら早くしてくれない? 私、部活があるんだけど
誠,あぁ、分かってるさ
俺の行動に不信感を持っているのか、姫月が訝しげな目で睨んでくる。
相変わらず可愛くない奴だ。
誠,キミたち昨日の美術の時間、きちんとモチーフを描ききれてなかっただろう? だからこれから、美術室で昨日の続きをしてもらいたいんだ
姫月,!!??
熊井,え? そ、それって、じゃぁもう一回一之瀬さんのヌードが見れるってこと!??
田中,ばか! 熊井! ヌードが見れるんじゃなくて、ヌードデッサンをしなきゃだろ!??
清水,へへ……そういうことなら殘って美術の勉強しようかなぁ
先程までぶーぶーと不平を口にしていた彼らは、俺の言葉を聞いた途端に手のひらを返す。
唯一の女の子である阪本はオロオロと周りを見渡すだけだ。
姫月,や、やだよ! 勝手なこと言わないで! 授業でもないのに、何で私がそんなことしなきゃいけないのよ!!
誠,これも授業の延長だよ。みんながきちんと作品を提出できないと意味がないだろう? お前が協力出來ないなら他の女の子にモデルを頼むか?
姫月の言葉に俺はこそりと耳打ちをして、ちらりと阪本に視線を這わせた。
阪本,…………?
姫月,だ、駄目に決まってるでしょ、そんなこと!!!
俺の思惑に気付いた姫月が、さっと阪本の前に立ちギッと強い視線を向けてくる。
誠,うん、そうだな。それは出來ない。だけど彼らはまだ昨日の課題を提出出來てない。さて、どうする?
姫月,っつ……。わ、私がやれば、いいんでしょ
誠,はは、姫月は物分りが良くて本當に助かるよ。それじゃ、みんなで美術室に移動しようか
美術の田所教諭は昨日に引き続き風邪で休みだ。
俺は教室の鍵を閉め、俺たち以外の人間が入れないようにする。
誠,ほら、姫月。脫げよ
姫月,っつ……
俺がそう言うと、姫月はシーツで上手く體を隠しながら制服を脫いでいく。
しゅるしゅると衣擦れの音がすると、ぱさりと乾いた音を立ててピンク色の制服がリノリウムの床へと落ちた。
4人の生徒が見ている中、姫月が昨日と同じように機の上へとのぼる。
姫月は居心地悪そうに眉をしかめ、口を真橫に結んでしまっていて、美少女と言われる顔が臺無しだ。
誠,さ、皆。昨日の続きを描いて
俺の言葉とともに、紙の上を滑る鉛筆の音が靜かに聞こえてきた。
同性である阪本は恥ずかしさと気まずさのためかすっかり俯いてしまっている。
誠,ふむ……だけど昨日と全く同じではみんなやる気がないよなぁ
姫月,……っ?
ニヤリと笑って言うと、姫月が顔を強張らせて俺のほうを見る。
誠,そうだ、その布はもういらないんじゃないか?
姫月,!!!??
誠,ほら、昨日だって最後にちょっとだけ布を外したんだし、そんなに勿體ぶるものでもないだろ?
姫月,ばっ!!! そ、そんなこと出來るわけないでしょう!!!?? 何考えてるのよ!!
誠,ん? だって本來ヌードデッサンは骨格や筋肉.肉の付き方を描寫するものだろう? そんな布で隠してたら全くわからないじゃないか
誠,なぁ、みんなだってそう思うだろう? 姫月の完璧なヌードデッサンをしたくない?
清水,あ、お、俺、してみたいかな~
熊井,お、俺も。前からヌードデッサンしてみたいって思ってたし
誠,ほら、みんなこう言ってる。何事も完璧にこなす姫月様が、こんなことも出來ないなんて言わないよな?
姫月,そ、そんな、こと……
小さく頭を振り、姫月は苦しそうな様子で胸元のシーツをぎゅっと握りしめる。
そんな姫月の近くまで歩み寄り、俺はそっと耳元で言葉を紡いだ。
誠,裸を曬すことなんて今まで何回もあっただろう? 今更恥ずかしがっても意味ないじゃないか
姫月,っつ……!!!! で、でも! 今までは!!!
誠,ほら、いいからさっさとシーツを外せ
姫月の反論の言葉に耳を貸さず、俺は軽くシーツを引っ張った。
姫月,っく……っつ……
姫月は目に涙を溜め、ブルブルと震えながらシーツを持つ手を徐々に下げていく。
じわじわと蛍光燈の元に曬されていく白皙の肌。
その様子を見ている少年たちの喉がごくりと生々しい音を立てた。
姫月,っふ…………
はらりと布が落ち、ピンク色の突起が現れる。
清水,すげ……一之瀬さんの乳首、ピンクだ……
姫月,やっ…………!!
男子生徒の言葉に、姫月は顔を真っ赤にさせて視線を反らしてしまう。
誠,ほら、姫月。ちゃんと下半身も描いてもらわないといけないだろう?
姫月,っつ…………はぁ……
緊張のためか羞恥のためか、姫月の肌は淡く色付いていく。
姫月,っん…………
全員が固唾を飲んで見守る中、姫月の體を人目から守っていた白い布がぱさりと落ちた。
首輪以外何も付けていない、まっさらな體が俺たちの前に現れる。
生徒たちは言葉を発することも忘れて、そのなだらかな曲線を描く白い體をじっと見つめていた。
阪本,ひ、姫月ちゃん……
唯一の女子生徒の阪本だけが、他の生徒たちとは違う「信じられない」といった驚愕の色を乗せた瞳で姫月を見つめる。
田中,い、一之瀬さんって下の毛全然生えてないんだ……
熊井,お、おっぱいも、大きいし柔らかそうだし……ごく。すげぇ……
姫月,っつ……っふ……
男子生徒たちの言葉に姫月が肩を震わせ、足をもぞりと動かした。
誠,ん? どうした? 姫月、感じたのか?
姫月,っつ……っつ……!!!
姫月にだけ聞こえるくらいの聲音で言うと、姫月はただ無言で頭を振るだけだ。
誠,駄目だろう? ちゃんと――――って言わないと
姫月,やっ!! そ、そんなの、言えない……!
誠,それじゃぁ調教はここまでにするか? やめてもいいぞ? そうすれば、俺はもう一切手出ししない
姫月,っつ……!!!!!
俺のその一言に、姫月は傷付いたように眉を寄せるが、やがて諦めたように小さく頷いた。
誠,みんな、姫月が皆に聞いてほしいことがあるらしいから聞いてくれるかな?
姫月,………………
誠,姫月、ほら
生徒たちみんなが姫月に注目する。
姫月,う……あ、あぅ……わ、私……ひ、人に見てもらうのが、だ、大好き……だか、ら……
姫月,わ、私の……お、おっぱいと……お、おま○こも、ちゃ、ちゃんと……沢山、見て、デッサン……して下さい……
姫月の卑猥な臺詞に、生徒たちがざわりと色めき立つ。
阪本に至っては嫌悪感をあらわにした表情で姫月を見ている。
清水,い、一之瀬さんがおま○こって言った!!!
熊井,おっぱいとおま○こ沢山見てって言った!!!!
田中,裸見られるの大好きなんだ!!
姫月,ち、違う! 私……!!
阪本,………………
顔を赤らめながら沸き立つ男子生徒とは正反対に、阪本の顔はどんどんと歪んでいく。
阪本,わ、私、無理
誠,ん?
阪本,露出狂とか気持ち悪くてホント無理。私、帰る……!!
誠,そっか。阪本さん帰っちゃうんだ。姫月は見てほしくない?
姫月,っつ……、うぅ……お、お願い……さ、阪本さ……わ、私の……裸、見て……
姫月が機の上から身を乗り出し、阪本のほうに手を伸ばす。
阪本,やだ!!! 觸んないで気持ち悪い!!!
姫月,っつ…………
手を叩かれるなど、恐らく今まで経験したことがないのだろう。
姫月は目を大きく見開いたまま、茫然としている。
阪本,……ご、ごめん……や、やっぱり、帰る……
姫月,…………
そう言って走りさった阪本に姫月は悲しそうに目を伏せたが、しばらくすると元の位置に戻り先程と同じポーズを取り始めた。
清水,へへ、い、一之瀬さん。お、俺たちはちゃんと見ててあげるからね!
姫月,………………
男子生徒たちの囃し立てる聲にも姫月は無反応のままだ。
流石に女子から侮蔑の言葉を受けたことにショックを隠しきれないのだろうか。
姫月,…………
誠,………………
ちらりと姫月が俺のほうに目を向けるが、その目は何かを訴えているかのように見えて、俺は思わず目を反らしてしまった。
そんな俺を見て、姫月は男子生徒たちのほうへと視線を戻す。
そして、それから1時間ほど姫月によるヌードデッサンショーは続けられた。
俺は悪くない。
お前が俺を馬鹿にするのが悪いんだ。
お前が親友であるほのかに対して、救いの手を差し伸べないことが悪いんだ。
お前が俺の妹であるのが悪いんだ。
お前が俺に『調教して』などと頼むのが悪いんだ。
お前が。お前が。お前が。お前が。お前が。お前が。お前が。お前が。
――――俺は、悪くないんだ。
;0scene 11日目_Bad√_朝
……気が重い。
學園に行くのが嫌なんて初めてのことだ。
落ち著こうと思うたびに、昨日阪本さんに言われたことが頭の中で繰り返し再生される。
阪本,やだ!!! 觸んないで気持ち悪い!!!
姫月,(きっと、今日學園に行ったらみんなに広まってるんだろう
な……)
異常な物を見る目をしてた。
私のことを、觸るのも汚らしいという目で見ていた。
今までも兄貴以外の人に觸れられたり見られたりすることはあったけど……。
姫月,(全く知らない赤の他人に見られるよりも、普段の私の姿を知っている人たちに見られることのほうが、ずっと何倍も嫌だよ……)
だけど拒むことは出來ない。
兄貴の命令には従わなければいけない。
姫月,(だって、そうしないと……)
そこまで考えたところで、私ははぁと深く溜め息を吐く。
どんなことになっても私は受け入れなければならない。
覚悟を決め、私は重い足を引きずるようにして學園に向かった。
扉を開けると、がらりと無機質な音が響き、クラス中の視線が私のほうへと突き刺さる。
普段なら気にしないその無遠慮な視線に、私は思わず眉をひそめてしまう。
怖い。クラスのみんなの目が私を責めているように感じ、すくむ足を叱吒して室內へと歩を進めた。
ガヤガヤと談笑している聲は、きっと全て私に対する侮蔑の聲なんだ。
そう思うと泣きそうになる。
雪名,姫月ちゃん、おっはよー
姫月,え……?
貓屋敷,おはよーにゃーん
普段と変わらない明るい聲で雪名さんと貓屋敷さんが聲をかけてくる。
予想外のことで、私は目を白黒させながら彼女らを見るが、特に変化があるようには見えない。
彼女たちも周りのみんなも、いつも通りの日常のように感じる。
貓屋敷,? 姫月ちゃん?? どしたのー??
姫月,え、あ……、ご、ごめん。何でもないよ。……おはよう、雪名さん、貓屋敷さん
私が挨拶をすると、二人が嬉しそうに笑う。
彼女たちも、他のクラスメイトももしかすると昨日のことを知らないのだろうか?
姫月,(阪本さん、黙っていてくれたんだ……)
私はそう思いチラリと阪本さんのほうを盜み見ると、丁度彼女も私を見ていて、ばちりと視線が合うがすぐに反らされてしまった。
少しだけ寂しくは思うのだが、あんな場面を見せられてしまっては仕方ないだろう。
私は心の中で阪本さんに「ありがとう」と呟いた。
誠,姫月!
ホームルームが終わり、1時間目の授業の準備をしていた私のところに、兄貴がやってきて名前を呼ぶ。
あまり良い予感はしないけれど、私は何でもないような顔をして教卓へと向かった。
姫月,……何?
誠,うん? 今日は女子と男子と別々の授業だろう? お前には特別に男子の授業のほうに參加してもらおうと思って
姫月,……兄貴、1限目擔當じゃないじゃない。それに、ただの教育実習生の兄貴に、そんなことを強制させられる権限はないと思うけど?
誠,そうだなぁ。ただの、じゃ無理だけど、理事長の孫である教育実習生が色々手を回せばそのくらい造作もないことだよ
誠,さて、姫月はどうする?
姫月,……どうせ、拒否権なんてないんでしょ?
誠,よく分かってるじゃないか。それじゃ、気分が悪いとか何とか言って、女子の授業に出ないことを友達に伝えてこいよ
姫月,………分かった
兄貴の言葉に小さく頷いて、私は踵を返す。
何故だろう。昨日から何だか兄貴の雰囲気が変わった気がする。
以前から調教をする時は確かにサディスティックな部分もあったけれど、すごく楽しそうに見えた。
でも今は、その笑顔がひたすら冷たく感じる……。
一度保健室の方向に向かい、私は再度教室のほうへと戻ってきた。
聞き耳を立てると中では兄貴と男子生徒たちの聲が聞こえる。
誠,えーっと、今日は體育の高橋先生がお休みなので、代わりに僕が自習の監督をすることになりました
男子生徒A,じゃぁ先生ー! 體育の時間なんだから外でサッカーしようよ!
誠,うーん。殘念ながら、僕は運動はからっきし駄目なんだ
男子生徒B,えー。でも自習とかつまんねーし
男子生徒A,そうそう。青少年はよく食べよく運動するのが仕事なんだよー!!
誠,よく學ぶこともキミたちの重要な仕事だよ。それに、今日の勉強はキミたちにとってスポーツなんかよりずっと楽しいことだと思うよ
男子生徒A,?? どういうこと??
誠,ほら、廊下にいるんだろう? 入っておいで
そう聲を掛けられて、私は一度深く深呼吸してから教室の扉に手をかけた。
姫月,…………
男子生徒A,え? 一之瀬さん?? 今日は女子が體育館で授業の日だよな??
男子生徒B,何でここにいるんだろ??
クラスの男子生徒たちの、疑問と困惑に満ちた視線が私に突き刺さる。
ざわざわと大きく教室內がどよめいた。
誠,姫月にはこれから授業を手伝ってもらうんだ。興味がある人は前のほうに來るといいよ
狀況についていけないのか、クラスメイトたちは兄貴の言葉にも動こうとはしない。
ただ自分がどうすればいいのか分からず、きょろきょろと周りの人間の動きを窺っているだけだ。
田中,お、俺! 前に行きたい!!
そう言って手を挙げ教卓の前を陣取ったのは、昨日のヌードデッサンの時にいた人間だ。
その聲を聞き、昨日美術室にいた殘りの二人の男の子たちが「自分も」と聲を上げた。
誠,うん、やっぱり積極性は大事だね。それじゃぁ姫月。教卓の上に乗ってくれるか?
姫月,…………
私は兄貴に言われ、ノロノロと時間をかけて教卓へと登る。
どうせこの後待っている展開は変わらない。
それでも気持ちが追いつかない私の體は、まるで全身に鉛でも入っているかのように重く感じた。
突然現れて、教卓の上に乗る私を見て、大半の生徒は口を開けて呆然としている。
姫月,………………
誠,はい、ありがとう。姫月
兄貴の笑顔に少しだけ気持ちが落ち著く。
だけどこれから行われるだろう行為を想像して、私の體はぶるりと震えた。
誠,それじゃ、準備も出來たから授業を始めようか
誠,これから性交渉をするにあたっての女性の喜ばせ方を教えたいと思います
兄貴の言葉に、生徒たちが一斉にざわめく。
誠,姫月。スカートをめくってみて
姫月,っつ………………
恐らくこういうことになるだろうと覚悟していた。
だけど、クラスの男子全員が見ている中でスカートをめくりあげなければいけない狀況に涙が滲んでくる。
姫月,(やだ、やだ……。私、今、パンツ履いてないのに……全部見られちゃうよ……)
誠,どうした? 早くスカートをめくるんだ。いつもしていることだろう?
姫月,っく…………!!
男子生徒A,うを!! え!! い、一之瀬さん!!!??
男子生徒B,てゆかパンツ履いてなくね!!?? え??? ノーパン!!??
震える手でスカートをめくり上げると、男子たちのざわめきは一際大きなものとなった。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
こんな恥ずべき行為を、學園の、しかも授業中に行っている自分が気持ち悪い。
誠,ほら、もっと大きく足を開かないと見えないじゃないか
姫月,っつ……っ……!!
その言葉にじわりじわりと足を左右に開いていくと、私のそこが生徒たちの眼前に曬された。
昨日のヌードデッサンの時には足を閉じていたため、そんな所まで見られることはなかったのだが、今は大きく足を開いているためしっかりと見られてしまう。
姫月,(嫌だ……。田中くんが私の中を見てる……。息がかかっちゃいそうなほど近くで見られてる)
姫月,(恥ずかしい! 嫌だ! 見ないで!! 誰も私を見ないで
よ……!!!)
泣きたくなんてないのに、あまりの恥ずかしさに私の目には涙が浮かんでくる。
顔が熱い。體が熱い。何かが這っているかのように背中がぞわぞわとしてしまう。
田中,すっげ……い、一之瀬さん……、おま○こ、すごい綺麗だ……
姫月,嫌っ!! 言わないでよそんなこと!!!
誠,はは、いいじゃないか。姫月。見せてあげるのも、言葉責めされるのも立派なプレイのひとつだ
誠,ほら、みんなが見ている前でちゃんと説明してあげろよ。女の子はどこが気持ちいいのか、男には分からないもんなぁ
姫月,っく……
誠,女の子がどこで気持ちよくなれるのかは、やっぱり女の子のオナニーを見るのが一番だよな?
にっこりと笑って言う兄貴に、クラス中から賛成、賛成、と聲が上がる。
クラスメイトたちから責め立てられるているような狀況に、私の體はすっかり萎縮してしまって動かない。
誠,あぁ、そうか。姫月は応援の聲がないと実力が発揮出來ない子なのかな
ぴたりと固まってしまった私を見て、兄貴は見當違いな考えに至り、男子生徒たちに向かって聲をかけた。
誠,さ、みんなで姫月を応援してあげようか
男子生徒A,いっちのせさんの~ちょっとイイトコ見ってみたい~
男子生徒,ほらオーナニッ、オーナニッ、オーナニッ
姫月,う、うぅ……
その異常な程の盛り上がりに、男子たち全員が私のオナニーする姿を熱望しているのを感じた。
私にはどうして皆がそんなものを見たがるのか分からない。
ただ気持ち悪いだけなのに。
誠,ほら、姫月は望まれたら応えてあげないと駄目だろう? 言葉で説明しながらやってみろよ
姫月,(恥ずかしい。こんなの恥ずかしいよ……。兄貴の命令じゃなきゃ、こんなこと絶対しないのに……!)
私はそう思いながら、恐る恐る自分のそこへと手を伸ばした。
姫月,っつ…………!!??
おずおずと皆が凝視している場所へと指を這わせると、ぬるりと滑る感觸。
姫月,(う、噓??? わ、私、どうして濡れてるの?? ま、まだ觸ってもいなかったのに……)
そこが既に濡れそぼっていることに、私はひどく衝撃を受けてしまう。
気持ちよくなんてない。感じてなんかない。なのにここは指がずるりと滑るほどに濡れているのだ。
男子生徒A,おお。すげ。一之瀬さんのま○こ、超ヌレヌレ
男子生徒B,え、これって見られて感じたってこと??
姫月,(違う違う違う!!! こんなの噓!! 私はそんな、人に見られて感じるような人間じゃない!!!)
誠,姫月、頭を振ってないで手を動かすんだ。口もちゃんと動かせ
姫月,っつ…………
違う違うと頭を振る私に、兄貴から[窘/たしな]める聲が飛んでくる。
その聲の冷たさに、私は涙が零れ落ちそうになるのを我慢して指を動かし始めた。
姫月,っふ…………、っひ、や……! あっ、んん!!!??
ソコから溢れ出た液體に濡れたクリトリスを、指でスライドするように擦り上げると、信じられないような快感が私の體を走り抜ける。
姫月,(な、何? どうして?? 何でこんなに…………)
姫月,っひゃ、あぅ……や、やぁ……んんっ、んっ、ふぁ……あ……
姫月,(やだ、やだ! き、気持ちよくなんてない!! こ、これは
命令されたから仕方なくやってて……。私がしたいわけじゃな
くて……!)
いつの間にか男子生徒たちのオナニーコールは止んでいて、みんな息をするのも忘れたように私のそこに注目している。
クラスメイトに見られながらオナニーするなんて異常な狀況なのに、クリトリスを弄る指の動きはどんどんと早くなっていく。
誠,こら、姫月。自分だけが気持ちよくなってないで、ちゃんとみんなに分かるように説明しないと駄目だろう?
姫月,ふぁ……! あ、あ……。こ、ここ……くぱって開いて、く、クリ、のトコ、くるくる……、指回したら、き、気持ちいい、よ……
誠,だ、そうなので、誰か実踐してみてあげればいいよ
姫月,っひ……や、やぁ、そんなの、やぁ……
男子生徒A,はいはい! 俺やってみたい!
男子生徒B,え、ずりぃ! 俺も觸ってみたい!!
兄貴の提案を聞いた男子たちが、我先にと手を伸ばしてくる。
姫月,っひ!!!! やっ! あっ、あっ!!! やぁああ!!!
指の腹で挾み込まれたり擦られたり、人が変わるたびに様々な手法で私のそこを責めてくる。
興奮した男子たちの手技は痛みを生み出すとともに、クリトリスから脳髄にかけて電流が走るような快感を生み出す。
男子生徒たちの手が私のそこを蠢くたびに、くちゅくちゅと嫌らしい音が耳について恥ずかしい。
男子生徒A,すげ……、一之瀬さんのま○こ、次から次に汁が溢れてきてる……
男子生徒B,一之瀬さん、俺たちにクリトリス觸られて気持ちいいんだ……??
姫月,やぁあ! き、気持ちよくなんて……!! ふぁ、あっ、あっ、
あっ、ん!!
男子生徒A,うう……。俺、もう駄目だ……一之瀬さんのおま○こ、舐めてみたい……!
姫月,ひぁああああ!! やっ! なっ!! 何してっ……離っ……!! ひゃぁっ! あっ、あっ!!!
じゅるりという気持ち悪い水音がして、下半身が溫かい何かに包まれた。
悲鳴を上げて見ると、一人の男子生徒が私のそこをぱくりと口全體で覆ってしまっていた。
クリトリスをべろべろと舌先で舐めたり突付かれたりすると、ぶるりと寒気のような震えが全身を駆け巡る。
姫月,っひ、ひぁ、あっ、あっ、やああぁああ
そこを舐められるのは初めての経験で、指とは違ううねるような感觸に目の前がチカチカしてしまう。
舐められる度に熱さと痺れが體の奧底から湧き上がり、それは私の全身へと広がっていく。
姫月,やだ!! やっ! やめっ……! そ、そこ、舐めちゃやら……!! やぁああーーー!!
どうすればいいのか分からない。
私のそこを、まるで犬のようにぺろぺろと舐める男子生徒の頭を摑んで止めさせようとするけど手に力が入らない。
止めたいと思っているのに、私はもっと舐めて、とばかりにその子の頭を押さえ込んでしまっていた。
姫月,や、やぁ……! やなのにぃ……!! く、クリ……な、舐めたら……ひゃぁん!! らめ、なのに……っ
そんな場所を舐めるだなんて信じられない。
男子生徒A,い、一之瀬さんのおま○こ、ちょっとおしっこの味がするけど、美味しいよ……
姫月,ひやあ……! も、やぁ、やっ、そこ、も、離してぇ……イ、イっちゃうの! そ、そんな風にされたらイっちゃうからぁあ
こんなクラスの男子全員が見ている中でイきたくなんてない。
そう思って逃げようとするけれど、私の體は他の男子たちの手でがっちりと押さえられてしまっていて逃げることが出來ない。
姫月,いやぁあ……、も、も、ら、らめ……い、イっちゃうよ……イきたく、ないよぉ……う、っふぇ……
自分の一番恥ずかしい姿を、クラスメイトたちに曬してしまう。
イきたくないと思っているのに、しつこいくらいに舐ってくる男子生徒の舌先が私を追い詰める。
頭の奧に靄がかかったかのように、全てが白く濁っていく。
姫月,や、や……、も、も……い、イっちゃう……イっちゃうよ……!! らめ、らめなの……!!
姫月,やぁ、や……らめ……ら、めぇええええええええええええええ!!!
じゅるりと大きな音を立てて吸われ、私はビクビクと小刻みに震えながら絶頂を迎えてしまった。
姫月,っは、はぁ、は……、はぁっ……っひ!!???
全身の筋肉の力が抜け、ぺたりと頭を教卓の上に乗せて息を整えようとしたところで、私は再度下半身に刺激を感じ喉を仰け反った。
姫月,やっ! やぁ! も、や……!! ま、待って、お、お願……!! な、舐めちゃ、やぁあ……
イったばかりのクリトリスに吸い付かれ、更に激しく舐められてしまい、私ははくはくと口を動かすことしか出來ない。
手にも指にも力が入らず、男子の行為を止められない。
姫月,やらっ! も、く、苦しいのっ……! そ、な……何回も、やぁあっ、あっ、あっ
絶頂を迎えたばかりのそこに刺激を與えられるのは苦しくて、やめてほしいと思うのに、しばらくするとまたふわふわと體が浮いてしまうかのような快感が芽生え始める。
姫月,ひっ、ひぅ、も、やぁ……く、クリ……も、やぁら、よぉ……
男子生徒B,それじゃぁこっちも??
私のクリトリスを舐めている男子生徒を器用に避けて、別の生徒が私の膣の中へと指を進めた。
姫月,ひぁっ、あっ、やーーー!!!!
成長途中の細い指のおかげで、この間兄貴に入れられた時より痛みは薄い。
だけど狹い體內を踏みにじるように動く指の圧迫感に、私は気持ちよさよりも恐怖を感じてしまう。
姫月,やら、やらぁあ……く、クリトリス、舐められるのも……お、おま○こにじゅぼじゅぼされるのも、も、やらってばぁあ……
男子生徒B,でも一之瀬さん、すっごい気持ち良さそうな顔してるよ。ほら、こっちもめっちゃぐちゅぐちゅ言ってるし
姫月,いやぁあ……う、動かさないでぇ……お、おま○こ、やなの……も、やぁ……
クリトリスをねちねちと舐められながら、別の男子の指が私の中を掻き回す。
違うリズムで責められる感覚が、恐ろしいほどの快感を私に植えつける。
姫月,や、嫌ぁあ……も、や、もぉ……やぁああああああああああああ!!
先程よりも強い、電流を流したかのような快感が體中を駆け回り私は達してしまった。
見開いた目からは涙が溢れて止まらない。
姫月,ひ……、ひぅ……う……ふ……
そして、気を失ってしまったのだった。
;scene 11日目_Bad√_晝
澱んだ暗い世界に光が差し込み、私はゆっくりと目を開けた。
白い天井に消毒液の匂い。どうやら保健室のようだ。
姫月,今、何時だろ……
誠,3時過ぎかな。もうそろそろ6時間目が終わる頃だ
誰もいないだろうと思い漏れた呟きに返事があり、私は驚いて聲のした方へと目を向ける。
がらんとした保健室の入口の近くに、兄貴が腕を組んで立っていた。
姫月,……そっか、隨分時間経っちゃったんだ
そういえば最近はあまり寢付けなくて、毎日2~3時間の睡眠しか取れていなかったことを思い出す。
誠,そうだな。まさか失神するとは思わなかったよ。おかげでここまで運ぶことになったし
姫月,そ、それは、元はといえば兄貴が――――!!
いつもの調子で反論しようとしたが、兄貴の冷ややかな目を見て私は言葉に詰まってしまった。
普段なら私が憎まれ口を叩いても、兄貴はこんな暗くて冷たい目はしていなかった。
仕方ないな、と諦めたような雰囲気ではあったけれど、それでもどこか優しさを滲ませたような目で私を見てくれていた。
姫月,あ、あの……あ、兄貴……
誠,…………何だ?
姫月,あ、あの……な、何か、あった、の……?
怖い怖い怖い。今日の兄貴は何だか怖いよ。
もしかしたら知らない間に何か兄貴を怒らせるようなことをしてしまったのだろうか。
誠,別に何もないよ。何か変なところでもあるか?
姫月,………………
有無を言わせないような兄貴の口調に私は黙り込んでしまう。
私のいるベッドから遠く離れた場所にいる兄貴。
その距離が、まるで私の側にいたくないと言っているかのようで、胸がきゅぅっと締め付けられるように痛んだ。
誠,……そういえば、もうすぐプール開きだな
姫月,え、あ、うん……。そうだね……
これ以上兄貴に嫌われたくない。
いつものように反抗していると、兄貴はきっと、今以上に私のことを疎ましく思うに違いない。
私は怖くて兄貴の言うことにただ話を合わせることしか出來なくなってしまう。
誠,放課後に水泳部がプール掃除をするから、お前も手伝ってこいよ
姫月,え? で、でも私、水泳部じゃないし……
誠,水泳部じゃなくてもさ。お前、今日1時間目の途中からずっと眠りこけてて體力が有り餘ってるだろう?
誠,それに、元々水泳部の顧問は狸でさ。あいつが今日は用事があるからってことで俺に頼んできたんだよ
誠,俺がプール掃除するんだから、當然姫月もするだろう?
ただの教育実習生である兄貴が、こんなに色々な先生から頼まれごとをするのだろうか、と僅かな疑問が浮かんだが私は考えることをやめた。
どうせ考えても答えは出ないのだから。
姫月,……分かった。プール掃除手伝うよ。6時間目が終わったら行けばいいの?
誠,そうだな。あぁ、でもその前に制服だと濡れるかもしれないから水著に著替えていけよ
姫月,え……、で、でも私今日は水著なんて持ってきてないよ……
水泳の授業があるわけでもないのに、水著を持っているはずがない。
誠,ほら、これを著て作業すればいい
そう言って兄貴が渡してきたのは白いスクール水著だ。
またどこかに切れ目でも入っているのではないかと思って生地を引っ張ってみたりするが、どうやら変な細工はされていないみたい。
縫製もしっかりしていて、私がどれだけ力を込めても破れる気配がない。
誠,それじゃ、俺は先にプールに行ってるから著替えたら來いよ
姫月,ん、分かった……
私が頷くのを見て、兄貴はようやく笑顔を見せて保健室を去っていった。
そんな兄貴を見て、私はほっと胸を撫で下ろす。
まだ大丈夫。きっと、大丈夫なんだ。そう自分に言い聞かせて私は兄貴から手渡された白い水著を手に取った。
白いスクール水著というものを初めて著たが、何だか少し恥ずかしい。
特にこの水著は胸パットも付いておらず、少しだけ乳首が浮き出て見えるのだ。
姫月,で、でも、外國の人とか結構ノーブラでキャミソール著たりするし、大丈夫だよね
私がプールへと著くと、そこには既に20人ほどの男女がいて、デッキブラシ片手に掃除をしている。
だけど彼らはみな一様に制服を著たままだった。
姫月,(え? 水著を著ているのは私だけなの……??)
みんながきちんと制服を著込み、真面目に掃除をしている中で自分だけが水著であるという異常な狀況に、私は少し怯んでしまう。
誠,姫月……!
姫月,あ……
どうするべきかとウロウロとフェンスの周りを行ったり來たりしていた私に、兄貴が聲をかけてきた。
迷っている場合でも恥ずかしがっている場合でもない。兄貴に呼ばれたのだから行かなければならない。
それに、しっかりと水著を著ているのだから問題はないはずなのだ。
誠,うん、やっぱり姫月は白が似合うな
近くまで來た私の姿を見た兄貴がにこりと笑ってそう言ってくれた。
褒められて照れくさい。けどすごく嬉しい。
姫月,そ、そんなの、當たり前よ……
誠,はは。それじゃ、このデッキブラシ使って中を洗ってくれ
姫月,あ、うん。分かった
私は兄貴からデッキブラシを受け取って水の抜かれたプール內へと入っていった。
自分ひとりだけが水著を著ている気恥ずかしさから、胸元を隠すようにデッキブラシを持つ。
貓屋敷,あ~! 姫月ちゃんだ!
雪名,ホントだ! 姫月ちゃん!!
姫月,え? あ、雪名さん、貓屋敷さん。どうしてここに……
聲をかけられ、振り向いた先には雪名さんと貓屋敷さんが立っていた。
貓屋敷,えへへ。私たち、実は水泳部なんだ~ こう見えても、意外と泳ぐの早いんだよぅ☆
姫月,へぇ。そうだったんだ……全然知らなかった
雪名,あはは、水泳部は夏しか活動しないからねー。知らなくて當たり前だよ
貓屋敷,ところで姫月ちゃんこそどうしたの? 今日は體調が悪いから保健室で寢てるってセンセから聞いたけど……
姫月,あ、うん。體調はもうよくなったし、兄貴がプール掃除を頼まれてたみたいだから私も手伝おうかと思って
雪名,そうなんだぁ……姫月ちゃんってホント優しいよね
貓屋敷,でも何で水著著てるの??
姫月,えぇと……。兄貴に制服が濡れると困るだろって言われたから、學園にあった水著を借りたの
姫月,でも、みんな制服だからちょっと恥ずかしいよね
貓屋敷,え~。でも姫月ちゃんが著たら何でも可愛いから大丈夫だよー
雪名,うん、白い水著ってすごい可愛い!
照れたように言うと、二人はにこにこと笑いながら話してくれて少しだけホッとした。
誠,おーい。そこー。話してないで真面目に掃除しなさいー
貓屋敷,うや。やば。それじゃ、真面目に掃除しますかねぇ
雪名,仕方ないね
そう言って彼女たちは散り散りに別れて掃除を始める。
私も彼女たちを倣い、デッキブラシでゴシゴシと床を擦り始めた。
青緑色の苔がへばり付いたプールの底は滑るしヌルヌルしていて、掃除は遅々として進まない。1メートル進むのにも10分ほどかかる始末だ。
姫月,ふぅ……
少し進み、私はふっと一息吐いた。
力を入れないと藻が取れないプール掃除はなかなかの重労働だ。
ふと周りを見ると、汗だくになった生徒たちが手で顔を扇ぎながらデッキブラシを動かしている。
この様子を見ると水著になったのはある意味正解だったのかもしれない。
男子生徒A,うああー。暑いいいいい!!! 無理だ無理!! 俺はもう水浴びをする!!!
暑さに耐え切れなくなったらしい男子生徒の一人が、突如ホースを手に取り頭から水をかぶっていく。
當然シャツもズボンも水浸しになるが、本人は至って気持ち良さそうだ。
姫月,(でも、帰りはどうするんだろう……。濡れたまま帰れないよねぇ……)
そんなことを考えていると、いつの間にか水を浴びている男子生徒の橫に行っていた兄貴の顔がにんまりと歪んだ。
姫月,……???
男子生徒A,いーちのーせさーーーーーん!!!!
姫月,え……?? …………きゃ、きゃああああああああああああああああ!!!
不意に苗字を呼ばれると共に、大量の水が私を襲う。
前から思い切り水をかけられては、息も出來ないし目も開けていられない。
姫月,ぷはっ! っは!! げほげほげほげほ!!!!
避けることの出來なかった水を私は思い切り飲み込んでしまう。
鼻にも入ってしまい耳の奧がキーンと痛んだ。
姫月,ちょっ……と! 何す……!!!
ようやく咳が落ち著き、ふざけていた男子に文句を言おうとすると、何故か全員が目を見開いたまま私のほうを見てる。
雪名,ひ、姫月ちゃ……
貓屋敷,そ、それ……あの……み、水著……
姫月,え……?
二人の言葉に、私は目線を落として自分の水著を見る。
姫月,ひ……! きゃあああ!!!!
あろうことか白い水著はぴったりとに張り付き、所々肌色が透けてしまっていた。
ぷっくり浮かんだ乳首は赤さすらも分かるほどだ。
思わぬ事態に、私は思わずしゃがみこんで自分の體を隠してしまう。
姫月,(どうして?? どうして?? だって水著って透けないもので
しょ?? 何で透けてるの????)
今まで學園指定の紺色のスクール水著しか著た事がなかった私は、白い水著が透けるだなんて知らなかった。
兄貴はそれを知っていて、わざとこれを渡してきたんだ……!
ここには雪名さんや貓屋敷さんもいて、他にも何人も女の子がいるのに……!!!
姫月,(いやだ、やだ……みんなきっと阪本さんみたいに、私のことを汚いって思っちゃう。気持ち悪いって言われちゃう。どうしようどうしようどうすればいいの??)
私は周囲の視線から逃れるように、膝を抱え込んで顔を伏せた。
怖い。顔を上げて周りの人の目を見るのが怖い。
誠,こら、姫月。何一人でさぼってるんだ? ほら、みんなも掃除を再開して。そんなペースじゃ今日中に終わらないよ
聞こえてきた兄貴の聲に、私はそろりと顔を上げる。
姫月,っつ…………
そこにはいつもの困ったような笑顔ではなく、冷たく私を見下ろし、口端だけ上げて笑う兄貴の姿があった。
それを見て、私の背中に嫌な汗がつぅっと垂れる。
貓屋敷,で、でもセンセ!! ひ、姫月ちゃんの水著が……!
雪名,わ、私バスタオル取ってくる!!
雪名さんと貓屋敷さんも白い水著が透けることを知らなかったようで、すごく慌てている。
誠,あぁ、雪名さんに貓屋敷さん。気にしなくていいよ
貓屋敷,え? で、でも……
誠,なぁ、そうだよね? 姫月?
兄貴は戸惑っている二人ににっこりと笑い、私に向かって言う。
これが、兄貴の望んだことなんだ。
今までみたいに學園の外、私のことを知らない人たちの前でエッチなことをするだけじゃ、兄貴はもう物足りないんだ……。
私はそう思い、覚悟を決める。
姫月,……うん。大丈夫
そう言って、私は立ち上がる。
びっしょりと濡れた水著はしばらく乾くことはないだろう。
先程と変わらず乳首も、そして割れ目もしっかりと見えてしまっている。
貓屋敷,だ、駄目だよ!! だって見えてるんだよ!??
姫月ちゃん!!!!
雪名,そ、そうだよ! 私、タオル持ってるから使って!??
雪名さんと貓屋敷さんが駆け寄ってくるが、私は彼女たちを手で軽く押しとめる。
ずぶ濡れになって、大切なところが丸見えの狀態はものすごく恥ずかしい。
彼女たちの好意は嬉しいし有難いけれど、今きっとそれを受け取ってしまったら兄貴は二度と私のほうを向いてくれないような気がする。
だから――――。
姫月,……ありがとう。でも、本當に大丈夫だから。気にしないで
貓屋敷,でも、でも……
貓屋敷さんが泣きそうな目で私を見ている。
こんなになっても私のことを信じてくれてるんだと思うと、涙が出そうだ。
恥ずかしい。すっかり周りの生徒たちの手は止まってしまっていて、みんな私に注目している。
ゴシゴシと一人デッキブラシで無我夢中に地面を擦る。
何かをしていないと、回りの視線の圧力に潰されてしまいそうなのだ。
徐々に私の行動がおかしいと気付き始めた生徒たちから疑惑の聲が上がってくるのが聞こえる。
男子生徒A,あれって、一之瀬さんもしかしてわざと見せてるとか??
男子生徒B,え? なんで??
男子生徒A,だってさ、あんな狀態になったら普通タオルか何かで隠そうとするもんじゃねぇの??
男子生徒B,確かにそうかも……。え、じゃぁ一之瀬さんって露出狂なわけ??
女子生徒A,一之瀬さん、何考えてるのかな……あんな格好で平然と掃除するなんてなんか怖いよ……
女子生徒B,ね、ちょっと気持ち悪いよね
ひそひそと周囲に私を責める言葉が溢れてくる。
姫月,(もうやだ……恥ずかしい。消えちゃいたい……)
貓屋敷,姫月ちゃん……
雪名,…………
普段なら人一倍明るい雪名さんと貓屋敷さんが私のほうを心配そうに見つめてくる。
誠,はは。二人とも、大丈夫だよ。姫月はそうやって自分の恥ずかしい姿を見てもらうのが大好きなんだから
雪名,そ、そんなわけないよ! センセーひどい!!!
貓屋敷,そーだよ!! 姫月ちゃんがそんな変態なわけないもん!!
姫月,…………
誠,だってさ。良かったね、姫月。お前のことをここまで信じてくれる信奉者がいて、さ
誠,それじゃ、二人に見せてあげればいいよ。普段姫月がどんな格好をしているか
姫月,…………っつ
今の狀況でも十分恥ずかしいのに……!!
投げつけられた言葉が信じられなくて、私は泣きそうになりながら兄貴を見る。
先程までとなにひとつ変わらない笑顔。
姫月,(嫌だ。やだよ……。恥ずかしくて死んじゃう……!!!)
そう思いながらも、私は兄貴の命令を聞くしかない。
からんと甲高い音を立ててデッキブラシをプールの底に放り、私は肌にぺったりと張り付いた水著の肩部分に手をかける。
プールにいる生徒全員の視線が私に集まっていて、握り締めた手のひらはしっとりと汗ばんでしまっている。
さっきから喉が渇いて仕方ない。
口內がカラカラになっていて、唾液を飲み込むことが出來ない。
姫月,っつ…………
ぐいっと水著を腰まで脫ぎ、私は自分のふたつの膨らみを衆人環視の元に曬した。
雪名,!!!!!!
