めもいふメモイフ「.......」ルイは自分のスマホを見ながら、ドアの前に立っていた。画面に表示されているのは、通称"ちょこ"と呼ばれるアプリ。数分前にノエルからメッセージをもらってから、ずっと動けすにいた。『まだかかる?』『もう少し』『なにをしてるか訊いてもいい?』『あなたが驚くことです』ドアの向こうで、ノエルが小さく笑う様が容易に想像できた。が、なにを企んでいるかまでは、推理できずにいた。わずかな情報を頼りに、脳をフル回転させていると--『お待たせしました』通知音が響いて、ルイの思考は中断された。そしてドアを開き、目の前に広がる光景に回路は、ショート寸前まで追いこまれた。「ノエル......いったい?」「......扉を開けた、責任をとってもらおうと思って」真っ白なバスタオルで、かろうじて大事な部分を隠しながら彼女は微笑む。ノエルが大胆なのは、以前から。しかしここまで積極的で、はっきりした不意打ちをルイが食らったのは初めてだった。「それって......確かお姉さんが言っていた?」「ついでに言うなら、これもおねえちゃんからの......」尻すぼみになり、最後は音にならなかった。ノエルは胸をタオルで包みながら、ルイを上目で見据えた。「あなたの心を変えてみせると......わたしは、言いました」「......言ったね」「そして......覚悟してください、とも」「......つまり?」顔を赤らめながら、ノエルは頷く。「ひとりになりたい時も、ありました.....でも、今は」「......そっか」わずかにノエルの肩が震えたのを確認し、ルイは歩き出した。「......累さん」「それ以上そのままでいると、風邪をひく」「......はい」タオル越しに抱きしめられ、ノエルは愛おしそうに目を細めた2。ルイとゆっくりと前へ進み、浴室の扉を開ける。「累さんといると、何枚でも扉を開けられる......そんな気がします」「それを言うなら、俺だって......ノエルといると、自分が変わっていく感じがする「......やっぱりわたしたち、お似合いなのかもしれませんね」「......そうだね」互いに生まれたままの姿になり、シャワーの蛇ロをひねる。真っ白な湯気に包まれながら、ノエルははち切れんばかりの美顔でルイに向き直った。「いっぱいあたためてください......これからも、ずっと」「......ふふかっ」「そんなに嬉しい?」「はい。累さんからもらったものは、なんでも」「......くまんばび、だっけ。こっちでは、有名なの?」「そこそこ、でしょうか。北海道には、ないんですか?」「"くまんばち"っていう言葉なら、スズメバチを指すんだけど言いながら、ルイはノエルが手にしているボールペンを見つめる이야そのノック部分には、くまのようなハチのキャラクターがついていた。輪投げの景品として先ほどもらったものだが、まったく見覚えがなかった。「おそろいのもの、増えちゃいました」「......屋台のお兄さんが、俺の分までオマケしてくれたからね」「『カップル』って、認識してくれたのも嬉しかったです。芦鹿島にくるたびに、どんどん増えていきます.......累さんとの、かけがえのない思い出が」ボールペンを両手で掴み、愛しそうに頬に当てる。そうした様もいちいち絵になるほど、ノエルの浴衣姿は映えてした。先ほどからすれ違う人々がたびたび、ふたりに視線を向けてい2°「あ.......綿飴、食べてもいいですか? 累さん」「? 別に訊くようなことでもないと思うけど」「......えっと」目が泳ぐ。「すぐに、わかると思います......」「うん?」ノエルの返しに、ルイは首を傾げた。彼がその意味を知るのは、それから数十分ほど経ってからだった"""""""""""""""""""""""""""""""""""""「......ノエル」「その......累さんとの思い出を、増やしたかったから.......」賑やかな通りから外れた、ひとけのない場所。恋人たちが南京錠に名前を書いて永遠の愛を誓い合う、人気スポットに近くにノエルは、ルイを誘っていた。「......甘いのは、イヤですか?」「......嫌いじゃないよ」「......じゃあ」ルイの肩を掴み、ノエルは背伸びして、ロづけをした。まるで『先ほどの綿飴の味すら共有したい』--そんな想いがあるのではと思うほど、情熱的に何度となく、唇を引強く押し当てた。「......これで少しだけ、お返しです」「?」「累さんには......もらってばかりだから」「......