貓屋敷,!!!!!!!
私を信じてくれていた雪名さんと貓屋敷さんが、聲にならない悲鳴を上げるのが分かった。
プール掃除をしていた生徒たちがざわざわと騒ぎ始める。
男子生徒A,うわ、噓。マジ??? 一之瀬さん水著脫ぎ始めたぜ????
女子生徒B,やだぁ、マジ何考えてんの??? 頭おかしいんじゃない!??
女子生徒A,ありえない……超キモイんだけど……
男子生徒B,すげ……おっぱいでか……
私は生徒たちのそんな聲を聞きながら、白い水著を脫ぎ捨て生まれたままの姿になる。
姫月,(見ないで、見ないで、見ないで……お願いだから見ないで……)
雪名,ひ、姫月……ちゃ……
貓屋敷,う、噓……噓……
雪名さんと貓屋敷さんが、信じられないものを見るような目で私を凝視している。
その視線に耐え切れず、掃除を再開しようと、私は腰をかがめて地面に置いたデッキブラシを取ろうと手を伸ばした。
男子生徒A,うわ。ラッキー。一之瀬さんのま○こ見えた
姫月,っつ!!!!!
私の後ろにいた男子生徒から卑猥な言葉を言われ、びくりと身體が強張ってしまう。
男子生徒B,あいつマジうらやま! 俺も一之瀬さんのま○こ見てぇ~~。こっちにお尻向けてもう一回屈んでくれないかなぁ
女子生徒A,男子って最低。あんな変態の裸見て何喜んでんの???
女子生徒B,頭イカれてる女の裸なんてキモイだけじゃんね
デッキブラシを握る手が震える。
男の子たちが私の體中をいやらしい目で見ている。女の子たちが私を見て気持ち悪いと話している。
恥ずかしくて悲しくて辛くて死んでしまいそう。
そんな考えを振り払うようにますます床を擦る力を強くしようとした時、私の太ももの辺りをとろりと何かが伝う感觸があった。
姫月,え……?
その違和感に私は自分の足元へと目を落とす。
姫月,(やだ……私、また濡れてる……?? 私、見られて感じちゃってるの……??)
私のあそこから透明な雫がタラタラと太ももを伝って地面に落ちているのだ。
恥ずかしいだけで気持ちいいことなんて何もしていないのに、どうして、という疑問符だけが頭の中をぐるぐると回る。
誠,どうした? 姫月。手が止まってるぞ?
あまりの衝撃に掃除を中斷していた私に、兄貴が楽しげに聲をかけてくる。
どうしていいか分からない私は、槁にもすがる思いで兄貴に助けを求めるような視線を送った。
姫月,(やだ、嫌だ。私、こんなことしてるのにおま○こ濡らしちゃってる……!! みんなに見られて恥ずかしいのに……!!!)
見られていると思えば思うほど私のソコから溢れ出る液體が多くなっていく。
恥ずかしさと情けなさで私は動けなくなってしまった。
誠,掃除をしないなら、そうだな。みんなにお前の好きなことを聞いてもらえばいいんじゃないかな。それなら休憩してもいいぞ?
姫月,っひ……う……っつ、はぁ……
喋ろうとすると、しゃくり上げるような聲しか出てこない。
誠,姫月。どうする? 俺はどっちでもいいぞ。それともこの掃除自體をやめるのか?
姫月,………………
兄貴の言葉に、私は小さく頭を振る。
ここで止めてしまってはきっと何も殘らない。
みんなからの信頼もいつも通りの日常も。そして、兄貴も。
だからやらなきゃ。
姫月,わ、私は……こ、こうやって、みんなに裸を見てもらうのが大好きな……変態なの……
噓だよ。好きなわけないよ。だってこんなことおかしいもの。
みんなに頭のおかしい子だと思われちゃう。
みんなもう私と話してくれなくなっちゃう。
姫月,だから、みんなに私の裸を見てもらいたい、の……
私の言葉に、男子生徒たちがひゅぅと口笛を吹き、女の子たちの顔には嫌悪の色が浮かぶ。
貓屋敷,……私、私、ずっと姫月ちゃんに憧れて、この學園に入ったのに……。一緒のクラスになれてすごく嬉しかったのに……!
貓屋敷,姫月ちゃんがそんな変態だなんて思わなかった……!
雪名,私だって、姫月ちゃんみたいになれたらって思って、でもなれなくて……友達になれて嬉しかったのに……!
雪名さんと貓屋敷さんが涙で頬を濡らしながら切々と訴えてくる。
心が痛い。胸が內側から破裂してしまいそう。
貓屋敷,気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!! こんな所で裸になって掃除してるとか意味分かんない!!
雪名,こんな変態みたいな真似して恥ずかしくないの!?? この間露出狂じゃないって言ってたのに!! 噓つき!!!
姫月,…………っつ
貓屋敷,も、やだ! こんなの知りたくなかった!! 今まで黙ってたならずっと黙っててくれれば良かったのに!!!
雪名,こんなの見たくない! アンタもセンセーも、頭おかしい
よ!!!!!
そう言って二人はデッキブラシを地面に叩き付けて走り去っていく。
誠,そうだな。帰りたい人は帰っていいよ。姫月と殘りの人で掃除しておくから
女子生徒,………………
兄貴のその言葉に女子生徒たちは目を反らせ、ひそひそと內緒話をしながら去って行く。
きっと明日には學園中にこの話題が溢れかえるのだろう。
誠,……殘ったのは姫月と男子生徒だけか。まぁいいか。ほら、みんなでちゃんと掃除してくれるかな?
男子生徒A,はーい!
男子生徒たちの元気な聲が聞こえる。
周りを窺ってみると、彼らはみんな少し前かがみになって私を見ていた。
そして彼らのそんな様子を、兄貴は楽しそうに見ている。
姫月,(もういい……。もういいよ。もう、何でもいい……)
姫月,(兄貴がいてくれるなら、もう、いい……)
そう思って、私は視界を涙に滲ませながらデッキブラシを動かし続けた。
あのプール掃除の日以來、私の生活はガラリと一変した。
以前までは教室に入ればみんな挨拶してくれて、雪名さんと貓屋敷さんが笑顔で話しかけてくれていた。
だけど今、學園の中で私に話しかけてくれる女の子はいない。
ほのかは體調が悪化して入院してしまったため、いつ學園に復帰出來るか分からない。
兄貴の教育実習も終わり、私は本當に一人ぼっちになってしまった。
男子生徒A,一之瀬さ~ん。次はいつ裸になってくれるの??
男子生徒B,いっそ裸で授業受けちゃえばいいじゃん! 俺名案!!
姫月,っつ……
男子たちの下品な笑い聲に、気付けば私はその場から逃げ出してしまっていた。
學園內のどこにも自分の居場所がなくて、誰にも會いたくなくて、次第に私は授業にも出なくなっていった。
授業をサボって來るのは、決まってこのスケートリンクだ。
元々この學園の理事長であるお爺ちゃんが私のために作ってくれたものだから、基本的に鍵は私が持っている。
勿論建ててくれると聞いた時には、『公営のスケート場に行くからいいよ』と遠慮したのだけれど。
それでも、こうなってしまった今ではすごく有難い場所だ。
私以外誰も來ない。放課後になれば俊成さんは來るけれど、あの人は外部の人なので學園內での私のことは知らないままだ。
誰にも相手にされなくなった私を、以前のままの私として見てくれる俊成さんに少しだけ救われる。
姫月,……あんな人を、好きになれれば良かったのに
誰にも拾われない呟きが靜寂の中へと溶けていく。
私はきゅっと自分の體を抱きしめた後スケートリンクに立った。
高い高い天井に澄んだ空気。
私が唯一私でいられる場所。
頭の中で鳴り響く音楽を聴きながら、私は銀盤の上でくるくると回る。
軽く助走をつけて宙へと舞う。ざりりとエッジが氷を削り、ダイアモンドのような[飛沫/しぶき]が辺りに散る瞬間を見るのがとても好きだ。
そうして私は毎日をここで過ごす。
誰にも會わなくてすむこの閉塞的な建物だけが私を解放してくれるのだ。
今日はフィギュア選手権2日目、フリープログラムの日だ。
以前までなら學園のみんなが応援に來てくれていたのだけど、昨日と同じく、今日も誰一人として來る事はないだろう。
誠,姫月!
肩を落として家を出ようとすると、不意に兄貴に聲をかけられた。
姫月,兄貴? な、何……?
兄貴が調教の時以外に私に聲をかけてくることは滅多になくなっていたので、私の心臓がバクバクと早鐘のように鳴った。
誠,今日はフィギュアの大會なんだろう?
姫月,え、あ。う、うん……
誠,昨日は講義があって見に行けなかったけど、今日は俺も応援に行くから頑張れよ
姫月,あ、兄貴。見に來てくれるの??
誠,當たり前だろう? 妹が頑張ってるんだから見に行くよ
姫月,う、うん! 分かった! 待ってる!!
誠,姫月の衣裝も楽しみだよ。真っ白な衣裝を著るんだろう?
姫月,そ、そうなの。今日のために作ってもらったからすごく楽しみ!
誠,うん。それじゃ。しっかり頑張ってこいよ
姫月,うん! うん! 頑張る!!
私の言葉に兄貴は優しく笑って手を振って見送ってくれた。
フィギュアに興味がないだろう兄貴が、私のために會場まで來てくれる。
その言葉だけで、兄貴が側にいてくれるだけで私は頑張れる。
きっと今日は良い成績が殘せるに違いない。そう思って、私は會場へと向かった。
會場內は既に満杯の人で溢れていた。
服を著替えて選手控え室の前にある廊下で、逸る心を落ち著かせようと私は深呼吸をしながらストレッチをする。
姫月,……??
動くたびに何だか突っ張るような感覚がして、私は首を傾げる。
きっと緊張して、筋肉が強張ってしまっているのだろう。
姫月,(大丈夫、大丈夫。落ち著いて……)
イヤホンから流れる音楽が私を高ぶらせる。
沢山のテレビカメラやリポーターの人たちが私を捉える。
私の演技を心待ちにしてくれている。大丈夫、いつも通りに演技をすればきっと大丈夫。
私はそう自分を鼓舞し、そして銀盤の上にスケート靴を滑らせた。
客席は満員で、みんなが私を拍手で迎え入れてくれた。
私は白いドレスをはためかせながら、氷を慣らすように滑っていく。
心を鎮め、何度かリンクを往復してから中央へと滑っていき、そしてぴたりと體を止める。
世界中の誰も息をしていないかのような沈黙が會場を支配して、そして音楽が始まった。
幻想即興曲。昔、泣いてる私のためにあの人がよく弾いてくれた思い出の曲。
ピアノの鍵盤の上を踴る細くて長い指がすごくすごく綺麗で、かっこよくて。
どうしてそんなに早く弾けるの?って聞いたら、『毎日練習してるからだよ』って教えてくれた。
だから私も頑張ろうって思ったの。
何をするにしても、絶対この人に負けないように、隣りに立っていられるようにって。
私は身長がそんなに高くないから、出來るだけ大きく見せようと懸命に手足を伸ばす。
私が高く跳ぶとみんなが喜んでくれた。だから、きっとそうすれば……喜んでくれる。そう信じて、私はトリプルアクセルを跳んだ。
跳んでいるのは一瞬のことで、著氷してすぐにコンビネーションジャンプに移る。
ジャンプを決めていく度にキラキラと輝く氷の粒が散り、どこからかぴりぴりとした音が聞こえる。
銀盤に真っ白な花びらが、ひらひらと舞っている。
自分でもびっくりするほど體が軽い。
まるで背中に羽が生えたよう。みんなが驚いた顔で私を見てる。カメラが私のことを映してる。兄貴が見てる。
見てて。
私は、ちゃんと、頑張れるから――――。
;0scene 10日目.夜-
誠,お先に失禮します
実習録を出し終えた俺は、居心地の悪い職員室をあとにした。
誠,はぁ……
肩の荷が下りた瞬間、自然と重たい溜め息が漏れた。
今日のお勤めもこれで終了。これから何をするかな。
と言っても……。
誠,俺が出來ることは限られてるんだけどな
帰ってエロゲーをするか、姫月を調教するか。
この二択しかないって、人間として終わってる気がするな……。
まぁ、今更か。
俺は頭を切り換えて、これかどうしようか考える。
普通に考えれば、『姫月を調教』一択なわけだが……。
今まで部活中の姫月に様々なことをしてきたが、周り姫月に対するの信頼が変わることはなかった。
昨日、エロい衣裝を著せたにもかかわらず、だ。
何も変わらないことが分かってるのに、調教をしても何も面白くない。
誠,……今日は普通に姫月が部活を頑張ってる姿を見るか
たまにはそんな普通の時間があってもいいだろう。
重厚な扉を開けて中に入ると、幻想即興曲が流れていた。
適當な位置に陣取ってリンクの方を見ると、姫月が音楽に合わせて滑っていた。
一目見た瞬間、そのしなやかな動きに自然と引き込まれてしまう。
滑らかなスケーティングをしていたと思ったら、姫月の體が一度靜かに沈み、スカートを揺らしながら高く舞い上がった。
まるで羽が生えたかのような、柔らかさの中に躍動感のあるジャンプ。
ふわりと音がしそうな優しい著地は、どこか天使の姿を想起させる。
白魚のような指先がさっきまでいた天を仰ぎ、切なげな表情で銀盤を流れるように滑っていく。
そしてリンクの中央へと戻ると、演技と音楽が同時に止まった。
誠,っつ!!
タイミングよくこちらを向いた姫月の顔を見て、俺はドキリとした。
姫月の顔は、前に見たときよりも大人びた雰囲気を持っていた。
ローターをつけたり、タイツに切れ目を入れたときとは違う、清潔感のある色気がそこにはあった。
だがそれはすぐに消えてしまい、いつもの少女のあどけない顔に戻ってしまう。
俺に気付いた姫月は、こちらにやってくる。
姫月,兄貴
誠,いい演技だったな
姫月,はっ? えっ? なっ、何? なんで急に褒めてんの? いつもそんなことしないのに。な、なんかキモイんだけど……
誠,…………
どうしてこいつは、人の言葉を素直に受け取れないんだろうか。
姫月,あっ! わっ、分かった……。今日は、またエッチな衣裝を著せようって考えてるんでしょ……っ
誠,どうしてそういう考えになるんだよ
姫月,今までしてきたことを考えれば當然でしょっ!
誠,まぁ……確かにそうだな
姫月,それで……今日は、何するの?
誠,…………そんなにしたいのか? エロくなったな、お前も
姫月,なっ!? ばっ!! したいわけないでしょっ!!
案外図星だったのか、姫月が顔を真っ赤にして毆りかかってこようとする。
が、周りに人目があることに気付いたのか、振り上げた手は力なく下ろしてしまう。
姫月をからかうのは楽しいけど、あとが怖いし……そろそろ帰るか。
誠,俺がいても邪魔みたいだし、帰るわ
姫月,えっ? えっ? あの……調教、は?
誠,…………スケベ
姫月,っつ!! だっ、だからっ、そんなんじゃないってばっ!!
誠,はいはい、そういうことにしておいてやるよ
これ以上やると本當に毆りかかってきそうなので、俺は手を振りながら踵を返した。
姫月,えっ? 本當に帰っちゃうの?
誠,今は調教する気分じゃないしな
姫月,あっ! じゃっ、じゃあ……部活、見ていけばいいじゃん
姫月,どうせ、家に帰ってもゲームしかすることないんでしょ?
誠,ま、たまにはそういうのもいっか
姫月,!! そうそう、こういう普通の時間も大切なんだからっ!
姫月はそう言うと、リンクへと戻っていった。
それから部活が終わるまで、俺は姫月の演技を見続けたのだった。
姫月,あれ……?
私が著替えて戻ってくると、そこには兄貴の姿があった。
誠,やっと來たか。それじゃ帰るぞ
姫月,え……も、もしかして……私のこと、待ってたの?
誠,まぁな。どうせ帰るところは一緒だし……それに、何も言わずに帰ったらあとで文句をぐちぐち言われそうだったからな
姫月,っつ! 何それ! 私、そんなこと言わないし!
兄貴の言葉にムカッとするが、いつもよりは少しだけ気持ちが穏やかだ。
理由はどうあれ、兄貴が私のことを待っていてくれた。
(ふふっ)
誠,ほら、帰るぞ
姫月,あ……
そうだ。今日は部活が終わったら寄り道するつもりだったんだ。
どうしよう……。
誠,姫月?
姫月,あ、えーっと……きょ、今日はちょっとこの後寄らなきゃいけない所があって……
誠,それならそうと、先に言えよ……。待ってて損した
姫月,っつ! 兄貴が勝手に待ってたんでしょ! 私のせいじゃないじゃん!
兄貴の言葉に、思わず可愛げなく反論してしまう。
途端に兄貴の顔が不機嫌なものになり、心がずーんと重くなる。
(私の馬鹿ぁ……)
誠,……じゃあ俺は先に帰るから
姫月,あ、うん
誠,時間も遅いから、気をつけて帰ってこいよ
姫月,!!
兄貴は投げやりに手を振りながら、スケート場をあとにした。
姫月,……っつ、兄貴の馬鹿
姫月,不意打ちとか卑怯だよ……
胸元のリボンをぎゅっと摑みながら、誰もいなくなったスケート場でぽつりと呟く。
重く沈んでいた心は、いつの間にか軽くなっていた。
??,はーい
ほのか母,あら、姫月ちゃん
姫月,夜分遅くにすいません、おばさん
ほのか母,いいのよ、姫月ちゃんなら大歓迎だから
姫月,あはは、ありがとうございます
ほのか母,ちょっと待っててね、ほのかのこと呼んでくるから
姫月,あ、大丈夫……で、す……
と言い終わる前に、ほのかのお母さんは中へと戻っていってしまった。
參ったな。もう時間も遅いから、渡すものだけ渡して帰ろうと思っていたのに。
でも……ほのかの顔を見られるのは、ちょっと嬉しい。
そんなことを考えていると、ほのかがやってきた。
ほのか,姫ちゃん、ごめんね、待たせちゃって
姫月,ううん、全然待ってないよ
いつも通りの可愛い笑顔を浮かべるほのかが現れて、私は安堵した。
姫月,顔色いいみたいで、安心した
ほのか,もぅ、姫ちゃん心配しすぎだよ。昨日も言ったでしょ? ただの微熱だって
姫月,でも、熱はあったんでしょ?
ほのか,あぅ……確かにそうだけど……
ほのか,でも、そんなに高くなかったんだよ? それなのに、お母さんが大事を取って休みなさい、って
姫月,ふふっ、おばさん心配性なところがあるもんね
ほのか,そうなの、もう困っちゃう。今日は熱も下がったのに、ぶり返したら大変だから、って言うんだよ?
困ったように言うほのかの表情を見て、安堵感がさらに大きくなった。
よかった。本當に元気みたい。
おばさんは確かに心配性なところがあるけど、実は私も心配だった。
微熱とは聞いていたけど……でも、ほのかはそんなに體が強くない。
最近は色々とあったし、貧血で倒れたこともあったし。
でも、今の元気な姿を見る限り、もう完全回復したみたい。
姫月,もう大丈夫なら、明日から學園には來れるんでしょ?
ほのか,うん
姫月,じゃあ、明日は一緒に行こうよ
ほのか,うん、いいよ
姫月,えへへ
やっぱり、ほのかの笑顔は可愛い。
見てるだけで、自然と頬がほころぶ。
姫月,あ、そうだ
私はここに來た本來の目的を思い出し、鞄からクリアファイルを取り出した。
姫月,はい。今日、學園で配られたプリント
ほのか,わっ、ありがとう姫ちゃん
姫月,どういたしまして
ほのか,でも、わざわざ持ってこないで、學園で渡してもよかったのに
姫月,いいんだってば。ほのかの顔を見たかったから、そのついでだよ
ほのか,ありがと、姫ちゃん
ふんわりと、ほのかが優しく笑う。
自然と私の顔もほころび、もう一つほのかに渡す。
姫月,あと、これ
ほのか,? これは?
姫月,アイス。ほのかの好きな、『ベリーベリーストロベリー』だよ
ほのか,わぁ~、ありがとう姫ちゃん
姫月,喜んでもらえてよかった
ほのか,うんっ、うんっ、すごく嬉しい
ほのか,本當にありがとう、姫ちゃんっ!
姫月,そ、そんなに何回もお禮言わないでよ、照れるから
ほのか,ふふっ、照れてる姫ちゃん、すごく可愛い
姫月,ほっ、ほのかぁ……
ほのかの言葉に、自然と顔が熱くなる。
裏表のないほのかに褒められると、すごく恥ずかしい。
でも……女の子としては、やっぱり嬉しい。
私、ほのかと友達になれてよかった。
うん。明日から、ほのかが『何か』されないように、注意して見ててあげないと。
姫月,ほのか、頑張ろうねっ
ほのか,? 頑張るって、何を……?
姫月,え……? あっ! えっと、その……
どうしよう、話の流れからして『頑張る』ことなんて何もない。
何か、頑張ること……頑張ることは……。
あっ、そうだっ!
姫月,スピーチコンテスト! 私もほのかも出るから、だから頑張ろうってこと
ほのか,え……? あ、うん、そうだね
なんで今、スピーチコンテストの話なんて出たんだろう? そんな表情をしつつも、ほのかは頷いてくれた。
姫月,それじゃ、私はそろそろ帰るね
ほのか,真っ暗だから、夜道に気をつけてね?
姫月,うん。じゃあ、また明日ね、ほのか
ほのか,うん、また明日
ほのかの元気な姿を見れたせいか、私は身も心も軽くなっていた。
ちょっと帰るの遅くなっちゃったし、兄貴の好きなもの、いっぱい作ってあげよっかな。
そんなことを考えながら、私は家路についた。
;0scene 11日目.朝晝(トゥルールート)
いつものように、姫月と並んで學園へと向かう。
しかし今日は、いつもと違うことが一つ。
姫月,♪~~♪♪♪
朝から姫月が鼻歌を続けるほどご機嫌なのだ。
正直、ちょっと怖い。
誠,……何か、嬉しいことでもあったのか?
俺はちょっとビビりながら、思い切って聞いてみた。
姫月,うん、ちょっとね
姫月,あ、そだ。今日は機嫌がいいから、お弁當のおかずいっぱい入れておいたから
誠,そ、そうか……
なんかここまでご機嫌だと……かえって不気味だな……。
いつになくテンションも高いし……。
……もしかして、熱でもあるのか?
誠,なぁ、姫月
姫月,うん? 何?
思わずドキリとしてしまうような愛らしい笑顔で振り向く姫月。
その様子にますます不信感を募らせた俺は、姫月の額に手を當てた。
姫月,ななっ!!??
やはり熱があるのか、姫月の顔が赤い。
掌に感じる姫月の熱も、ぐんぐん上がっていく。
姫月,あ、ぅ……あぅ……
大丈夫か? そう聲をかけようとした瞬間――
誠,へぶぅっ!!!
なぜかビンタが炸裂した。
姫月,あ……
誠,あ、あにしやがる……
姫月,いっ、今のは、心の準備ができてないのに、兄貴が急に觸ってきたからっ!
おい……。心の準備ができないと、俺には觸られたくないのかよ……。
そういう汚いもの扱い、ものすごく傷つくんだぞ……。
姫月,わ、私は悪くないんだからねっ! 兄貴が急に觸ってきたのが悪いんだからねっ!
誠,はいはい、俺が悪かったよ
今日は平穏な一日になるとか思ってたけど、全然そんなことなかった。
俺はジンジンと痛む頬を撫でながら、姫月と距離をとるように歩き出した。
また何かされたら、たまったもんじゃない……。
姫月,あ……
姫月,…………
ほのか,あ、姫ちゃん、お兄さん
無言のまま姫月としばらく歩いていると、懐かしい聲が聞こえた。
聲がしたほうに目をやると、そこにはほのかの姿があった。
誠,ほのかちゃん。もう體調は大丈夫なの?
ほのか,はい。心配かけちゃって、ごめんなさい
誠,ううん。元気になってよかった
ほのか,はい
ほのかの柔らかい笑顔に、心が溫かくなる。
姫月,ほのか、おはよっ
ほのか,おはよう、姫ちゃん
ほのかの元気な姿に、姫月も笑顔になった。
ほのか,あ、姫ちゃん。昨日、アイスありがとう
姫月,ううん。私が好きでやったことなんだから、気にしないで
誠,ん? 昨日? アイス?
話の唐突な変化に、思わず疑問が口をついて出た。
ほのか,あ、昨日、姫ちゃんがアイスを持ってお見舞いに來てくれたんです
誠,へぇ
ほのか,一昨日も、私のことを心配してきてくれたんですよ
姫月,ちょっ、ちょっとほのかっ、餘計なこと言わなくていいからっ
姫月がそんなことしてたなんて、全く知らなかった。
なんだかんだで、姫月の奴ほのかのこと心配してたのか。
でも……それならなんで、あんなことを言ったんだ?
誠,っつ! お前なぁ、ほのかちゃんはいじめられてるんだぞ!!
姫月,そんなこと――っつ!
姫月,たとえそうだとしても……それは、ほのかが乗り越えなきゃいけない問題じゃん
友達なら、突き放さず助けるだろ、普通。
誠,…………
姫月,なっ、何? 人のこと、じっと見て。キモイんだけど
誠,……悪かったな、キモくて
ほのかの元気な姿を見て軽くなった心が、姫月の毒舌によって一気に重くなる。
俺はこれ以上、姫月の毒舌を受けないようにさっさと歩き出した。
誠,ほら、早くしないと遅刻するぞ
姫月,あ……
姫月,…………
ほのか,姫ちゃん? どうかしたの?
姫月,うっ、ううんっ、なんでもない
姫月,あ、そうだ。休んでた分のノート、學園に行ったら見せてあげるね
ほのか,あ、うん。ありがとう
誠,まだ少しジンジンするな……
頬に朝のビンタの跡が殘ってないか教員用のトイレで確認し、職員室へ向かう。
その途中、姫月の姿を見かけた。
誠,姫月?
姫月,あ、兄貴
誠,お前、こんなところで何やってるんだよ?
姫月,ちょっとスリッパを借りに來ただけ
誠,スリッパ……?
その言葉に、反射的に下を見る。
だが、姫月は上履きをはいていた。
誠,……お前、まさかそれで俺を毆るつもりじゃないだろうな
姫月,そっ、そんなわけないでしょっ!!!
姫月,これは、ほのかが上履きを忘れたって言うから、私が借りに來ただけ
誠,上履きを、忘れた……?
姫月の何気ない言葉に、頭の中に疑問が浮かび上がった。
なんで上履きを持ち帰ったんだ?
いや、持ち帰ること自體はそんなに不自然じゃない。
だけど、ほのかは月曜日は學園に來ていたはずだ。
普通に考えて、持ち帰るとしたら金曜日、もしくは夏休みなど長めの休みが始まる前のはず。
誠,……なぁ、本當に忘れたのか? もしかして――
姫月,ね、兄貴
俺が最後まで言う前に、姫月が話しかけてきた。
姫月,ほのかのこととか、ほのかの周りのこととか……よく見ててほしいの
姫月,私が一緒にいられないときは……兄貴が、ほのかのそばにいてあげて
誠,おい、それって……
姫月,お願い
いつもとは違う、真剣な聲音。そして表情。
それで、俺の考えてることと姫月が心配してることが一緒だと分かった。
誠,……他には?
姫月,え?
誠,他に、何か俺にしてほしいことはないか?
姫月,うん、大丈夫
誠,そうか。もし他に頼みたいことがあったら言ってくれ
姫月,ありがと、兄貴
いつも俺に向ける刺々しいものとは違う、優しい眼差し。
そんな風に見られると、なんか背中がムズムズする。
でも……。
悪くない。
むしろ、どこか心地いい。
朝にあんな仕打ちを受けたっていうのに、俺も甘いな……。
姫月,あ、ほのかが待ってるから、私は行くね
誠,あぁ
パタパタと音を立てて走り去っていく姫月の姿が見えなくなってから、俺は職員室へと向かった。
午前の授業が終わり、晝飯の時間。
さて。ちゃっちゃと教材を片付けて、屋上でまったりと食べるか。
ほのか,あ、あの……
誠,うん? 何かさっきの授業で分からないところでもあった?
ほのか,あ、いえ……そうじゃなくて、ですね……えと……迷惑でなければ、なんですけど……
誠,うん
ほのか,お晝ご飯……い、い……一緒、に……食べ、ません、か……?
誠,へっ……?
ほのかからの、突然のお誘い。
あまりにも予想外の話だったので、俺は間抜けな聲を出していた。
ほのか,あ、やっ、迷惑なら……いいんです……
誠,いや、迷惑じゃないけど……えっと、いいの?
ほのか,……は、はひ
顔を真っ赤にしながら頷いたほのかの聲は、思いっきり裏返っていた。
誠,どこで食べるか決まってるの?
ほのか,い、いえ……特に決めてないので、お兄さんの好きなところで大丈夫です
誠,そっか。それじゃ、屋上でいい?
ほのか,は、はい
誠,じゃあ、荷物を置いたらすぐに行くから
ほのか,……は、はい
ほのかの照れた顔を見ながら、俺は教室を出た。
誠,……んふ
思わぬ展開に、自然と顔が緩む。
女の子(姫月は除く)と、二人っきりでお弁當!
まさかのリア充展開!!
俺は大急ぎで教材を片付け、屋上へと向かった。
誠,…………をい
姫月,何?
誠,なんでお前までいるんだよ?
なぜか屋上には、姫月までいた。
姫月,あっ、當たり前でしょっ! 兄貴とほのかを二人っきりになんか出來ないし
帰れ! この野郎っ!
と言っても、帰るわけないよなぁ……。
あぁ……俺のリア充展開が……。
ほのか,あ、あの、ごめんなさい……私が、姫ちゃんも一緒だって説明してれば……
誠,いや、ほのかちゃんが気にすることじゃないよ
姫月,そうそう。勝手に勘違いした兄貴が悪いんだし
はぁ……。
言い返しても何が変わるわけでもなし。むしろ、姫月が怒って飯がマズくなる。
それなら何も言わないほうが健全だ。
誠,それじゃ、食べようか
ほのか,あ……
俺が朝、姫月から渡された弁當を取り出すと、なぜかほのかの表情が曇った。
誠,ほのかちゃん、どうかした?
ほのか,あ、えと……その……
姫月,ほのか? どうしたの? 體調、悪くなった……?
ほのか,う、ううん……そうじゃないの……
ほのかが首を橫に振ると、髪がふわりと揺れる。
ほのか,私、この前……お兄さんにお世話になったから……その……お禮しようと思って……お弁當、作ってきたんですけど……
ほのか,お兄さん、お弁當持ってきてるって知らなくて……
誠,あぁ。この前、一緒に食べたときは學食だったしね
ほのか,はい……その、ごめんなさい……
誠,ほのかちゃんが謝ることじゃないから
誠,平気平気、弁當二つくらい餘裕だよ
ほのか,……本當、ですか?
誠,うん。だから、ほのかちゃんが作ってくれたお弁當、もらえるかな?
ほのか,はいっ
曇っていた顔を華やがせると、ほのかは鞄から弁當箱を取り出した。
誠,おっ、美味そう
ほのかが作ってくれた弁當は、サンドイッチにハンバーグ、たこさんウインナーとチューリップ型に切られたゆで卵、茹でたブロッコリーにたっぷりのマヨネーズと、華やかなものだった。
俺が食べることを想定してか、結構ボリュームがある。
姫月が作る弁當もなかなかだが、ほのかのもいい感じだ。
誠,姫月は何を作ったんだ?
そう言いながら弁當箱を開けると、そこには様々なおかずがぎっちりと詰め込まれていた。
誠,な、なんだ、これは……
いつもの盛りつけとは大違い。とにかく詰めて詰めて詰めまくったという感じの弁當だった。
姫月,やっ、これは……今日はちょっと浮かれてて、色々と作り過ぎちゃって……
姫月,でも、頑張って……じゃなくて! いつも通りに作ったから、味は大丈夫だと思うけど……
誠,ま、まぁ……姫月の料理の腕は信頼してるけど……
姫月,!
姫月,そっ、そんなこと言っても、何も出ないんだからねっ
誠,やっ、普通に本心だから
姫月,!!
でも、さすがにこれはやり過ぎだろ……。どんだけ浮かれてたんだよ。
まー、いっか。弁當があるだけありがたい。
誠,それじゃ、食べようか?
ほのか,はい
姫月,…………
誠,? 姫月?
姫月,ふぇっ? なっ、何っ?
誠,や、そろそろ食べようか、って話してたんだけど
姫月,うっ、うん
誠,??
なんか、いつもより姫月がふわふわしてるな。
まだテンションが高いままなのか……?
誠,……なぁ、姫月。朝も思ったんだけど、熱でもあるのか?
朝の教訓を活かし、俺は姫月に觸れずに聞いた。
姫月,っつ!!!!
なぜか、姫月の顔が真っ赤になる。
誠,おい、本當に大丈夫か?
姫月,やっ、ホント、だいじょぶ! うん、全然へーき!
ほのか,姫ちゃん、無理してない?
姫月,しっ、してないっ、してないっ
姫月,ほら、今日は暑いじゃん。だから、ちょっと熱があるように見えてるだけだって
そう、なのか……?
まぁ、姫月本人がそう言ってるのだから大丈夫なのだろう。
誠,んじゃ、食べますか
誠,いただきます
姫月,いっ、いただきますっ
ほのか,いただきます
ほのかのお弁當はもちろん、姫月の見た目がアレな弁當も、すごく美味かった。
美味かったのだが、姫月の詰め込みすぎ弁當は二人前くらいあり、ほのかのものと合わせると三人前だ。
姫月が頻繁に俺のほうを見てくるので殘すわけにもいかず、何とか全て平らげた。
うぷ……くるし……。
;0scene 11日目.夜(トゥルールート)
ほのか,姫ちゃん
最後のホームルームが終わると、ほのかが私の席へとやってきた。
姫月,ほのか、どうしたの?
ほのか,これ、ノートありがとう
姫月,何か分からないところあった?
ほのか,ううん。姫ちゃんの字すごく綺麗だし、それに補足説明も書いてあったからすごく分かりやすかったよ
姫月,良かった。もし何かわからないことがあったら聞いてね
ほのか,うん、ありがとう、姫ちゃん
ほのかの澄んだ笑顔に、今日一日の疲れが一瞬にして消える。
この笑顔のためなら、私はいくらでも頑張れる。
姫月,あ、そうだ
ほのか,? どうしたの?
姫月,本當は朝のうちに話すつもりだったんだけど……ほのか、この後って何か予定ある?
ほのか,ううん、特にないけど
姫月,それなら、一緒にスピーチコンテストの練習しない?
ほのか,う――
雪名,姫月ちゃん、そろそろ部活の時間じゃないの?
貓屋敷,私たち、今日も練習見に行くね!
ほのかが返事をする前に、雪名さんが話に割り込むように聲をかけてきた。
いや、わざと割り込んできたんだよね、きっと……。
なぜかは分からないけど、彼女たちは私とほのかが仲良くするのが面白くないらしい。
姫月,ごめんね。今日はスピーチコンテストの練習をしようと思って……
雪名,え? でも昨日までは普通に部活に出てなかった?
貓屋敷,てゆか、姫月ちゃんならスピーチコンテストなんて練習しなくても楽勝だよー
姫月,そ、そんなことないって
雪名さんや貓屋敷さんは私が何でも完璧にこなせると思ってる。
私にしてみれば努力を重ねた結果であって、何もしてないのに完璧にこなせてると思われても困る。
スピーチコンテストだって原稿を覚えて、どうやったら上手く話せて伝えられるか考えて練習しなきゃ、絶対に上手に出來ない。
だって、私は天才なんかじゃないから。
ほのか,姫ちゃん。私のことなら気にしなくていいから、部活に……
姫月,そうじゃないってば。ほのかを気遣ってとかじゃなくて、私が一緒に練習したいの
ほのかの自分以外の意見を優先させようとする言葉に、私は思わず強く言ってしまった。
姫月,あ、やっ、その……ほのかが迷惑じゃなければ、なんだけど……
ほのか,あの……私は、迷惑じゃないけど……
ほのかはそう言ってくれたけど、まだ受け入れていいのか迷いがあるのか、雪名さんたちのほうを窺うように見ている。
雪名,姫月ちゃんがスピーチコンテストの練習したいなら、しょうがないか
貓屋敷,うん。姫月ちゃんの滑ってるところを見られないのは殘念だけど
姫月,ごめんね。スピーチコンテストが終わったら、いつも通り練習するから、そしたらまた見に來てよ
雪名,うん
貓屋敷,じゃあね、姫月ちゃん
姫月,うん、ばいばい
彼女たちは手を振り、揃って教室を出て行った。
……納得、してくれたかな?
ほのか,姫ちゃん……本當に良かったの?
姫月,言ったでしょ。私が一緒に練習したかったから誘ったんだってば
姫月,それとも……本當は迷惑だった?
ほのか,う、ううん! そんなことないよ
ほのか,スピーチコンテスト、すごく不安だから……姫ちゃんと一緒に練習できるのは、すごく心強いよ
姫月,よしっ、じゃあ時間ももったいないし、練習始めよっか
ほのか,うん
雪名,何あいつ、ウザすぎるんだけど
貓屋敷,まだ自分の立場、分かってないんだよ
雪名,それなら……
貓屋敷,うん
誠,おっ、やっと來たか
姫月,兄貴……?
ほのか,お兄さん……?
生徒用の下駄箱の前にいた俺を見つけると、姫月とほのかは不思議そうな顔をした。
姫月,なんで兄貴がこんなところにいるの……?
誠,いや、もう……
姫月,あ、わかった! 女子生徒の上履きの匂いを嗅いでたんでしょっ! 変態! 変態っ!!!
誠,んなわけあるかっ!!!!
姫月の中で、俺はどんなキャラなんだよ……。
姫月,……本當に、匂いを嗅いでたんじゃないの?
誠,俺がそんな変態に見えるのか?
姫月,うん
迷いのない即答に、俺は崩れ落ちた。
そうか……。俺はそこまで駄目な奴だと思われてたのか……。
ほのか,わ、私はお兄さんがそんな人じゃないって信じてますっ
誠,ほのかちゃん……君は本當に天使みたいな女の子だね
誠,性格がひねくれた、姫なんとかとは大違いだよ
姫月,っつ!!
誠,いてっ! ちょっ、おまっ、蹴るのはなしだろ!
姫月,そうなの? 性格がひねくれてるから、このくらい私にとっては普通なんだけど
誠,あだっ! さっきのは冗……いたっ! ちょっ、ストップっ!
姫月,聞こえなーい
誠,噓つけっ! いてっ! 本當に待ってっ! いたっ、いたたっ! そんなに蹴ると、スカートの中が見えるぞ! てゆか、見えてる!!
姫月,っつ!!??
俺の言葉を聞いた瞬間、姫月はスカートを抑えて後ずさった。
姫月,うぅ~~~っ!!!!
あ、れ……?
スカートの中――もちろんノーパン――を俺に見られ、いつものように罵聲を浴びせられると思ったが、姫月は顔を真っ赤にして唸るだけだった。
ほのか,あ、あの……大丈夫ですか?
誠,あ、うん
俺がいつまでもしゃがんだままだったからか、ほのかが心配そうに聲をかけてきた。
一つ頷いた俺は、スーツについた汚れを払いながら立ち上がった。
姫月,……で、何で兄貴がこんなところにいるの?
まだ恥ずかしいのか、姫月が顔を赤くしたまま聞いてくる。
下手にからかって後で反撃されるのも怖かったので、俺は素直に答えることにした。
誠,もう真っ暗だから、ほのかちゃんのことを家まで送ろうと思って
ほのか,……え?
俺の言葉が理解できないのか、きょとんとするほのか。
が、すぐにその顔が真っ赤になり……。
ほのか,ええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?
姫月,ちょっ、ちょっと待ってっ! 兄貴、ほのかに何をするつもりの
よっ!
誠,はっ……?
何を思ったのか、姫月はほのかを守るように俺の前に立ち塞がり、こちらをじろりと睨みつけてきた。
姫月,ま、まままままさかとは思うけど、ほのかのことを送ると見せかけて、暗がりとかに連れ込んで、え、えええええ、エッチなこととか……するつもりじゃないでしょうね
誠,待て待て待て待て待て! 何でそんな発想になる!!
姫月,だって、兄貴が下心なしに女の子に優しくするなんて思えないもん
誠,おいっ、俺もそろそろ泣くぞっ! 少しは俺に対する認識を改め
ろっ!!
姫月,そんなこと出來るわけないじゃんっ! だ、だって兄貴はっ、変態、だし……っ
今までしてきた『調教』を思い出したのか、さらに姫月の顔が赤くなる。
いや、確かにエロいことたくさんしてきたけどさ、あのくらい男なら誰でも願望を持ってるだろ。
……たぶん。
いや、待て。今はその話はいい。話を戻そう。
って、全然よくねーよ! 戻しちゃ駄目だろ!
ちゃんと否定しないと、俺、変態確定じゃん!
あぁっ、なんかテンパってきた。
つか、こいつは自分で『ほのかのそばにいてあげて』って、俺に言ったことを忘れてるのか?
誠,俺は、女の子が夜道を一人で歩くのは危ないから、だから送って行ってあげようって、そう思っただけ!
俺は自分の潔白を証明するように、聲を大にして主張する。
姫月,……信じらんない
誠,…………
……もう泣いていいっすか。
姫月,てゆか……なんで、ほのかにはそんなに優しいのよ……
姫月,ちょっとくらい……私にも……
ほのか,あ、あの、姫ちゃん
今まで一言も話さなかったほのかが口を開いた。
ほのか,大丈夫だよ、姫ちゃん。お兄さんはそんなことする人じゃないもん
誠,!
女神、現るっ!!
姫月,むぅ……ほのかは、兄貴の変態っぷりを知らないから……
ほのか,姫ちゃんだってホントは分かってるくせに
姫月,…………
ほのかが柔らかく笑いながら言うと、姫月はしばらく押し黙り、やがて根負けしたかのようにはぁと溜め息をついた。
姫月,分かった。兄貴の言葉、信じるよ
姫月,でも、やっぱり信じられないから――
誠,どっちだよっ!
姫月,うっ、うるさいっ! とにかく、私もついていくから! これは決定事項だからねっ!
誠,あー、もう好きにしてくれ
こうして俺とほのかと姫月は、一緒に帰ることになった。
はぁ……疲れる……。
誠,スピーチコンテストの練習はどう?
姫月,んー、可もなく不可もなく、って感じかな
誠,なんだそりゃ
姫月,まだ初日だから、よくわかんない、ってこと
ほのか,姫ちゃん、すごいんですよ。何も見ないで流暢に話せて、思わず聞き入っちゃうくらい上手なんです
姫月,ほ、ほのか、褒めすぎだってば
ほのかに褒められて照れてるのか、月明かりに照らされる姫月の顔がわずかに赤くなる。
誠,さすが姫月、何をやらせても完璧だな
姫月,そっ、そんなことないってば。てか、兄貴に褒められるとなんか気持ち悪い
をい……。
俺の顔を見るのが嫌なのか、姫月はぷいっとそっぽを向いてしまった。
なんだろう……この反応の差は……。
誠,……ほのかちゃんは? どうだったの?
ほのか,私は……全く駄目でした……
ほのか,姫ちゃんしか見てないのに、すごく緊張して……たくさんつっかえちゃいました……
そう言うと、ほのかは大きく項垂れてしまった。
ほのか,私、本番で上手にできる自信がないです……
姫月,兄貴、何かアドバイスとかないの?
誠,アドバイスか……
姫月,生徒の前で話すときに心がけてることとか、なんかあるでしょ?
誠,そうだな……俺も人の目を見ると緊張するから、一點じゃなくて全體を見るようにしてるかな
ほのか,全體、ですか?
誠,うん。生徒に視點を合わせないで、こう全體をぼやっと見てる感じ?
姫月,どんな感じか、全然分かんないんだけど
誠,うぐ……
姫月の言うことはもっともだが、見方や捉え方は人それぞれだから、誰にでも分かるように説明するのは難しい。
誠,よし、分かった。誰にでも伝わる方法を教えようじゃないか
姫月,最初っから、それを教えてよ
誠,…………
き、気にするな、俺。
今は、ほのかに教えることのほうが重要だ。
誠,人をカボチャと……
姫月,古っ!
こ い つ !
誠,い、いいだろう……俺が現代版にアレンジしてやろうじゃないか……
どうアレンジしようか考えていると、ふと困り顔のほのかと目があった。
誠,!
ほのかを見た瞬間、これだ! と閃いた。
誠,じゃあ、人の顔をほのかちゃんがつけてるヘアピンのクマだと思ってみるのはどうかな?
ほのか,クマさん、ですか?
誠,そう。これなら可愛らしい顔をしてるし、あまり緊張しないんじゃない?
俺がそう言うと、ほのかは目を瞑ってシミュレートし始めた。
ほのか,私を見てるのは、クマさん……私を見てるのは、クマさん……
誠,どう?
ほのか,はい、これならあんまり緊張しないかもしれないです
ほのかが納得してくれたので、俺は勝ち誇った顔をして姫月を見た。
どうよ、俺の手にかかればこのくらい楽勝なんだぜ。
姫月,何ドヤ顔してんの? キモイんだけど
誠,…………
俺の自信は、姫月によっていとも簡単に折られた。
軽く落ち込んだ俺は、話題を変えることにした。
誠,そういえば、なんでまた急にスピーチコンテストの練習をしようなんて話になったの?
ほのか,それは、姫ちゃんが誘ってくれたんです
誠,姫月が?
意外な答えに、俺は怪訝な顔をしながら張本人である姫月を見た。
姫月,な、何よ?
誠,いや、今まで部活してたのに、なんでそんなことを言い出したのかと思ってな
姫月,別に、練習は前からしようと思ってたよ
姫月,ただ、ほのかが休みだったから今日まで延び延びになっただけ
ほのか,あぅ……ごめん……
姫月の言葉に、ほのかが申し訳なさそうに頭を下げる。
姫月,あ、いやっ、ほのかが悪いとかじゃなくて、私が勝手にそうしたいって思っただけだから、ほのかが気にする必要ないよ
姫月,ほのかが練習できてないのに、私だけが練習するなんて、フェアじゃないじゃん。ただそれだけ
へぇ……。
姫月の公正さ、生真面目さに、俺は思わず感心してしまった。
……とはいえ、他にもスピーチコンテストに出る人もいるんだけどな。
ただ抜けてるだけなのか……それとも、ほのかのことを気遣ったのか……。
姫月に聞いたところで本當のことは教えてくれないだろう。
でも、俺はほのかのことを気遣ったんじゃないかと……何となく、そう思った。
姫月,ちょっ、ちょっと兄貴……っ
誠,うん?
姫月,そっ、そんなニヤニヤしながら見ないでよ……キモすぎて、怖い……
誠,…………
ほのか,ひ、姫ちゃん……
姫月,や、だって事実じゃん。兄貴がキモイのは
ホント、可愛くねーやつ!
いい雰囲気がぶち壊しだよ!!
;0scene 12日目
姫月,ね、ほのか、さっき出された宿題、後で一緒にやらない?
ほのか,うん、いいよ
姫月,じゃあ、スピーチコンテストの練習の前にしよっか?
ほのか,うん
社會科教室での授業を終えた私とほのかは、そんな話をしながら教室へと戻っていた。
姫月,(よかった……)
昨日、上履きを隠されたから気が滅入ってないか不安だったけど、今のほのかの顔を見る限り、平気そうだ。
姫月,スピーチコンテストの練習も、頑張ろうねっ
ほのか,うん。昨日お兄さんにアドバイスをもらったから、今日は姫ちゃんに迷惑かけないと思う
姫月,迷惑って……。私、そんなこと思ってないって
姫月,ほのかは、もっと自分に自信を持つべきだよ
ほのか,で、でも……私、自信を持てるようなこと、何もないし……
そんなこと全然ないのに、ほのかはしゅんとしてしまう。
姫月,私はほのかが淒いこと、知ってるよ。だから、自信持って
ほのか,姫ちゃん……
姫月,ねっ?
ほのか,うん。頑張ってみる
まだ少し弱弱しい言葉だったが、ほのかは頷いてくれた。
きっと何かきっかけがあれば……ううん、一歩を踏み出せば、ほのかは変われると思う。
だから私は、ほのかが前に進もうとしてくれることが嬉しかった。
姫月,自信を持つことばっかり考えて、宿題のこと忘れたら駄目だからね
ほのか,くすくす、そんなことしないよ
笑顔で話を終えた私たちは、それぞれの席に戻った。
他の人とも、今みたいに話せるといいんだけどなぁ……。
自分の席に戻った私は、ほのかのほうを見ながらそんなことを思った。
ほのか,…………
姫月,?
教科書とノートをしまい、次の授業の準備をしようとしていたほのかの表情がわずかに曇った。
まさか……。
姫月,ほのか、どうしたの? 大丈夫?
ほのか,あ、うっ、うん……大丈夫。何でもないよ
姫月,…………
さっきまでとは違う、悲しみを帯びたほのかの顔。
それが何を意味しているのか、すぐに分かった。
姫月,…………そっか。何かあったら、遠慮しないで言ってね?
何とか笑顔を作り、ほのかに聲をかける。
ほのか,うん。ありがとう
ほのか,でも、本當に何でもないから
姫月,……うん
私は小さく頷くと、これ以上ほのかに無理をさせないためにその場を離れた。
そして、ほのかがこちらを見てないことを確認してから、教室を後にした。
誠,次の授業で使うのは……
資料室に教材を取りに行く途中、何やら物音が聞こえた。
誠,何だ、今の音は……?
思わず足を止め、辺りを見回す。
空き教室から、か……?
まさか、またほのかが何かされてるんじゃ……っ!?
よく耳を澄まし、音のするほうへと進んでいく。
ここか……?
誠,姫月……?
そっと教室の中を覗くと、姫月がゴミ箱を抱え、その中身を漁っていた。
誠,…………
何か、ものすごく見てはいけないものを見てしまった気がする。
そんな俺の考えとは正反対に、姫月は白く澄んだ肌や制服が汚れるのも気にせず、ただただゴミ箱を漁り続ける。
もう長いことそうしているのか、姫月の顔には汗が浮かんでいた。
誠,…………
……もしかして、そんなに大事なものを探しているのか?
はぁ、しょうがない。
何か毒づかれるかもしれないが、手伝ってやるか。
誠,何を探してるんだ?
姫月,きゃぁぁぁぁぁぁっ!!!????
誠,ふぉっ!?
俺が聲をかけた瞬間、姫月が甲高い悲鳴を上げた。
姫月と俺は同時に飛び退き、自然と距離を取った。
姫月,あ、兄貴? ちょっ、ちょっと、いきなり聲かけないでよ! びっくりしたじゃない
誠,……あー、はいはい、悪かったな
思った通り、姫月はいきなり毒づいてきた。
慣れてるとはいえ、あまりの反応に呆れてしまう。
誠,で、お前はこんなところで何をやってるんだ?
姫月,え……?
姫月,あっ、こっ、これはっ……別に、何でもないっ
誠,ゴミ箱を漁ってたのに、何でもないわけないだろ。何か探してるなら手伝うぞ?
姫月,駄目っ!!!
誠,は?
なぜか、姫月は俺の親切心を斷ってきた。
あー、そういうことか。
誠,俺なんかに借りを作りたくない、ってか
姫月,べ、別に、そんなんじゃないし
誠,じゃあ、なんであんな強く斷ったんだよ
姫月,そ、それは……おっ、女の子には色々あるのっ! もう、あっち行ってよ!
ん? 男には見られたくない物、ってことか?
生理用品……は、ゴミ箱行きした物を使うわけないか。
下著……も、あるわけないか。
女の子とずっと交流がなかったボッチな俺が、今の言葉だけで何を探してるか分かるわけないか。
誠,ちゃんと片付けとくんだぞ?
姫月,分かってるよ
姫月が頷いたのを見て、俺は教室を出ようとして……立ち止まった。
誠,あと、これ
姫月,え……
誠,ハンカチ。顔とか汚れてるから、それ使って拭け
姫月,あ……
誠,言っておくけど、まだ使ってないからな。だから汚くないぞ
姫月,ん……ありがと
下を向いて視線を逸らした姫月は、ぼそぼそとお禮を言った。
誠,…………
姫月,な、何?
誠,あ、いや、何でもない
俺はそう言うと、いそいそと教室を後にした。
姫月が殊勝な態度でお禮なんて言うから、驚いてしまった。
らしくないことしやがって。
俺の中でよっぽどの驚きだったのか、それからしばらく動悸が収まらなかった。
授業が終わると、教室內の空気が一気に弛緩したものに変わった。
そんな中、姫月が急ぎ足で教室を出て行った。
誠,…………
そういえば、教室に戻ってきたのは始業のチャイムと同時だったな。
もしかして、まだ探し物が見つからないんだろうか?
誠,……ん?
よく考えたら、何か変じゃないか?
何で空き教室のゴミ箱なんかを探してたんだ?
誤ってプリントを捨ててしまったとしても、姫月たちのクラスでは今日、あの教室は使ってないはずだ。
それに何をやらせてもそつなく……いや、完璧にこなす姫月がプリントを誤って捨ててしまうというのも腑に落ちない。
一度湧き上がった疑念は、膨張するようにどんどん大きくなっていく。
(確かめてみるか……)
誠,あ……
でも、姫月に『私がいないときは、兄貴がほのかのそばにいてあげて』って言われたんだっけ。
確かに、ほのかを一人にしていいものか悩む。
だけど、このまま姫月のことを放っておくのも躊躇われる。
誠,…………
教室には他にも生徒がいるし、少しの間ならほのかを一人にしても大丈夫だろう。
俺はそう結論づけ、急いで姫月を追いかけた。
誠,…………
姫月はさっきと同じように、必死にゴミ箱を漁っていた。
しかも、今度もまた、空き教室のゴミ箱だ。
姫月,あった!
ゴミをかき分け、やっと目的の物を見つけたのか、姫月が弾んだ聲で言った。
何を探していたのか確かめようと、視線を姫月の手元へと送る。
誠,え……
姫月が持っていた物は、意外なものだった。
英語の教科書と、ノート。
なんでそんなものが、こんなところにあるんだ……?
そんな疑問が浮かんだ瞬間、ノートに書かれたある文字が目に飛び込んできた。
誠,っつ!
姫月,っつ!?
教室のドアを開けた音がした瞬間、姫月は肩を震わせながら振り返った。
反射的に教科書とノートを後ろ手に隠すが、もう遅い。俺は見てしまった。
誠,姫月……
姫月,な、何……?
誠,お前……何でほのかちゃんの教科書とノートを持ってるんだ?
姫月,っつ!!!
姫月,なっ、何、言ってんの……? 私、そんなの持ってないよ……?
姫月は明らかに動揺し、聲が上擦っていた。
なんで……なんでだよ……。
誠,お前がノートを隠す前、名前が書いてあるのを見た
姫月,あ、う……それ、は……兄貴の見間違いじゃないの……?
なんで、隠そうとするんだよ……。
誠,じゃあ、後ろに隠したものを見せてくれ
姫月,それ、は……
誠,…………
姫月,…………
やはり俺の見間違いではなかった。その証拠に、姫月は隠したものを俺に見せようとしない。
誠,どうして見せないんだ?
姫月,…………
姫月は微動だにせず、何も言おうとしない。
誠,(くっ……)
こんな狀況だというのに、姫月は俺を頼ろうとしない。
そうか……。俺はそんなに信頼されてないのか……。
所詮、姫月にとって俺は『その程度の存在』でしかないのだろう。
誠,…………
俯いたまま黙り続ける姫月を見ていると、心が仄暗くくすんでいく感じがした。
姫月,っつ!
様子を窺うように姫月が上目遣いにこちらを見ると、小さな肩をビクリと震わせた。
刹那、姫月の大きな瞳がじわりと潤み、悲しげな目へと変化した。
誠,(……っつ!)
何をやってるんだ、俺は……。
姫月にこんな辛そうな顔をさせるのが目的じゃないだろ。
普段から俺のだらしない姿を見てるんだ。姫月が頼りがいがないと思うのが當然だ。
姫月に対して負の感情を抱くのは……お門違いだ。
俺は何とか暗い感情に折り合いをつけ、頭を切り換える。
今は、ほのかのことだ。
誠,……誰が隠したのか知ってるのか?
姫月,そ、それは……
ほのかをいじめてる子には、俺も心當たりがある。
放課後の教室でぶつけられた辛辣な言葉。隠された制服、上履き。
陰濕ないじめは、終わる気配がない。
真面目で正義感の強い姫月が、なぜ彼女たちを注意しないのかは分からない。
姫月,…………
また、黙りか……。
誠,……お前が注意しないなら、俺が注意する
姫月,っつ!! 駄目!
誠,なんでだよ! これ以上いじめがエスカレートしたらどうするんだ!
姫月,そうならないように、私がほのかのそばにいる! 兄貴も、ほのかのそばにいてくれるって約束したでしょ
誠,それでも、限界があるだろ
誠,現に、こうしてほのかちゃんの教科書とノートがゴミ箱に捨てられてるじゃないか
姫月,それは……そう、だけど……
姫月,でも……もう少しだけ待って……お願い……っ
姫月,もう少しで、きっとみんなほのかのこと、認めてくれると思うから……
姫月,だから……お願いっ
あの傲慢で我が儘で、俺のことを下に見てる姫月が……頭を下げた。
今の口ぶりからして、姫月には何か考えがあるのだろう。
姫月,…………
頭を下げ続ける姫月に、俺は……。
誠,……またほのかちゃんがいじめられてることが分かったら、その時は介入するからな
姫月,……うん
本當にこれでよかったのか……確信が持てない。
だけど、姫月は俺なんかよりほのかのことをよく知っている。
その姫月に何か考えがあるなら、それを試してみるのはありなんじゃないかと思った。
姫月,……今日は、このくらいで終わりにしようか?
ほのか,うん
私とほのかは、昨日と同じように教室でスピーチコンテストの練習をしていた。
だけど今日は私が全く集中できなかったから、昨日より1時間早く切り上げた。
姫月,ごめんね、ほのか
ほのか,え? 何で姫ちゃんが謝るの?
姫月,今日の私……失敗ばかりで、ほのかに迷惑かけちゃったから
ほのか,ううん、気にしないで姫ちゃん
ほのか,昨日は私が迷惑かけたんだし、これでおあいこだよ
姫月,ほのか……
ほのかの優しい心遣いに、沈んでいた気持ちが少しだけ浮上する。
それでも、私の心は晴れることはない。
どうしても、兄貴に向けられた漆黒の瞳が、脳裏から離れない。
でもそれは、私のせいだから仕方ない。
仕方ないけど……兄貴にあんな目をさせてしまったことが、すごく……すごくすごく悲しい。
少しずつ弱っていく私の心に、「私のしてることは間違ってるのかな……?」という疑念が生まれてくる。
女子のいじめは、男子よりも陰濕なことが多い。
今のほのかが受けてるものとは比べ物にならないくらい酷くて醜い。
だから私は、彼女たちの闇色の気持ちを刺激しないように口を出さず、陰でほのかを支えようと思った。
ほのかなら乗り越えられる、認めてもらえると、そう信じてるから。
でも……。
でも、兄貴の目を思い出すと、『それは本當に正しかったの?』、『間違った選択だったんじゃないの?』と考えてしまう。
その考えはどんどん頭の中で増殖していき、思考が悪い方へ悪い方へと傾いていく。
『何で兄貴に任せなかったの? ほのかに嫉妬した? それとも、自分の考えに自信があった?
心の中で、真っ黒な私が聞いてくる。
だけど、私は答えを見つけられない。
否定も肯定も、出來ない。
考えることが、怖い。
姫月,(もう……どうすればいいのか、分からないよ……)
ほのか,姫ちゃん
姫月,……っ、な、何?
いつの間にか帰り支度を終えたほのかに呼び掛けられ、私は上擦った聲で返事をした。
ほのか,あのね……姫ちゃんに、お話があるの……
姫月,話? 何?
いつもの調子で聞き返す。
私……いつもみたいに笑えてるかな……?
そんな不安な胸の中に、ほのかの言葉が突き刺さった。
ほのか,私、ね……お兄さんに、もう一回……告白、しようと思うの……
姫月,…………
口の中がカラカラに乾き、喉がひりひり痛む。
ほのかの言葉が頭の中で反響し、頭の奧がズキズキする。
一度大きく跳ねた心臓が、止まってしまいそうなほど弱い鼓動になる。
ほのか,お兄さんが優しくしてくれるのは……私が生徒で、姫ちゃんのお友達だからだって、分かってるの……
ほのか,それでも、私はお兄さんの優しさが嬉しくて……見てるだけで胸がドキドキして……好きって気持ちが、日に日に強くなっていくの……
ほのか,だから……私、ちゃんと自分の気持ちをお兄さんに伝えようって……思ったの……
姫月,やっぱり、ほのかは強いな……
ほのか,え? 何?
姫月,ほのか、頑張ってねっ
ほのか,うん、ありがとう、姫ちゃん
姫月,じゃあ、善は急げだね!
ほのか,え?
姫月,今日、私は用事があるってことにして、兄貴と二人っきりにしてあげる!
ほのか,え、でも……
姫月,ほらほら、早くしないと決心が鈍っちゃうかもしれないよ?
ほのか,……いいの?
姫月,親友のためなら、このくらい當然でしょ!
ほのか,ありがとう、姫ちゃん
姫月,頑張ってね、ほのか
ほのか,うん!
ほのかは力強く頷くと、教室を出て行った。
姫月,よか、った……最後まで、ほのかに、気づかれなかった……
機の上に、大粒の雫がぽたぽたと落ちていく。
私の心は、壊れてしまいそうなほどボロボロだった。
ほのか,お、お兄さん
昨日と同じように生徒用の下駄箱の前で待っていると、ほのかがやってきた。
誠,あれ? 姫月は?
ほのか,あ、その……姫ちゃんは用事があるらしいので……きょ、今日は、私とお兄さんで……先に帰って、って言ってました……
誠,そ、そう
俺と二人っきりという狀況が気まずいのか、ほのかがしどろもどろに言う。
姫月の奴……。昨日、俺が『送り狼』なるとか言いがかりをつけたから、ほのかが緊張してるじゃないか……。
トーク力が低いんだから、こういうとき何を話せばいいのか分からないって言うのに……。
誠,…………
ほのか,…………
誠,えーっと……それじゃあ、行こうか?
ほのか,は、はい……っ
いつまでも無言のままでいるのわけにもいかず、俺たちは帰ることにした。
したのだが……。
誠,…………
ほのか,…………
何も話すことがない。
最初の方は、會話もあった。
以下、その時のやり取り。
誠,きょ、今日の練習はどうだった?
ほのか,おっ、お兄さんのアドバイスのおかげで、今日は大丈夫、でした、はい
誠,そ、そっか。それはよかった
ほのか,はい、よかったです
で、しゅーりょー。
俺が女の子と軽快なトークができるリア充だったら、こんな気まずい思いをさせなくて済むんだが……。
彼女いない歴=年齢、な俺にそんなことできるはずもなく……。
誠,…………
ほのか,…………
結局、俺たちは無言のまま歩き続けた。
だけど、沈黙は突然破られた。
ほのか,あ、あの……っ!!
誠,ふぉっ!?
ほのか,あ……ごっ、ごめんなさいっ、急に大きな聲を出して……
誠,あ、いや、気にしないで
寧ろ、情けない反応をしたから忘れてほしい。
ほのか,あの、ですね……お兄さんに……お伝えしたいことが……ある、んです……
誠,伝えたいこと……?
ほのか,は、はい……
よほど言いづらいことなのか、ほのかは俯いてしまった。
誠,えっと……何かな?
姫月に何か変なことを吹き込まれたとかじゃないだろうな……。
ほのかはスカートをギュッと摑むと、意を決するように顔を上げた。
ほのか,一度、は、お伝え、したんですけど……その……
誠,うん
ほのか,私、は……お、お兄さんのことが……好き、です……
誠,え……
全く予想してなかった言葉に、一瞬ほのかが何を言ってるのかわからなかった。
ほのか,ずっと……ずっと前から……この公園でいじめられてるのを助けてもらった、あの時から……私は……お兄さんのことが……好き、でした……
誠,あ……
誠,もしかして、ロッカーに閉じ込められたときに言ってた、『また助けられちゃいましたね』って言うのは……
ほのか,はい……今のことを、言ってました……
ほのか,ずっと前のことだから、覚えてませんよね……普通は……
誠,ご、ごめん……
ほのか,いえ、いいんです
ほのか,あの時、お兄さんが助けてくれたから……私は……こんなに素敵な人に……戀、することが出來たんですもん……
誠,そっか
ほのか,だから…………もし、よかったら……私を……お兄さんの彼女に、してください……
月明かりでもわかるほど真っ赤な顔でほのかが気持ちを伝えてきた。
その顔からも、言葉からも、ほのかの真剣な思いが胸に響く。
前に勢いで口をついて出た告白とは、重みが全く違う。
教育実習中は答えを保留にするつもりだったが……この真剣な告白にそれは出來ない。
だから俺は、きちんと答えを伝えることにした。
ほのかの気持ちを受け入れる
誠,こちらこそ、よろしくお願いします
ほのか,え……あ、あの……それって……?
誠,俺の彼女になってください
ほのか,あ……
ほのか,はっ、はいっ!!
ほのかの顔から、今まであった緊張の色が一気に消えた。
今まで見た中で一番の笑顔に、自然と俺の鼓動が高鳴った。
(この子のこと、大切にしないとな)
そう心に固く誓った。
誠,ただいまー
姫月,お帰り
誠,なんだ、帰ってたのか
用事があるって言ってたから、俺より帰りが遅いかと思ってた。
姫月,……兄貴、なんか機嫌がいいね。何か嬉しいことでもあった?
あれ……? ほのかから聞いてないのか?
俺から伝えちゃってもいいのかな……?
ま、いっか。今はリア充の仲間入りをして気分がいい。
我が妹に、俺の喜びを聞いてもらおう!
誠,実は、ほのかちゃんと付き合うことになってな!
姫月,…………へぇ、そうなんだ
誠,いやー、告白した時のほのかちゃん、ものすごく可愛かったぞ。あの可愛さは世界一だな
誠,お前にもあの可愛さを見せてやりたいけど、あれは俺だけのものだからなぁ~
姫月,…………
誠,むふふ、ほのかちゃんのこと考えるだけでニヤけてくるな
姫月,……………………で
誠,うん?
姫月が何か言ったが、浮かれていた俺は聞き逃してしまった。
誠,悪い、聞こえなかった。もう一回言ってくれるか?
姫月,ほのかと……つきあわないで……
誠,はぁ?
何でそんなこと……って、俺のことを信用してないからか。
誠,安心しろ。正式につきあうのは、俺の教育実習が終わってからだから
誠,お前との、『実習期間中は手を出さない』って約束はちゃんと守るよ
姫月,そうじゃない……そうじゃないの
誠,?? じゃあ、何なんだよ?
姫月,お願い……ほのかと、つきあわないで。もっと……もっと私のこと、調教してもいいから。だから……だから、お願い
どこか切羽詰まった雰囲気を漂わせながら、姫月が食い下がる。
そこまで俺のことが信用ならないのかよ……。
誠,あのさ……俺とほのかちゃんは両思いなんだから、お前にとやかく言われる筋合いはないだろ
誠,もう十分調教したし、終わりでよくね? 俺も飽きたしさ
誠,だから今後は、俺はほのかちゃんと、お前は俊成と一緒にいるようにしようぜ
姫月,…………そう、だね
ほのかとの時間が減るのが悲しいのか、姫月は俯きながらぽつりと呟いた。
誠,じゃあ、俺は著替えてくるから
姫月,うん……
ほのかに何てメールしようかなぁ~
浮かれ気分でそんなことを考えながら、俺は部屋へと戻った。
姫月,……………………
斷る
彼女にこれ以上悲しい想いをさせるのは辛い。
でも、だからといって偽善でつきあうようなことをすれば……餘計にほのかのことを傷つけることになる。
だから……。
だから、その言葉を口にしなければいけない。
俺はぎゅっと拳を握り、ほのかに自分の気持ちを……答えを告げる。
誠,ほのかちゃんの気持ち……すごく嬉しいよ
誠,だけど……つきあうことはできない
ほのか,あ……
誠,ごめん
ほのか,き、気にしないでくださいっ! 私が、お兄さんの彼女さんになるなんて……最初から無理な話だったんです
そんなことない。
贔屓目なしに見ても、ほのかは可愛い。
スタイルも、性格もいい。
小動物のような愛らしさは、守ってあげたいとさえ思える。
ほのかはそのくらい魅力的で、俺にはもったいなくらいだ。
そんな彼女の告白は、自慢して回りたいほど嬉しく……斷る理由などない。
ないのだが……どうしても、俺の気持ちがすっきりしないのだ。
言い表しようのない心のしこりが、俺の中でわだかまっている。
ほのか,あの……ありがとうございました
誠,え……?
ほのか,私……お兄さんに告白できて、よかったです
誠,ほのかちゃん……
ほのか,結果は殘念でしたけど……でも、お兄さんにちゃんとお返事してもらえて……私は、それで十分です
わずかに瞳が潤んでいたが、不思議とほのかは笑顔だった。
どこか充実感に満たされたその顔に、罪悪感を持った俺の心は少しだけ軽くなった。
ほのか,あの、お兄さん……
誠,うん? 何?
ほのか,わがままなお願いかもしれないですけど……これからも、今まで通りに接してもらえますか……?
誠,ほのかちゃんは……それでいいの? フッた男に話しかけられるの、嫌じゃない?
ほのか,そんなことないです。寧ろ、このまま疎遠になっちゃう方が……寂しいです
誠,そっか
誠,……うん、わかった
ほのか,ありがとうございます
そう言うと、ほのかは律儀に頭を下げた。
俺は頭を下げられるようなこと、何もしていないのに。
ほのか,それじゃ、私はここで
誠,え……家まで送るよ?
ほのか,いえ、大丈夫です。家は、すぐそこですから
誠,……そう?
ほのか,はい。送ってくれて、ありがとうございました
誠,うん
誠,……それじゃ、またね
一瞬言おうか迷ったが……別れ際、俺はほのかにそう聲をかけた。
ほのか,はい。また
ほのかは再び頭を下げると、いつもと変わらない足取りで帰って行った。
ふと空を見上げれば、ほのかが見せた笑顔のように、そこには一點の曇りもなかった。
俺は……何でほのかの告白を斷ったのだろうか……?
今まで俺は戀愛とは無縁で……人生でモテ期が3回あるとか噓だろ、と心の中で吐き捨て続けてきた。
自分から女の子に告白することができないチキン野郎な俺はエロゲの世界に逃げ込み、ずっと現実を見ないようにしてきた。
そんな救いようのない俺に、魅力的な女の子が告白してくれた。
こんなこと、もう二度とない。
それなのに、俺は斷った。
誠,この胸の中にあるしこりはなんなんだ……?
いくら考えても、その結論は出なかった。
姫月にどう説明したものか考えて遠回りしながら家路につくと、なぜかリビングには明かりがついていなかった。
時計に目をやると、もうすぐ9時になろうとしている。
用事があるとは聞いていたが、さすがに遅すぎる。
誠,部屋、か……?
得體の知れない不安から、俺は急いで姫月の部屋へと向かった。
誠,姫月、帰ってるか?
誠,…………
ノックして聲をかけるが、返事がない。
誠,開けるぞ?
誠,姫月……? 電気、つけるぞ?
誠,…………
真っ暗だった部屋に明かりがともり、真っ黒だった世界に色がつく。
だけどそこに姫月の姿はなかった。
渦巻いていた不安が大きくなり、背中に嫌な汗が伝い落ちる。
誠,……っつ
俺は慌ててポケットから攜帯を取り出すが、姫月からの著信はない。
あの真面目な姫月が、何の連絡もしないで帰りが遅くなるなんて考えられない。
何か、あったのか……?
誠,っつ!!!
嫌な予感がわき上がった瞬間、俺は駆けだした。
………………
…………
……
誠,はっはっはっはっ……
學園や繁華街を駆けずり回って探したが、未だに姫月は見つかっていない。
何度も攜帯にかけるが繋がらず……折り返しもない。
誠,姫月、どこにいるんだよ……
繁華街を探し回って思ったが、俺は姫月のことを何も知らない。
普段どこで遊んでいるのか、どこで買い物しているのか。
何も……何も知らない。
誠,くそ……
馬鹿か俺は。そんなこと考えてる暇があったら、足を動かせ。姫月を探せ。
誠,……っつ!
俺は重くなった足を動かし、再び姫月を探しに駆けだした。
………………
…………
……
誠,はぁ、はぁ……はぁ、はぁ、はぁ……
姫月を探し始めて二時間近く経ったが、未だに見つからない。
一度家に戻ってみたがやはり姫月の姿はなく、焦燥感が恐怖に変わってきていた。
心臓がズキズキと、走った疲れとは違う鈍い痛みが俺を苦しめる。
探しても探しても見つからない。
これと同じような體験を、昔したことがある。
??,お兄ちゃん……
誠,っつ!?
今の恐怖と、朧気な過去の恐怖が俺の中でリンクした瞬間、弱弱しい聲が頭の中に響いた。
俺のことを『お兄ちゃん』と呼ぶ家族はいない。
だけど……妹は、いる。
誠,ひめ、き……?
その名前を呼んでも、返事は當然無い。
朧気な記憶は霞みがかったままで、クリアになることもない。
フラッシュバックした記憶と、頭の中に響いた聲が同一のものなんて確信は……どこにもない。
それでも俺は、気付けば走り出していた。
學園の近くに、理事長であるジジイのでかい家がある。
俺は適當に理由をつけて年始くらいにしか顔を出していない。
だけど、まだ姫月が小さかった頃……俺たちは両親に連れられて何度も來ていた。
俺と姫月の數少ない共通の場所。
そして唯一殘った、姫月のいる可能性がある場所。
久方ぶりに訪れるジジイの家に緊張しつつ、一歩だけ踏みいる。
俺が大人になっても、家の大きさに圧倒される。
家の隣に大きな倉があるから、餘計にそう感じるのかもしれない。
誠,あ……
大きな倉に目をやったとき、扉が開いていることに気付いた。
自然と足が動き、倉へと近づいていく。
心臓が早鐘を打つのを感じながら中を覗くと、そこには……。
姫月が、ぽつんと小さく座っていた。
よかった……。
全身を安堵感が覆い、體から力が抜けて崩れ落ちそうになる。
誠,……姫月
姫月,え……
俯いていた姫月は、俺に呼ばれて顔を上げた。
姫月の小さな顔は月明かりに照らされて、どこか神秘的に見えた。
一瞬ドキリとするが、そこにいるのは赤くなった目に涙を浮かべた等身大の女の子だ。
ずっと……ずっと俺が探していた、一之瀬姫月だ。
姫月,あに、き……?
姫月が目を大きく見開くと、涙がぽろりとこぼれた。
姫月,え……? え? なんで?
俺がここにいる理由が分からないのか、姫月は混亂していた。
姫月,どうして兄貴が……? えっ?
見つけたら、言ってやろうと思っていた言葉が山ほどあったはずなのに……どれも思い出せない。
でも、胸の中に一つだけ言葉が殘ってる。
誠,無事で、よかった……
自分のものとは思えないほどの優しい聲で言い……俺は姫月を抱きしめた。
誠,本當に……無事でよかった……
姫月,あ……
俺の耳が、姫月の柔らかな聲を感じる。
俺の腕が、姫月の優しいぬくもりを感じる。
俺の鼻が、姫月の甘い匂いを感じる。
ここに……本當に姫月がいる。
安心感が強くなり、體からさらに力が抜けそうになる。
それでも、俺は姫月を強く強く抱きしめる。
姫月,兄貴……っ、ちょっと、苦しいよ……
誠,あ……
姫月の詰まった聲で我に返り、俺は慌てて離れた。
誠,わ、悪い……
俺は何をしてるんだ……。姫月を抱きしめるなんて……。
姫月,どうして、兄貴がここにいるの……?
誠,そんなの、お前のことが心配だったからに決まってるだろ
姫月,そ、なんだ……
誠,あぁ
姫月,…………
誠,…………
姫月,…………ね、兄貴
姫月は俺から目をそらすと、蚊の鳴くような聲で話しかけてきた。
姫月,ほのかから、さ…………告白……されたんでしょ……?
誠,……あぁ
姫月,…………なんて……答え、たの……?
誠,斷ったよ
姫月,え……
俺の答えを聞いた瞬間、姫月は再び目を見開いてこちらを向いた。
姫月,え? え? どうして? ……なん、で?
どうして、ほのかの告白を斷ったのか……今なら、その理由が分かる。
俺が告白を斷った理由は……心のしこりの正體は……姫月だ。
この、いつも俺のことを罵ってばかりの、小生意気なこいつのことが引っかかったのだ。
でも、なんで姫月のことが引っかかったのかは……分からない。
誠,ほのかちゃんは、俺にはもったいないだろ
俺は『姫月のことが引っかかって斷った』とは言えず、そう誤魔化した。
誠,あんなにいい子、俺みたいなオタクじゃなくて……もっといい男とつきあうべきだ
姫月,そ、なんだ……
何か思うことがあるのか、姫月は複雑な表情を浮かべた。
罵倒クイーン姫月様がしおらしくなるなんて、らしくない。
俺は腹に力を入れて、明るい聲を出す。
誠,さっ、帰ろうぜ。腹減った
姫月,あ…………
俺の行動は空回ったのか、姫月の顔は曇ったままだ。
姫月,あの、兄貴……
誠,なんだ?
姫月,その……え、と…………心配かけて……ごめん、なさい……
誠,…………
一瞬、姫月が何を言ったのかわからなかった。
今……敬語、だった……?
俺と二人っきりなのに……?
姫月,あと…………あ、の…………心配してくれて……あり、がと…………
姫月,見つけてくれて…………嬉しかった…………
誠,お……おお……
姫月の言葉に、頭が真っ白になる。
それでも、何とか言葉を絞り出した。
その言葉を最後に、俺たちは無言のまま並んで家へと帰った。
いつもだったら気まずさや空気の重さを感じるのに……今日は、どこか居心地がよかった。
;0scene 手作りの食事(前半)
誠,く~~~。今日も頑張った……
教育実習が終わり、ギリギリの成績で大學を卒業した俺は、その後この白皇學園の教師となった。
まだ擔任のクラスは受け持っていない俺は今のところフリーな時間も多い。
誠,ひとまず今日の仕事は終わった……
今日の授業は午前中で終わったため、日が明るい內に帰れる。
誠,天気が良いと映畫に行きたくなるよなぁ……
まぁ誰に言っても理解されはしないのだが。
晴れている時こそ薄暗い箱の中に閉じ籠ってしまいたいと思うのはオタクの[性/サガ]なのだろうか。
誠,ほのかは今日部活で遅くなるって言ってたし、仕方ない。帰るか
俺はリクルートバッグに教材を入れ、帰宅準備を整える。
周りを見るとほんの數人だけ殘っているが、あらかたの教師が既に帰宅の途についていたようだ。
誠,お先に失禮します
未だ殘っている同僚たちに聲をかけ、俺は職員室を出る。
誠,あれ?
靴を履き替えようと昇降口に向かった俺は、何故か自分の下駄箱の蓋だけが開いているのに気付いた。
誠,うーん。また閉め忘れたか……
閉めたつもりなのだが、何故かたまに下駄箱の蓋が開いたままになっていることがある。
誠,気が緩んでるんだろうな……
そう思い、俺は今度はきちんと蓋を閉めたことを確認して學園を後にした。
誠,ただいまー
…………。
誠,ん? 姫月はまだ帰っていないのか
普段なら俺より先に帰っているので、どこかに遊びに行ったのだろう。
誠,そういえばあいつ、俺と違って友達多いのにあんまり外出しないんだよな……
誠,もう練習しないでいいんだからもっと遊びに行けばいいのに……
俺はリビングのテレビに置いてある姫月の寫真を見ながらそう呟く。
寫真の中で姫月は金色のメダルを嬉しそうに掲げて笑っている。
誠,こういう姿ももう見られないのか……
去年俺が教育実習を終えた後、姫月は周囲の反対を押し切りフィギュアスケートをやめてしまった。
折角あと少しで五輪選手に選ばれるところだったのに、といつもの取り巻きたちはうるさかったらしい。
どこか怪我をしたわけでもなく、本當に突然やめてしまったのだ。
誠,ま、少し殘念かな……
銀盤の上を軽やかに滑っていく姫月は、贔屓目なしに見ても本當に綺麗で活き活きとしていたのに。
寫真立てを元の場所に戻し、何気なく庭のほうに目をやると、もくもくと上がる煙が見え、俺の背中にひやりとした汗が伝った。
誠,火事!!? 火事か!!!???
俺は靴下のまま、バケツを手に持ち大慌てで庭へと出た。
姫月,あ、兄貴。おかえりー
誠,………………
姫月,……? どうしたの? バケツなんて持って
誠,……いや、何でもない。何で焚き火なんてしてるんだ? 今夏だぞ? 暑くないか??
姫月,んー。暑いけど、何か急に焼き芋が食べたくなっちゃったんだよね
誠,ふぅん?
まぁ、何故か急に無性に食べたくなる物ってあるよな。
特に姫月は昔から焼き芋が好きだった気がする。
誠,あれ? でも、お前俺が大學に行ってた4年間は全然焼き芋食ってなかったよな
姫月,……そうだっけ?
誠,あぁ、俺が中學高校の頃は、年に何回か焚き火で焼き芋してた気がするけど
姫月,あぁ、うん。だって、兄貴が大學に通ってる間は必要なかったからね
誠,必要なかった?
姫月,あ、焼けたみたい。はい、兄貴
誠,お? おぉ、サンキュ。って、うを!! 熱ぃ!!!