そういうことなら」目を細めるノエルに、今度はルイから"お返し"をする。そうしてふたりは、星恋の丘にいるカップルがいなくなるまで、互いの気持ちを交換し合うことにした。「......75点」凛とした声が響き、ソーサーに音もなくティーカップが置かれた。可もなく不可もなし。長い髪が印象的な客に厳しい評価を下された店主は、苦笑いをしながら頭をかいた。「さすがは双海さんと言うべきか。結構自信あったんだけど、まさか姉貴が昔バイトしてた店と同じ点数とはなぁ」「それって確か、高校のとき三上くんが連れて行ってくれた場所ですよね。『稲穗さんが勧めた』っていう」「おお、よく覚えてるな! それだけ、気に入ってたってこと?니다「......そうですね。紅茶の味は、正直そこまででしたけど」「てことは連鎖的に今のも『そこまで』ってことじゃないか。いやあ~、胃が痛い」お腹を押さえてみせる信に、詩音はくすくすと柔らかな笑みを浮かべた。彼女が高校2年次につけていた無表情な仮面は、今ではすっかり消え失せている。「誘ってもらえたのが、嬉しかったんです」「......双海さん」「ガイジンといじめられるのがイヤで『なにも期待しないから近『寄らないで』って、心を閉ざして.....でも、寂しかったんでしょうね。三上くんに手を引かれて、今坂さんや稲穗さん、それに音羽さんたちと話ができるようになって、太陽の下に出られたような感覚がありました」目を細め、テーブルに置かれた文庫本をそっと撫でる。図書室に籠もり、ひたすら書籍を漁っていた日々を思い出しているのかもしれない。「智也が声をかけるまでは、教室に居場所がなさそうだったからなあ「......そういう意味では、このお店はとても心地良いですね」「ははっ。『YuKuRuではお静かに』なんて、言わないでくれよ」「大丈夫です。ここは稲穗さんのお城ですし、賑やかさが魅力的な喫茶店もありますから」「......大人になったな、双海さん」「......そうでしょうか?」照れ隠しの意味もあるのだろう。詩音は再びカップを取り、中の紅茶をじっと見つめた。「もし私が"変わった"のだとしたら、そのキッカケをくれたのはまぎれもなく、三上くんや稲穗さんたちです。この世には、経験しなければ、わからないことがたくさんある。知識だけでは得られない、楽しいことや刺激的なことがたくさん.......それを私は、みなさんに教えていただきました」「......だったらさ」カウンターから身を乗り出し、信はニヤリと口の端を曲げた。「うちでちょっと、働いてみない?-唯笑ちゃんと会う機会も増えるだろうし、今ちょうど人手が不足しててさ」「......ここで、ですか」顎に手を当てる。けれど紅茶を一口すすり、詩音の答えは決まった。「面白そうですね。少し考えさせていただいても、よろしいです。か?」「ああ、もちろん! ......いやぁ~、よかったあ。どうしても時間が欲しいって時に、店を任せられるしっかりした人ってなると、なかなかいなくてさ。海さんなら代理も、難なく務められるかなって」「......私が、マスターに」目を丸くする。しかし、詩音は知っていた。かげかえのない友人たちに付き合うことで、新たな明るい世界を知れるということを。「それでは、挨拶の練習をしなければいけませんね」両手をスカートの前で重ね、詩音は座ったまま、お辞儀をしてみせた。「ごきげんよう--ようこそ、シーサイドカフェ·YuKuRuへ」「......ルイ」プールから上がった柚莉が、囁くように彼の名を呼んだ。水泳帽を取り、長い髪からこぼれ落ちる水滴。背後には青い空。じわじわと鳴く蟬の声すら"夏"を感じさせる、心地良い空間かそこにあった。「どうしたの? 目を逸らして」「......いや」「当ててあげる。『柚莉ちゃんに惚れ直した』--とか?」「.......」「ちょ、ちょっとお~......無言で頷かないでよ~」「そうは言ってもな」頬が紅潮させる柚莉に、ルイは頭をかいた。彼女が周囲から注目を浴びるほど、魅力的な女性であることは知っている。スタイルが良いのも、誰もが頷く事実だろう。だがそんな女性が"自分の彼女"で"自分だけを見つめている"という状況にルイはなんと言っていいものか、言葉を探していた。かけがえのない存在だからこそ、大事にしたいのだ。「......いつもより、ドキドキドキしてる」「ふあっ!?」「競泳水着、似合ってるよ.......髪を下ろしてるせいか、普段と印象が全然違うし「はわ、わ.....」「一緒に泳げないのが申し訳ないくらい、きれいだと思う」「......ルイ」先ほどよりも愛しさを含んだ声が、静かに響いた。柚莉は彼の元に寄り、そっとその背に触れた。「火傷の痕のこと、気にしなくていいよ。もしルイが変な目で見られても、あたしが後ろから『ぎゅ』ってするから』「柚莉......」「『誰にも譲らない、あたしの彼氏だよ』って......『彼女が傷つけないように言葉を選んでくれる、素敵な人だよ』って、抱きつくから」「......気づいてたのか」「付き合って、半年だもん。......当然だよ」毛先をいじりながら、はにかむ。そんな彼女の手を引いて、ルイはプールに向けて歩き出した。「ありがとう、柚莉」「それはこっちの言葉」足先を水につけながら、柚莉は満面の笑みを見せた。「あたしを選んでくれてありがとう、ルイ。·······愛してる」「おはよう、ルイ」「おはよう、柚莉」朝を告げる、柔らかな日差しを感じながら微笑み合う。互いにパジャマ。手にはホットミルク。なにもかもが"一緒"の、穏やかであたたかな時間が流れていた2。「えっへへ」「なんだかくすぐったいな、そうやって見つめ続けられると」「ごめん、幸せすぎて.......ルイのこと、ずっと見ていたい」1マグカップを床に置いて、柚莉はベッドに片手をついた。ふたりの距離が縮まり--互いの吐息がかかりそうなほど、顔が近づく。「......おはよ」「柚莉」「何度でも、言いたいの。······『大好きな人』だから」「......おはよう、柚莉」「......ルイ」軽く、唇の先が触れあうだけのキス。言葉ではない挨拶を何度か繰り返し、柚莉はようやく満足げにロの端を緩めた。「......止まらなかった」「いいよ。嬉しいし」「......ほんとかなぁ?」「イヤなら、こうして一緒に過ごしてない」「......じゃあ」柚莉が目を閉じる。長いまつげが、小刻みに震えていた。それを見て取ったルイは肩を優しく抱き寄せ、長めに想いを伝えた。「......ルイの味がした」「? ホットミルクの味か?」「"ルイの味"はルイの味......でもブラックコーヒーを飲んでたら、あたしのと混ざってカフェ·オレになってたかも」「......試したそうな顔をしてるな」「さすがは名探偵~。ううん.......『さすがはあたしの旦那様』」愛おしさが溢れたのだろう。柚莉はもう1度だけロづけし、小走りで台所に駆けていった。ルイはその背を眺め、ふと窓の外に視線を移した。雲ひとつない、快晴--雨が降る気配はなく、傘の必要もなかった。遠くから、花火が空に打ち上がる音。ほどなくして、夜間を照らす色とりどりの光。そんな幻想的な光景を前に、柚莉はどうして良いか、反応に困っていた。彼女の体は今、彼氏である楠瀬累--ルイの背に預けられてした。祭りだからと気合いを入れて、浴衣に下駄で来たのが仇となった。「......ごめんね、ルイ」「? なにが?」「あたしを、背負わせちゃってること......重い、よね?」「否定したら嘘になるけど」太ももを支える腕に力をこめ、ルイは後ろに呼びかけた。。「柚莉が俺の為に、気合いを入れてくれたのは嬉しかったから。これから『背負って生きていくんだ』幸せにするんだ』って考えたら、音を上げてなんかいられない」「......体力ないのに」「足りないと感じれば、これからつける」「......落ち着いて花火、見れないよね?」「今日だけしか、味わえないものでもない。来年も、その先も。何度だって来ればいい。···...違うか?」「......ううん」ルイの優しい問いかけに、柚莉の鼓動は速まるばかりだった。彼からすれば、おそらく何気なく口にした言葉。『来年も、その先も』『幸せにする』。それは将来を約束してくれるだけでなく、柚莉のことを大事ににしてくれる--そんな彼の想いが、さりげなくこめられているように感じられた11だから柚莉は申し訳ないとは思いつつも、ルイの頬に自分の頭を擦りつけた。ぎゅっと体を押しつけ、この胸の高鳴りを伝えたいとすら、思ってしまっていた。「......照れちゃう?」「......少しだけ」「それじゃあもっと、照れさせちゃう」花火が夜空を彩る音にまぎれ、湿ったリップ音が小さく響いた19「......あんまりすると、落ちるかもしれないぞ?」「そうなったら次は、あたしがルイを背負うよ。一緒に歩いてく、支え合ってくって、決めたから」幸せそうに、柚莉は彼の耳元で囁いた。「ずっと一緒にいようね、ルイ......」「ふっふふーん。どうどう? ルイ」ドアを開けた途端、スーツ姿の柚莉が彼を見た。