姫月,あはは、焼きたてだもん。熱いに決まってるよー
誠,うぅ、そりゃそうなんだが……
姫月,中も熱いんだから、火傷しないようにね
誠,お、おう
1年前、俺がほのかと付き合い始めてから、姫月はまるで憑き物が落ちたかのように穏やかになった。
俺のことを蟲だゴミだと罵倒することもなく、蹴りもビンタも飛んでこないし、何より俺の言うことを素直に聞くようになった。
きっと俺とほのかが一緒にいる時間の分だけ姫月との時間が少なくなり、お互いに良い距離感を保てるようになったんだろう。
以前までの口うるさい姫月がいなくなってしまったようで、少しだけ寂しくはあるけれど。
姫月,どう? 美味しい?
誠,んん?? むぐ。おお、美味いぞ。やっぱこうやって焼くと美味いよなー
姫月,そう、良かった
にこりと微笑む姫月に、俺はドキリとしてしまう。
以前までの険悪さがなくなったことで、姫月の可愛さがより一層引き立つようになった気がする。
誠,ごほ。お前は食べないのか?
姫月,私? ううん、いらないよ。もう用は済んだもの
妹にトキめいたことを誤魔化そうと質問してみると、姫月の答えはよく分からないものだった。
誠,ふぅん?
釈然としない答えに、俺は自分が來る前に1、2個食べてたんだろうなと結論付けることにした。
姫月,よし、それじゃ。兄貴、私は部屋に戻るね
誠,あぁ、分かった
小さな炎を浮かべていた焚き火に水をかけ、姫月はその場を離れる。
どこかよそよそしいのだが、きっと年頃の兄妹なんてこんなものなのだと自分を納得させて、俺は未だほくほくと湯気の立つ焼き芋にパクついた。
ふと焚き火の跡地を見てみると、燃えそびれたのだろうか。黃色い封筒のようなものが見える。
誠,……?
何気なくそれを取ってみるが、宛名部分は焼けてしまっていて読み取ることは出來なかった。
食事の後、特にすることもない俺はぼんやりとテレビを見る。
後ろのキッチンから、カチャカチャと姫月が食器を洗う音が聞こえてくる。
何もない、とても穏やかな時間だ。
姫月,ふぅ。終わったー
誠,お疲れさん
姫月,いーえ。このくらいもう慣れっこだもん
誠,はは、姫月はきっと良いお嫁さんになれるな
姫月,…………
誠,? どうした?
姫月,……ううん。何でもないよ
俺の言葉に、ほんの一瞬だけ姫月が傷ついたような表情を見せた気がした。
誠,(気のせい、か……?)
姫月,そういえば、來週の日曜日は兄貴の誕生日だね
誠,ん? あ、あぁ。そうだな。すっかり忘れてたよ
姫月,あはは、駄目じゃない。ほのかだってきっと楽しみにしてるよ
そういえばほのかと付き合って迎える初めての誕生日だった。
ほのかは何をくれるのだろうか。
もしかして……。
ほのか,あ、あの……お兄さん、ぷ、プレゼントは、わ、私で、いいですか?
誠,駄目だよ
ほのか,え……
誠,ほのかでいい、じゃなくて、ほのかがいいんだ……
ほのか,お兄さん……私、嬉しいです。すごくすごく幸せです
ほのか,だから、お兄さん……私を、たくさん、召し上がれ
誠,ほのか……!!!
姫月,ねぇ兄貴! 兄貴ってばぁ!
いっただっきまーっす! と妄想世界にダイブしようとした時、姫月の聲によって現実へと連れ戻される。
相変わらず空気の読めない奴だ。
誠,……こほん。何だよ
姫月,だから、ほのかから3人でお祝いしようって言われてるから私が料理作ろうと思ってるんだけど
誠,あぁ、良いんじゃないか?
姫月,兄貴は何が食べたい? 折角のお誕生日なんだから好きなもの作ってあげるよ
誠,俺の食べたいもの? そんなものはほのか一択に決まっているじゃないか!
姫月,………………
うぅ。姫月の目が冷たい。
きっと心の中で『この変態兄貴!』と罵られていることだろうよ。
姫月,………………
誠,? 何ていったんだ?
俯いたままぽつりと呟いた姫月の言葉が聞き取れなくて、俺は首を傾げて聞き返す。
姫月,……ううん。まぁいいやって言ったの。メニューは私が勝手に考えるから、楽しみにしてなさいよね
誠,え? あ、あぁ、まぁ姫月の料理は何でも美味いから楽しみだけど
姫月,よし。じゃぁ、私そろそろ寢るね。お休みなさい
誠,おお。おやすみ
そう言って姫月はパタパタとスリッパの音を鳴らしながら自分の部屋へと戻っていった。
ほのかと二人きりの誕生日というのも捨て難いが、やっぱり姫月もいたほうが楽しいよな。
誠,さてと、それじゃぁ俺も部屋に戻るか
誠,くぅ~~……
授業の終わった金曜日。
明日は土曜日で授業も午前中だけなので準備も楽だ。
そう思いながら俺はこりにこった肩をぐるりと回す。
ふと窓の外を見るとほのかが焼卻爐のあたりをうろうろと歩き回っているのが見えた。
誠,またか……
俺ははぁ、と溜め息を吐くが悩んでいても仕方ない。
明日の準備を中斷して焼卻爐のある校舎裏へと向かった。
校舎裏に著くと、ほのかが上履きのまま何かを探しているのが見えた。
誠,ほのか、何探してるんだ?
ほのか,きゃっ!!!???
俺の聲に驚いたのか、ほのかは振り向きざまに綺麗に尻餅をついた。
ほのか,あ、お、お兄さん……急だったから、びっくりしちゃいました……
誠,ご、ごめん。まさかそんなに驚かれるとは思わなかったんだ。大丈夫?
ほのか,あ、ありがとうございます……
細く白い手が、差し伸べた俺の手に重なる。
強く握り締めたら折れてしまうのではないかと思う程、ほのかの指は華奢だ。
その手が小刻みに震えていて、胸が締め付けられるように痛む。
誠,まだ続いてるんだ……
ほのか,……はい
誠,今日は何を隠されたの?
ほのか,………………
誠,ほのか
言い澱むほのかに、俺は続きを促そうと名前を呼ぶ。
ほのかは言い難そうに目を伏せるが、やがて観念したかのように口を開いた。
ほのか,…………靴、です
ほのか,で、でも、靴がなくても上履きがありますから……
誠,そういう問題じゃないだろう!?
ほのか,っつ…………
俺の聲にほのかが聲をなくす。
何をやっているんだ……。俺は。
ここでほのかを怖がらせても、何の解決にもならないのに……。
誠,ごめん……、どうしても、ほのかが心配で……
ほのか,お兄さん…………
誠,…………やっぱり俺から言おうか? それならあの子たちだって
こんなことは止めるから、と続けようとした俺の唇に、ほのかの白魚のような指が觸れる。
はっとしてほのかを見ると、彼女は驚くほどに優しい微笑みを浮かべていた。
ほのか,……大丈夫ですよ。お兄さん
誠,でも……
ほのか,本當に大丈夫なんです。そうやって私のためにお兄さんが怒ってくれるだけで、私は救われますし
ほのか,このくらい、もう大したことじゃないんです……。だって私には姫ちゃんもいてくれるし、それに
ほのか,……お兄さんっていう素敵な彼氏がいますから……
誠,ほのか……
そう言ってにっこりと笑うほのかは本當に綺麗で可愛くて、俺は思わず彼女を抱きしめてしまった。
ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐって、目の奧がツンと痛んだ。
ほのか,あ……、お兄さん……
誠,ほのかのことが、好きだよ……
ほのか,……はい、私も。お兄さんのこと、大好きです
ほのか,世界中で誰よりも、一番……
その言葉に応えるように、俺は強く強く彼女を抱きしめる。
大人しく俺の胸の中に収まってくれているほのかの表情はとても優しくて。
遠慮がちに背中に回された小さな手が、じんわりと暖かく、とても心地よかった。
ほのか,送って下さってありがとうございました
誠,ううん。結局見つけられなくてごめんね
ほのか,お兄さんが謝ることじゃないですよ。また買えばいいだけですし
ほのか,でも、明後日はお兄さんのお誕生日なのに嫌な気分にさせてしまってごめんなさい……
誠,それこそほのかのせいじゃないんだから、謝る必要なんてないよ
ほのか,そうですか?
誠,そうそう。ほのかが謝るなら俺も謝らなきゃいけなくなるから、もう謝るのはやめよう?
ほのか,ふふ、そうですね
誠,それにそんなことより、未だに俺のことを名前で呼んでくれないことのほうを謝ってほしいな
ほのか,えっ……!!??? あ、あぅ……ご、ごめんなさい……ど、努力はしてるんですけど、でも……そんな、は、恥ずかしくて……
誠,はは。冗談だよ。ホントに謝らないで
ほのか,うぅ……お兄さんってば、意地悪です……
誠,ごめんごめん
はは、と笑いながら俺はほのかの頭を撫でた。
俺の好きな、さらさらと滑る絹のような黒髪だ。
誠,さてと、それじゃ、遅くなっちゃってご両親も心配してるだろうから早く帰ったほうがいいよ
ほのか,はい、それじゃ……
ほのか,…………
誠,?
別れの言葉を言うだけなのに、ほのかは少し考え込むような表情を見せる。
誠,どうかした?
ほのか,あ、あの、お兄さん……今日は、本當にありがとうございました
ほのか,本當に本當に、嬉しかったです……
ほのか,だから…………
誠,!!!!
白く輝く月の下で、ほのかの柔らかな唇の感觸。
それは本當に一瞬のことで。
ほのか,おやすみなさい
照れくさそうに頬を桃色に染めてそう言うと、ほのかはふわりとスカートを翻して駆けて行った。
甘酸っぱく涼やかな香りだけを殘して。
初めて觸れたほのかの唇に、俺はバクバクと心臓が波打っているのが分かった。
誠,……?
姫月のいる教室に入ってすぐに、俺は眉を顰める。
姫月の隣にいるはずのほのかがいないのだ。
まさか、また雪名と貓屋敷が何かをしたのだろうか?
本當は今すぐ彼女たちを問いただしたいが、それではほのかが今まで耐えてきたことが無駄になる。
逸る心を抑えて、俺は何事もないように授業を進めた。
誠,(授業が終わったら姫月に相談してみよう……)
誠,それじゃ、今日はここまで。ちゃんと復習するように
俺の聲に、生徒たちが元気よく返事をして授業が終わる。
そしてそれと同時に、俺は足早に姫月の席へと向かった。
誠,姫月!
姫月,ん? 兄貴? どうしたの??
誠,いや、ちょっと來てくれるか?
教室の中だと人目に付いて仕方ない。
俺と姫月は興味津々にこちらを見てくる生徒たちの視線を振り払い廊下へと出た。
誠,今日ほのか、っと……桜さんがいないみたいだけど、體調でも崩したのか?
姫月,え、ほのか? 普通に元気だったけど……
誠,學園には來てるのか? なら、どうして教室にいないんだよ
姫月,あぁ、午前中の授業までは出てたんだよ。午後は……早退と言えば早退、かな
誠,? どういうことだ?
姫月,お晝休みに二人で抜け出したんだけど、ほのかはそのままどっか行っちゃった
誠,は? 何だよそれ! どっかってどこだよ!!
のらりくらりとした姫月の返事に、俺はイライラが募っていく。
姫月,えー。だって明日は兄貴のお誕生日じゃない。だから、ほのかも兄貴を喜ばせようとサプライズの用意してるんじゃないかなぁ
誠,サプライズ……?
姫月,そうそう。お付き合いして初めての彼氏のお誕生日なんだから、気合い入るに決まってるよ
姫月,私もほのかと相談して何作るかやっと決まったし
誠,そう……、そうなのか……? そういうものなの、か……?
姫月,そういうものだよ! 兄貴は明日を楽しみにしてればいいだけだって。どうせ明日になったらほのかに會えるんだしね
誠,…………
本當にそうなのだろうか……。
付き合い始めて初めての俺の誕生日。
ほのかにとって特別なんだろうという気持ちは分かる。
俺にとってもほのかの誕生日は特別なのだから。
だからといっても、果たしてほのかが俺の誕生日を祝うためという理由で授業を放り出したりするのだろうか。
雪名,姫月ちゃーん。次の授業、移動だよー
姫月,あ、うん。今行くー!
姫月,それじゃ、兄貴。私もう行くね
誠,あ、あぁ。引き止めて悪かったな
姫月,ううん、大丈夫。じゃぁね
そう言って姫月は雪名たちが待っているところに走っていく。
だんだんと小さくなっていく妹の背中。
その光景に、俺は何とも言い表せない不安と焦りを感じた。
姫月,~~
姫月が上機嫌でフライパンを振るうたびに、香ばしい匂いが部屋中を満たす。
だけど俺の心は昨日から晴れないままだ。
姫月,~~ よし、でーきた
フライパンから皿へとハンバーグを移すと、姫月はこってり煮込んだデミグラスソースをたっぷりとかける。
既に機の上には俺の好物がズラリと並んでいて、3人前にしては多過ぎるほどだ。
誠,な、なぁ。姫月。ほのかちゃん、いつ頃來るんだろう?
姫月,え? もうすぐ來るんじゃないの? 12時に集合って約束なんでしょ?
誠,そ、そうなんだが……。昨日から電話にも出ないし、メールも返事がないって変じゃないか?
姫月,兄貴ってば心配性だなぁ。ほのかにだって都合があるんだから、そういうこともあるんじゃないの?
誠,…………
姫月の言うことももっともで、俺がこんなに心配する必要はないのかもしれない。
だけど何だか気になるのだ。
嫌な胸騒ぎが止まらない。
姫月,あ、そうだ。ほのかが來る前にちょっと味見してよ
誠,え? いや、お前、料理上手いんだから今更味見なんてしても……
姫月,いいから。ほら、あーん
誠,…………あーん
何がそんなに嬉しいのか、上機嫌の姫月は俺の言葉をろくに聞く気もないようだ。
俺は仕方ないな、と、姫月の差し出すハンバーグを口に含む。
姫月,どう?
誠,むぐむぐ。むぐ。ごく。ん~、何かいつもと違う感じがするけど、美味いぞ?
姫月,ホント? 良かった。お肉変えて作ったから少し心配だったんだ
誠,ん? これ牛肉とかじゃないのか?
誕生日だからいつもよりも高級な肉を使ってくれたのだろうか、そう思ったのと同時に家中にインターホンの電子音が鳴り渡った。
姫月,あ、ほのかが來たのかな
時計を見ると12時を少し過ぎた所で、どうやら俺の心配は杞憂に終わったらしい。
何だ、そうだよな。やっぱり姫月の言う通り、少し心配し過ぎただけだったのだ。
誠,あ。俺が出るよ
姫月,ん? そう?
ほっと胸を撫で下ろしながら、俺は玄関へと走った。
大好きな彼女の笑顔を見るために。
誠,いらっしゃい、ほのか……!!
ガチャリと扉を開け、ほのかを出迎える。
俺のテンションの高さにほのかは目を丸くするかもしれないが、そんな些末なことは気にしない。
誠,…………
宅配便のお兄さん,……え、えっと。すみません、お屆け物、です
てっきりほのかだとばかり思っていた俺は、恥ずかしいと思うよりも前にがっくりと肩を落としてしまう。
何もこんなタイミング良く來なくてもいいじゃないか。
宅配便のお兄さん,あ、あの、サインをお願いします……
誠,はぁ……
宅配便のお兄さん,あのぅ……、サイン……
誠,はぁ…………
姫月,もう! 兄貴ってば何やってるのよ! 宅配便のお兄さん困ってるじゃない!
なかなか戻ってこない俺に業を煮やしたのか、いつの間にか姫月が玄関まで來ていた。
伝票にサラサラと綺麗な文字でサインをする。
宅配便のお兄さん,ちーっす。まいどー
姫月,ありがとうございました
姫月が丁寧にお禮を言うが、俺にはそんなことは関係ない。
姫月,まったくぅ。兄貴ってば何そんなにしょげこんでるのよ
誠,當たり前だろ? ほのかだと思って出たら宅配便の兄ちゃんだしさ
姫月,? それがどうして不満なの?
誠,不満に決まってるだろーが! 俺が會いたかったのはほのかなんだよ!
姫月,何言ってるの? 兄貴はもうほのかに會えるじゃない
誠,は?
姫月が可愛らしい笑顔を張り付けたまま、意味不明な言葉を並び立てる。
どういう意味だ?
俺はもうほのかに會える? 會えるって何だ? 姫月は何を言っているんだ? ほのかはまだ來ていないのに??
姫月,えーっと。ちょっと待ってね
そう言って姫月は屆いたばかりの宅配便を開封し始める。
クール便で送られてきた大きな発泡スチロール。
訳の分からない緊張で、俺の全身の筋肉が強張る。
ぱかりと小さな音を立てて蓋が開くと、鼻を刺すような腐臭がした。
姫月,あ、良かった。どこも傷んでないみたい
誠,ひ、姫月……?
妹の笑顔に、俺は恐怖を感じる。
何だ? 何なんだ、これは?
姫月,ほら、兄貴
誠,!!!!?????
姫月が箱から取り出した物を見て、俺はガクガクと自分の體が震えだすのを止められない。
姫月,ほら、會いたかったほのかだよ。嬉しい??
姫月は笑顔のまま、首を持って話し続ける。
誠,あ……ぁ……
姫月,やだなぁ兄貴ってば、どうしてそんな顔するの? さっきからずっと會いたい會いたいって言ってたのに
誰だ? この異臭を放つ首は。それを何事もなく笑顔で持つこの少女は。
誠,ど、どうして、どうして、こんな……
姫月,? どうして?? だって兄貴が言ったんじゃない
誠,お、俺が……??
言うわけがない。俺が、ほのかをこんな風にしてほしいなんて、どうして言うんだよ。
姫月,ほら、『ほのかが食べたい』って、この間言ったでしょう?
誠,!!!!!
姫月,だからね、私頑張ったんだよ。ほのかが痛い痛いって泣き叫ぶのを押えつけて
姫月,骨がゴリゴリしてなかなか包丁が入らないし、その間もほのかは助けてって喚くし暴れるし。人間を解體するのは大変だったんだよ?
姫月,それに私一人じゃ全部運べなくて、クール便で送る羽目になっちゃったし……
誠,…………
姫月,でも、ほのかも薄情だよね
誠,………………
姫月,兄貴がほのかのことを食べたいって言ってるんだから、自分から進んで食べてもらうのが普通じゃない?
姫月,それなのにあんなに騒ぐなんて、私びっくりしちゃった
足が震える。うまく息が吸えない。聲を出そうと口を動かすが、出てくるのはひび割れたような吐息だけだ。
ヒューヒューと乾いた聲にならない聲が漏れ、瞬きを忘れてしまった瞳からは、みっともない程大量の涙がボタボタと床に落ちていく。
姫月の言葉に、見てもいないほのかの殺害現場がありありと俺の脳裏に浮かんでくる。
世界が赤く染まっていく。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
真っ赤に濡れた刃物が関節に突き刺さり肩から腕を切り離す。ゴキリと骨を折る音が頭の中に響き、ほのかの斷末魔の叫びが聞こえる。
俺自身の體には何の損傷もないというのに、體中の筋を切られていっているかのような痛みが全身を駆け巡っていく。
誠,っつ……っ……
姫月,あぁ、でも、兄貴が美味しいって言ってくれたから頑張った甲斐があったかなぁ
誠,……え?
姫月,くすくす、やだぁ。兄貴ってば、さっき食べたじゃない
こくりと生唾を飲み込む音が物音ひとつしない廊下に響く。
そんな俺をあざ笑うかのように、姫月は暗い目をして笑って言う。
姫月,ほら、さっき味見したはんばぁぐ
誠,!!!!????
姫月,ね? ほのかの肉の味は美味しかった?
誠,っつ、う、ぐ……!!!!
姫月の言葉を聞いた瞬間、俺の腹の中から何かが逆流してくる。
誠,っげ……げほっ!! っぐぅ、ううう!!
ほとんど何も食べていない胃の中には先程食べたハンバーグしかなくて。
つるつるに磨かれた廊下に、黃色く泡立った胃液と、かつてほのかだった肉の塊が零れ落ちた。
姫月,あーぁ。駄目じゃん、兄貴。折角のほのかのハンバーグなのに何で吐くの?
姫月,ほら、3人で食べようよ
誠,ひ、姫月……
姫月,兄貴のお誕生日、お祝いしなきゃ。ね?
心底楽しそうに、コロコロと笑う姫月が怖い。
何がそんなに嬉しいのか、楽しいのか俺には皆目理解が出來ない。
どうしてこうなった?
どこで間違えた?
俺は一體、どうすれば良かったのだろうか―――――。
誕生日以降、俺は何もかもにやる気をなくしてしまった。
大好きだったエロゲもアニメも、何もする気が起きず家から一歩も出ない毎日。
學園のほうでは休職ということになっているらしいが、今の俺には関係ないことだ。
俺に教師なんて、[端/はな]から無理だったんだ。
ほのかを殺したのが姫月だとしても、俺にはどうしても姫月を員警に連れていくことが出來なかった。
好きな女の子をいじめからも守れず、そして結局俺が殺してしまった。
俺は本當に、どこまでいっても、屑で、ゴミで。救いようのない大馬鹿者なのだ。
誠,………………
靜かな家の中にインターホンが鳴り響き、俺は玄関のほうにドロリと目玉だけを動かす。
普段なら無視を決め込むのだが、俺は何となくそれに出なければいけないような気がして玄関へと向かった。
山川,こんにちは
誠,…………
玄関の扉を開けると、そこには英語教師の山川教諭が神妙な顔つきで立っている。
山川,これを……
誠,………………
何も話さない俺に痺れを切らしたのか、山川教諭が鞄の中から何かを取り出した。
手渡されたものは一枚のレポート用紙だ。
綺麗な筆記體が並んでいるだけの紙。これが何だというんだろうか。
山川,去年、姫月さんと一緒に出場されるはずだったスピーチコンテストの原稿です
誠,……?
山川,桜さん、スピーチコンテストの當日に熱を出してしまって出場出來なかったでしょう?
山川,その、行方不明になってしまった桜さんが書いた物なのですが、桜さんのご家族が姫月さんに持っていて欲しいと仰いまして……
山川,勿論今は姫月さんも気落ちしているでしょうから、折を見て先生が渡してあげて下さい
誠,…………
山川,……それじゃ、よろしくお願いします
生徒たちから恐怖の代名詞とも言われている山川教諭が、何とも心苦しそうに去っていった。
俺は今しがた手渡された原稿に目をやる。
正直俺は英語が得意ではない。筆記體も調べながらでないと読めない。
だけど、ほのかが書いた。
一生懸命、周囲に馬鹿にされながらも書き上げて、練習して。
結果は不參加という形になってしまったけれど。
それでも、きっとここにはほのかの本心が書かれているはずなのだ。
俺はそう思い、急いで自分の部屋に戻り辭書を片手にその英文を解読し始めた。
ほのか,『My Dear Friend』 Honoka Sakura
ほのか,I always thank God for giving me the opportunity to get to know my special friend.
ほのか,『私の友達』 桜ほのか
ほのか,私は、私の特別なお友達と出會う機會を與えてくださった神様に、いつも感謝しています
ほのか,彼女の存在なしに、この人生を生きていくことなんて想像もできません
ほのか,落ち込んでいるときにひとりでいるのは、とてもつらいことです。誰も自分に関心がないのだと感じてしまうことも、とてもつらいです
ほのか,私は幼い頃を海外で過ごし、帰國後日本の小學校に通い始めましたが、なかなか友達ができず、ひとり寂しく過ごしていました。まだ幼かった私にとって、それはとてもつらい経験でした
ほのか,私の友達、彼女は私に話しかけてくれた初めての人でした
ほのか,彼女はとても素敵に話し始め、それはまるで天使がやってきたかのようでした
ほのか,彼女と友達になれたその日から、私の生活は一変しました。毎日がとても楽しく、あんなに嫌だった學校へ行くことさえも、とても楽しみに思うようになったのです
ほのか,人は誰もみな、自分を愛してくれている人がいるのだと、知っておかなければならないのです
ほのか,私の大好きな友達。彼女はまるで奇跡のような人です
ほのか,時折私は、彼女は何かしらの魔法が使えるのではないかとさえ感じることがあります。私がつらい狀況にあるときでさえ、彼女は私を笑顔にすることができるのです
ほのか,心を開いて人の輪に入っていくことは、私のような人間にはとても勇気のいることです。知らない人を怖いとすら感じることもあります
ほのか,しかし彼女は、初めて會ったときから私に優しく接してくれ、私の心の扉をそっと開いてくれました
ほのか,今でも私は人と話すことが得意ではありませんが、彼女がそばにいてくれると、とても穏やかに、優しい気持ちになれるのです
ほのか,それは、彼女がいつでも、私を思ってくれているのだと感じることができるからです
ほのか,私はいつも、彼女が今日まで私の友達でいてくれることに感謝し、また、彼女のような素敵な人を私の人生に與えてくださったことに対し、神さまにも感謝しているのです
ほのか,人生の中で、私たちはたくさんの人と関わりを持ちますが、最後まで続くのは、きっとひとつかふたつの関係のみです
ほのか,だけど私は、彼女との友情はずっと永遠に続くと確信しています。そしていつの時も、彼女のそばにいると誓います。それはただ
ほのか,私たちが親友だからです
誠,………………
こんなにも大切に想って、信じていた親友に裏切られたほのかは、一體どんな気持ちで死んでいったのだろう。
これからもっと沢山の思い出を作れるはずだった少女が、どうしてもうこの世にはいないのだろう。
ほのかと姫月が仲良く笑っている姿を見るのが好きだった。
信じていた。二人は親友だと思ってた。それは永遠に続くと思ってた。
ぽたりと俺の目から雫が落ち、ほのかの筆記體がじわりと滲む。
原稿を読み終わった俺は、目を瞑りただ涙を流すことしか出來ない。
瞼の裏に、
柔らかく微笑む少女の幻影を浮かべて。
スピーチコンテスト、當日――
ほのか,あぅ……すごい緊張してきました……
誠,大丈夫、自分を信じて
ほのか,は、はい……
誠,よし。そしたらあとは前に話した人をクマだと思えば、きっと大丈夫
ほのか,はい、頑張ります
少しは緊張が解けたのか、ほのかの顔が引き締まる。
壇上に上がったときに萎縮しなければ、きっと大丈夫だろう。
問題は……姫月だ。
姫月,…………
倉の中で見つけてからというもの、姫月からいつもの勝ち気がなくなっていた。
誠,……姫月
姫月,あ、兄貴……
誠,平気、じゃないみたいだな……
姫月,……ん、すごく緊張してる
フィギュアスケートでは周りに微塵も不安を感じさせない姫月が、今日はいつになく弱弱しい。
誠,姫月、ちょっとこっち來い
姫月,えっ!? なっ、なんでっ?
倉の中で俺が抱きしめたことを思い出したのか、姫月の顔が赤くなる。
っつ! そんな反応されたら、こっちまで照れるだろうが……っ。
誠,く、首輪……外してやるから
姫月,っつ!? なっ、なんで……?
姫月,私なんか……もう、いらない……?
誠,何でそんな発想になるんだよ……
誠,スピーチコンテストにこんなごっついアクセサリーをして出るのは、あんまり印象がよくないだろ
姫月,あ……そ、そっか……
ガチガチだな……。
俺の前まで來た姫月を見て、こいつはこんなに小さかったんだと思った。
小さいことは知っていた。
でも、いつも態度がでかいから……ここまで小さいとは思ってなかった。
なんだかんだで……こいつも女の子なんだよな。
姫月,……兄貴?
誠,ん……? あ、悪い……
姫月に聲をかけられて我に返った俺は、無骨な首輪へと手を伸ばした。
そして、かなり時間をかけて首輪を外していく。
誠,なぁ、姫月
姫月,……何?
誠,お前なら、大丈夫。自信を持て
姫月,…………ホントに、大丈夫だと思う?
誠,あぁ。お前ならビシッと決めると信じてるよ
姫月,信じてる……
誠,必要以上に抱え込むな。いつものお前で大丈夫だから
姫月,……うんっ
姫月の瞳に力強さが戻り、しっかりと頷く。
よし、大丈夫そうだな。
俺は姫月がいつも通りになったところで、首輪を外し終えた。
姫月,ね、兄貴
誠,なんだ?
姫月,…………
誠,…………
姫月,…………
誠,??
姫月は俺のことを呼んだのに、何も言わず、ただじっと見つめてくる。
姫月,うんっ、ありがと
誠,??? 何もしてないぞ?
姫月,兄貴がそばにいてくれただけで……それだけで十分だよ
誠,は……?
柔らかな表情をした姫月に言われ、思考がフリーズする。
い、今の発言……。
誠,意味深すぎるんだけど……
姫月,えっ?
俺が返した言葉で受け取られたニュアンスを察したのか、姫月の顔が真っ赤になる。
姫月,やっ! 別に特別な意味とかなくてっ! その、えっと……あの……そ、そう!
姫月,兄貴が生徒の前で普通に話せてるんだから、私も出來るはずって、そう思っただけでっ!
姫月,だから、本當に特別な意味なんてないんだからねっ! 兄貴の顔を見てたのは、それだけの理由なんだから……
いつも刺々しい姫月が、顔を赤くして早口に説明する。
なかなか見られないその姿が、どこか微笑ましく思える。
姫月,ほっ、ほのか、そろそろ行こ
姫月は赤い顔を隠すように背を向けると、ほのかに聲をかけた。
ほのか,あ、うん
ほのかは一度こちらを見ると、ぺこりと頭を下げた。
誠,頑張って
ほのか,はい
誠,姫月も……頑張れ
姫月,……う、ん……ありがと
背を向けたまま、小さく返事をする姫月。
でもその聲は、しっかりと俺の胸に屆いた。
スピーチコンテストは生徒の親なども見に來るため、全員が會場である講堂には入れない。
そこで抽選を行い、當選できなかった人は教室からテレビで見ることとなった。
誠,そろそろ時間か
テレビに映った壇上に、姫月が上がってくる。
雪名,あっ、姫月ちゃんだっ
貓屋敷,テレビで見ても、やっぱり綺麗だよね~
雪名,才色兼備だし、憧れちゃう
貓屋敷,今回の優勝は姫月ちゃんで間違いなしだよ
姫月のファンの生徒が、キャッキャとはしゃぐ。
そんな中、姫月のスピーチが始まった。
姫月,『My Family』 Himeki Ichinose
姫月,What does ”Family” mean to you?
よどみなくスピーチを続ける姫月。
俺は英語があまり得意ではないので、姫月がどんなスピーチをしているのか分からない。
最初に言ったタイトルからして、家族のことを話しているのだろう。
時折聞こえる『ブラザー』という単語に、一瞬ドキリとする。
そんな俺を餘所に、姫月はコンテスト前の緊張など感じさせないスピーチを披露した。
やっぱり、こうやってばっちり決めるのが姫月らしいな。
姫月のスピーチが終わると、自然と拍手がわき起こった。
雪名,姫月ちゃん、やっぱりすごぉーい
貓屋敷,うんうん! ますます憧れちゃうよね
まるで最優秀賞は姫月に決まりだと言わんばかりに、雪名と貓屋敷がはしゃぐ。
しかし姫月に変わってほのかが壇上にあがった瞬間、二人の雰囲気はがらりと変わった。
雪名,あ、身の程知らずが出てきたよ
貓屋敷,英語の成績、私たちと変わらないくせによくスピーチコンテストなんかに出たよね
雪名,いや、むしろ出てくれてよかったんじゃない? しょぼいスピーチしてくれれば、さっきの姫月ちゃんが輝いて見えるじゃん
貓屋敷,あ、そっか。なんだ、桜も使えるじゃん。噛ませ犬としてだけど
雪名,あははははっ
心ない言葉はほのかへと屆いてないが、緊張しているのか瞳が揺れていた。
ほのか,…………
ほのかは気分を落ち著けるように、目を瞑ると小さく深呼吸をした。
そしてゆっくりと目を開け、スピーチを始めた。
ほのか,I’m not good at talking. But since my best talk, please listen to the end.
その流暢な英語に、教室の中にいる全員が一瞬にして引き込まれた。
ほのか,『My Dear Friend』 Honoka Sakura
ほのか,I always thank God for giving me the opportunity to get to know my special friend.
俺なんか比べものにならないくらい、流れるように言葉が紡がれていく。
小鳥の囀りのような柔らかな聲が、心を捉えて離さない。
さっきまできついことを言っていた雪名と貓屋敷まで、ほのかのスピーチに聞き入っていた。
ずっと聞いていたい。そう思えるほど、ほのかの聲が心地よく響く。
その心地いい時間は、あっという間に終わってしまった。
そして……。
我に返った全員が、割れんばかりの拍手をほのかに送る。
ほのかは恥ずかしそうに頬を赤くしながらも、笑顔でぺこりと頭を下げた。
その後、スピーチコンテストはつつがなく終わり、発表された結果は……。
姫月は優秀賞、ほのかは最優秀賞だった。
雪名,あ、來たっ!
貓屋敷,姫月ちゃん!
姫月たちが戻ってくると、廊下で待っていた姫月ファンが駆け寄っていく。
雪名,姫月ちゃん、スピーチ上手だったよ
姫月,ありがとう
貓屋敷,最優秀賞を取れなかったのは、ちょっと殘念だったけど……
ほのか,あ……
自分が姫月より上になってしまったのが申し訳ないのか、ほのかは悲しそうな顔で俯いてしまう。
雪名,桜……
ほのか,は、はい……
雪名,アンタ、すごいじゃん! なんであんなに英語ペラペラなの?
ほのか,え、あの……
貓屋敷,なんか、外國人が喋ってるみたいだったし!
ほのか,あ……わ、私……7歳くらいまで海外に住んでたから……
雪名,うっそ! それって帰國子女ってこと?
ほのか,う、うん……一応……
貓屋敷,すっごーいっ!!! 何? どこに住んでたの?
ほのか,えっと……
今までほのかへ向けていた悪意など微塵もなく、そこには親しみがあるように思えた。
姫月,よかった……
姫月も俺と同じことを感じたのか、安堵した表情でぽつりと漏らした。
誠,……お前、ほのかちゃんが帰國子女だってこと知ってたのか?
姫月,當たり前でしょ、友達なんだから
誠,もしかして、強引にスピーチコンテストの話を受けたのって……
姫月,うん、もしかしたらほのかのことを受け入れてもらえるんじゃないかって思って
誠,そうか
姫月,でも……本當のこと言うと、ずっと不安だったんだ
姫月,ほのかのノートが隠されたとき……餘計なことしちゃったのかな、って
誠,……そう思ったなら、なんで気付いたときに注意しなかったんだ?
姫月,だって……確信がないままそんなことしたら、ほのかに対する當たりが餘計きつくなるかもしれなかったから
姫月,それに私がこれから先もずっと、ほのかのことを守ってあげられるとは限らないでしょ? 今後の進路で分かれちゃうかもしれないし
姫月,だから……ほのかがスピーチコンテストで認めてもらえるまで、陰で支えようって
誠,もしかして、お前がゴミ箱を漁っていたのって……
姫月,うん。ほのかが気付く前に、隠されたものを探してたの
姫月,何回か、ほのかが気付く前に見つけることできなかったけど……
姫月の奴、ずっとそんなことしていたのか……。
ほのかなら乗り越えられると信じて。
自分の信奉者も、ほのかのことをいつか認めてくれると信じて。
ずっと……ずっと頑張ってきたのか……。
俺は……こんな風に誰かを信じたことがあっただろうか……?
……俺は、姫月のことばかり可愛がる両親が好きじゃなかった。
今にして思えば、両親が俺より姫月にかまっていたのは姫月の方が年下だったからなのかもしれない。
それなのに、俺は自分がいらない子になったんじゃないかと思ってしまった。
そして姫月が優等生になればなるほど、俺は劣等感を抱き……知らない間に、周りの人間全てを疑って見ていたのかもしれない。
もしかしたら、そこには打算とか損得抜きで、好意的に接してくれていた人がいたかもしれないのに。
そんなこと考えもせず、拒絶し続ければ……自然と、ひとりぼっちになる。
全ての原因は、俺か……。
姫月,……兄貴?
誠,ん?
姫月,ずっと黙ってるけど……どうかした?
誠,いや……お前みたいに、もっと人を信じてみるのもいいかもしれない、と思ってな
姫月,そっか
姫月,でもさ、兄貴
誠,うん?
姫月,周りの人を信じるのもいいけど……それ以上に、兄貴は自分を信じていいと思うよ
姫月,だって、兄貴はすごい人なんだから
誠,俺が、すごい人……?
姫月,うん。小さい頃さ、私が勝手に兄貴から離れて……おじいちゃんの倉に閉じ込められちゃったことがあったでしょ?
姫月,あの時、いつまで経っても誰も來てくれなくて……すごくすごく不安で……もうこのままずっとひとりぼっちなんじゃないかって、私、泣いてたんだ……
姫月,そんな時、兄貴が來てくれたの
姫月,あっという間に鍵を開けて、『大丈夫か、姫月!』って……すごく心配そうな顔して……
姫月,それで、『ごめんな、姫月』って言って……頭を撫でてくれたよね……
姫月,兄貴が助けてくれたこと……
姫月,兄貴が優しくしてくれたこと……
姫月,全部……全部、覚えてる……
姫月,兄貴が優しいこと、すごいこと……私は知ってるよ
姫月,だから、兄貴はもっともっと自分に自信を持っていいと思う
姫月の言葉で、朧気だった記憶がクリアになる。
昔、ヒーローに憧れていた俺は、進んで妹である姫月の面倒を見ていた。
だけどある日、俺がわずかに目を離した隙に姫月は倉の中に入ってしまった。
そのことに気付かず倉の扉は閉じられ、鍵をかけられてしまったのだ。
そして姫月は夜まで帰ってこず、両親も一緒に探し回った。
何時間も探して、やっと姫月を見つけたが、倉には鍵がかかっていて開けることができない。
かなりテンパっていた俺は鍵を借りるという手段を思いつかず、落ちていたヘアピンを使って何とか開けようと試みた。
漫畫で見ていただけで詳しい方法なんて知らない。それでも何とか鍵を開け、姫月を助けることができた。
俺はヒーローになれた気がした。
でも、両親に「お兄ちゃんなんだから、ちゃんと姫月ちゃんのこと見ていてあげないと駄目でしょ!」と叱られた。
ヒーローである自分が否定された。當時の俺は、そう思った。
俺が目を離したんだ。両親の言葉は當然だ。
だけど、俺は自分が否定され……ヒーローなんかじゃなく、ただの駄目人間なんだと……そう決めつけてしまった。
それからひねくれた性格になった俺を、姫月は「優しい、すごい」と言ってくれる。
俺のせいで辛い思いをした姫月が……そう、言ってくれる。
その言葉は、俺にとってありがたく……そして、勇気をくれた。
誠,ありがとう姫月
素直な気持ちで、姫月にそう言えた。
姫月,?? 私、お禮を言われるようなことしてないよ?
誠,いや、そんなことないさ。姫月には感謝してるよ
姫月,あ、あぅ……何か兄貴にお禮を言われると照れる……
心地いい雰囲気に水を差すように、姫月の攜帯が鳴った。
姫月,誰だろ、こんな時間に
姫月,あ、俊成さんからメールだ
誠,…………
なんだろう……。今までいい気分だったのに、急に胸の中が重くなった。
姫月,あ、俊成さんスピーチコンテスト見ててくれたんだ。優秀賞、おめでとうだって
誠,あっそ
姫月,?? 何、不機嫌になってるの?
誠,なってない
姫月,なってるじゃん
誠,だから、なってない
姫月,むー、わけわかんないんだけど
それはこっちの臺詞だ。
俺自身、何でこんなイライラするのか意味不明だ。
姫月,ま、いいや。とりあえず、俊成さんに返信しないと
誠,……っつ、そもそも、それはどうなんだ?
姫月,何が?
誠,女子校生のメールアドレス知ってるとか、普通あり得ないだろ
姫月,え? 別に普通じゃない? 遠征行くときの連絡とかもあるし
誠,ぐっ……確かにそうかもしれないが、今のメールは部活には何の関係もないだろ?
姫月,そうだけど……でも、俊成さんと普通にメールをしたりするよ?
おいおい。そんなに仲がいいのか。
つか……。
誠,そんなに仲良いなら、何で俺に調教してなんて頼んできたんだよ。直接俊成に言えば良かっただろ
姫月,は? 何でそんなこと俊成さんに頼まなきゃいけないの!?
誠,メアドも交換してて、苗字じゃなくて名前で呼び合うくらい仲がいいんだから――
姫月,何言ってんの? 私、名前じゃなくて苗字で呼んでるじゃん
誠,??? お前こそ何を言っているんだ?
姫月,あ、そっか。兄貴は知らないんだ
誠,何が?
姫月,俊成って、下の名前じゃなくて苗字だよ?
誠,…………
なん…だと…。
姫月,あ、もしかして……兄貴、俊成さんに嫉妬しちゃってたの?
誠,はっ!?
そんなわけない! と否定しようとした瞬間、不意にほのかの告白を斷ったときのことを思い出した。
すっきりしなかった、気持ちの正體。
心のしこりの、正體。
姫月のことが引っかかった理由。
それって……今、姫月が言ったことが理由なんじゃないか……?
そうすれば、全ての説明がつく。
え……ま、マジ……?
俺、あの男に嫉妬してたの……?