タイトなスカートから、真っ直ぐに伸びた白い足。大きさから、自然とその存在を主張することになっている胸元。さらに縦のストライプシャツを着ているせいか、いつもより扇情的な彼女がそこにいた。「少しは、大人っぽく見えるかな?」「......それはもちろん」髪をサイドで結っている分、幼さはまだ残っている。だが服装というのは恐ろしい。周りの大人にちょっと合わせるだけで、数歳は上のような印象を抱かせていた。「......心配だな」「採用面接?」「それもだけど」「あ、もしかして......あたしが言い寄られないか、心配してくれてる?」「......柚莉は顔立ちも良いし、目立つしな」「え? わ、当たってたんだ......いや待って、えっと.....どうしよう。ルイがそこまで、独占欲を見せてくれるなんて......」両手で鼻から下を覆い隠し、俯いてしまった。アンダーリムのメガネがズレ落ちそうになり、柚莉は慌てて位置を正す。「そういえば、目も悪くないのに、何故?」「あ、ああこれ? ......実はたまたま、浜咲でヒヤムギさんに会って」「......"日紫喜さん"な。久しぶりに聞くな、その名前」「うん。学校も違うし、YuKuRuのバイトもいつの間にか、辞めちゃってたしね。それで『最近どう?』って訊いたら、あたしの就活の話になって」指先でそっと、青いフレームに触れる。よく見るとそれは、見覚えのある形をしていた。「......『賢そうに見える為のアイテム選びを手伝ってくれた』って、ところか?」「それと『祝福してくれた』んじゃないかな。ルイのことを伝えたら『なにか出来ないか』って、一緒にお店へ行ってくれたし」「......そうか」決して"親しい仲"とは言えないかもしれないが、時間が空いても"なにかをしてくれる"。そんな関係に、繋がりに、ルイは心からありがたく思った。居場所がなく、頼れる人も周りにいなかった以前では、考えられないことだった。「そろそろじゃないか? 柚莉」「ああ、そだそだ。危ない危ない!」左手首の腕時計を確認して、柚莉が立ち上がる。その先の薬指には、永遠を誓った銀色の指輪が光っていピ「行ってきます」「うん。行ってらっしゃい」玄関の扉を開け、元気よく駆けていく柚莉をルイは笑顔で見送る。結果がどうなっても、彼女は必ず"ここ"へ戻ってくる。少しずつ築き上げた、この"ふたりの居場所に"。だから、柚莉がたとえ土砂降りの雨に打たれても、太陽のように明るい顔で帰ってきても、あたたかく迎えてあげようとルイは決めていた。『おかえり、柚莉』--と。- Past the borderline -冬に分かたれ、道を見失ったふたり。冬に再会し、手を取り合ったふたり。「最近の瑞羽は、ふとした時にとて」互いを自らの半身として想い......も安らいだ笑顔を浮かべてるよね。結ばれる未来を、信じている。なんとなく、そう見える」ここは見知らぬ夏。見知らぬ街。瑞羽「そう、かな? 自分では意識してそれは、夢に見ることさえ--ないけれど、もしそうだとしたら」瑞羽「累ちゃんは、どうしてだと思う?」累 「もしかして.......幸せ、だから?」瑞羽「ふふっ」とても安らいだ微笑みを浮かべて--彼女は、いつものように言った。瑞羽「そうだよ」Mizuha HimurakiAge : 17 Birth : December 3Zodiae signs : SagittariusHeight: 160cm Weight : 52kgBWH:81/56/83メモリーズオフ-Innocent Fille-。何年も待ち続けてくれた方々、プレイしてくれた方々に、本当に感謝しています。嬉しい事に、プレイされた多くの方からとても高い評価を頂いております。制作·開発時は、「捨てるか活かすか」という苦渋の決断をした場面も数多くありましたが、拘りを捨てすずに諦めずに......作れて良かったと、思っています。私は企画·ストーリー原案·監督の他に、UIを除く全ての絵の監修、絵コンテや一部原画、一部キャラデザ、小物デザインなどもさせて頂きました。シナリオにおいては監修以外にも、HB(ノエル裹)【白に氷る赤】からHC(真相)ラストまでの執筆、二周目以降で追加されるシーンの執筆、アナザールートは詳細プロットの作成まで担当しています。監督として最も拘ったことは『会話における自然な空気感』で、上手く表現できたのではないかと思っています。そういえば作中で「守る」と「談る」のふたつの言葉を使っていますが、これは『一般的な視点』か『累の「誰かを護る」という妄執でフィルターされている視点」かで使い分けています。