それって……俺が姫月のこと……。
好き、ってこと?
誠,っつ!!!!????
自分でも、顔が真っ赤になってることがわかる。
もう顔から火が出そうだ。
姫月,え……? そ、そうなの!?
誠,やっ、ちがっ!
否定しても、俺の顔が真実を物語っている。
姫月,そっか、そうだったんだー
俺が慌ててる姿がおかしいのか、姫月が楽しそうに笑う。
姫月,兄貴も同じ気持ちだったんだ
誠,え……同じ、気持ち……
姫月,え……
姫月の言葉に、互いにフリーズする。
が……。
姫月,っつ!!!!????
瞬間、姫月の顔も真っ赤になる。
姫月,やっ、今のは違うのっ! そっ、そういう意味じゃなくてっ! そのっ! だから……っ!
慌てふためく姫月。そして狀況について行けてない俺。
姫月が同じ気持ちって……。
え? じゃあ、もしかして……。
誠,姫月が好きだって話してた『アブノーマルな趣味を持つ人』って、俊成じゃなくて俺のこと?
姫月,~~~っつ!!!!!!!
誠,ということは、今までツンツンしてたのは照れ隠しで、俺に好きになってもらうためにずっと調教を頑張ってたってことか?
姫月,!!!!!!!!!!
さらに赤くなった姫月の顔が、俺の言葉が事実であると教えてくれる。
姫月,そっ、そそそそそ、そんなわけないでしょっ! 私がお兄ちゃんのことが好きなんて――
誠,お兄ちゃん?
姫月,~~~っつ!!!!!?????
姫月,やっ、今のも違くてっ! 言い間違いっ! おに……じゃなくて、兄貴っ! そう、兄貴っ!
姫月,あ、あれ? 私、何を言おうとしてたんだっけ?
慌てふためく姫月を見ていると、愛おしいと思う気持ちが溢れてくる。
そっか。姫月はツンデレだったのか。
そう思うと、今までのツンツンしていた態度も可愛く思えてくる。
姫月,とっ、とにかくっ、違うんだからねっ?
ほのかが、そして姫月が勇気というものを教えてくれた。
今の俺なら、これまで言うことが出來なかった言葉も口に出來る気がする。
だから……。
誠,俺はお前のことが……
姫月,大好きだよ、お兄ちゃん
;本脚本编写作者 枫落雪夜 , 此脚本仅供pymo引擎使用
いつもの日曜いつもの休日。
行きたくもない大學で、每日したくもない勉學に勵んでいる自分へのご褒美として周に一回くらい惰眠を貪ってもいいと思うんだ。
というか現代の日本人は動きすぎだろと。
ちょっとはフランスあたりを見習ってサービス殘業廢止とか社會人になっても2ヶ月のバカンスをくれたっていんじゃね?
ベーシックインカムが施行されたらニートとかなりたい放題じゃん! 將來の夢はニートですとかマジで言えちゃう世の中サイコー!
しかし悲しいかな……日々の生活にすっかり毒されてしまった俺の身體は、アラームがなくとも每日同じ時間に目が覺めてしまうのだ。
誠,ふわ…………
時計の針が朝7時を指していることを確認してから、俺、一之瀨誠はもう一度布團の中へと潛り込んだ。
誠,……うん、あと10時間くらい寢たっていいよな
??,いいわけないでしょ、このバカ兄貴っ!!
べりっという音と共に何者かに布團をはぎ取られたが、そんな些細な妨害で俺の休息を奪うことなど出來はしない。
すぐ側で喚く人間の聲なんてきっと夢だ。幻だ。幻聽だ。
??,幻聽でも夢でもない! 今から10時間も寢てたら起きるの夕方になっちゃうじゃない!
誠,……むにゃ。俺のことは氣にしないでくれ。俺も氣にしない……
??,兄貴が氣にしなくても私は氣にするの!
??,い?い?か?ら?起?き?ろ~~~~!!
ガクガクガクガクガク。
目を瞑っていても世界が搖れているのが分かる。
恐らくこれは東京大地震の前觸れであって俺だけが搖れているわけではないはずだ……!
??,ちょ……っ! まだ寢るわけ!? 信じらんない!! 起きろってばぁ!!
??,大體兄貴は明日から教育實習なんでしょ!? そんなに寢てたら今夜眠れなくなっちゃうよ!
誠,ぬー……。眠れなくなったら世の中には便利な睡眠導入劑というものが……
??,兄貴そんなの持ってないじゃない!!? 起きろったら起きろ~~~~~!!
ガクガクガクガクガクガクガク。
ぎゃーぎゃー喚く聲と、がくがくと腦を搖さぶられる感覺に耐えきれなくなり、俺は澀々目を開けることにした。
??,…………あ、起きた?
誠,……起きた。起きたから搖らすの止めてくれ。姫月
姫月,…………ふん
俺が起きたことを確認すると、目の前の少女はぱっと手を離し顏を背けてしまった。
この少女の名前は“[一/いち][之/の][瀨/せ][姫/ひめ][月/き]”。
まぁ一般的に見て、容姿は良い部類に入るだろう。
しかしそれを持ってしても補えないほどの氣の強さ!暴力的!口が惡い!という三重苦のマイナス要因を持つ、とても殘念な感じの俺の妹だ。
世間一般では妹という存在に憧れを抱く連中がいるらしいが、世の中そんなに甘いものではない。
お兄ちゃん、お兄ちゃんと俺の後ろをちょこちょこ付いてきていたのは恐らく小學生低學年くらいまでだったろうか。
高學年になると急に無視し始め、中學に上がる頃には知惠も付いたのか罵詈雜言の嵐。
そして現在に至るという感じだ……。
姫月,…………何? 何か言いたいことでもあるわけ?
俺の思考を讀んだかのごとく、姫月はじろりと蔑んだ視線を投げてくる。
それが兄に対する態度かと言いたいが。
誠,いや……、もういい。人生諦めが肝心だ
姫月,諦めって何よ! 言いたいことがあるならハッキリ良いなよ!
誠,だからもういいんだって。で? 休日だというのに何でわざわざ起こしに來たんだ?
姫月,え、や、それは、えっと……ご、ゴミ出ししなきゃいけないから、かな?
誠,は? ゴミ出しのために起こしたのかよ。そんなもん適當に持っていっとけばいいじゃないか
姫月,だ、だってこの部屋色々ゴミがあるじゃない! た、例えば……そう! 兄貴とか!!
誠,……は? 俺?
姫月,そ、そう! 兄貴はゴミなの! このゴミ兄貴! 今日は生ゴミの日だから、ゴミ兄貴を舍てなきゃいけないの!
誠,んなアホな事あるか!
姫月,アホもへったくれもないもん! ほら、さっさとゴミ箱に入ってよ!
誠,入るわけないだろ!
姫月,あ……
外からゴミ收集車獨特の音樂が聞こえてくる。
誠,ゴミ收集車がきてしまったぞ……
姫月,…………っつ!! 兄貴の馬鹿!!! ゴミ出せなかったじゃない!
誠,え? もしかしてマジで俺をゴミに出す氣だったのか?
姫月,うるさい! 兄貴なんか夢の島に埋まって海の藻屑になっちゃえばいいんだ!
誠,はぁ?? 何で起きて早々罵られなきゃいけないんだ。俺が何かしたか??
俺の言葉に姫月は一瞬悲しそうな表情を浮かべたように見えたが、すぐにいつもの佛頂面に戻り惡態をつく。
姫月,やっぱ頭の中もゴミなんだ……。こうなったらもう粗大ゴミ收集車を呼ぶしか……
誠,だーーー! 待て待て待て! 何呼ぼうとしてんだ!
姫月,え? さっきも言ったじゃない。粗大ゴミ收集車だよ?
誠,お前は何真面目な顏でアホなこと言ってんだ……
姫月,ふん。ゴミ兄貴が真面目な顏してるより百倍マシ。てゆかいつまでその暑苦しい顏見せるつもりなわけ?
姫月,顏中涎と油で汙れてるんだけど。何それ。ガスコンロの物真似でもしてるの?
誠,何で俺がガスコンロの真似しなきゃいけないんだよ。誰だって寢汗くらいかくだろ
姫月,わ、私はかかないもん!
誠,へ? マジで? 寢汗かかないって新陳代謝惡いんじゃねぇの? あぁ、だからそんなチビなのか
ゴッ!!!!!!!
誠,~~~~~~~~~~~~!!!!!
姫月,…………何か言った??
誠,っつ! お、お前、何かあるとすぐ暴力振るう癖何とかしろよ!
姫月,デリカシーのないゴミは折り疊んで舍てとかないといけないじゃない?
誠,またゴミに逆戻りか……
姫月,うん。ゴミ。生ゴミ。油が滴ってる粗大ゴミでも可
誠,ご、ゴミにも生きる權利くらい……
姫月,ない
誠,………………
姫月,とにかくいるだけで暑苦しいんだから、ぼけっとアホ面曬してないで、顏の油を洗い落としてくれば? 食器用洗劑でも使えば多少マシになるんじゃない?
誠,そんなもんで洗ったら顏がガビガビになるだろが!
姫月,元からガビガビじゃない。食器用洗劑だろうがお風呂用クレンザーだろうが問題ないでしょ? とにかく、さっさと下に降りてきてよね!
そう言って姫月はどすどすと床を踏み鳴らしながら俺の部屋から去っていった。
朝から妹に怒られ大學に行っても妹に怒られ家に歸って更に妹に怒られる。
これがまぁ俺の日常。
俺は妹に怒られるために生きているのだろうか?
いや、決してそうではないはずだ。
はぁ……とため息を吐くと、俺はふと昨日の素晴らしい出來事を思い出した。
そうだ。こんな俺にも生きていれば良いことだって起きる。
そう思える出來事があったんだ………。
ことの始まりは昨日の土曜日。
俺はいつものようにパソコンの前に座り、發賣されたばかりの“地獄天使ジブリーヌepisodeⅡ”に沒頭する。
初代ジブリーヌのあまりの素晴らしさに、續編が出ると知った時は感極まって淚が出たほど樂しみにしていたエロゲだ。
一見爽やか學園もの風の可愛らしいイラストにそぐわないエグイ調教陵辱の數々。今まで考えたことすらない奇拔な露出プレイは既に神を超えてしまっているのではないだろうか。
1作目の調教內容も素晴らしかったが、今回のそれは前回を大きく上回るほどの驚きと感動とエロさを俺に與えてくれている。
誠,うを! こ、ここでそんなプレイがまた新たに……!
誠,あわわわ……ぴちこちゃんにみおんちゃんってばそんな所でそんな際どい……! うっわやべぇ! まじやべぇって!
誠,はぁ…はぁ…何だよこの原畫マジ神なんじゃね?? こんなアングルでこんな……うぁ……鼻血出てきた
生粹のエロゲーマーであるこの俺に鼻血を噴かせる だと……?
誠,っく……これがバックウイングの實力なのか……!
俺は別の用途のために準備していたティッシュをおもむろに摑み、大量の血液を流し續ける兩の鼻に撚じ込んでいく。
誠,くそ……想定外のプレイに想定外の鼻血……血中酸素濃度が著しく低下しているに違いない……
一氣にコンプリートしたい氣持ちはあるのだが、それをやると俺は出血多量で死んでしまう危險性がある。
ここは一旦プレイを中斷しクールダウンすべきだろう。そう考えた俺はパソコンをログアウトし、小休止を取ろうとリビングへと向かった。
ほのか,ぎゃんっ……!!
リビングへと續く扉を開くと、何かがぶつかる鈍い音とともに犬の悲鳴が聞こえてきた。
誠,?? 犬なんて飼ってないが今の鳴き聲は……?
疑問に思いつつも室內へと足を踏み入れると。
ほのか,ふぎゃんっ!!!
誠,…………??
踏み入れると。
ほのか,うぎゅっっ!!!
どうやら俺は犬を踏んでしまっているらしい。仕方ない、とばかりに目を向けると。
ほのか,あぅうう……い、痛いです~~~
誠,うお!!??
床に這い[蹲/つくば]る黑い物體に驚いた俺が後ろに飛びのくと、ソレはむくりと起き上がった。
ほのか,うぅう……
誠,あ……
ほのか,あう……お、お兄さん…こんにちは……
亂れた長い黑髮を整え立ち上がった少女を見て、俺はようやく合點がいった。
扉にぶつかる天然さと踏まれ踏まれてもそれを甘んじて受け入れるおっとりヒロイン氣質な少女はそうはいない。
誠,ほ、ほのかちゃんか……!
ほのか,あは……ま、まさかお兄さんに踏まれるとは思いませんでした……
誠,ご、ごめんね。まさか床にほのかちゃんが寢てるなんて思いもしなくて……
ほのか,は。そ、そうですよね、まさか人樣のお家に來て床に寢てるなんて考えもしないですよね! ごめんなさい……!
誠,……………
被害を被ったにも關わらず、自分が惡いと言い[且/か]つ謝ってくるこの少女の名前は“櫻ほのか”。
姫月の友達で、この家には昔からよく遊びにきている。
しかし俺自身は彼女が遊びに來ていた時にはほとんど自室に引きこもっていたので、顏を合わせたのは實に數年ぶりなのだが。
ほのか,あの……本當にごめんなさい。私、ついうっかりしちゃって……
誠,え? あ、いや、ほのかちゃんが謝ることじゃないよ! 俺のほうこそぼんやりしててごめんね
ほのか,そんな……お兄さんは惡くないです……私が……
いや、どう考えても惡いのは俺のほうだろう。
そんなことを思いながら俺は改めてほのかを見つめる。
子供の頃の記憶しかないが、數年ぶりに會った彼女はなかなかどうして。
覺えている限り、彼女は子供の頃まるで牛乳瓶の底のように分厚い眼鏡をかけていた。
失禮だとは思うのだが、いわゆる少し地味目な女の子という印象しかなかったのだが、今目の前にいる櫻ほのかはそんじょそこらのアイドル顏負けな美少女っぷりなのだ。
透き通るような[白皙/はくせき]の肌に豔やかで長い黑髮。柔らかなカーブを描く水面のように淡い瞳。すべてのパーツが整っている。
しかも清楚な白ワンピとキタ。やっぱり王道ヒロインはこうでなきゃいかん。
ほのか,こうしてお兄さんときちんとお會いするのって7年ぶり…くらいです、ね
誠,あ……と、もうそんなに經つんだっけ?
ほのか,はい。いつ來てもお兄さんは忙しそうにされてましたから……
誠,はは、は……
ほのかの言葉に思わず俺は苦笑してしまう。……まぁ、エロゲプレイで多忙な日々を送っていたといえばその通りだ。
誠,と、ところでほのかちゃん一人?? 姫月はお客さんを放ってどこ行ってるんだ
本當のことなど言えるはずもなく、俺は話題を變えようと話を振った。
ほのか,あ、姫ちゃんならベーキングパウダーを買いに行きましたよ
誠,ベーキングパウダー?
ほのか,はい。今日姫ちゃんとお菓子を作る約束をしてたんですけど、ベーキングパウダーがなかったみたいで……
誠,へぇ。何を作るの?
ほのか,え、あ、あの……その……ま、まだちょっと分からない、です
誠,? そうなの?
ほのか,は、はい……
ほのか,そ、そういえばお兄さんは來周から白皇學園に教育實習にいらっしゃるんですよね?
誠,あ、あぁ。そうだけど……姫月が言ったの?
ほのか,はい。最近姫ちゃんがそわそわしてて、どうしたのって聞いたら教えてくれました
誠,あ~。まぁあいつには嫌われてるしなぁ……。嫌いな兄貴が教育實習に來るのが嫌なんだろうな……
ほのか,え? そんなこと……
姫月,すとおおおおぉーーーっぷ!!
ほのかが話し出すと同時に、背後から大音量の聲が投げられた。
ほのか,あ、姫ちゃん。おかえりなさい
にこにこと挨拶をするほのかとは対照的に、白いスーパーの袋を片手に登場した姫月の顏はさながら不動明王のようだ。
姫月,ほほほほのか! この馬鹿に妙なこと言わなくていいから!
ほのか,え、え? でも姫ちゃん……
姫月,いいから! 氣にしないで! 馬鹿がうつるから話しちゃ馱目だよ!
おいおい酷い言われようだな……。
妹にここまで扱き下ろされる兄の姿を哀れに思ったのか、ほのかは困ったようにオロオロと俺たち兄妹の顏を交互に見遣る。
姫月,てゆか何!?? 何で兄貴がほのかと一緒にいるわけ??
先程まで俺の存在など忘れさっていたかのように無視していた姫月がくるりと向きを變え、俺に刺さるような視線を送る。
誠,いや、水飲みにきてドア開けたらほのかちゃんにぶつかってさ
姫月,はぁ?? 兄貴ってば何どん臭いことやってんのよ! もっと氣をつけてよね!
その言葉は俺を非難していると共にほのかちゃんもディスっていることになるのだが、果たしてこの妹樣は氣付いているのだろうか。
姫月,それに! 私の友達が遊びにきてる時に、何勝手に部屋から出てきてるのよ!
姫月,今現在兄貴が步いていい場所なんてこの家にはないんだから!!
誠,や、だから水飲みに來ただけなんだが……
姫月,そんなの我慢できるじゃん!
誠,と、トイレにだって行きたかったし
姫月,1日くらいトイレ行かなくたって平氣でしょ!!!
誠,無理だろそれ!!!
無茶苦茶なことを言う妹に俺は思わず突っ込んでしまう。
姫月,挑戰してもいない內から何諦めてるのよ! 少しは根性見せなさいよこの馱目兄貴!
姫月,と、とにかく! ママとパパがいないんだから、私がこの家のルールなの。いい加減覺えてよね!
ほのか,あ、あの、姫ちゃん。違うんだよ。私がもたもたしてて床に寢ちゃってたから……
姫月のあまりの理不盡なキレっぷりに、ほのかが助け船を出してくれた。フォローになっているかどうかは謎なところだが、ほのかちゃんマジ天使。
姫月,ゆ、床に寢ちゃって……? え、何? どういう狀況だったわけ?
誠,あ~……實はかくかくしかじかで、扉がぶつかった時、床に倒れこんだほのかちゃんに氣付かず踏んでしまったんだ
姫月,はあああああ????? ふ、踏んだ!!?? ほのかを!!??? 信じらんない!
誠,それは俺も信じられなかった
まさか人生の中で女の子を踏みつけることが起こるなんて夢にも思わないだろう。それもこんな究極美少女を。
姫月,何ドヤ顏で言ってんのよ! あんた馬鹿!??
誠,いってぇ! あんた馬鹿って、お前はみやむーか
姫月,は?? みやむーってなに! 譯わかんないこと言って誤魔化さないで! ほのかもほのかで文句言ったり怒ったりしていいんだよ!!??
ほのか,え……だって、それは私がぶつかった拍子にへたりこんじゃったのがいけなかったから
姫月,ほのかは1[μ/ミクロン]も惡いとこなんてないの! 惡いのは全っ部このゴミがいけないの!!!
ほのか,ゴミ……?? えと、私、一應人間のつもりだったんだけど……な……
姫月,はい??? いや、ほのかが人間なのは分かってるよ大丈夫! ゴミなのはほのかじゃなくて私の兄貴のほうなの!
ほのか,お、お兄さんはごみなんかじゃないよ! 私がぐずぐずしてたからお兄さん氣付けなかっただけだし! それに私に氣付いたらすぐ退いてくれたもん!
あ、いや。それはほのかちゃんに氣付いたからではなく黑い物體が蠢いていたのに驚いたからなのだが……。
姫月,そんなの當たり前だから! てゆかぶつかった衝擊があるのにそっから更に踏みつけるとか酷いじゃん!
普段俺のことをゴミだ害蟲だと言う姫月だが、今回ばかりは正しい意見だ。
ほのか,で、でも踏まれても私平氣だよ!
姫月,踏まれて平氣な人間なんているわけないでしょー?? もう!
ほのかってば優しいのはいいことだけど、こんな奴庇わなくていいの!
ほのか,ち、違うの! 他の人に踏まれるのはいやだけど、お兄さんならいいの!!!
姫月,……………………え?
誠,……………………は?
姫月,え、えーー…と。ご、ごめんほのか。私、ちょっとほのかの言ってる意味が理解出來ないんだけど……
奇遇だな、妹よ。何を隱そう俺もだ。
姫月,え? 何? ほのかは踏まれるの好きなの??
ほのか,ち、違うよ! 踏まれるのが好きなわけじゃないけど! でも、お兄さんは踏んだ後優しくしてくれたし……!!
ほのか,それに私はお兄さんのこと好きだから……!!!!!
姫月,………………………
誠,………………………
ほのか,………………………
晝間の住宅地のど真ん中だとは思えないような靜寂があたりを包み込み、空氣が凍ってしまったかのような印象を與える。
姫月,……え? あ、え? ほ、ほのか……?? え??
ほのか,あ……わ、私今、好きって………
姫月とほのかちゃんが我に返ったように、顏を真っ赤にしてあたふたと狼狽えているのだが、情けないことに俺の頭は今の狀況に全く付いていくことが出來ていない。
姫月,や、やだな! ほのかってば! じょ、冗談きついよ! この変態兄貴にそんなこと言ったら本気にしちゃうよ!
ほのか,え、あ……ち、違うよ! あぅ、ち、違ってないけど! じょ、冗談なんかじゃなくて……@
ほのか,わ、私は昔からお兄さんのこと……お兄さんの彼女になりたいって……思って……
そう途切れ途切れに言うほのかの目には涙が溜まっていく。
ほのか,ご、ごめんなさい……今日は帰ります! し、失禮します!!!
ばたばたと慌しいスリッパの音が遠ざかり、玄関のドアががちゃりと響く。
嵐の去った靜けさとはこういうことを言うのだろうか。姫月と俺は、ただ呆然と黒髪の少女が先程まで立っていた場所を見つめるだけだった。
姫月,う、噓だ………
誠,う、噓だろ…………
姫月,あ、あれはきっと何かの間違い……。そう。そうなの。うん、よし
どうすればいいのか分からない俺は、ぱちぱちと瞬きを繰り返している妹に助けを求めるが、姫月は姫月で、ぶつぶつと何かを呟きながらふらりとリビングを出ていってしまった。
一人取り殘された俺はぼすりとソファーに身を沈めた。
……………。
正直な話ほのかちゃんに好かれる理由が俺にはわからない。
『仲の良い友達の、年の離れたお兄さん』に憧れるというのはリア充にはよくある話なのかもしれないが、ご覧のとおり俺はオタクだ。あんな究極美少女に好かれる要素などひとつもない。
誠,いや、でもほのかちゃんは噓とか冗談言うタイプじゃないよな………
誠,や? でもさっき踏まれてもにこにこしてたし不思議な子だし、そのまま鵜呑みしちゃ駄目な気もする………
……気もするのだが、しかし!
俺は最悪の結果を想定をして、浮かれる気持ちを抑えようとするのだがどうにも口元が緩んで止まらない。
人生苦節●年。この日、彼女いない歴=年の數の俺に、生まれて初めて異性から告白されるというビッグイベントが発生したのは紛れもない事実なのだった。
…………………。
誠,はぁ…………
今思い出してもドキドキしてしまう。何せ俺が! 可愛い女の子から! 告白されたのだ。
にやつく顔を抑えながら、顔を洗いすっきりして、俺は姫月の待つリビングへと向かった。
食卓にはパンにベーコンエッグ、ベイクドビーンズやサラダといったイングリッシュ?ブレックファスト風のメニューが並んでいる。
焼きたてのパンの匂いというものはどうしてこうも良い匂いなのだろう。
俺がまだ眠っている時に、姫月はこうしてパンまで焼いて朝食の準備をしてくれていたようだ。日曜日だというのに律儀な妹だ。
誠,おはよ………
姫月,…………おそよう。早く食べて。冷める
何故かは分からないが、いつにも増して姫月の機嫌が悪いようだ。
表情が冷たいだけじゃなく言葉が刺々しい。
誠,………いただきます
俺は軽く手を合わせてから目の前に並ぶ食事に手を付ける。
フォークを突き刺すととろりと溢れる半熟の卵が食欲をそそり、カリカリに焼かれたベーコンの塩気が空きっ腹に心地良く染み渡っていく。
欠點だらけの妹ではあるのだが、仕事で何年も海外に行ったきりの両親を持ったせいか料理の腕だけは一人前だ。
誠,あー…と、豆料理が良い甘辛さで美味いな
姫月,…………………
誠,べ、ベーコンも良いカリカリ具合で美味いし……
姫月,…………………
誠,め、目玉焼きも半熟で美味いし……
姫月,…………………
沈黙に耐えられず、必死に料理を褒めるも姫月はじとりと冷たい目で睨んでくるだけだ。
単に褒めるだけでは飽き足らないのか! 専門家のように豊富な知識を披露しつつ味を表現することが大切なのだな……!
誠,……え、えぇと。こ、このパン美味いな。何ていうか麥の穂の香りが……
姫月,………ほの か……???
先程まで一切無視を決め込んでいた姫月が小さく反応を示す。臺詞はよく聞こえなかったが、これはパンを褒めるのが得策だろう。
誠,あ、いや。穂の香りが芳醇で食欲をそそるなって……
姫月,は?? そそる!!?? 何が!? この変態兄貴!!!
誠,へ?? 何でだ!? イイ匂いって言ってるだけなのに何故に変態!!??
姫月,い、イイ匂いって……!!! 匂いに反応するなんて変態以外の何者でもないじゃない!!! 変態! 変態!! ド変態!!
誠,な、何で褒めたのにそんな罵られるんだ?
姫月,そんな変態なこと褒められたって嬉しくないに決まってるでしょ!
誠,そ、そうか……匂いを褒めたら変態なのか……
俺は先程まで食べていた麥穂パンを食べきり、その隣りにあるデニッシュへと手を伸ばした。
テリッと表面が輝き、甘い匂いが漂ってくるが先程の失敗を踏まえ匂いを褒めることはやめておこう。
誠,あ、こっちはリンゴが中に入ってるんだな。甘さの中に仄かに漂う酸味が……
姫月,………ほの か……!??
俺の褒め言葉を聞いた姫月の顔が、何故かますます険しくなっていく。
誠,や、だから甘酸っぱくていいなって……
姫月,甘酸っぱい!!? 甘酸っぱい何をしようってのよ!!
誠,な、何って普通に食べてるが……
姫月,たたたたた食べ……!!!!??? 食べるって朝から何変なこと言ってんの??? 兄貴の馬鹿!! スケベ!! エロゲ脳!!
俺の言葉に、姫月は目を見開き顔を真っ赤にしてぎゃあぎゃあと喚き立てる。意味が分からない。
誠,いや、だから何でパンが美味いって言ってるだけなのにエロゲ脳になるんだよ
姫月,え? ぱ、パン……?
誠,そうだ。お前が焼いたんだろ? このパン。だからイイ匂いだし美味いって言ってんのに、何でそんなに怒鳴られなきゃいけないんだよ
姫月,あ……な、何だ……パンのことだったんだ……。そ、そっか……
そう言って姫月はほっとしたように目を伏せる。
まったく、この妹は何を考えているのやら。
はぁ、と軽く溜息をつき、デニッシュに噛り付く俺に姫月は曇った表情を浮かべる。
姫月,あ、あのさ……兄貴……
誠,なんだよ
姫月,兄貴はさ。そ、その……ほのかと、お付き合いしたい、の……?
誠,っぐふ!!!!!
姫月の質問に俺は食べていたデニッシュを噴出してしまう。
誠,ごほっごほ! さ、さぁ……ごふ! ど、どうだろうな。そもそもあの子の気持ちもまだ確定かどうか分からないんだし、俺の一存じゃ決められないだろ
誠,……というか、そんなの別に姫月には関係ないじゃないか
姫月,か、関係ないわけないでしょ!
誠,いや、関係ないだろ……
姫月,だ、だってほのかは私の友達だよ!!? しかも兄貴はだらしないし汚いし! 兄貴が女の子とつきあったら何が起こるかわかったもんじゃないし
誠,俺はどんだけ鬼畜なんだよ……
姫月,とにかく! パパもママも外國なんだし、だらしない兄を持つ妹として、みすみす不純異性交遊を見逃すわけにはいかないもん……!
姫月,でも、だからといって不純同性交遊はOKなんて言わないんだからね!
姫月は一體何をそんなに興奮しているのだろうか。
よくは分からないが、確かに兄妹として交友関係を把握しておきたいというのも分からないでもない。
俺だって姫月にもし萬が一彼氏が出來たら見ておきたいし、変な奴だったら反対もするだろう。
………こんな口うるさくても妹は妹だしな……。
誠,はいはい、分かったよ。ほのかちゃんが俺のことを本気で好きだって言ってくれるなら、付き合いたい気持ちはある
姫月の迫力に観念した俺は今の気持ちを正直に伝えることにした。
姫月,……そ、なの……で、でもさ、彼女いない歴=年の數の兄貴が女の人とまともに付き合えるとは思えないけど……
誠,お前だって彼氏なんて今までいたことないじゃないか
俺の記憶が確かなら姫月に彼氏が出來たということは聞いたことがない。
姫月,そ、れは、だって……私は男の人に興味なんて、ないし
誠,へ?? マジで? お前そういう趣味だったのか!??
姫月,…………何の話?
誠,え、いや、まぁあれだ。俺はお前のことを決して馬鹿にしないからな
姫月,は?? 意味分かんないんだけど
誠,だから、お前が特殊な性癖の持ち主でも俺は気にしないという話だ! 言わせるな恥ずかしい!
姫月,特殊な性癖?
誠,大丈夫だ、応援するからな……。彼女が出來たら紹介するんだぞ
姫月,何で私に彼女が出來るのよ
誠,え? だってお前女の子が好きなんだろ?
姫月,女の子? 別に嫌いじゃないけど
誠,いやいやもう隠すな。日本で同性婚は認められていないが、養子縁組という手があるじゃないか。諦めちゃいけない
姫月,……ママとパパ、養子でも貰うの?
誠,母さんと父さんが養子貰ってどうすんだよ。お前がだよ
姫月,は? 何で私が養子貰わなきゃいけないの?
誠,いや、だから、お前の戀愛対象は男じゃなくて女の子なんだろって話だろ?
姫月,~~~~っ!??? な、なななななに言ってんのよこの馬鹿兄貴ーーーーーーー!!!!
誠,っぎゃ!!!!
姫月,信じらんない!!! 何馬鹿なこと言ってんのよ!! 女の子が好きっていうのは友達としてに決まってるでしょ!!!
誠,だってお前男に興味なくて、彼氏作らないっつーたらそういうことだろ!??
姫月,違う!!!! そんな目で見るなぁ!!
姫月,私が彼氏を作らないのは興味もないし、兄貴みたいな性欲魔神じゃないからに決まってるじゃないっ!
誠,性欲魔神って何だそりゃ……。男なんだから誰だって女の子に興味があるだろ
姫月,何それ! 女の子だったら誰でもいいわけ? そんなのほのかに失禮だよ!
誠,女の子だったら誰でもいいなんて言ってないだろ!? 大體俺みたいなモテない奴は、俺のことを好きって言ってくれる女の子ってだけで好感度120%アップなんだよ!
くそ。自分で言ってて悲しくなってきた。
何で妹相手にいかに自分がモテないか力説しなければいけないんだ。
姫月,で、でも兄貴なんて毎日変なゲームばっかやってるじゃない
誠,変なゲームとは何だ!
姫月,よ、良くわからないけど……女の子を調教したり監禁したりする様なゲーム?
誠,なっ……! お前エロゲをバカにするのか! エロゲはそんな簡単な言葉で言い表すことは出來ないし、そんな安いもんじゃない!
姫月,じゃ、じゃぁどんなのよ……
誠,ふむ。そうだな……
誠,……そう、一言で言えば人生の様なものだ
姫月,人生って……どんだけ兄貴の人生は寂しいのよ……
姫月,と、とにかく! エロゲの事は良くわからないけど、ほのかが兄貴のそんな嗜好に耐えられるわけないでしょ!?
誠,アホか。趣味嗜好と現実は違うんだよ。癡漢もののゲームばっかやる奴が実際に癡漢するわけじゃないだろ?
朝っぱらから妹と性の嗜好について語らなければならない狀況とはいかがなもんか。
というか調教監禁ものが好きだからと言って、それを見境なく現実に行いたいと考える男は間違いなく犯罪予備軍だ。
姫月,じゃ、じゃぁもし調教していいって女の子がいたらほのかとは付き合わないの?
誠,は? あ、あぁ、まぁ、もしいればほのかちゃんよりそっちの子を取るかもしれないけど……
自ら調教されたいという女の子なんているわけがない。まったくこの妹は何を言い出すのやら。
姫月,それなら……、それなら私が調教される! だったら文句ないでしょ!?
誠,………………
誠,………………………
誠,…………………………………はぁ?
あまりに斜め上過ぎる姫月の臺詞に俺の意識は飛びそうになる。
誠,あのなぁ………どこの世界に実の妹を調教する兄がいるんだよ………
昔から何を考えているのか分からない奴ではあったのだが、まさかこれ程とは思わなかった。
深くため息を吐きながら俺はアホな提案をしてくる妹を一蹴した。
姫月,だって、兄貴さっき言ったじゃない! 調教させてくれる女の子がいればほのかとは付き合わないって!
誠,確かに言ったけど、それは兄妹以外の話であってだなぁ……
姫月,人類の祖先はアダムとイヴっていう2人だって聖書に書いてたから、元を辿ればみんな兄弟だ
誠,お前は一體どんだけ歴史を遡るつもりだ………
いかん。こいつはマジでアホだ。
反対を押し切ってほのかちゃんと付き合っても良いとは思うのだが、今後の生活面から見て、これ以上姫月に嫌われることは避けておきたい。
相互理解のためにはまずは相手の心情を知り、自ら歩み寄らねば。
誠,………はぁ、よく分からんが、お前は何でそんなにほのかちゃんとの付き合いを反対するんだ?
姫月,………べ、別に、そういうわけじゃないけど……。でも、ほのかは私の友達だし超可愛いし性格もいいし、兄貴なんかには勿體無いもん!
誠,まぁ確かに俺には不釣合いなくらいレベル高い子ではあるが……
姫月,そ、そうでしょう!? しかも兄貴は調教マニアだもん! そんな人に大事な友達を売り渡すことなんて出來ないよ!
売り渡すってお前……。
少し言葉が酷過ぎないかとは思うのだが、まぁ姫月が反対するのも當然なのかもしれない。このままでは埒が明かないと思い、俺は懐柔方法を変えることにした。
誠,分かった……。ほのかちゃんと付き合うのをやめたとしたら、具體的に姫月はどんな調教をさせてくれるんだ?
姫月,え……!? ど、どんな調教って………
誠,俺の持ってるエロゲみたいに精神崩壊起こすような調教でもお前は受け入れるってことなんだろ?
姫月,せ、せいしんほうかいって…………
姫月,あ、兄貴は………そういうの、好き、なの………?
顔を真っ赤にさせて、明らかにドン引きしている姫月を見ていると、俺まで気恥ずかしくなってしまう。
だがここで手を緩めるわけにはいかない。
誠,そうだな。好きだ
姫月,そ……なんだ…………
つーか精神崩壊起こすような調教ってバッドエンドなんじゃね?というツッコミはここでは割愛。
恥ずかしそうに俯いてしまった姫月を見て、俺はほっと胸を撫で下ろした。よし。計畫通り。
これで俺は無事念願の彼女をGET出來るだろう。
姫月,………………分かった……
誠,………………………はい?
姫月,兄貴の調教は私が受ける。せいしんほうかいするような調教でもすればいいよ!! だから、兄貴はほのかと付き合っちゃ駄目!!
誠,お、お前……何言ってるのか分かってんのか……?
姫月,分かってるよ。分かってる……! でも、駄目なんだもん! 兄貴に彼女なんていらないの!!! 絶対駄目! 駄目ったら駄目な!!
誠,………………………
意味が分からない。
本気で意味は分からないのだが、こうして俺の奇妙な妹調教生活は始まったのだった。
;本脚本编写作者 枫落雪夜 , 此脚本仅供pymo引擎使用
誠,っていやいやいやちょっと待て!!
誠,おかしいだろこの展開! つか妹を調教とかないだろ!
姫月,おかしいのは兄貴の顔でしょ? 何言ってるの? 頭大丈夫?
誠,大丈夫だ、問題ない。一番いいやつを頼む。……っていや、そうじゃなくてだな?
姫月,一番いいやつっていうのが何を指してるのか分からないけど、とにかく! 私を好きにしていいんだから、彼女なんていらないでしょ?
誠,いや、待て。姫月。ちょっと落ち著け
一體どう説得すればこいつは納得するのだろうか。
モチツケとか言ってる場合ではない。
兄としてひとまず、すっかり頭に血が昇ってしまっている妹を落ち著かせねばならないだろう。
姫月,私はいつだって落ち著いてる。落ち著きがないのは兄貴のほうだ
姫月,で? 調教って具體的に何すればいいわけ? 鞄でも持ってあげればいいの?
誠,いや、それは調教とは言わんだろ
思わず突っ込んでしまった。
姫月,え? 違うの?
誠,大違いに決まってるだろ……。アホかお前
誠,いってえええええ!!!
姫月,あ。ごめん。蛾が止まってたから、つい
誠,蛾が止まってて女が平手打ちとかしねぇし!
姫月,私はする
誠,……普通の女の子はしねぇ
誠,~~~~~!!!
誠,だっから痛ぇっつの!!!
キリストじゃないんだから、右の頬を打たれたなら左の頬をも差し出しなさいなどと言えるはずがない。
姫月,芋蟲が這ってたの。良かったね。咬まれなくて
誠,芋蟲が咬むか!! つか芋蟲に歯なんてねぇだろ!
姫月,ふん。新種の芋蟲がいるかもしれないじゃない。可能性を否定してたらいつまで経っても新たな発見はないもの
誠,もっともらしく言って自分を正當化すんな!
誠,そもそもこんだけ暴力的なお前が大人しく調教なんて受けられるわけないだろ!
姫月,ば、馬鹿にしないでよ!! 調教くらいお茶の子さいさいなんだから!!!
誠,いや、お茶の子さいさいって何年前の死語だよ……
姫月,別にいいじゃん! 時代は繰り返すんだから、お茶の子さいさいっていう言葉がブームになる日が來るかも知れないもん!
姫月,と、とにかく! 何か命令しなさいよ!
誠,とは言ってもなぁ。お前すぐ毆るし
姫月,な、毆ってなんかないもん!
誠,いやいや、さっきから俺何回も毆られてんすけど……
姫月,だ、だから、さっきのはヒルが兄貴に噛みつこうとしてたんだってば!
誠,お前さっきと言ってること違うぞ。つか日本の住宅地にヒルがいるとかどんなだよ
姫月,あぁもうごちゃごちゃうるさい! オタクなら黙って調教しなさいよ!!
誠,何だその一見名言風な言葉は
姫月,私の言葉は全部名言に決まってるの!
誠,はぁ……。じゃぁ何を命令されても絶対毆らないんだな?
姫月,あ、當たり前、よ……
誠,そうだな……それじゃ
姫月,あ…………
姫月の顔が緊張に強ばる。
誠,…………とりあえずお茶煎れてくれ
姫月,………………
誠,………………
姫月,………………はぁ???
誠,聞こえなかったか? お茶がほしいって言ったんだが……
姫月,そ、それは聞いたけど! 何その命令! 兄貴私のことバカにしてるわけ!???
誠,バカになどしてないさ。お茶を煎れるといっても、只お茶を煎れるだけではない。そうだな。テーマは『ご主人様とメイドな妹』でどうだ?
姫月,や、どうだって言われても意味分かんない
誠,ふん、いわばこれは調教入門編だ。普段生意気なお前が『お兄さま、お茶が入りました。どうぞ、召し上がれ』と笑顔で言う
誠,それだけで既にハードルが高いだろう!!
姫月,ぐ…………そ、そんなこと……
誠,出來るのか? 普段俺を害蟲のような目で見るお前が! 『お兄さま』と頬を染めて言えるってか!?
姫月,い、言えるわよそのくらい! ちょ、ちょっと待ってなさいよね!
そう言い捨てて、姫月はキッチンのほうへと走っていった。
ふぅ。アホな妹を持つと疲れるな…………。
しばらくして、ほかほかと湯気を立てているお茶とともに姫月が姿を現した。
姫月,………………
誠,ほら。『お兄さま、お茶が入りました。どうぞ召しあがれ』だろ?
姫月,お、お、お……おに…………
姫月,お、鬼平●科帳って超面白いよね! 熱いよね!!
誠,いや、それもう放送終わってるし……
姫月,は!? 何言ってんの今再放送してるじゃない!
誠,や、知らねぇし……
姫月,はぁ? 本放送が終わった後も、ファンの熱い要望に応えて、スペシャルドラマも製作されてる人気時代劇なのに何で知らないわけ!!??
何で知らないかとか言われても、知らんものは知らんがな……。
誠,………………
姫月,………………
誠,……で?
姫月,あ。あぅ……あぅ……ぅ……お、おに……
誠,ん??
姫月,おぉおおにぎりの中身はブルーベリージャムとストロベリージャムどっちがいい!??
誠,何だその某ロボットアニメの軍人さんみたいなセレクトは。両方卻下
姫月,うぅううううう~~~~兄貴のバカぁあああ
誠,違うだろ? 姫月。お兄さま、だ
普段の口の悪さと暴力的な性格も、今は形を潛め姫月は屈辱に耐えている。
なかなかに良い光景と言えるだろう。
姫月,お、おに、おにおにおにおに……
誠,鬼鬼連呼してないでさっさと言えよ。簡単なんだろ?
姫月,く……っ! お、おに、さま。お、お茶が入ったからどうぞ召しあがりやがりませ
誠,……日本語崩壊してるぞ。不合格。もう一回
姫月,くぅっ!! おおおお兄さまお茶が入りましたどうぞお召し上がりくださいっ!!!
誠,笑顔がない臺詞が投げやり過ぎる。もう一回
姫月,くうううっ!!! お、お兄さま。お、お茶が、はは入りました! どうぞ召し上がれ???
姫月の顔はひきつってしまっていて、とても笑顔と呼べるものではないのだが……。
誠,……ふむ
合格
誠,あー……、まぁ、姫月なんだしこんくらい出來たら上出來……か??
姫月,な、何それ! 素直に負けを認めなさいよ!
誠,いや、いつ勝ち負けを競うものになったんだ
姫月,ふん! 私のお茶汲み係は完璧でしょ!? 私にかかればこのくらい朝飯前なんだから!
不合格
誠,笑顔はひきつってるし、臺詞は感情が籠もっていないし駄目だな
姫月,うぐぅ……
誠,まぁしかし、お前にしては頑張ったんじゃないか?
姫月,…………っつ!!
姫月,ま、まぁね! 私にかかればこのくらい朝飯前よ!
……こいつは人の話聞いてるのだろうか。
駄目だと言ってるのに何をそんなに得意げに……。
姫月,そ、それじゃ、これでほのかに手を出すのは諦めたんでしょ!?
誠,いや、それとこれとは話が別だろ
姫月,別じゃない! この私にあんな恥ずかしいことさせておいて、ふざけないでよ!!
誠,……恥ずかしいことって、ただお茶を煎れただけじゃないか……
姫月,は、恥ずかしいことも言わされたもん……!!
誠,至って普通の兄妹の會話じゃないか?
姫月,イマドキどこの世界に兄のことを『お兄さま①』なんて呼ぶ妹がいるのよ!!!
誠,俺の世界では妹たちは『お兄たま』とか『兄様』『兄君』といった様々な呼び名で俺を呼ぶぞ
姫月,それは兄貴の世界じゃなくゲームの世界でしょうが
誠,ゲームなどではない! 彼女たちはしっかりと常に俺と共にいる!
誠,俺は彼女たちと共に熱海旅行にだって行った! 船の上や旅館で過ごした俺と彼女たちの間には信頼と愛情がしっかりと育まれているのだ……!
姫月,……へぇ? いないと思ったらそんなとこに行ってたんだ……
姫月の目がジトリと冷たく光る。
姫月,ふーー…ん。バイトもしてない兄貴が。ゲームと一緒に熱海旅行、ね……
誠,な、なんだよ……! い、いいだろ別に! 俺の小遣いをどう使おうか俺の勝手だ
姫月,………………お小遣い50%カット
誠,はぁああああああ???? ちょっ……! お前何言ってんだ! 50%もカットされたらゲーム買えなくなっちまうじゃねぇか!! この鬼畜!!!!
姫月,……60%カット
誠,ぎゃ!! 噓! 噓です!! 鬼畜とか噓で、ホントはいつも天使みたいだって思ってました!!
姫月,へーーー。……それで?
誠,いや、マジで姫月は俺の自慢の妹だよ! 料理うまいししっかり者だし家計簿1円たりとも間違えないし!?
姫月,…………で?
俺の必死のおだて作戦にも関わらず姫月は仏頂面のままだ。
こうなったら泣き落とし作戦に移行するしか……。
誠,だ、だから、小遣いカットされたらバイト始めるしかないしさ……
誠,正直大學の勉強で手いっぱいだから、バイト始めたら寢る時間が……
姫月,……ゲームする時間を削ればいいじゃない
誠,それは無理だ
姫月,は? 何でよ。毎日5時間以上ゲームやってんだから餘裕でしょ
誠,さっきも言っただろう? エロゲは俺の人生だ。ライフラインだ。エロゲが出來ない人生など死んでいるも同然
誠,よってどんだけ忙しかろうがエロゲはする。それで死んだとしても本望だ(??)
姫月,……死にたきゃ勝手に死ねばいいけど、ニュースに取り上げられるような無様な死に方だけはやめてよね
姫月の目は相変わらず冷たいままだ。
エロゲのために死ねるとは言ったものの、やはり睡眠時間は大切である。
そもそも死んでしまっては、これから発売されるまだ見ぬヒロインたちを攻略出來ないのだ。
それでは本末転倒もいいとこだろう。
誠,あ、いや。だから……例えばの話であってだな?
誠,睡眠時間は大切だなって……
姫月,…………
誠,姫月ぃ……
姫月,はぁ……。兄貴、何で私が怒ってるのか分かんないんだ……
誠,え? 散財したことに怒ってるんだろ?
姫月,違う!!
姫月,……それはさ、ゲームなんかにうつつを抜かして、結構な金額をつぎ込んでることは腹立つし、元々バカな兄貴が更に屑で底辺な兄貴になって死ねば良いと私は思うよ?
姫月,でも、お小遣いでやり繰りしてるの知ってるから、それは別にいいよ……仕方ないって思う
姫月,でも、でもさ……
そこまで言って姫月の目に涙が浮かんでいるのが分かった。
誠,姫月……お前……
姫月,………………っつ
誠,……お前もラブシスターをやりたかったのか……!
姫月,…………………………………何て?
誠,え? いや、だからお前もゲームをやりたかったんだろ? そうだよなぁ女から見ても彼女たちは魅力的だよなぁ
姫月,………………
誠,そうかそうか! それなら仕方ない! もう一臺のゲーム機をお前に貸してやるよ!
姫月,……………………
誠,あ。ちなみに俺のお勧めはスズメちゃんだ! ろりろりまん丸な目で『にいに』って呼ばれるのがもうたまんないんだよなぁ
姫月,…………ねぇ、兄貴?
誠,ん? 何だ? 姫月。質問ならいくらでも答えてやるぞ……って……あれ?
空想の世界から舞い戻り、姫月の顔を見る。
……笑みを浮かべているが、その目は決して笑っていない。
姫月,いつ、私がそんなゲームをやりたいって言ったのかなぁ?
誠,え、えぇと……。い、いつだろう?
………どうやら俺はバッドエンド直行の選択肢を選んでしまったようだ。
姫月,ホントはね、私は兄貴がやってるようなゲームって心の底から大ッキライで、やりたいどころかCD割っちゃいたいくらいなの
姫月,でも、人の趣味は十人十色だと思うし、そんなゲームばっかやって兄貴が廃人になってもどーでもいいんだけど!
姫月,そんなことより何より私が許せないのはね?
誠,は、はい……
姫月,……っつ!!! そのくらい自分で考えろこの屑兄貴!!!
バン、っと機を叩いて姫月は立ち去る。
ドスドスという無遠慮な足音が遠ざかり、バタンという大きな音が響いた。
しぃんと靜まりかえったリビングに一人でいるのは何だか寂しい。
誠,………まったく、何なんだあいつは……
結局姫月が何に対して怒っているのか、そして何を考えているのかは分からない。
俺ははぁ、と深く溜息を吐き、リビングを出て自分の部屋へと戻る。
ぱたんと音を立てて扉を閉めると、生ぬるい空気が俺の頬を撫でていく。
誠,……參ったな……
誰に対して言うわけでもなく呟いて、俺はごろりとベッドに橫になった。
そして結局その日、姫月は自分の部屋から出てくることはなく、互いに一人きりの休日を過ごしたのだった。
カーテンの隙間から漏れる光によって、俺の意識は浮上させられる。
誠,……朝か…………
時計の針は6時ちょっと前を示している。
もう少し眠れるかもしれないという誘惑に惑わされる自分を叱吒して、俺は這うようにベッドから身を起こした。
誠,眠い……
重たい瞼を擦りながら、俺はクローゼットを開きYシャツとスーツを手に取った。
今日から2週間の教育実習が始まる。
正直言って教育者になる気などさらさらない。
そもそもイマドキの若者の園に紛れ込むなど恐ろし過ぎだろ。
寢間著として愛用しているジャージを脫ぐと、白く貧相な自分の體が鏡に映り込んだ。
誠,また[揶揄/からか]われる生活になるのか……
子供は正直でとても殘酷だ。
『キモい』だの『うざい』だの人が傷付く言葉を平気で口にする。
その一言がどれだけ人の心を抉るのか知りもしないで。
(恐らく言った人間は覚えていないんだろうな……)
若かりし頃のトラウマを思い出し、気持ちは暗くなるばかりだ。
はぁ、と重い溜息を吐きながら、シャツを手にした時。
ガチャリ。
誠,……?
予期せぬ音が部屋の中に響き、扉が開かれる。
姫月,兄貴! そろそろ起きないと遅刻する……よ……って……ぇ……
音のしたほうに目をやると、そこには姫月の姿があった。
が、何故か姫月の顔は見る見る間に赤くなっていく。
まぁ何だ……ひとまず。
誠,えぇと。……はよ……
姫月,き…………
誠,木……?
姫月,きゃあぁあああ!!!! あぁああにきの変態!!! 早く服著てよ馬鹿ぁあああああああ!!!
俺の聲を聞き、姫月はハッと正気に戻ったように大聲で叫ぶ。
誠,は???? わ、ちょ、待て……!
自分の部屋で裸になって何が悪い!?
罵聲と共に部屋の入り口に積んであったギャルゲ雑誌まで飛んでくるとか理不盡過ぎる!!!
姫月,いいから早く何か著ろぉ!!!!
誠,わ、わかった!! 分かったから落ち著け!!!
お前が部屋を出れば全て丸く収まるんだ!と思いつつも俺は姫月の剣幕に押され、慌ててシャツとズボンを身に著ける。
誠,き、著たぞ! 姫月! ほら!!!
姫月,はっ……!!!
俺が服を著たのを見て、ようやく姫月は雑誌を投げつけてくる手を止めた。
誠,はぁ……お前なぁ…自分の部屋で著替えて何が悪いんだよ…
姫月,そ、それはそうだけど……
姫月,で、でも! 私が部屋に來るのは毎日決まってることなんだから、その時間は著替えを遠慮するのがマナーよ!!
誠,何だそりゃ……
俺の言葉に反省した表情を見せたのも束の間。姫月は目を吊り上げながら天上天下俺ルールを振りかざしやがる。
どこの家でも妹という存在はこうも橫暴なものなんだろうか。
姫月,……何。その哀れんだような目
誠,いや、昨日みたいに従順な妹だったら良かったのになぁと思っただけだ……
姫月,~~~~~っつ!!!!???
思わず呟いてしまった俺の言葉に、姫月は目を見開く。
顔はまるで茹で蛸のように真っ赤だ。
姫月,わ、分かったわよ! じゃぁ従順になればいいんでしょ!?
誠,いやいやお前が従順とか無理だろ
姫月,無理じゃない! 出來るもん! それに、私みたいな可愛い子が好きにしていいって言ってるんだからいいでしょ!?
顔を赤くしたまま姫月がそんなことを言う。
恥ずかしいなら言わなきゃいいのに、とも思うが、まぁ確かにこいつの場合見た目はものすごく可愛い。
あくまで見た目だけは、だが。
誠,はぁ……いくら可愛くたって妹だしなぁ……
姫月,…………
俺の臺詞に姫月は暫し言葉をなくす。
何だ? 何か変なことでも言ったのだろうか?
誠,? どうした? 急に黙り込んで
姫月,あ……べ、別に! な、何でもない! 兄貴は馬鹿なんだから、大人しく私だけに命令しとけばいいの!
姫月,いいから早く支度してご飯食べて學園に行きなさい! 今日は早く行かなきゃいけないんでしょ!?
姫月は焦ったように言葉を紡ぐが、明らかに動揺している。
よく分からんが、まぁ確かに急いだほうが良いだろう。それに起きたばかりで、俺は腹が減った。
誠,……じゃぁまぁ飯食うわ……
姫月,そ、そうだよ! さっさと食べてとっとと行きなさいよ!
ふんっと鼻を鳴らし部屋から出て行く姫月を見送り、俺もその後に続く。
階段を下りる二人分のスリッパの音がパタパタと大きく響きとても耳障りだ。
姫月,ほら、ご飯とお味噌汁
誠,いただきます……
炊き上がったばかりと思しき白米と味噌汁が食卓へと運ばれ、俺は軽く手を合わせてから目の前に並ぶ食事に箸を付ける。
(性格と口の悪ささえ除けばよく出來た妹なんだがなぁ……)
仏頂面をしたまま無言で箸を進める姫月の顔を見ながら、俺はそんなことを思う。
姫月,………何
見られていることに気付いたのか、姫月がじろりと蔑むような目で俺を見る。
誠,え、あー…。そ、そうそう! 今日から俺もお前の學園に行くから、何か新鮮だなって思ってさ!
姫月,……!!
咄嗟のでまかせだったのだが、姫月の顔がひくりと歪むのが分かった。
よく分からないのだが、俺はどうやら何か地雷を踏んでしまったようだ……。
姫月,い、いくら新鮮だからって、変な気起こしたら絶対許さないからね!
誠,は???
姫月,兄貴の変態っぷりは知ってるけど、學園では餘計なこと話さないで見ないで空気吸わないで!!!
誠,いやいや空気吸わなかったら死ぬだろ……
相変わらずこの妹様は無茶を言う。
姫月,反論するな。甘い匂いがする~とか言って校舎內をうろうろしてたら員警に突き出すからね!
姫月,それにほのかに対しても、學園にいる間は教実と生徒っていう関係なのを忘れないで
姫月,何かあって嫌な思いするのはほのかなんだから、そんなことになったら本気で殺すわよ!
姫月の目が冷たく光る。こいつはマジだ。この目はマジで殺る。
誠,だ、大丈夫だって。ちゃんとほのかちゃんの立場が悪くならないように、一人の生徒として扱うさ
姫月,約束だからね。死んでも守ってよね!
死んでしまっては約束も何もないだろうとは思うのだが、いつになく真剣な様子の姫月に、俺は一も二もなく無言で頷く。
どうやらこいつは本気でほのかちゃんを心配しているようだ。
誠,ん。ご馳走様
姫月,おそまつ様でした
ずずっと音を立てて味噌汁を胃に流し込み、俺は學園に行く準備をしようと家中を駆け回る。
顔を洗って歯を磨いて、と朝はどうしても慌しくなってしまうのだ。
ちらりと姫月の様子を伺うと、何食わぬ顔で食器を洗い、鞄を片手に玄関の前で待っている。
姫月,ほら、兄貴。鞄にお弁當入れておいたから、早く行くよ
誠,お、おぉ
最早どちらが年上か分からない。一分の隙もないように姫月は準備を済ませてしまっているのだ。
誠,お前は本當に出來た妹なのかもしれないな……
姫月,は? 何言ってんの? そんなの當たり前じゃない。私以上に出來た妹がこの世のどこに存在するっていうのよ
自分で言うな自分で。
姫月,?~~???
誠,………?
先程まで怒っていたのは幻だったかのように姫月はご機嫌のように見える。
誠,お前、何がそんなに嬉しいんだ?
姫月,や、べ、別にそんなのどーでもいいじゃん! 私だって鼻歌を歌いたい時くらいあるもん!
誠,ただ聞いただけなんだからそんなに怒らなくてもいいんじゃないか……?
姫月,うぐ。う、うるさいな! 兄貴のくせに! が、學園が好きだから私は毎朝登校するのが楽しみなの! 悪い!!??
誠,悪くはないが……
姫月,そ、そうでしょ!? そ、それに今日は……
誠,? 今日、何かあるのか?
姫月,え、あ、兄貴には関係ないことだもん!
誠,ふぅん? まぁいいんだけどさ、學園が好きなやつなんているんだなぁ
姫月,え? 寧ろ學園嫌いな人のほうが少ないでしょ?
俺の言葉に、姫月が心底分からないとばかりにきょとんと目を丸くする。
いや、少なくとも俺は大嫌いだった。
姫月,だって友達にも會えるし、授業も楽しいし、セーシュンしてるなって感じがするよ!
にこっと笑う姫月は太陽の光をいっぱいに浴びてキラキラと輝いている。何もかもがうまくいって、自分に出來ないことなんてない。毎日が楽しくて仕方がないといった風だ。
俺には分からない、手にすることは出來ない。自分と姫月は兄妹なのに、何でこんなにも違うのだろう……。
家から駅まで10分程歩き、30分電車に揺られたら學園はすぐそこだ。
餘裕を持って家を出たおかげで、約束の8時までにはまだ10分ほどある。
誠,……しかし面倒くさいな……
姫月,面倒くさいとか言わないの! さっきも言ったけど、ちゃんと実習生らしく清く正しく生活してよね!
誠,へいへい
姫月,返事は一回
お前はどこの教育ママだ。
姫月,それじゃ、私は教室に行くから兄貴はちゃんと職務をこなすこと
誠,分かってるって
姫月,絶対問題起こさないでよね!!!
しつこいくらいに姫月は念を押して校舎の中へと消えていった。
誠,まぁ、とにかく職員室に行くか……
うるさい妹から解放されたが今度は擔當教員との挨拶などの更に気の滅入るイベントが待ち構えている。
はぁ、と昨日から何度目になるのか分からない溜息を吐き、俺は重い體を引きずるようにして學園の中へと歩を進める。
教育実習は概ね母校に受け入れてもらうことが一般的だ。
俺自身も例外ではなくこの白皇學園に來たのだが、現在通っている大學の付屬學園のため目新しさも懐かしさも全くない。
可愛いと評判らしいピンク色のセーラー服もすっかり見慣れてしまっている。
というよりもあの制服=姫月という方程式が自分の中で確立されているため、可愛いとかそういう目で見ることが出來ない。
誠,しかし相変わらず無駄に広いな……
創立110周年を迎えた歴史だけはある學園なのだが、老朽化が進んだとかなんとかで5年ほど前に改築した校舎はわりと綺麗だ。
誠,職員室の場所は、と……
俺は過去の記憶を頼りに校舎內を歩く。
早朝から部活に勵む熱心な生徒たち數人と出會うが、不審者然とした俺に対してまで皆満面の笑顔で挨拶をして通り過ぎていく。
部活動に煌めいている生徒達。これこそまさにリア充。俺とは相容れない人種で、普段であれば決して関わることなどないだろう。
俺はひとまず彼らに挨拶を返しながら職員室を目指した。
こんこん
誠,失禮します
階段を登り、少し歩いたところに職員室はある。
場所自體は昔と変わっていなかったようで、俺はわりとすぐにたどり著くことが出來た。
學生時代は正直あまり來たくなかった場所だが……。
まぁ人生何があるかなんて予想出來ないよなぁ。
そんな風に過去を振り返りながら職員室の中へと入ると、見知った中年男性が俺を出迎える。
男性教師,やぁやぁ一之瀬くん! 久しぶりだねぇ。お爺さまはお元気かね?
たっぷりと脂肪の乗った腹をぶるんぶるんと揺らし、暑苦しい顔で小走りに駆け寄ってきた。
(じじいの健康を聞く前に、普通なら俺の調子を聞くだろこの狸親父)
誠,小原先生、ご無沙汰してます。祖父も今年の新年會で會った時にはピンピンしてましたよ。お気遣いありがとうございます
心の底では盛大に毒突きながらも、波風立てないのが一番だと思い、俺は表面上は丁寧に振る舞う。
小原,そうかそうか! それは良かった。あぁ、そうそう。君の実習生活は僕が擔當することになったんだ。姫月くんも同じクラスだ。よろしく頼むね
小原,とは言っても、君は特別なんだし、そんなに重労働はさせないから気楽に過ごしてくれたまえ
誠,いえ、そんな風に特別扱いはよしてください。精一杯がんばりますので、よろしくご鞭撻の程お願いいたします
この脂っこく笑みを浮かべる狸が擔當になるのか……と、俺は更に気が沈んでしまった。こんなことならじじいに頼んで、擔當を指定しておけば良かったとは思うが後の祭りだ。
小原,ははは、君は相変わらず真面目だなぁ。まぁ良いか。くれぐれもお爺さまにはよろしく伝えておいてくれたまえよ
この狸が會話の端々に口にする「お爺さま」とは、この學園の理事長のことだ。
『理事長の孫』という肩書きに対して、権力に弱い大人がゴマを擦ってくる。
(変わってないな……)
ぼんやりとそんなことを思いながら、俺は狸の後を追った。
;本脚本编写作者 枫落雪夜 , 此脚本仅供pymo引擎使用
小原,え~。そんなわけで、今日から2週間教育実習に來られた一之瀬誠先生だ。みんな、ちゃんと言うことをきくように
狸の言葉に生徒たちが揃って返事をする。
教室內の雰囲気はなかなか良いようだ。
小原,それじゃ、一之瀬先生。自己紹介をしてくれたまえ
狸はそう言って、教壇から少し離れた場所へと移動する。
誠,おはようございます。一之瀬誠と言います。未熟者ですが、皆さんと一緒に色々なことを學んでいきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします
女子生徒,はいは~い! 一之瀬先生に質問ー!
誠,え? はい、何でしょうか
女子生徒,先生の名字が一之瀬って、姫月ちゃんの親戚か何かですかぁ??
誠,あぁ、姫月とは兄妹なんです。でも、だからといって特別扱いはしませんから安心して下さい
むしろ身內だからこそ厳しく接するのが當たり前だと思うしな。
心の中でそう付け加えながら、俺は窓際に座っている姫月に目を遣った。
姫月,…………
誠,…………
當の本人の姫月は、なんだかものすごい形相でこちらを睨んでいる。
いや、挨拶というか自己紹介をしただけなんだが……。
何が姫月の気に障ったのだろうか。
そしてふと視線を橫にずらすと、姫月の隣の席に座っているほのかと目があったが、すぐに俯いてしまった。
そ、そうだよな……。昨日の今日だし仕方ないよな。別に嫌われたわけじゃない はず。
ほのか,…………
そんなことを思いながらほのかを見ていると、彼女はそわそわと視線を彷徨わせた後そろりと顔を上げた。
顔を真っ赤にしながら照れくさそうに微笑んでくれた彼女に、俺は顔がにやつきそうになってしまう。
いかんいかんと考えている內にHRの時間は終わっていった。
授業の終わりを告げる鐘の音が響く。
実習初日ということもあり、今日の俺の仕事は擔當の講師のアシスタント的な簡単なものだった。
が、根っからのヒキ気質である俺にとっては、イマドキのガキがうじゃうじゃいるような場所というだけで精神的負擔が半端ない。
縮こまった筋肉をほぐそうと、軽く伸びをして俺は職員室に戻ろうと廊下に出たのだが。
女子生徒,セーンセ!
誠,え?
教卓から離れた俺に一人の女子生徒が聲をかけてきた。
誠,えぇと、キミは……
振り返るとそこには、先程の俺の自己紹介の時に姫月との関係を質問してきた女子生徒がいた。
くるくると不規則に巻かれたボブショートの髪がふわりと揺れる。
雪名,[雪/ゆき][名/な][樹/じゅ][裏/り]だよ。樹裏って呼んでね?
誠,は、はは……。流石に生徒を名前では呼べないかなぁ
今風の軽いノリの少女に、俺は苦笑してしまう。
そもそも俺はこういうギャル系の子は苦手中の苦手なのだ。
雪名,あは、センセってばお堅いなぁ。ま、いいや。ねぇねぇ、センセーはお晝ご飯どうするの??
雪名,お弁當? それとも學食??
誠,え、えぇと。お弁當、だけど……
やっと一息つけるというところで、捕まってしまうとは俺は運が悪い。
雪名,そうなんだ! じゃぁ私たちと一緒に食べようよ!
誠,私たち?
貓屋敷,はいはいはーい! 私だよー! [貓/ねこ][屋/や][敷/しき][唯/ゆい]って言うの! よろしくね、センセー☆
誠,え、えぇと……。よ、よろしく
また新しくやかましいのが出てきてしまった。
釣り上がった目がまるで貓のように煌煌と光っている。名が體を現すとはよく言ったものだな。
貓屋敷,で?? センセ、一緒に食べようよ! 私もっとセンセ―とお話したいし?
雪名,私もー!
誠,は、はは……、あ、ありがとう。でも殘念ながら、やらなきゃいけないことがまだ殘ってるんだ。ごめんね
雪名,え~~~。そうなの??
貓屋敷,殘念ーー。じゃぁまた今度一緒に食べようね!
殘念、と言いながらも生徒達の顔は明るいままだ。
恐らく心の底から殘念などとは思っていないのだ。
子供は元々新しい物が大好きな生き物で、自分たちと年の近い実習生などは恰好の獲物なのだろう。
雪名,じゃぁねー、先生! また後で!
貓屋敷,ばいばーい☆
俺は軽く手を振って、にこやかに走り去っていく彼女たちを見送った。
半日も過ぎればあらかたクラスのことは分かる。
生徒達は皆良い子のようで、年若い俺を馬鹿にすることなく、フレンドリーに接してくる。
まぁ、それは主に姫月の日々の功績に依るところが大きいのだろう。
品行方正、眉目秀麗、文武両道。
今まで姫月の生活になど興味がなく知らなかったのだが、我が妹はそういった四字熟語がぴたりと當てはまる完璧超人らしいのだ。
全國模試を受ければ上位成績者に名を連ね、街を歩けばどこぞの有名アイドル會社にスカウトされること數十回。
気まぐれで始めたフィギュアスケートは國體優勝するほどの腕前で、次の冬期オリンピックの最有力候補なのだと聞いた時には目玉が飛び出るかと思った。
その上先生からの受けも良く、誰に対しても公平で優しいと來た。
そんな妹を持つ実習生に皆一目置くのは當然の流れなのかも知れない。
例えそれがただのキモイオタクでも。
まぁ俺は大人ですから?
姫月が家ではどんだけ橫暴で唯我獨尊キャラなのかなどは俺の心の中だけに留めておいてやるけどな?
超イイ兄貴じゃん俺。
??,…………ちょっと。邪魔なんだけど
誠,っぐ……
ふぅ、と一息吐いたところでかけられる辛辣な言葉と足を蹴られる衝撃。
こんなことをしてくる奴は今のこの學園には一人しかいない。
姫月,ふん。鼻の下伸ばしてみっともない。オタクでロリコンなんてマジキモイ
誠,……………
姫月,何よその目。何か文句でもあるわけ? ないでしょ? だってホントのことだもん。この萬年発情期変態ヲタ
悪口雑言が飛んでくる方に向き合ってみると、そこにはやはり姫月がいた。
家で會う時と異なっているのはすぐ傍に癒しキャラの存在がいることだろう。
ほのか,ひ、姫ちゃん。失禮だよ、そんな言い方……
姫月の暴言をほのかちゃんはやんわりと注意する。
誠,ほのかちゃんは優しいなぁ……
ほのか,え? あ。いえ、そ、そんなこと……
思わず口を付いて出た俺の言葉に、ほのかちゃんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
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姫月,な、なに人の親友を口説いてんのよ! 変態! 馬鹿! 屑!!
誠,べ、別に口説いてないだろう!? 本心を言っただけだ!
姫月,尚更悪い!!!
誠,っぐ!!!
姫月の右ストレートが顎に見事に命中して、俺はその場に崩れ落ちる。
姫月,朝約束したでしょう!!?? 実習中は問題を起こすような行為はしないって!
誠,は、はい。ごめんなさい
何故俺が謝らなきゃいけないんだとは思うが、ここで姫月に逆らうと後が怖い。
姫月,ただでさえ変態なのに生徒に手を出したりしたら、それこそ灑落にならないんだからね!?
ほのか,そ、そんなに言わなくても、お兄さんはちゃんと分かってるし、変態なんかじゃないよ
姫月,ほのかは甘いの! それに毎日毎日暇さえあればいやらしいゲームばっかしてるのに、変態じゃないわけないじゃない!
誠,いや、最近はそんな毎日してないぞ。月に12、3本。嗜む程度だ
姫月,…………そんだけやってれば十分だよ……
ほのか,…………うぅ………お兄さん………
誠,あ、いや、違うんだよ! ほのかちゃん! 別に全てのゲームがエロいわけじゃ……!
姫月,何必死に弁解しようとしてんのよ馬鹿兄貴。どんだけ言い繕おうとしても変態は変態。オタクはオタクでしょ
誠,姫月。その認識は間違っているぞ
姫月,はぁ? 何が? どこが?
誠,オタクといえども、その中は複雑分岐していて一概に変態だとは言えない!
姫月,………それで?
誠,確かに俺はエロゲも同人誌も大好きだ。愛していると言ってもいい。だがその同人誌も書き手によって內容は様々なのだ!
誠,その中には泣けるものも切ないものも笑えるものもある! 同人誌=エロ漫畫という世間の認識は間違っている……!
姫月,………こんなとこでそんな馬鹿な持論展開して楽しい?
ほのか,あ、で、でも同人誌って元々は俳句を集めた自費出版本のことを言うんだし、お兄さんの言うことも合ってるんじゃないかな
姫月,この脳內お花畑の兄貴がそんな高尚なものを読むわけないし。無理にこんなのフォローしなくていいんだよ
ほのか,む、無理じゃないけど……
誠,はぁ……ほのかちゃんは本當に優しいなぁ
ほのか,え、あ…………
姫月,…………………!!
姫月,とにかく! 私たちはトイレに行きたいんだから兄貴はさっさとそこどいてよ。超?邪?魔!
晝休みで生徒たちがいるとは言っても、廊下はそれなりの広さがあり、俺がいても普通に歩くスペースはある。それにも関わらずこの妹様は俺を廊下の端の端に追いやりやがる。
姫月,じゃぁね! 変態色情狂!
ほのか,あ……じゃ、じゃぁ……失禮します、お兄さん……
ドスドスと床を踏み鳴らして去って行く姫月とは対照的に、ほのかは軽く俺に向かって會釈をしてから軽やかな足運びで妹を追っていく。
なんつうか、すげぇ疲れた……。
;本脚本编写作者 枫落雪夜 , 此脚本仅供pymo引擎使用
俺はよろよろと覚束ない足取りで職員室へと戻る。
鞄に入っている弁當箱を片手に、向かった先は。
ぎぃ、という錆びた音と共に姿を見せる青い空。
初夏の風は穏やかで、サラサラとした空気が俺の全身を滑っていく。
本來屋上には鍵が付いていて、人が勝手に出入り出來る場所ではないのだが、何故か俺は昔から鍵開けが得意だった。
そのため、學生時代一人になりたい時は誰にも邪魔されることのないこの屋上に來ていたのだ。
『人は一人でいる時に孤獨を感じるのではない。大勢の中にいる時にこそ孤獨を感じるのだ』
そう言ったのは誰だったろう。
うまく言ったものだと思う。
今日、身近で姫月を見ていて痛感した。
學生時代、俺は誰にも相手にされず友達のいない日々を過ごしてきた。
姫月はそんな俺とは真逆の生活を送っている。常に友達に囲まれ、クラスの中心となっている毎日。誰からも愛され、みんなに必要とされている。
同じ兄妹なのに、どうしてこうも違うのだろうか。
誠,なんつうか、世の中って不公平だよなぁ……
はぁ、と溜息を吐いて空を眺めていると。
姫月,何溜息吐いてるの?
誠,!!!???
突然現れた姫月に、俺は心の底からびっくりしてしまった。
まさか先ほどまで羨んでいた人物が、こうもタイミング良く現れるなど思わないだろう。
姫月,な、何!? そ、そんなに驚かれたらこっちのほうがビックリしちゃうじゃない!
誠,あ、いや……悪い。丁度お前のことを考えてたところだったから
姫月,え、私のこと……って何……?
誠,あー……別に大したことじゃない
姫月,な、何よ……気になるじゃん
誠,……………
姫月は聞きたがっているようだが、兄としての面目もあり先ほどまで考えていたことを素直に言う気にはなれない。
どうして姫月ばかり、とかそんな卑屈なことばかり考えてしまう自分を見せるのは嫌なのだ。
誠,とにかく何でもない。……ところで、お前もうメシは食ったのか?
姫月,え? あ、うん。一応……
誠,ふぅん。早いな
姫月,兄貴は……まだ、みたいだね
姫月が俺の膝の上に鎮座したままの弁當箱を見て言う。
誠,あぁ、空見てたら忘れてた
姫月,は? 人が早起きして作ってるのに忘れないでよ! てゆか兄貴が空見て哀愁に浸ってるとか超キモイんだけど
誠,お前は何でそう棘があることしか言えないんだ。そんなんでよく普通に學園生活が送れるな……
姫月,あぁ、そんなの簡単だよ。だって……
誠,?
姫月,あ……いや、兄貴以外はちゃんと人として接するし……!
誠,……その言い方だと俺が人外みたいじゃないか?
姫月,當たり前じゃん。あ、兄貴なんて蟲以下だもん
誠,……昨日は生ゴミで今日は蟲か……
姫月,何よ! 何か文句あるの!? ゴミから蟲に昇格したんだから感謝してほしいくらいなのに!
誠,妹から蟲扱いされて喜ぶ兄がどこにいるんだ
姫月,さぁ? 探せばどっかにいるんじゃない? お弁當にホウ酸団子詰められないだけマシだよ
誠,おま……それ軽く殺人未遂じゃねぇか
姫月,蟲を殺しても罪には問われないもん
誠,………………
姫月,まぁとにかく、私のお弁當の餘りをあげてるんだから有難く食べなさいよ。殘したりしたら許さないから!
誠,腹は減ってるんだしちゃんと食べるよ
姫月,じゃ、さっさと食べればいいじゃない
誠,はいはい、頂きます
弁當のふたを開けると、そこには色とりどりのおかずが散りばめられている。
姫月,……………
弁當を食べる俺の姿を、姫月は無言でじっと見つめる。
姫月,………美味しい?
誠,あぁ、まぁな。お前、料理だけはうまいし
姫月,料理だけは餘計だよ! …………でも、そか。美味しいか……
褒め言葉に、姫月は少しだけ頬をゆるめた。
姫月,って、そ、そんなの當然だし! 私に出來ないことなんてないもん!
誠,……………
姫月,………………
姫月の自信満々な臺詞に呆れてしまい、俺はしばし無心に箸を動かした。
そんな俺を見ながらも、姫月は何かを思い出したのだろうか。
その視線は右へ左へと動き定まらない。
誠,……なんだよ
姫月,え?
誠,さっきからソワソワしてるけど、何か言いたいことでもあるのか?
姫月,え、えっと……その………
姫月,た、他意はないんだけどさ! 屑で馬鹿で10回くらい死んだほうが良いと思うけど! い、一応兄貴だし聞いておきたいんだけど!
誠,……………なんだよ
ものすごく罵られているのだが、既に反論する気力もない。
俺は姫月の言葉を待った。
姫月,そ、その、さ………。本當に、実習中はほのかに手は出さない、の……?
誠,はぁ。またその話題か……
姫月,だ、だって! けじめはちゃんと付けないと駄目じゃない!?
誠,何だそりゃ
姫月,い、いいでしょ別に! さっさと答えてよ!
誠,付き合わないよ。実習後にどうするかは分かんねぇけど、とりあえず2週間はそれどころじゃないし
誠,それに、昨日はお前も一応俺の命令通りに動いたわけだしな
姫月,そ、そう…………
俺の一言に、姫月は少しほっとした様子だ。
誠,……?
姫月,あ、いや! てゆか、一応って何よ一応って! あんなに完璧だった私のどこが不満なの!
誠,……どこら辺が完璧だったんだ……? 表情とかペンキが乾いたようなひび割れ具合だったぞ?
誠,いってぇ!!!
姫月,あぁ、毛蟲が這ってたの。良かったね、刺されなくて
誠,だから! 毛蟲なんて素手で潰したらお互い大慘事だろうが!
甚だ不毛なことではあるのだが、毆られる度にこういう會話をしている気がする。
姫月,大丈夫。だって私運動神経いいもん。毛蟲くらい餘裕だよ
誠,いや、それ運動神経関係ねぇし……。つかお前その暴力癖いい加減直せよ
姫月,ぼ、暴力じゃないもん!
誠,どう見ても暴力だろ
姫月,違うもん! 暴力じゃなくて、その……し……躾だもん!
誠,ぶっ……!!!
姫月,…………!!!!
姫月のあまりに無茶な言い訳に、俺は思わず吹き出してしまった。
姫月,わ、笑うな! 笑うなぁ!!! ママとパパがいない分、私が屑で底辺でオタクな兄貴を躾なきゃいけないんだから!!
誠,何だそりゃ。俺はペットか何かかよ
姫月,ふん! ペットなんて可愛いもんじゃないもん。年中いやらしいゲームばっかやってる変態のくせに!
誠,ひどい言われようだな…………
姫月,あ、當たり前じゃん! 兄貴なんて生きてる価値なんて全然ないんだから!
誠,はいはい。俺はどうせ屑で穀潰しのエロゲヘヴィーユーザーですよ。生きてる価値なくてすみませんね
姫月,そうだよ! だから私が価値があるように躾てあげないといけないの!
ふふん、と鼻を鳴らす姫月に少しイライラしてきてしまう。
せっかくの晝休憩の時にまで、どうして姫月の小言というか説教というかご高説を聞かなきゃいけないんだ?
誠,……でもさ。昨日の約束だと、調教されるのはお前のほうだぞ?
姫月,…………っつ!???
俺の言葉に、姫月は聲をなくし目を丸く見開いた。
姫月,う、あぅ……そ、そう……だけど……
誠,さてと、じゃぁ今回は何をしてもらおうかなぁ……
明らかに狼狽えている姫月を見る。
姫月,ひ……や、やらしい目で見ないでよ変態!!
誠,見てねぇし
姫月,噓だ! ニヤニヤして超キモい!!
誠,キモくて悪かったな……
遠慮なく暴言を吐く姫月だが、俺の命令にびくついているのが分かる。
普段生意気な妹が、俺に対してビクビクしているのを見るのは正直なところめちゃくちゃ気分が良い。
誠,そうだなぁ……
姫月,っつ……っ……な、何かしてほしいことがあるなら早く言いなさいよ……
誠,うーん。それじゃ、屋上は靜かだし、BGMが欲しいかな
姫月,BGM……?
俺の言葉は予想外のものだったらしい。
姫月は目を丸くしてパチパチと瞬きを繰り返している。
誠,そ。バックグラウンドミュージックだな
姫月,わ、分かった! それならi-Podを大音量設定にすればちょっと聞こえるかも……
誠,アホ。そんなもん聞きたくねぇよ。大體お前のi-Podに入ってる音楽なんてJ-POPとか洋楽だろ?
姫月,當然。流行りものから私ベストまでちゃんと入ってるよ!
いや……自慢げに言われても……。
誠,根っからのアニヲタの俺がそんなもん聴くわけないだろ……
姫月,そ、それもそうだね……で、でもアニソンばっかじゃなくて、こういう音楽に觸れるのも大切だよ! だからいいじゃん
誠,いや、だからそれ調教になってないし
姫月,あ、そっか。忘れてた……むぅ。じゃぁどうすればいいの? 漫研からオタクソングでも借りてこようか? あの人たちと話すの超嫌だけど
漫研の人間を思いだしたのか、姫月は顔を歪ませて心底嫌そうに吐き捨てる。
まぁ、一般人のオタクに対する態度ってこんなもんだよな。
誠,いや、それもいい。別にアニソンが聴きたい気分でもないしな
姫月,はぁ? じゃぁ何が聴きたいのよ!
誠,うーん。それじゃ、お前に歌ってもらおうかな
姫月,え?? わ、私???
誠,そ。お前
姫月,え、でも、私アニソンなんて知らないし……
誠,アニソンが聴きたい気分じゃないって言っただろ?
姫月,アニソン以外で見聞も視野も狹い兄貴の知ってる歌って何?
誠,……お前はいちいち俺を貶さないと會話が出來ないのか?
姫月,別に貶してないよ? だってホントのことだもん
誠,…………
誠,あー……まぁいい。とにかくお前に歌ってもらおう!
姫月,な、何歌えばいいのよ…………
誠,そうだなぁ……。よし、では『ぞうたん』を歌ってもらおうかな
姫月,………………
姫月,は???
誠,聞こえなかったか? 『ぞうたん』だ
姫月,や、き、聞こえたけど……ぞうたんってあれだよね……民謡というか子供の歌というかな……
誠,そう。『ママンと一緒』で定番といってもいいあの日本國民の心の歌だ
姫月,…………それはいいけど、何でぞうたん……?
誠,それなら逆に問おう。一昔前に子供に見せたくないアニメNo1だったクレパスしんたんのことはアニメに興味のない姫月でも知ってるよな?
姫月,うん、まぁ何回かは見たことあるけど……。でも基本的にああいう下品なのって嫌いなんだよね
誠,は? お前何言ってんだ。そういう臺詞はまずは劇場版しんたんを見てから言え!
誠,特に『嵐を呼ぶあっぱれ鎌倉大合戦』と『年寄り大戦爭』なんかは子供のみならず、大人からの評価も高い名作なんだ!!
姫月,…………兄貴がしんたん大好きなのは分かったけど、それがぞうたんとどう関係あるのよ
誠,うむ。少し興奮してしまったが、作中でしんたんはぞーうたんぞーうたん?と頬を赤らめながら歌っていたのは覚えているだろう? それは何故だ!?
誠,おまけに下半身露出という幼女がやれば最高に美味しいシチュエーション付きだ……!
誠,とはいえ、お前に下半身露出しろとかは言わないから安心しろ
姫月,あ、當たり前でしょ!! こんなトコでそんなことしてたら只の変態じゃない!!
誠,まぁ、そういう調教もありっちゃありだが……
姫月,は? 何か言った!?
誠,いや、何でもない……。ともかくお前に歌ってもらいたいのは『ぞうたん』だ。しんたんが何故この歌を下半身露出しながら歌うのか考えながら歌え
姫月,しんたんが……下半身露出で……ぞうたん……
誠,まぁ一般的に『キノコ』と表されることのほうが多いがな
姫月,…………!!!
そこまで言って姫月はようやく何を例えたものなのかに気付いたようで、白い頬を真っ赤に染めあげた。
姫月,や、やっ!! 兄貴の変態! 信じらんない!
誠,俺が変態なのは前から知ってるじゃないか。何を今更なことを言っているんだ?
姫月,そ、そうだけど、そんなこと自慢げに言うなぁ!
誠,まぁ細かいことは気にするな。ほれ。さっさと歌えよ。晝休み終わっちまうだろ?
姫月,あ、あぅ、うぅうう~~
地面に腰を下ろしている俺とは対照的に、目の前の姫月はあたふたと立ち盡くしてしまっている。
こういう普段見ることの出來ない姿を眺めるはなかなか楽しいものだ。
誠,まぁ、姫月が俺の調教を受けられないっていうなら、俺は遠慮なくほのかちゃんとお付き合い出來るからいいんだけどな
姫月,…………っつ!!!!
俺の言葉に姫月の顔色がサッと変わるのが分かった。
姫月,う、歌うもん……。歌えるもん。べ、別に、子供の頃は學校でよく歌ってたし……
姫月,変な目で見るから恥ずかしいだけで、歌自體は普通なんだもん……
誠,まぁそうだな。でも、その変な目で姫月も見ちゃったんだもんなぁ。恥ずかしいなぁ……
姫月,うぅう…………。そ、その……
姫月,ぞ、たんー、たん?りっぱなお鼻があるね?
誠,タンタンって何だよ。焼肉の歌か?
姫月,っく……! 分かってるくせに性格悪い~~!!
誠,褒め言葉として受け取っておこう。ほら。いいからちゃんと歌えよ
姫月,うぅ…………。すぅ、はぁ、すぅ、はぁ…………。ぞーうたん! ぞーうたん! りっぱなお鼻があるね? なーがくて太い! すーてきだねぇえええええ!!!
誠,何だその投げやりな歌い方は……。もっと感情込めて愛情を込めて歌えよ。歌のお姉さんに失禮だろう?
姫月,歌い方なんて人それぞれだもん! 私はこういう歌い方なの!!
誠,………………ほのかちゃんと話に行こうかな
姫月,うぅう……卑怯だぁ…………
誠,何とでも言え。卑怯者と罵られようと、持てるカードは全て使ってこその勝負だ
姫月,いつの間に勝負になったの!??
誠,何をいう。人生は所詮弱肉強食。何事にも勝とうとする意志が大切なのだ
姫月,てゆか兄貴なんてニート予備軍の敗者じゃん
誠,ニートではない! 自宅警備員だ!
姫月,……? 何それ? セ●ムにでも勤めるの?
誠,いや……そんなマジレスされても困るんだが……
姫月,……?
誠,ごほん。ま、まぁ勝負うんぬんは冗談としてもだ
姫月,冗談だったの!!!??
誠,ま、まぁな……
姫月,うわぁ…………全っ然笑えない
誠,ほっとけ。……ともかくだな。あんな歌い方じゃ合格點はやれないな。もっと感情込めて歌えよ
姫月,っく…………兄貴なんて超音癡のくせに……!!
誠,この場合俺が音癡かどうかは関係ないな。論點ずらしてないでさっさと歌え
姫月,わ、分かったわよ! 耳の穴かっぽじってよぉく聴きなさいよね!!
誠,………………
母親の影響なのか、姫月はたまにやたら古くさい言い回しをすることがあるな……。
年頃の娘としてその言葉遣いはどうかと思うぞ、と兄として少し心配ではあるが。
まぁ、姫月が少々恥をかいても俺は痛くも癢くもないしな。
姫月,っつ…………ぞ、ぞーうたん、ぞーうたん、りっぱなお鼻があるね? なーがくて太い! スーテキだねーー?
姫月,………………ど、どうよ!! 完璧でしょ!?
誠,だめだな。普通過ぎる。そして笑顔がない。卻下
姫月,っく…………兄貴のくせに生意気…………!!!
誠,ほら、もっと笑顔で歌えよ
姫月,あぁあもう……!!! ぞーうたん? ぞーうたん? りっぱなお鼻があるね? なーがくて太い! スーテキだねーー?
姫月,どう!!? 今度こそ完璧でしょ!!?
誠,笑顔が固い。そしてこんなにも卑猥な曲なのに、どうしてお前は恥じらわないんだ!!?
姫月,さっきまで散々恥じらってたじゃない! どこ見てたのよぉ!!!
怒りのためか姫月の目には若干涙が浮かんでいるように見える。
誠,歌うのを恥ずかしがるのではなく、歌の內容に恥じらってほしいんだよ!
誠,ほら、もっとこう頬を染めて、恥ずかしがりつつもぞうたんもとい伏字三文字の物體に想いを馳せてうっとりしているような…………
誠,分かるか!!?? そういうちょっとアンダーグラウンドな感じに歌えと言ってるんだ!
姫月,ぜ、全然分かんないけど、もっと恥じらえばいいんだね…………
姫月,…………すぅ、はぁ。……ぞーうたん? ぞーうたん? りっぱなお鼻があるね? なーがくて太い? スーテキだねーー?
姫月,こ、今度こそ!!
誠,あー……だめだ。お前のそれは只単に恥ずかしいってだけじゃん。もっといやらしく! うっとりと! 恍惚と!
姫月,恍惚と……? うっとりと……? いやらしく…………?
姫月,えぇと……。ぞ、ぞーうたん? ぞーうたん? りっぱなお鼻があるね? なーがくて太い? スーテキだねーー?
誠,うむ。だいぶよくなったぞ! その調子だもう一回!!
姫月,ぞーうたん? ぞーうたん? りっぱなお鼻があるね? なーがくて太い? スーテキだねーー?
誠,よし! もう一回だ! 行け! 姫月!!
姫月,ぞーうたん? ぞーうたん? りっぱなお鼻があるね? なーがくて太い? スーテキだねーー?
姫月,って、何回歌わせれば気がすむのよぉおお!!!
顔を真っ赤にして憤慨する姫月の姿をおかずに俺は弁當を食す。
そしていつの間にやら姫月の歌のトレーニングと化してしまった晝休みは終わったのだった。
;0scene 1日目(放課後)
とっぷりと日が暮れ、鐘の音とともに1日が終わっていく。
無駄に特別扱いをしてくれる狸のおかげで面倒な雑用を押しつけられることはない。
俺は今日1日の実習録を付け、狸の機の上に置いた。
當の狸はというと、水泳部かどこかそこら辺の顧問をやっているらしい。
まぁあのうざったい顔を見なくて済むのは願ったり葉ったりだ。
さて、ひとまずこれで俺の仕事は終わりだ。
どうするかな…………。
寄り道する
誠,少し校內を見て帰るか……
のんびり帰るのも悪くはないだろう。
俺は筆記用具とノートくらいしか入っていない鞄を持ち職員室を後にする。
すっかり日は落ちてしまっているが、いくつかの教室には未だ明かりが燈っている。
誠,部活か……。頑張ってるやつらがいるんだろうなぁ
まぁ、興味ないからどうでもいいことだが……。
そう思いながら校舎を出ると、體育館の橫に真新しい立派な建物があることに気付いた。
誠,俺が學園にいた頃にはこんなのなかった気がするが……
そんなことを思いながらも、興味をそそられた。
重厚な扉を開けると、建物の中は寒いほどの冷気に包まれている。
誠,何だ……? ここ……
まるで冷凍庫の中にいるような感覚に襲われる。
そして奧に進むと。
そこは雪國だった……。
というのは當たらずと言えども遠からず。そこにはキラキラと白く輝く銀盤が広がっていた。
誠,す、スケートリンク……だと?
およそ普通の學園にはないだろう施設に、俺は目を丸くする。
こんな物を造る奴はこの學園の理事長以外にはありえない。
そして恐らくそれは。
誠,はぁ…………
??,……何辛気くさい顔して溜息ついてんの? 超うざい
誠,まぁ、そうだよな……。お前のために決まってるよなぁ
聲がしたほうに目をやると、そこには當然のように姫月が立っていた。
練習中なのだろう。學園指定の小豆色のジャージに、見たことのないひらひらとした薄手のスカートを履いている。
姫月,……? 何が私のためなの?
誠,いや、何でもない。多分言うだけ無駄だし
姫月,何それ! 一人で納得してないでちゃんと言いなよ! 気になるじゃん!
誠,あー……いやいや、お爺さまに愛されてて何よりです
姫月,……お爺ちゃん? お爺ちゃんがどうかしたの?
誠,お前がなーんにも疑問に思わないようならいいんじゃねぇの?
姫月,な、なにそれ。何かヤな言い方……
誠,そう感じるならそうかもな。まぁ、とにかく俺はこの建物が何なのか見に來ただけだし。謎は解けたからもう帰るわ
姫月,え? 練習見に來たんじゃないの……?
誠,言っただろ? 俺はこの建物が気になっただけで、ここでお前がフィギュアの練習をしてるなんて毛ほども思わなかったんだ
姫月,で、でも……少しくらい……
誠,何だ? 俺に踴ってるところ見てほしいとか?
姫月,だ、だって……兄貴、今まで一度も見に來てくれたことないじゃない…………
誠,そりゃそうだろ。學園內にスケートリンクがあるだなんて思わなかったしな
はっ、と鼻で笑うように言うと、姫月は眉を寄せ視線を足下へと落とした。
姫月,そ、そうじゃなくて……
誠,何だよ
ハッキリしない姫月の態度に何故だか無性に苛々する。
姫月,い、いいじゃない! どうせ帰ってもやることないんだから、練習に付き合いなさいよ!
誠,別に俺が見なくても、お前のファンならいっぱいいるみたいじゃないか
銀盤の周りの観客席、と言うのだろうか。
いくつか備え付けられているベンチは姫月のサポーターとおぼしき男たちで埋まってしまっている。
姫月,別にあんなのどうでもいいよ。いてもいなくても変わんないし
誠,何だよ、じゃぁ俺がいたって変わらないだろ
姫月,や、でも、身內だったら遠慮なく思ったことを言ってくれるかも……とか、思うし……
姫月,す、少しくらい…………いいじゃん
姫月が困ったように俯く。
妙にしおらしい姫月の姿は何だか不気味だ。
俺を何か罠にはめようとしてるのか?
誠,っは!! わ、分かったぞ。お前、そんなこと言っておきながら俺を不審者として通報する気なんだろ!!
姫月,はぁ?? 何でそんな考えになるのよ!!
誠,だってお前が自発的にしおらしく振る舞うのは、百パー俺が迷惑を被る時だけじゃないか!
姫月,べ、別に迷惑なんてかけてないもん! 失禮なこと言うな!!
姫月,もういいよ! そんなに私と一緒にいるのが嫌ならさっさと帰ればいいじゃない!
姫月,わ、私だってキモヲタの兄貴となんてホントは一緒にいたくないんだからぁ!!!
誠,…………ふぅん
普段からこの程度の悪口は鬼のように言われているし、今更反論する気もない。
だけど何だか今はものすごく気分が悪い。
姫月,あ…………
ジジイに特別扱いされて、周りから特別扱いされて、どんな場所でもその期待に応えられる能力を持つ姫月。
それが普通だと思って、さも當たり前のように振る舞う非凡な妹。
誠,まぁそうだよな……。兄妹といっても、俺とお前じゃ似ても似つかないし
姫月,………………
誠,俺も何でお前と兄妹なのか不思議だよ
姫月,………………っつ
俺の言葉に、姫月は今にも泣き出しそうな表情を見せる。
くそ。何でお前がそんな顔するんだよ。
泣きたいのは妹に言いたい放題言われる俺のほうだろ?
誠,…………っつ!??
今一瞬、何か映像が見えた気がした。
誠,何だ…………?
深く深く、記憶の根底に閉じこめた思い出のようなもの。
だが、俺はソレに全く覚えがない。
姫月,…………兄貴?
誠,………………帰る
姫月,え、あ…………ま、待って!
誠,うるさい。帰ると言ったら帰るんだ
姫月の聲を無視して、俺は出口のほうへと歩いていく。
姫月も俺の後を追おうとするが、スケート靴を履いた足で陸に上がると歩きにくいようだ。
走るようにその場を後にする俺に付いてくることはできない。
重い扉を開けて、俺はスケート場から逃げ出した。
冷気によって芯まで冷えた體に、夏の生溫かい風がじんわりとまとわりついた。
誠,…………何なんだ。一體…………
帰る
誠,……帰るか
ぼーっとするのも悪くはないが、時間を無駄にするのは勿體ないしな。
俺は筆記用具とノートくらいしか入っていない鞄を持ち職員室を後にする。
すっかり日は落ちてしまっているが、いくつかの教室には未だ明かりが燈っている。
誠,部活か……。頑張ってるやつらがいるんだろうなぁ
まぁ、興味ないからどうでもいいことだが……。
そう思って階段を降りようとした時。
ほのか,あ……お兄さん
誠,やぁ、ほのかちゃん。遅い時間まで殘ってるんだね
ほのか,あ、えっと……私、茶道部なんですけど、教室に忘れ物しちゃって…………
誠,そうなんだ。これからまた部室に戻るの?
ほのか,は、はい…………。あ、でも、もうみんな帰っちゃったから、私も帰ろうかな……
誠,じゃぁ一緒に帰ろうか? 夜も遅いし、途中まで送るよ
ほのか,ほ、ホントですか? あ、わ……じゃ、じゃぁすぐに鞄取ってきます! 少しだけ待っててください!
誠,え、あ、うん。分かった……。でもそんなに急がなくていいよ
ほのか,だ、大丈夫です! すぐ戻りますから!
誠,や、だから……
ほのか,ちょっとだけ待ってて下さい~~~ひゃっ!!!
誠,わ…………だ、大丈夫?? だから急がなくていいって
ほのか,あ、あはは……、すみません……あ、で、でも大丈夫です! ちゃんと走れますから!
誠,いやいや、走らなくていいから……!
ゆっくり行けばいいよ、という俺の言葉を聞いていないのか、ほのかはパタパタと慌ただしげに走り去っていく。
しっかりしているように見えて、意外とおっちょこちょいなのかもしれないな……。
ほのかが消えていった方向に目をやりながら、俺は小さく笑った。
ほのか,ご、ごめ、なさいっ……お待たせ、しました……!
!5分も経たずにほのかが學園指定の鞄とともに戻ってきた。
誠,だ、大丈夫? そんなに走らなくても良かったのに
ほのか,そ、な…………。は、お兄さんを、待たせる……わけには……いきません……はぁ……
誠,いや、全然待ってないよ?
ほのか,そ、それなら……良かった、です……はぁ、は……
誠,はは、ひとまず呼吸を落ち著けてから帰ろうか
ほのか,はぁ、はぁ……ご、ごめんなさ…………
誠,大丈夫?
ほのか,はぁ、はぁ、はぁ…………
ほのか,ふーーーー……
ほのか,はぁ……落ち著きました……。結局お時間取らせてしまいましたね……。申し訳ないです……
!ほのかは眉をハの字にして、心底すまなさそうに謝る。
誠,気にしなくていいよ。どうせ家に帰ってもやることないしね
ほのか,そうなんですか……?
誠,うん、いつもはゲームをしたりしてるんだけど、昨日から姫月の機嫌が悪くてお預け狀態なんだよ
ほのか,…………そうなんです、か
誠,ほのかちゃんも姫月みたいなワガママと付き合ってると大変だろ? いつもごめんね
ほのか,あ、いえ、そんな……姫ちゃん全然ワガママじゃないですよ
誠,そうなのか? 俺にはものすごくキッツイこと言いまくるし、無茶苦茶言うけど……
ほのか,ふふ、それはお兄さんだからですよ。友達と家族じゃ、やっぱり違うんじゃないかなぁ……
誠,そういうもんかねぇ……
どこの兄妹もこんな理不盡な思いをしているのか、と思うと少しだけ心が晴れるような気がした。
ほのか,そういえば、お兄さんは姫ちゃんの部活を見に行ったんですか?
誠,姫月の部活? ……って、何?
ほのか,フィギュアスケートですよ。體育館の橫にスケートリンクがあるんです。部活といっても、姫ちゃんしか部員がいないから、姫ちゃん専用のリンクみたいなものですけど
誠,うわ…………マジで? 金使うところ明らかに間違ってるだろ……
ほのか,あはは、でも姫ちゃんはホントにすごいんですよ。ここ1、2年は國內ではずっと優勝ばっかりで……
ほのか,スケートをしている姫ちゃんって本當にきらきらしてて素敵なんですよ。お兄さんにも見てもらいたいです
にこにこと、自分のことのように嬉しそうにほのかは話す。
しかし俺はほのかのように、姫月の功績を手放しで喜ぶことはできない。
誠,うーん。悪いけどあんまり見る気はしないかな
ほのか,え……? どうしてですか?
誠,あくまで俺の意見だけど、例え優勝してたって、姫月一人のためにスケートリンクを作るっていう考え方が嫌いなんだ
ほのか,…………そ、ですか……
俺の言葉に、ほのかはしょんぼりと肩を落とす。
てろんと垂れた犬耳が見えるのは俺の幻覚だろうか。
自分が何だかものすごく酷いことを言ったように思えてくる。
誠,………………
ほのか,………………
誠,あー……、その…………
ほのか,……………………
誠,えぇと。明日は、姫月が滑ってるところを見に行ってみようかな…………
ほのか,!!
悲しげに歪んでいたほのかの瞳が、ぱっと華やいだ。
ほのか,はい! ぜひ見に行ってあげて下さい……! 姫ちゃんすごく喜ぶと思います
誠,はは…………
にこにこと微笑むほのかは、思いの外強敵なのかもしれないと思いつつ、俺たちは帰路についた。
;0scene 2日目(朝)
だるい。
実習二日目だというのに、既にものすごくだるい。
教壇では狸が昔と何一つ変わらない姿で熱弁を奮っている。
學園內は全教室冷暖房完備のため快適なのだが、狸の顔を見ていると溫度が1~2度上昇するようだ。
脂ぎった中年親父は近くにいるだけで暑苦しい。
誠,はぁ…………
姫月,………………
誠,…………
……何だか姫月に睨まれているような気がする。
とりあえず姫月が怒る理由が全く分からない。
まぁ姫月が怒りやすいのはいつものことだしな、と思い、俺は視線を外し黒板へと向き直った。
まぁ、十中八九昨日のことが原因だろう。
俺も若干大人げなかったしな……。
あとで一応謝っておくか、と思い俺は黒板へと向き直った。
雪名,センセー! さっきの授業分かんなかったから教えてー
貓屋敷,あ、私も教えてほしい!
誠,えぇと、僕じゃなくて小原先生に教えてもらったほうがいいんじゃないかな
雪名,え~~~。やだぁ。センセがいいんだもん!
貓屋敷,あんな狸に教わりたくないし
雪名,ねー! だからぁ、センセに教えてほしいな,駄目??
誠,そ、そう。分かった。どこが分からないの?
俺の時代と変わらず、狸のあだ名は狸のままらしい。
少しばかりの共通點を見つけて、俺はくすりと笑ってしまう。
雪名,センセ、何笑ってるの??
誠,あ、いや。今も昔も変わらないものだなって
貓屋敷,え~。センセってば変なのぉ
くすくすと笑われるが、不思議と嫌な感じはしない。
彼女たちが笑顔でいることが何だか嬉しく感じた。
姫月,…………
誠,? 何だ? 姫月も教えてほしいのか?
姫月,は? ばっかじゃないの!? 兄貴に教わることなんて何もないんだから! てゆか兄貴に解ける問題程度が私に解けないわけないじゃない!!
誠,そ、そうか…………
雪名,ひ、姫月ちゃん…………??
恐らく溫厚な姫月の姿しか見ていなかったのだろう。
俺に向けられた毒舌に、クラスメイトたちは目を白黒させている。
姫月,ね、こんな奴に教わらなくても、後で私が教えるよ?
にっこりと微笑む姫月はどことなく淒みを帯びていて、斷ることを許さないといった[體/てい]だ。
雪名,え、あ……う、うん。じゃぁ、姫月ちゃんに教えてもらおうか、な
貓屋敷,う、うん……ごめんねセンセ。呼び止めちゃったのに……
誠,いや、気にしないでいいよ。また何かあったらいつでも聞いて
雪名,はぁい! ありがとセンセー!
姫月,…………ほら、授業終わったんだから、さっさと職員室に戻れば?
じろりとゴミを見るような目で睨まれ、ぐいぐいと教室の外へと押し出された。
誠,はぁ……。お前さ、もうちょっと俺にも愛想よくしろよ……二重人格って言われないか?
姫月,言われたことないよ。それに兄貴に対して愛想良くする必要なんてないじゃん
姫月,愛想良くされたいならもっと尊敬されるような行いをすれば? 言っとくけど、兄貴がやってるゲームのような能無し主人公がモテモテになるなんて、現実にはあり得ないんだから!
姫月,そ、そもそもキモヲタの兄貴が女の子にもてるわけないじゃん。ゲーム脳もいい加減にしてよね
誠,言われなくとも俺がもてないことはよく知ってるさ。だてに彼女いない歴=年齢の人生を背負ってないぞ
姫月,威張ることじゃないし……。女の子から聲かけられて浮かれないでよね! それと! ほのかにも気安く近付かないで!
誠,ほのかちゃんに対してもお前に対しても、學園內では皆同じように接するさ
姫月,っつ………
誠,? 何だよ
姫月,べ、別に!! 何でもないもん! とにかく、今の言葉、絶対絶対ぜーーーったい忘れないでよ!?
誠,まったくお前は昨日から一體なんだってんだよ
姫月,だ、だって変態色情狂の兄貴だし、ほのかに手を出すこともあるかもしれないし……。は、犯罪犯しちゃうかもだし
誠,はぁ……? お前は何の心配してんだよ……。んなことあるわけないだろ?
姫月,ぜ、絶対ないとは言い切れないでしょ!? ……女の子から迫られて、経験値ゼロの兄貴がふらっと血迷っちゃうことがあるかもしれないし…………
誠,ねぇよ
姫月,…………噓だ
誠,はぁ…………何でそう疑い深いんだか。そもそも俺のモテなさ具合はお前が一番よく知ってるはずだろ?
姫月,…………そ、れは…………でも…………
いつもは快活な姫月が、妙に歯切れ悪く話す。
こいつは一體何を心配してるんだか。
誠,何回も約束してるだろ? ほのかちゃんにも実習が終わってから返事をする
姫月,…………
誠,そもそもほのかちゃんはともかくとして、お前等みたいなガキに手出すとかないだろ
姫月,っつ!! が、ガキじゃないもん……!!!
誠,ガキだよガキ。調教の意味も分かってないくせに
姫月,そんなことない! お茶だって煎れたし歌だって歌ったじゃない!
誠,…………お前、まさかあれがマジで調教になってるとでも思ってるわけ?
姫月,え? だって調教だって兄貴が言ったんじゃない
誠,………………
姫月,な、何!!??? まさか噓だったの!!?
誠,や、まぁあぁいう調教ももしかしたらアリなのかもしれないが…………
姫月,…………からかってただけなんだ
誠,あ、いや……まぁ、別に
俺の言うことにびくびくしていた姫月を見て楽しんでいたとは言いにくい。
姫月の口端がひくひくと動き、眉はつり上がってしまっている。
姫月,へぇ、ふぅん。そう。兄貴は私をからかって楽しんでただけで? 調教する気もなければ、私との約束を守る気もないって、そういうこと?
誠,い、今のところ約束守ってるぞ…………
姫月,今のところは、でしょ??
誠,いや、だって、お前……妹を調教するとかないだろ……??
姫月,な、なくないもん! 何だって出來るもん! 馬鹿にしないでよ!! ほら! 何か命令しなよ!!
姫月は苛立ったように言葉を紡ぐ。
こいつは何をそんなに必死になっているのだろうか。
姫月,いつも嬉しそうに女の子に変なことしてるゲームやってるじゃん! 何でそれを言わないの!?
誠,や、だって妹だしな……
姫月,い、妹でも、女の子だもん……そんなので……差別、しないでよ……
誠,ちょ、お前何でそんな泣きそうなんだよ!
姫月,な、泣いてなんかないもん!
姫月,馬鹿兄貴のくせに! 変態のくせに! そんなので躊躇なんてするな!
誠,はぁ……。じゃぁ今日1日下著を著けずに生活しろって言ったらそうするのか?
姫月,……それって……ノ、ノーブラノーパンって、こと?
誠,そうそう
よくは分からないが姫月は意地になっているだけだ。
どうせ実行する気などないだろうと俺は高を括る。
姫月,…………分かった
誠,へ………?
姫月,だから、分かったって言ったの! し、下著くらい著けなくても、別にいつも通り過ごしてたら平気……だし
誠,や、でも風とか吹いたらやばいだろ??
姫月,そ、それは……だけど! 言われた通りに出來るんだから、兄貴も約束守りなさいよ!!??
姫月はそう言って、慌ただしく教室とは違う方向に走っていった。
誠,…………あいつは一體、何を考えてんだ……?
まさか本気じゃない、よな……? つか、俺の代わりに勉強を教えてやるんじゃなかったのだろうか。
幾ばくかの不安と疑問を抱えつつ、俺は職員室へと戻った。
;0scene 2日目(晝)
午前の授業が終わった。
姫月,………………
誠,……えぇと。姫月? 俺は今何故そんなに睨まれてるんだ?
姫月,……べ、別に睨んでないもん! 自意識過剰なんじゃない!!?
いやいや、どっから見ても睨んでただろ。
姫月,あ、あれだよ。今日も、ご飯屋上なのかなって……。思って……。朝、お弁當渡さずにそのまま持って來ちゃったし
誠,あぁ……、なるほど
姫月,ほ、ホントは學園で兄貴と話すのなんて嫌なんだからね!
誠,……大體お前から絡んできてるの自覚してるか?
誠,っで!!!!
誠,だから痛ぇんだよ!
姫月,じゃぁこのお弁當はいらないの?
誠,サーセン。欲しいです
晝食に500円払う金があるのなら同人誌を一冊買いたい。
しかし生きている以上腹は減るのだ。
姫月,ふぅ……。まぁいいや。で、どこで食べるの?
誠,え、いや……
屋上で食べる
誠,そうだな。人がいるところには行きたくないし、今日も屋上に行こうと思ってるが……
姫月,そうなんだ。じゃぁさっさと行こ
誠,へ? お前、今日も來る気か?
姫月,何? 文句でもあるの?
誠,や、いや……お前は俺と違って友達も多いみたいだし。ほのかちゃんとか……。俺に付き合ってばかりでいいのかなって思ってさ
姫月,兄貴にそんな心配してもらわなくて大丈夫。それに、ほのかも兄貴のことは心配してるみたいだし……
誠,へぇ。ほのかちゃんって優しいよなぁ
姫月,…………だ、だからって勘違いしないでよね! ほのかが優しいのは誰に対してだってなんだから!
誠,いや、そんなの分かりきってるだろ……
姫月,そ、それなら良いけど……
最近の姫月はマジでよく分からない。
情緒不安定というか反抗期というのか……。
誠,ほら、屋上に行くんだろ?
姫月,…………うん。行く……
まぁ、こいつが変なのはいつものことだ。
そう結論付けて俺と姫月は教室を出て行く。
姫月,ん~~。良い天気だねーー
姫月が気持ちよさそうに目を細めて伸びをする。
誠,あぁ、晴れてる日は屋上に來るのが一番だな
俺はいつもと同じ場所に腰を下ろす。
爽やかな風が吹きあげ、疲れた心を癒してくれる。
誠,さて、じゃぁメシ食うかー
姫月,そうだね。よいしょっ、と……
誠,っぶ……!!!!!!!!
姫月,!!!??? え? な、何!!?
誠,ま、お、おおま………ちょ……
姫月,? 何よ?
誠,な、なか……
姫月,はぁ? 中? お弁當の中身が知りたいの? 卵焼きと唐揚げとコーンコロッケだけど
誠,ち、ちが……そ、そうじゃなくて……
姫月,じゃぁ何。ハッキリ言いなよ
誠,お、おま……パン………
姫月,えー?? パンが良かったの? そんなの朝言われないと分かんないよ
誠,や、や……メシはどうでも良くてだな……
姫月,? じゃぁ何?
誠,だ、だから……その……
誠,お前、パンツ……履いてない、のか……?
姫月,!!!!!!!
姫月,や! や!!! へ、変態!!
誠,いや、どちらかと言うとパンツ履いてないお前のほうが変態だろ
誠,ふご!!!!
姫月,だって兄貴が下著付けるなって言ったんじゃない!!
誠,い、言ったけどまさかマジにするとは思わないだろ!??
姫月,うぅううるさい!! 私はやるって言ったらやるの!
生真面目というか馬鹿というか……。
姫月,と、とにかく! 私は兄貴の言う通りにしたんだから! 文句言われる筋合いはないもん!!
姫月,ほら!! お弁當受け取りなさいよ! 食べなさい! 何も見るな!!
誠,そんな無茶苦茶な……
姫月,黙れ。超黙れ。今すぐ黙れ
誠,うぐ!!!
姫月は怖い程の笑顔で俺の口に食べ物を詰め込んでいく。
誠,ふぐぐ、むぐ……ぐ……
誠,ううううううう、ひゃ、ひゃめ……むごお!!
飲み込む前に次々と食べ物が口の中へと押し込まれてしまい、制止の言葉すら言うことが出來ない。
誠,ほぐぅ!! む、むぉ!!!
誠,もご! ぐ、ごぼ!! がぼ!!!
姫月,ほら、美味しいでしょ? 私に食べさせてもらえるなんて、兄貴って超幸せ者だよね
誠,うぐ! む、ぐ……うううう
姫月,え? 嬉しい? 美味しい?? それは良かったわー。ほらほらもっと食べていいよ? 好きなだけ食べれば?
誠,ぶほ! ま、待て……! これ以上……ふごぉ!!!
姫月,もっと食べたいの? ほら。とっとと食べなさいよ。豚みたいにふごふご言ってみっともないったらないわ
誠,これはお前が……!!
姫月,え? 私のお弁當は最高に美味しいって? そんなこと今更言われなくても分かってるし。世の常識じゃない
誠,ちが……! ふごぅうう!!!
姫月,やだなぁ兄貴ってば。元々頭も顔も悪いのに、人語まで忘れちゃったの? 痛いにも程があるよ
誠,ふぐ、ふぐぐぅううう!!
姫月,河豚? 流石の私でも河豚の調理免許は持ってないから[捌/さば]けないわ……。まぁ、兄貴に食べさせるくらいなら問題ないと思うけど
誠,ふっごごごごお!! もご!! ふぐ!!!
問題大ありだろ!
そう突っ込んでやりたいのだが、それ以上言及することは許さない、とばかりに姫月は食べ物を押し込んでくる。
俺の口はダストシュートかという程に食べ物で溢れかえり、息をするのも苦しいほどだ。
姫月,はぁ……。そんなに河豚が食べたいなら、仕方ないから今度買ってきてあげる。この私に[捌/さば]かせるんだからちゃんと食べなさいよね
誠,ぐ、うううう、もごもごもご
素人の捌いた河豚なんて恐ろしくて食えるわけがない。頼むからそれだけは勘弁してくれと言いたいのだが、その懇願すらも今の姫月は受け付けてはくれないのだ。
見たくもない姫月のスカートの中身を見せられ、挙げ句の果てにこの扱いは酷いだろう。
こうして俺の休息の時間は拷問のような晝休みへと変貌してしまったのだった。
特に決めていない
誠,あ~……いや、別に特には決めてないが……
姫月,そうなんだ。あ、じゃぁ天気良いし、中庭で食べようよ
誠,あぁ、それは別にいいけど。……俺に付き合ってばかりで、ほのかちゃんとか友達はいいのか?
姫月,わ、私が誰と食べるかとかどうでもいいじゃん。ほのかも兄貴のことは心配してるみたいだし……
誠,へぇ。ほのかちゃんって優しいよなぁ
姫月,…………だ、だからって勘違いしないでよね! ほのかが優しいのは誰に対してだってなんだから!
誠,いや、そんなの分かりきってるだろ……
姫月,そ、それなら良いけど……
最近の姫月はマジでよく分からない。
情緒不安定というか反抗期というのか……。
誠,ほら、中庭に行くんだろ?
姫月,…………うん。行く……
まぁ、こいつが変なのはいつものことだ。
そう結論付けて俺と姫月は教室を出て行く。
俺と姫月が中庭に著くと、そこには既に數人の先客がいた。
誠,はぁ……やっぱ人がいたか……
姫月,それはそうでしょ。天気良い日は、外で食べる子多いよ
誠,仕方ないだろ。俺がここの生徒だった頃は中庭なんかで飯食わなかったんだから
姫月,あぁ、兄貴は屋上大好きっ子だもんね……
誠,…………そんな生溫い目で見てくれるな
姫月,べっつに~。いいんじゃない?
姫月は何が嬉しいのか、機嫌が良さそうに笑っている。
そんなに俺に友達がいないのが嬉しいのか?
姫月,ほら! いいから座って食べようよ。のんびりしてたらお晝休み終わっちゃう
誠,へいへい……
姫月が座っている隣に腰を下ろす。
乾いた芝生がぱさりと音を立てた。
姫月,はい、これ。兄貴の分のお弁當
誠,あぁ、さんきゅ
姫月,……え、あ……い、言っとくけど、別に兄貴のために作ってるわけじゃないからね! 自分の分を作るついでに兄貴の分を作ってるだけだから!
誠,…………それ、わざわざ念を押すことか?
受け取った弁當を広げ、唐揚げをぱくつく俺に姫月が言う。
姫月,だ、だって、兄貴って図々しいし、昨日今日と作ったからってお弁當作るのが當たり前、みたいに思われたら嫌だし……
誠,別に當たり前なんて思ってない。これに関しては感謝してるよ。毎日外で食ってたらエンゲル計數が上がりまくりだし
!姫月
「そ、そう……。そうだよね! 私のお弁當食べれて感謝しないわけないもん!
姫月がふふんと誇らしげに胸を反らしたその時。
姫月,!!????
誠,あ…………
姫月,き、きゃぁあああああああ!!!
のんびりと弁當を食べていた俺たちに、スプリンクラーの水が遠慮なく降りそそぐ。
とりあえず弁當を守らねば、と思った俺はおもむろに姫月と自分の分の弁當の上に被さった。
辺り一面に水を振りまいて、スプリンクラーはようやく収まった。
太陽の光に反射した水滴がキラキラと輝き、草の香りが立ちこもる。
誠,…………ふぅ。大変な目にあったな……
誠,姫月、大丈夫、か…………?
恐らく怒り狂っているだろう姫月に聲をかけようとする。
そして濡れそぼった姫月に目をやると……。
姫月,っつ…………!! 大丈夫なわけないでしょーーーー!!! もうやだ! 信じらんない! 何よこれ!!! 最悪超冷たい!!!
飼い主に無理矢理シャンプーされた貓のように、姫月はぷるぷると頭を振って少しでも水気を飛ばそうとしている。
シャツはぺったりと濡れてしまって、肌に張り付いてしまっていて。
そこで、俺は気付いてしまった。
シャツから姫月のピンク色の乳首が透けてしまっていることに。
誠,…………ひ、姫月……?
姫月,? 何よ。今すごいいらついてるんだから話しかけないでよ!
ぎろりともの淒い勢いで睨まれてしまったのだが、そんなことはどうでもいい。
誠,や、お、お前……それ、ちょ……え?
姫月,はぁ? 何言ってんのか分かんないんだけど。日本語まで不自由になったの?
誠,あ、や、いやいやいやいや、だから……そ、それ…………
姫月,あいやいやいやいや? ちゃら? へっちゃら??
誠,ちが……ちが……
姫月,血が?? 別にどこも怪我なんかしてないし
誠,そ、な…………
姫月,…………?
あまりの衝撃に、俺はまともに言葉を告げることが出來ない。
俺は言葉で表すことを諦め、意図するものに対し指を指す。
姫月,何? 何かある、の……って…………
姫月は俺の指の先にあるものに目を移す。
姫月,っつ…………!!!!????
ようやく事態に気付いた姫月は、聲にならない悲鳴をあげる。
姫月,や、や!! み、見ないで!!
腕をクロスして胸を庇う姫月を見て、俺はようやく少しだけ落ち著くことが出來た。
誠,お、お前……まさかマジで下著付けてないのか!!??
姫月,だ、だって兄貴が言ったんじゃない! ノーブラノーパンで生活しろって……!
周りの生徒たちに聞こえないように、俺たちは聲のトーンを少し落として話す。
誠,おま……! そんなの冗談に決まってるだろ?? 何本気にしてんだよ!
姫月,な、何ソレ! 冗談言うなんて思うわけないでしょ!? そもそも調教されるって約束したじゃない!
誠,そんな約束、マジで取るなよ…………
姫月,うるさい! 私は本気なの! 兄貴も男なら一度交わした約束はちゃんと守りなさいよ! コロコロ言うこと変えるなんて男らしくない!
誠,いや、君子豹変スということわざもあってだな?
姫月,そんなことわざはどっかの會社の社長になってから言いなよ
誠,………………
姫月,とにかく、私はちゃんと言われた通りにしたもん!
誠,お前、ホントに何考えてんのか分かんない奴だなぁ……つかアホだろマジで
姫月,っぐ……!!!
!普段なら容赦ない鉄拳が飛んでくる所だが、姫月は悔しそうに睨み付けてくるだけだ。
誠,はは。そうだよなぁ。いつもみたいに毆りかかってきたら乳首見えちゃうもんなぁ
姫月,うぅう~~~
恥ずかしそうに涙を浮かべて耐える姫月の姿はなかなか良い。
嗜虐心をそそられるとでも言うのだろうか。
正直調教をする気などさらさらなかった俺の心に、一筋の悪戯心が芽生えてしまった。
誠,なぁ、お前さ。俺の言うこと聞いてくれるんだろ?
姫月,え? そ、そうだけど……それが、何よ
誠,そんな風に胸を隠してたら弁當食えないじゃん。手、外せよ
姫月,や、やだよ……だって、そんなことしたら……
誠,見えちゃう、って? ばぁか。露出調教ってのは見せてなんぼなんだよ。隠してたって面白くないだろ?
姫月,そ、そんなこと言ったって……。わ、私、そんなこと……
誠,調教させてくれるんだろ? ノーブラノーパンになったって、それを表に出さないなら誰得だよって話じゃん
姫月,で、でも……でも……
誠,何だよ。あんだけ約束約束うるさかったのに、いざこうなるとやっぱ嫌だって言うのかよ? そんなんで自分は大人だとか、命令通りに出來るとかよく言えるよな
姫月,だって……こ、こんな、周りに人がいる所で……
誠,バレるかバレないかギリギリの所が一番楽しいだろ? いいからさっさと言う通りにしろよ
姫月,…………っつ………
俺の言葉に、姫月は目を伏せて手を下ろした。
夏の日差しで先ほどよりは乾いたものの、未だ制服の大部分はぺたりと肌に張り付いたままだ。
ツンと上を向いたピンク色の突起がありありとその存在を主張している。
誠,はは。見られて感じてるのか? 乳首勃ってるじゃん
姫月,そ、そんなこと、ない……! 変なこと、言うな……!
姫月は震える手で弁當箱を手繰り寄せ、何でもないように振る舞おうとしている。
しかし、先ほどスプリンクラーの水を浴びて注目を浴びてしまった俺たちのほうを見ている生徒たちが數人いる。
そしてその內の一人が姫月の狀態に気付いてしまったようだ。
男子生徒A,な、なぁ。一之瀬さんの服、透けてねぇ?
男子生徒B,そりゃ、さっきあんだけ派手に水被ったら透けもするだろ
男子生徒A,や、そうだけどさ……。ち、乳首がさ……見えてる気がすんだよ
男子生徒B,そんなわけねぇだろ。ブラが透けてるくらいだろ?……って、うわ……ま、マジだ……
男子生徒A,な? な? あれ絶対乳首透けてるよな?
男子生徒B,うっわ~~。何で? 何で? マジラッキー
彼らの會話に聞き耳を立てていると、姫月の顔がますます真っ赤になっていくのが分かった。
誠,あの子たち、お前がノーブラって気付いたみたいだな?
姫月,……っつ! べ、別にあんな奴らに見られたって恥ずかしくなんかないもん……!!
誠,噓言うなよ。今にも泣きそうな顔してるくせに
姫月,噓じゃないもん! 平気なんだから!!
誠,じゃぁあいつらに向かって笑顔で手でも振ってやれば? お前の乳首見れて超喜んでるし
姫月,な、何でそんなことしなきゃいけないのよ!
誠,恥ずかしくないなら平気だろ?
姫月,で、でも……でも……
誠,ほら。命令
姫月,う、うく…………
姫月は渋々男子生徒たちのほうへと顔を向け、引きつった笑みを浮かべて手を振った。
男子生徒A,うっわ! 一之瀬さんが俺に手ぇ振ってくれた!!
男子生徒B,ちげぇよ! 俺に手ぇ振ってくれたんだよ! やっべぇマジ可愛い!!
姫月の愛想笑いに男子達は大げさなほどに喜んでいる。
誠,お。良かったじゃん。お前の笑顔に乳首のことは忘れてくれたみたいだぞ
姫月,っつ……最悪。何で、私があんな奴らに……
誠,はは。恥ずかしくないんだろ? 平気なんだったらこんくらいサービスしてやってもいいじゃん
誠,それに、そうこうしてたら服も結構乾いてきたし
姫月,……っく……
姫月は納得がいかないのか、悔しそうに顔を歪めている。
俺はそんな姫月の顔を見て、こういうのも結構楽しいかもなと思い始めたのだった。
陽が傾き、鐘の音が校舎に響き渡ると、HRを終えた生徒たちが一斉に教室から飛び出していく。
誠,さて……どうするかな……
実習録を書き終え、空いた時間に何をしようか考えたところで、俺は昨日のほのかとの會話を思い出す。
そういえば、姫月は部活でフィギュアスケートをしていると言っていたな……。
誠,スケートリンクに行ってみるか……
俺がこの學園に通っていた頃にはなかった、真新しい建物が體育館の橫に建てられている。
誠,昨日ほのかちゃんが言っていたのはここか……
重厚な扉を開けると、建物の中は夏とは思えない冷気に充ち満ちていた。
誠,寒いな……
スーツを著ていても肌寒さを感じる。
ロビーのような部屋を通り抜けると、そこにはキラキラと白く輝く銀盤が広がっていた。
誠,相変わらずジジイのやることは金がかかっているな……
金に物を言わせるやり方。
ジジイは有能な人間が大好きで、その高い能力を伸ばすためなら投資を惜しまない。
そのため何をやらせても神童と謳われた姫月を甘やかしまくっているのだ。
まぁ、今更そんなことで僻むことが出來るほど純情でも子供でもないが。
そんなことを考えながら、リンクのほうへと目を向ける。
広々とした銀盤の上で、音楽に合わせて姫月がくるくると円を描くように踴っているところだった。
そういえば、昨日は姫月の態度に腹が立って大人気ないことを言ってしまったのだった。
何がそんなに苛ついたのか、自分でも分からないが、俺は己の幼稚さに顔が熱くなるのが分かった。
気は進まない。
全く進まないのだが、あのままスケートリンクに近付かないようにするのは子供っぽい気がする。
誠,…………行ってみるか……
重い足取りで廊下へと踏み出す。
はぁっと深く溜め息を吐き、茜色に染まった校舎を後にして、俺はスケートリンクへと向かった。
昨日と同じひやりと突き刺すような冷気に身震いする。
しかし今日は昨日と違い、夏の暑さなど微塵も感じさせない建物の中に、大音量の音楽が流れていた。
誠,幻想即興曲か……
ショパンらしい細やかな指使いを感じる演奏。
リンクに目をやると、その音楽に合わせて、姫月がくるくると円を描くように踴っているところだった。
細く長い手足が優雅に伸びていく。
タイミングを計るようにリンクをすべり、一度深く沈みこんだと思ったら高く高く宙を舞う。
素人の目測では何回転したのか分からない程に、くるくると綺麗に回って銀盤へと戻ってくる。
華奢な指先が何かを求めるように天を仰ぎ、片足を高く上げたままリンクを自由に滑っていく。
いつも見ている姫月の姿はそこにはない。
子供っぽいあどけなさなどどこかに置いてきたかのような、大人の顔をした妹が艶やかに踴っている。
夢か[現/うつつ]か。
それはまるでお伽噺から抜け出してきたかのようで…………。
パンパンと手を叩く音が響き、ぶつりと音楽が中斷された。
その無遠慮な行為に、俺ははっと現実に引き戻される。
優雅に踴りを披露する姫月に、俺は目を奪われてしまっていたようだ。
先ほどまで心の中で散々文句を言ってはずなのに、調子がいいものだな。
俺は自分自身に苦笑しつつ、動きを止めてリンクの中央に佇む姫月に目を戻した。
誠,? 誰だ、あれ
スケート靴を履いた一人の男が、姫月のほうへと滑っていく。
見たところ俺と同い年か少し上くらいだろうか。
細く見えるが、服の上からでも分かる無駄な脂肪の付いていない引き締まった身體。
顔のほうに目をやれば、そこには文句の付け所がないほど完璧なパーツが、整然と配置されている。
街を歩くと、いわゆる雰囲気イケメンという輩は山のように見かけるが、ここまで正統派の美形はそうそうお目にかかれないだろう。
普段姫月という美形を見慣れている俺からしても、その男の持つ一種獨特の雰囲気に呑まれそうになる。
男,…………~~~~
姫月,…………~~~~
俺のいる場所から姫月たちのいる所までは距離があるため、何を話しているかまでは分からない。
先ほどまでの演技に対して話し合っているのだろうか。
姫月の顔は未だ真剣なままで、その男の言葉に軽く頷きながら話を聞いているように見える。……のだが。
誠,いくら何でも近過ぎだろ。あれ……
姫月が動きの確認をする度に、男の手がその身體に觸れていく。
腰や脇、腿のかなり際どいところにも、男は平気で手を回すのだ。心なしか顔も近い。
訳の分からない嫌悪感が俺の心に芽生え、姫月と男を睨んでしまっていた。
男,……?
俺の視線に気付いた男は、にこりと笑みを浮かべた後姫月の顔に寄せて、何か一言二言口にする。
姫月,……!!
その言葉に姫月は顔をぱっと赤らめたかと思うと、何か喚き立てた後くるりと身體を反転させた。
そのひとつひとつの仕草にすら何か特別な関係性があるように思えて、俺の不快感はますます高まっていく。
姫月が何をしていようと俺には関係がないと思っているのに……。
誠,何だ? これ……
自分自身の感情に説明が付かなくて、俺はその場を離れようとリンクに背を向けた。
??,わ、わ! ちょ、待って!
誠,え?
ゴトゴトと不思議な足音が近付いてきて、不審げに振り返ると、そこには先ほどまでリンクにいたはずの姫月の姿があった。
姫月,何? 何で來てるの??
誠,別に意味はない。只、ほのかちゃんからお前の部活のことを聞いて來てみただけだ
姫月,ほのかから……? そ、そうなんだ……。あ、でも折角來たんだし、見てってよ。少し休憩したらまたすぐに練習するから
誠,あ、いや……。特に意味はないんだが……
姫月,そうなんだ……。でも折角來たんだし見て行ってよ。少し休憩したらまたすぐに練習再開するから。ね?
誠,別に……いいけど……。それより、あいつ一體誰なんだよ
姫月,あいつって?
誠,……あっちにいるあの男だよ]
そう言って俺が指を指したほうに姫月は目をやる。
姫月,あぁ、俊成さんのこと??
誠,……俊成、さん……?
何でこいつ、名前で呼んでんだ?
姫月,うん、俊成さん自身も選手として活動してたんだけどね、怪我で引退してからはコーチしてくれてるの
姫月,昔の映像観たけど、俊成さんってば本當に淒いんだよ!
姫月,羽根でも生えてるんじゃないかってくらい楽々4回転を決めちゃうんだから!
姫月,てゆかね。ここだけの話、私、俊成さんに憧れてスケートを始めたんだ
ふふ、と照れくさそうに姫月が笑う。
誠,……そんなことはどうでもいいけどさ。お前、何で『俊成さん』なんて呼んでんだよ
姫月,え? あぁ、始めはコーチって呼んでたんだけど、『自分はコーチなんて呼んでもらえる程じゃないから』って
姫月,そんな風にさらっと言えちゃうなんて淒いよねー
笑顔で話す姫月に苛々する。
誠,……そうだな。淒いな
姫月,だよね-。だから引退しちゃったのは殘念だけど……って、あ。そろそろ戻らなきゃ
心底殘念そうに話す姫月に腹が立つ。
怪我しないように頑張れよ
誠,……そうか。怪我しないように頑張れよ
姫月,……! う、うん! 頑張る! って、あ、いや! そんなの兄貴に言われなくても頑張るに決まってるじゃん!
誠,何慌ててんだよ
姫月,べ、別に慌ててなんかないもん! そ、それじゃ、俊成さんが待ってるし行くね!
そう言って姫月はわたわたとリンクのほうへと向かった。
コーチのところまで行くと、何かを言われたのだろうか。姫月が顔を赤くして頬を膨らませているのが見えた。
そのまま見送る
誠,…………
姫月,じゃぁね、ちゃんと見ててよね
そう言って姫月は機嫌良くリンクへと戻っていった。
俺との會話が終わるのを待っていたコーチに迎えられ、何かを言われたのだろうか。姫月が顔を赤くして頬を膨らませているのが見えた。
誠,…………………
俺はこれ以上練習する姫月を見る気になれなくて、スケート場から立ち去った。
何だかとても面白くない。
嬉しそうに話す姫月も、餘裕[綽々/しゃくしゃく]に笑うあの男も。全部。
………面白くないのだ。
誠,はぁ……
疲れた。とにかく疲れた。
教生として狸のアシスタントをするだけの簡単なお仕事のはずなのに、どうしてこうも疲れなければならないのだろう。
小原,んん? 何だね? 一之瀬先生。私の顔に何か付いているかね?
ちらりと隣を見れば、小腹が空いたのか、栗最中を頬張る狸と目が合った。
こいつは授業が終わるたびに何か口にしてる気がする。
誠,いえ、甘いものがお好きなんだなぁと思いまして……
小原,はっはっは。授業をすると脳をよく使うもので、お腹がすぐに空いてしまうのだよ。ブドウ糖を摂取しないとどうにも調子が出なくてねぇ
小原,とは言っても食べ過ぎては毒だがね。一之瀬先生も過食には気をつけたまえよー
誠,…………
お前にだけは言われたくない。
はははと歯を剝き出しにして笑う狸に、俺は心の中でそっと毒づいた。
誠,あっと……。もうこんな時間だ。僕はそろそろ次の授業の教材を運ばなければならないので失禮しますね
小原,おお? あぁ、あぁ。申し訳ないね、一之瀬先生にそんな雑用をさせてしまって
誠,いえ、これも教生の仕事なので気にしないで下さい
俺は僅かに笑みを浮かべながら、和やかにその場を離れる。
授業中だけでも疲れるのに、休み時間までこの狸の顔を見るなどぞっとするじゃないか。
次の準備をするなり何なり、一人でいる時間が取れるのならそちらの方が萬倍マシだ。
誠,ふぅ……
學生の頃も教生の今も、職員室というのはどうしてああも肩が凝るのだろうか。
誠,ひとまず、教材を運ばないとな……
俺はそう思い、資料室から次の授業に必要な道具を引っ張り出してくる。
誠,……へぶしっ!!
普段あまり使っていない物らしく、それらはすっかり埃を被っていて鼻先をくすぐってくる。
俺はズズ、と音を立てて鼻をすすった。
誠,はぁ……メンドイ……
目當ての道具を見つけた俺は、授業が始まるまでここで時間を潰そうと床に座り込んだ。
少し埃っぽくはあるが、壁にもたれてしまえばある程度の寢心地は確保出來る。
??,で、さ! 一之瀬先生ってどんな人なの??
誠,!??
何気なくもたれた壁から女子生徒の聲が聞こえて、俺は思わず壁から離れてしまう。
そういえば、隣は空き教室で女子が更衣室として使っていると狸が言っていたな……。
……女子校生の生著替え、か……。
幸い校舎の全ての教室はベランダ伝いに繋がっている。
誠,はっ!!!!
いかんいかん。女子校生とは言ってもまだまだ子供だ。
覗きなんて紳士のすることではない。
だが考えてもみろ。何せ俺の名前が出てきたのだ。気にならないほうがおかしいだろう。
そう、これは覗きではない。休憩を取ろうと思って壁にもたれかかったら偶然! 隣の教室の女子の聲が聞こえてきた。
そして室內が若干暑かったのでベランダに移動しただけだ。そう。俺は悪くない!!
そう思い俺は四つん這いになってベランダに移動し、再度壁にもたれかかりこそりと中を覗き見た。
姫月,どんな人もなにも、ただのだらしない兄貴だよ
誠,………………
お ま え か。
妹の姿を見た瞬間、俺はがっくりと項垂れてしまう。
妹の下著姿を見たところで何も楽しくはない。
そして恐らくこれから姫月様獨壇場で俺の悪口オンパレードになっていくのだろう。
女子生徒たちの俺を見る目が変わってしまうのかと思うと、少しばかり胃が痛い。
雪名,えー、でもきっちりしてるように見えるけどなぁ。しかも大學生なんでしょー。いいよね、大學生
姫月,……まぁ、大學は真面目に通ってるみたいだけど
貓屋敷,じゃぁ見た目通り硬派な人なんだぁ! 流石姫月ちゃんのお兄さんだねー
姫月,そ、そんないいもんじゃないし
貓屋敷,あーぁ、私もお兄さん欲しいなぁ。姫月ちゃん羨ましーい
姫月,だ、駄目だよ!
貓屋敷,え? 何が??
姫月,あ、いや……、その、兄貴なんていたって何の役にも立たないし! 身につかなくて良い知識まで増えるし! いいことないから!!
貓屋敷,そっかなぁ……
姫月,そうそう! あんな兄貴いても邪魔なだけだよ!
誠,……………………
酷い言われようではあるが、姫月の憎まれ口にしては可愛いものだろう。
考えてみれば、あいつは本人がいないところで悪口を言うようなタイプではないしな……。
雪名,でもさ、姫月ちゃんってすっごいモテるのに彼氏とか全然作んないよね
貓屋敷,それってお兄さんが近くにいるから、とか?
姫月,っへ?? や、違う違う! それ誤解!!
……確かに姫月は毎日毎日、俺の世話を焼いていて彼氏うんぬんの話ではない気がする。
姫月,そ、それに! 私にだって好きな人くらいいるよ!!
雪名,え! 噓噓!! 誰!? 姫月ちゃんの好きな人って!!!
貓屋敷,わ~~! 姫月ちゃんの好きな人とか超気になる!! 教えて教えて!! かっこいい!!??
姫月,え……、あ……。う、うん……かっこいいって言ったら、かっこいい……
雪名,この學園の人?? 外部??
姫月,え、えっと……一応、學園の人と言ったら學園の人なんだけど……、外部と言ったら外部、かな……
雪名,告白は!? 告白しないの!??
姫月,む、無理だよそんなの……。だってその人は私のことなんて子供としか見てないみたいだし……
貓屋敷,年齢離れてるんだぁ……でも姫月ちゃんくらい可愛かったら絶対イケルと思うんだけどなぁ……
雪名,そうだよー。だって私のお姉ちゃんなんか高1の時に40歳の彼氏がいたんだよ。マジありえないって思ったけど、それよりは全然下でしょ?
姫月,ま、まぁそこまで年齢離れてないけど……
心の中で突っ込むが、それ犯罪だからな。
つか40歳で現役JKと付き合うとか何だよそれマジうらやま! そんな恵まれた奴ダンプに轢かれて死んでしまえ。
雪名,でもホント、姫月ちゃんから告白されたら誰でもOKしちゃうと思うよ!
姫月,あは……、あ、ありがと。頑張ってはいるんだけど、ね
貓屋敷,その好きな人は彼女とかいるの?
姫月,今はいないみたい、だけど……
雪名,その人の好みとかは?
姫月,う、うーん。何かアブノーマルっぽい……かなぁ。変な趣味してる。顔に似合わずすっごいえっちだし
貓屋敷,あはは、男なんてみんな大抵えっちだよー。クラスの男子とかブラが透けてるだけで大騒ぎだもん
姫月,ん、そうなんだよね……。正直理解出來ないけど……
雪名,けど?
姫月,でも、ね。…………好きなの
姫月,や! だ、だからっ、ちょ、ちょっとでもその人の理想に近づけたらいいなって思うんだけど……!!
雪名,や~~~? 姫月ちゃんってばかっわいい~~~~?
貓屋敷,そんな顔で言われたら一発でOKだって~~~?
姫月,え? え?? そ、そんなわけないよ!!
きゃあきゃあと下著姿ではしゃぐ3人を見て、俺はぶるりと震える。
いや、誰だよお前。
俺の前では暴力的で口が悪くて態度がでかくて――
良いところと言ったら食事作って掃除してくれて洗濯してくれるだけ(あれ。結構あるな)の姫月が!
頬を染めて『でもね、好きなの……』なんて殊勝なことを言うわけがない……!!
聞いただけでぞくぞくと背筋に悪寒が走る。
今のはきっと俺の聞き間違いだな! 勘違いだな! うん、そうに違いない!
貓屋敷,あ、そういえばさっき姫月ちゃん授業終わった時にどっか行ってたけど、どうしたの?
姫月,……ちょっと、保健室に行ってただけだよ
雪名,え?? 姫月ちゃんどこか怪我したの??
姫月,その、私じゃなくて……
健康優良児の姫月が保健室に行くとは珍しいなと思いながら聞いていると、けたたましい音をたててチャイムが鳴り響いた。
こそこそしている時に大きな音がすると心臓に悪いな……。
雪名,あ。マズ。そろそろ戻らなきゃ!
貓屋敷,次って何だっけ
姫月,英語だよ! 山川先生怖いから早く行こっ!
雪名,うん!
姫月たちが慌しく教室を出て行き、室內はがらんと一気に靜かになった。
しかし…………。
かっこよくて年上で、內部であり外部の人間……か。
そこまで考えて俺は一人の男を連想した。
年齢よりも大人びている姫月が憧れを抱いていてもおかしくない大人の男。
毎日何時間もスケート練習で共に過ごす中で、憧れが戀に変わっていても何ら不思議ではないだろう。
思い返してみれば、昨日の二人の密著具合とか仲の良さは異常だった気がする。
誠,ふむ……なるほど
もしかすると、姫月が俺に調教してもいいと言ってきたのはこのことが原因なのかもしれない。
あのコーチが俺みたいな嗜好をしているとはあまり信じられないが、それでも姫月が言うならそういうことなのだろう。
アブノーマルな趣味、ということはSMとかそういうプレイが好きなのか……。
誠,人は見かけによらないもんだな……
昨日、姫月とコーチが仲良く話す光景を見て何となく胸がひりつくような感覚を覚えたが――
恐らくそれはあの男が無駄に美形なことに原因があるのだろう。
それにあの二人の戀が上手くいけば、姫月の口うるささも軽減するかもしれない。
誠,うむ。アブノーマルな趣味とやらに付き合うのが、あいつの戀を応援するということになるんだろう
誠,何だかんだ言って、姫月の言うことはわりと正しいことが多いからな……。よし
これからはもう少し姫月の調教レベルを上げても良いかもしれないと結論付けて、俺は次の授業に向かうべく埃っぽい教室を後にした。
誠,………………
今日も空が青い。とても青い。
地球の外に広がっているのはただ真っ暗な宇宙だけだというのに、どうしてこうも世界は青一色なのだろうか。
勿論理屈は分かっている。
太陽光が大気中の酸素や窒素、水蒸気といった分子や、光の波長よりも小さな微粒子にぶつかりレイリー散亂する。
その時に青のような波長の短い光が強く散亂されるため、空の色は青い。
毎日同じ。雨が降ったり雲に覆われていることもあるが、概ね空は青いのだ。
たまには曜日ごとに紫だったり緑だったりしてもいいんじゃないか?
俺は何となく、どこかのゲームのどこかの救世主様が言っていたことを思い出した。
いや? 正確に言うと救世主様であって救世主様ではない別の人間か。
誠,……まだこれから午後の授業があるとかないわ……
はぁ、と俺は溜め息を吐いて、朝姫月から手渡された弁當箱の蓋を開けた。
中にはのりたまおむすびと海苔が巻かれた三角おむすび、唐揚げに出汁巻き卵――
マヨちくわにブロッコリー、プチトマトといった色とりどりの具が所狹しと詰め込まれている。
プチトマトを入れるくらいならそのスペースにもう一品おかずを増やしてくれたほうが嬉しいのにな、と思いながら俺は唐揚げに箸を刺した。
誠,はぁ……、ある意味大學の授業って楽だよなぁ……
講義ごとに教室や生徒が変わるため、一人で移動しても授業を受けても誰も何も思わない。
教室の9割以上が知らない人間で構成されているというのはとても気が楽だ。
毎日同じ顔ぶれの教室に入らなければならない恐怖感はいつまで経っても拭えそうにない。
誠,まぁ、それでも同い年の人間がいないだけマシか……
取り留めなく思考を広げ、もごもごと口におかずを詰め込んでいく。
誠,ん?
ガチャガチャと鈍い金屬音が聞こえ、俺は音のした方向に目を向ける。
姫月,あ、いた
誠,………………
姫月,む。何よ、その殘念そうな顔はぁ!
誠,いや、実際問題殘念だろ……
姫月,……毎日美味しいお弁當が食べられて、晝食代を浮かすことが出來るのは誰のおかげかな?
誠,や、優しい優しい姫月様のおかげです
姫月,ふふん? 分かってるじゃない。だったらほら、私も座るんだからもっと寄ってよ
誠,うぇ。何だよ、そんなに詰めなくても二人しかいないんだからスペースは十分にあるだろう??
姫月,うっさい。私は端っこが落ち著くの! 兄貴のくせに文句言うな!
誠,へぃへぃ……
まぁ確かに端っこのほうが何となく落ち著く気持ちは分かる。
俺は重い腰を上げ、人が座れるスペースを作った。
誠,で? お前は今日も晝飯を食べに來ただけなのか?
姫月,ん? あぁ、そうそう。兄貴に伝えなきゃいけないことがあるの
誠,何だよ
姫月,今日1日、保健室立ち入り禁止だから
誠,は? いや、まぁ別にどこも怪我してないから構わないが、何でだ?
姫月,………………
誠,な、何だよその目
じとりと冷たい目で見られて、俺は少し身構えてしまう。
姫月,ほのかが寢てるの
誠,は?
姫月,だーかーらぁ! 體育の授業の時にほのかが貧血起こしちゃって、今保健室で寢てるの!
誠,お? マジで? じゃぁお前、ほのかちゃんの所に行かなくていいのかよ
姫月,はぁ……。だからさっき言ったでしょ? 今、ほのかは寢てるの!
姫月,ここに來る前に保健室に様子見に行ったら、ぐっすり眠ってたから邪魔しないようにこっち來ただけ!
誠,ふぅん。ほのかちゃんがねぇ……心配だな。……あぁ。そういえば、さっき更衣室にほのかちゃんだけいなかったもんな
姫月,……………………何で、兄貴が更衣室の様子を知ってんの?
誠,あ…………
姫月の言葉に、俺は自分の失言に気がついた。
やばい。覗いたなんて言ったらマジ殺される。
誠,や、あの! 授業に使う道具を取りに行ったら偶然隣の教室が更衣室に使われててさ! 聲が聞こえたんだよ!
誠,で、お前と何かいつもの取り巻きっぽい女の子たちが話してるのが聞こえてさ!!
誠,う、噓じゃないぞ!? ホントに道具を取りに行ったら偶然……!!!
姫月,そ、その時の會話……き、ききき聞いたりっ、したっの!!???
決して覗くつもりではなかったのだ! そう弁解しようとしたのだが、どうやら姫月はそれどころではないらしい。
口元を引きつらせて、珍しくどもりまくっている。
誠,え? あ、あぁ。えっと、お前の好きな奴の話なら聞いたぞ
姫月,~~~~~~!!!!!!
俺の臺詞に先程まで真っ青だった姫月の顔が、今度は一気に赤く変化する。
姫月,ななななななに人の會話を勝手に聞いてんのよ変態馬鹿兄貴ーーーー!!!!
誠,いや、聞く気なんてなかったんだって! そもそもお前がいると分かってたら初めから近付かないし!
姫月,言い訳すんな馬鹿馬鹿馬鹿ぁあ!!! 女の子の會話を盜み聞きするなんて最っっ低!!!
誠,や、だって隣の部屋まで聞こえてきたんだから仕方ないだろう!!?? 文句があるなら薄い壁にした大工に言えよ!
ベランダまで行って覗いてしまったが、女子生徒の聲が隣の教室まで聞こえてきたのは事実だ。
誠,そもそも姫月はどうしてそんなに恥ずかしがるんだよ。お前くらいの年齢なら好きなやつの一人や二人いたっておかしくないだろう?
姫月,!!!!!!!!!!
誠,いでぇええええ!! 何だよ!? 俺今何で叩かれたんだ!!??
姫月,あああ當たり前じゃない! そんなこと大きな聲で言わないでよ!!
誠,はぁ? 別にいいじゃないか。性格は知らないが、俺から見てもあいつはまぁ良い男だと思うし。姫月が憧れるのも分からんでもないぞ?
俺の言葉に、姫月の動きがぴたりと止まった。
姫月,………………誰の話?
誠,ん? お前のスケートのコーチだろ? 俊成、とか言ったっけ??
姫月,……何でそこで俊成さんの名前が出てくるわけ?? 兄貴ってば何の話してるの???
誠,は? だからお前の好きな男の話だろ?
俺の言葉に、姫月の大きな目が丸く見開かれる。
瞬きをする度に長い睫毛がバサバサと音を立てるように動いた。
誠,姫月……?
姫月,………………わ、私が、俊成さんを好きだったら、兄貴はどう思うの……?
誠,うん? どう思うって、別に何もないが……あぁ、でもまさかあんな王子様面してSM好きとはビックリではあるかな
姫月,……………………
誠,まぁでも俺も調教ものは大好物だしな! コーチの気持ちもめちゃくちゃ分かるぞ! 調教は良いよなロマンだよなぁ
姫月,…………………………
誠,うん、よくは知らんがあいつは良いやつだ。調教もの好きに悪い奴はいない!
ははっと笑って言う俺とは対照的に、姫月の表情がどんどんと曇っていく。
誠,あ、や。だから、アブノーマルなものが好きって言うんだったら、これからちゃんと俺がお前を育ててやるぞ?
姫月,……育てるって、何よ
誠,だから、コーチの好きそうなプレイに付き合える女になるのがお前の理想なんだろう?
姫月,………………
姫月の表情は先程から曇ったままで、俺は自分が何か間違っていることを言っているのかと心配になってしまう。
姫月,……じゃぁ、責任持って……してよ
誠,……? 何て言ったんだ?
姫月,だから!! そんなに言うなら、兄貴が責任持って調教してって言ってるの!!
誠,へ……?
姫月,アブノーマルな趣味を持つ人が好きなんだから、ちゃんと兄貴がその趣味に合うような女の子にしてよ!
姫月,ほのかにばっかり目を向けないで、ちゃんと私のことも考えてよ!! 妹だからなんて思わないで、ちゃんと女の子扱いしてよ!!!
誠,え、あ……おぉ。わ、分かった……
姫月の剣幕に押され、俺は思わず口ごもってしまう。
こいつはこいつなりに好きな男に好かれようと必死なんだと、この時初めて知った。
誠,ちゃ、茶化して悪かったよ……
姫月,……別に、いい。上手くいくなんて、思ってないし…………
誠,あぁ、まぁ確かに競爭率高そうだからなぁ……
何せあのルックスに元超有名選手だったらしい男だ。引退したって寄ってくる女は星の數ほどいるだろう。
誠,でもま、お前だって顔と外面は良いんだしな。頑張れば何とかなるんじゃないか?
姫月,……………………なるわけないじゃん。……馬鹿
誠,何か言ったか?
姫月,……何でもない。それで? 調教、するんでしょ? 今日は何すればいいのよ
ぶすりと姫月は眉を寄せたまま俺に問いかける。
様々なエロゲーをやってきて、それこそ何百という調教メニューを見てきた俺ではあるが、いざ調教してくれと言われると急には思いつかない。
誠,うーーーん。どうするかなぁ……
俺は手に持ったままの箸でくるくると宙に円を描く。
誠,あぁ、それならひとまずお前の下著見せてくれよ
姫月,は? し、下著?
誠,そうそう、セーラーのシャツたくし上げてブラジャー見せてくれって言ってんの
姫月,な、何でそんなことしなきゃいけないのよ
誠,俺が調教も好きだが露出も好きだからだ
姫月,………………
誠,な、何だよその目は。そうだよ、露出好きなんてニッチの中のニッチ過ぎて商業ゲーはほぼ壊滅狀態、同人ゲーの中に神ゲーを見つけることくらいしか出來ない底辺の中の底辺だ!
誠,だが露出こそが最も男を興奮させるプレイのひとつだと俺は思うのだ! それにこういうマイナー嗜好な要望に応えるのも大切だぞ?
姫月,………………は、はぁ……?
姫月は分かったような分からないような、そんな複雑な表情を浮かべる。
まぁ十中八九理解してはいないのだろうが。
姫月,…………わかった
俺の熱弁に諦めたのか、姫月が大人しく服従の聲を上げる。
誠,おぉ……。珍しく素直だな……
姫月,別に……、下著くらい……水著だと思えば平気だもん
誠,おー。たくましいな。良い傾向だぞ! じゃぁほら、早く見せろよ
姫月,っく…………
姫月が躊躇うように視線を泳がせ、胸の上までシャツを捲り上げると、中から白い花飾りとレースの付いたブラジャーが出てきた。
先程の更衣室では遠くてはっきりとは見えなかったが、なかなかに可愛らしい下著を著けている。
姫月,っつ…………
こくりと小さく姫月の喉が動き、シャツを抑える手はカタカタと小さく震えている。
眉を寄せ頬をピンク色に染めて羞恥に耐えているようだ。
しかし先程更衣室でちらりと見た時も思ったのだが。
誠,……隨分可愛い下著を著けてるんだな
姫月,ど、どうせ……私には、似合わないって……思ってるんでしょ……
誠,はぁ、お前ってホント、何で俺の前だとそんな言い方になるんだよ
姫月,だ、だって……いっつも、私のこと可愛くないって言ってるじゃん……
誠,それはお前が俺に暴言ばっか吐くからだろうが。大體、俺だってお前の顔は可愛いって認めてるだろ? その下著だってお前に似合ってるよ
姫月,っつ……。ほ、ホント、に……?
誠,ホントだって。疑い深いなぁ……
誠,んー。しかし、手で押さえてたら弁當は食べれないな……。どうしたもんか……って、あ!
姫月,な、なに……?
そういえば、と思い出して俺は自分のズボンのポケットに手を突っ込む。
誠,えぇと……。これだこれ
姫月,……クリップ? それで、何……するの?
姫月の目が不安に揺れるのが分かった。
これで乳首をはさむっていうのもやってみたいのだが、調教初心者にいきなりそれは酷いだろう。
誠,あぁ、これでお前のシャツを止めてしまおうと思ってな
姫月,え、え……? あ、兄貴……何やって……
俺は姫月のシャツが落ちないよう、たくし上げた狀態にしてクリップを留める。
誠,ほら、手を離していいぞ。ただし、胸は隠すなよ
姫月,え……あ、あぅ……こ、こんなの、恥ずかしいよ……
シャツを留められたことによって手持ち無沙汰になってしまったようで、姫月はその両手をどこに持っていけばいいのか分からずにオロオロしている。
姫月,ね、ねぇ……あ、兄貴ってば……し、下著見せたんだから……も、もういいでしょ?
誠,いや、まだだ。まだもうひとつの下著を見せてもらっていない
姫月,も、もうひとつって……
誠,そりゃ勿論パンツだろ。パンツ。ほら、スカート脫げよ
姫月,こ、こんな所でスカート脫いでたら只の変態じゃない!!
誠,いや、アブノーマルな趣味だったらこのくらい普通だろ?
俺にとってはまだまだ序の口なのだが、と言うと姫月は押し黙ってしまった。
まぁ、露出ものに馴染みのない人間に露出のテンプレを説いたところで馬の耳に念仏というところか。
誠,ともかく、ほら。お前の好きな男が、お前の下著姿を見たいって言ったらどうするんだ?
姫月,うぅ……、わ、分かった、よ……
姫月はうっすらと目に涙を溜めながら、よろりと立ち上がる。
震える手でスカートのホックに手をかけると、ジジっというチャックを下げる音がした。
姫月,っつ……っく……っ……
普段屋內にいることが多いせいか、姫月の肌は真っ白だ。
その雪のような肌が羞恥のため、全身淡いピンクに色づいている。
興奮しているのか、うっすらと玉のような汗が浮かんでいるのが見えた。
姫月,っつ…………
しゅるり、と衣擦れの音とともにピンク色のスカートが姫月の細い足を滑り、地面に落ちる。
誠,パンツもブラジャーと同じ模様なんだな
姫月,あ、當たり前……だよ……。だ、だって、セットで、買うし……
誠,ふぅん。姫月の趣味は良い感じだな。清楚な感じがして好きだよ
姫月,べっ……! 別に……! 兄貴に好かれたくて、買ったわけじゃない、もん……。誰にも、見せるつもりだって、なかったし……
誠,? 好きな男に見せるために可愛いの買うんじゃないのかよ
姫月,ち、違うもん……ただ、可愛い下著のほうが……、何となくお灑落に気合いが入るっていうか……ただ、それだけなんだから……
誠,へぇ、女の子ってやっぱ面倒なんだなぁ……
姫月,ね、ねぇ……と、ところで、私、いつまでこの格好でいればいいの、よ。もう、下著姿見せたし、いいでしょ?
誠,何言ってるんだよ。折角だから晝休みの間はその格好でいればいいだろう?
幸いここは屋上で、俺たちの他には誰も來ない。
露出プレイ初心者である姫月にとってはうってつけの場所と言えるだろう。
姫月,そ、そんなの無理だよ……。だ、だって私、ご飯もまだ食べてないし……
誠,その格好のまま食べればいいだろう?
姫月,や、やだ……。ね、お、お願いだからせめてシャツだけでも……
誠,だからさぁ、お前は何度言えばいいんだよ。これは露出プレイっていう立派な調教のひとつなわけだ。お前の好きな奴だってこういうプレイが好きなのかもしれないだろう?
姫月,そ、そりゃ、好きだろうけど……、でも……
誠,分かってるならそのままだ。それとももう止めるか? 俺はどっちでもいいんだぞ?
姫月,…………っつ、ずるいよ、そんな言い方……
誠,ずるくないさ。俺はお前が調教してほしいって言うからやってるだけなんだから
姫月,………………
誠,ほら、弁當
姫月,うぅ……こんなの恥ずかし過ぎるよぉ……
誠,はは、このくらいで何を泣き言言ってるんだ。まだまだ調教の道のりは長いぞ。ほれ、箸取って食べろ
姫月,うぅうーー。ここまで兄貴が変態だとは思わなかった……
反論するのを諦めたらしい姫月は、ようやく俺の言うとおりに箸を取った。
誠,どうだ? 學園の屋上で下著姿で食べる弁當は美味いか?
姫月,うぅ……、わ、分かんないよ。も、は、恥ずかし過ぎて、味なんて分かるわけない……
姫月の箸を持つ手はぶるぶると大きく震え、摑んだおかずが今にも零れ落ちそうだ。
姫月,うぅ……こ、こんなことさせられるなんて……ひゃあっ!! つ、冷たっ!!
俺の予感が見事に當たり、マヨちくわが箸から逃げ出して姫月の股に落ちた。
姫月,うぁ……べとべと……
誠,あーぁ。何やってるんだよ、お前
姫月,だ、だって、こんなことするなんて思ってなかったんだもんっ!!
誠,勿體無いなぁ……はぐ。
姫月,え……
そう言って俺は姫月の足の間に落ちたマヨちくわを摑み、ひょいと口に入れた。
誠,うん、美味い。けど、ちょっとしょっぱいかな
姫月,~~~~~~!!!! や! ば、馬鹿ぁあ! 何食べてるのよ!!!
誠,何って、マヨちくわだが?
姫月,そ、そうじゃなくてぇ! 何で人の~~~~っに落ちたもの食べてるのって聞いてるの!!
誠,や、だって勿體無いじゃないか。うん? てゆかお前の股間、ちょっと濡れてないか?
姫月,!!!!!??? そ、そんなわけ……!!!
誠,だって、ほら。パンツに染み出來てるぞ?
姫月,ち、違うもん染みなんて出來るわけないもん!! 勝手なこと言うな!!
誠,ふぅん? それじゃ、まぁそういうことにしといてやるか
姫月,うぅうううー。馬鹿兄貴! そんなにジロジロ見ないでよ!
誠,いや、見ないと露出プレイにならないじゃないか
姫月,うわん! むかつく! 兄貴のくせにむかつく!!
誠,ははは、むかついてくれて大いに結構だ
姫月,馬鹿馬鹿! 兄貴の変態ぃ!!
誠,ははは、屋上で下著姿を曬しているお前も十分変態だけどな
姫月,ううーー!! 兄貴に変態なんて言われたくないもん!
誠,はいはい
下著姿で弁當を食べるという異質な狀況に涙目になりながらも、姫月は律儀に口答えする。
そして晝休みの終わりを告げるチャイムが鳴るまで、俺はそんな姫月の姿を見ながら食事をしたのだった。
普段とは違う情けない妹の姿が、ほんの少しだけ可愛く思えた。
やっと終わった……。
誠,ふわぁ~ぁ……
長く退屈な狸の授業が終わり、俺は教科書で顔を隠し、ずっと我慢していたあくびをした。
小原,一之瀬
誠&姫月,はいっ
いきなり呼ばれた俺は聲を上擦らせながら返事をすると、思いっきり姫月とハモった。
小原,はっはっはっ、一之瀬先生。私が呼んだのは『先生の』一之瀬くんではなく、『生徒の』一之瀬さんだよ
誠,あ、あはは……すいません、つい反射的に……
雪名,あははっ、先生ってばおかし~
貓屋敷,センセ、どんまいっ
誠,あ、あはは……ありがと……
自分のドジのせいとはいえ、笑われるのはあまり慣れてない。
生徒たちにすればそんなつもりはないんだろうけど、どうしても『からかわれてる』気がしてしまう。
姫月,……っつ! 恥ずかしい真似しないでよね、馬鹿兄貴!
誠,…………
只のミスで、毒づくなよ……。
まぁ、小聲にしてくれただけほんの少し気を遣ってくれたのかもしれないが。
姫月,ホント最悪。馬鹿兄貴の馬鹿!
誠,…………
うん……。姫月が気を遣うわけないよな。
たんに小聲にしたのは、周りが持ってる姫月のイメージを守るためか。
姫月のさらなる悪態を防ぐため、俺は口からこぼれそうになる溜め息を飲み込んだ。
小原,桜、君もちょっといいかね?
俺が姫月の嵐をやり過ごすと、狸はほのかも呼んだ。
ほのか,はい、なんですか?
小原,実はだね、英語の山川先生から、前に授業で提出してもらった英語の論文がよかったからスピーチコンテストに出ないか? と話が來たのだが……
雪名,わぁ、姫月ちゃんすごい
貓屋敷,姫月ちゃんって、何でも出來るんだね
姫月,そ、そんなことないって……
へぇ……。
姫月が照れるなんて珍しい。
そう笑ってれば、可愛いんだけどな。
姫月,……っつ
俺の視線に気付くと、姫月は顔を引きつらせた。
姫月,き、キモイから、ジロジロ見ないでよね
誠,…………
……ホント、外面だけはいいんだけどな。
小原,こらこら、いくら兄妹とはいえ、ここは學園なんだからそういう言い方はほどほどにしたまえ
おい。ほどほどって、認めてんじゃねぇか。
ここは、きっちり叱るところだろ。
姫月も『理事長の孫』だから、狸にしてみれば強く出られないだろうが……。
姫月,は、はい……すみません……
誠,…………
姫月は頭を下げながらも、「兄貴のせいだからね!」と言わんばかりに、キッとこちらを睨んでくる。
お前の言葉遣いの悪さが原因だろ……と言ってやりたいが、ここはぐっと我慢する。
小原,話を戻すが……どうだね、二人とも。スピーチコンテストに出てみないかね?
ほのか,え、えっと……私は、そういうの苦手……
姫月,出ます! 私も、ほのかも
ほのか,えぇっ!? ひ、姫ちゃん……?」
姫月,こんな機會、滅多にないんだし
ほのか,で、でも……
姫月,大丈夫大丈夫
何が大丈夫なのかさっぱりだが、困惑するほのかなど気にせずにプッシュしまくる姫月。
気の弱いほのかは斷れるはずもなく……。
ほのか,う、うん……
結局、首を縦に振ってしまった。
雪名,…………
貓屋敷,…………
誠,?
何か、空気が重くなった……?
雪名,頑張ってね、姫月ちゃん。私たち応援するから
姫月,うん、ありがとう
貓屋敷,姫月ちゃんなら、絶対に優勝出來るって
姫月,そ、そんなことないって
誠,…………
……気のせい、か?
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《妹调教日记:这么傲娇不可能是我的妹妹》游戏原案
孟, 奕辰·2022-03-02·1935 次阅读