少々わかりにくかったかも、と反省。クレジットに書かれていませんが、DLCのイベント絵作画監督と一部原画 (温泉絵とか) も担当しています。さて、今回はこちらの本へ絵描きとしてお招き頂きまして、折角なので"真·瑞羽"を描きました。隠しヒロイン故、なかなか表舞台に立たせてあげられずごめん、ヒヤムギさん。累ちゃんと未永くお幸せに。クッソ羨ましいぞ累Summer. 2018 相澤こたろー謎のパスワード:moif1203 (後日Twitterにて。@kota_murasalki)A. oneあとがきはじめての方もそうでない方も、こんにちは。シナリオライターの下村です。まず初めに申し上げておくと、この本は二次創作です。5年という月日をかけ、ようやく日の目を見ることになった『メモリーズオフ-Innocent Fille-』ですが、制作は困難を極めました。ぼくは企画の初期から参加させていただいて、ディレクターの相澤さんと二人三脚に近い形でライトとヘヴィを含めた全体のアイデア出しをし、プレイヤーのみなさんが気持ちよく騙される楽しめるネタなどをふたりでいろいろ企み「さあ、いよいよシナリオ執筆だ!」という状態になったのですが「時間が、な·い!」。他に抱えている仕事の都合上、ヘヴィ共通とA(柚莉&琴莉)を阳書くのが、精一杯でした。ヘビィC(とBの一部)の執筆だけでなく、ライトを含めた全体の細かな監修もそうですが「相澤さんがいなかったら」と思うと、震えが止まりません。"彼女"が正体を明かすシーンなどは、幼馴染みというだけで10倍はやる気が跳ね上がる初期から盛り上がっていたので、書きたくて血ルイ涙が出そうになりましたが「相澤さんにならお任せできる」と祈るような気持ちで、原稿の上がりを見守りました。そんなわけで「やりたかったけど、いろんな事情から出来なかったこと」が多々ありました。この同人誌は、そんな「IF』のIF(もし)」を少しだけ、形にしたもの。ドリームというか妄想度合いが強い為、いろいろ崩れている部分もあるかもしれませんが「IFの公式ではなく、二次創作」と捉えて、楽しんでいただけたら幸いに思います。(そしてこの本の執筆も、ろくに時間がなかった! IFはそうしう運命なのだろうか!)追記この本や追加ストーリーを読んでいただいて「ヘヴィな内容を書く」というイメージが、払拭されればいいなぁと個人的には思います(自分は本来、人の死が絡まないキラキラした青春恋愛ものが好きだと言っておきます)それではまた、どこかでお会いする日まで--ごきけんよう。下村健(@qualia_shimoken)奥付発効日:2018/8/12印刷所:株式会社グラフィック発行者:Village「? こっちに来ないんですか、累さん」蕩けるようなタ陽が地平線に隠れ、蒼い間が広がっていく--まだ夜とは言い切れない、明るさが僅かに残った海から、ノエルがルイに声をかけた。朝から雨が降り続けていたせいか、周りに人はいない。ふたりだけのプライベート·ピーチが、そこにあった。「足が吊った、というわけじゃないですよね?」「うん......そういう問題はないんだけど」ただでさえ目立つのに、ノエルはスクール水着。そのせいで、安易に触れてはいけない神聖なもののようにルイには見えてしまっていた。「何時間も、待ったんです。ほら、入りましょ」小さな両手で、包みこむように彼の腕を抱いて引く。「ごめん。そうだね」それでルイはゆっくりと海水に体を浸し始め、ノエルと向きあた。すると安心したように、彼女は笑った。「良かった。無理矢理付き合わせちゃったんじゃないかって、心配しました」「......そんなことはない。ただ、ノエルの格好が気になって」「気にして、くれたんですね」頬を緩ませ、恥ずかしそうに身をよじる。「累さんと時間を、重ねたかったから......一緒に体育の授業、受けることなかったし」「......それでわざ、スクール水着を?」「これでせめて......『同じ学校にいる気分』に、なれたらって」言ってて、恥ずかしくなったのだろう。ノエルはルイから目を外し、俯いてしまった。その頬は、暗がりでもはっきりとわかるほど、赤く染まっていた::「......周囲から浮くのも、承知で?」「いいんです、誰に見られても。......あなたが喜んでくれたら」「......ノエル」「でも、もちろんふたりきりのほうが、良いです。雨がやむのを信じて、この時間まで粘った甲斐がありました」一点の曇りもない、はにかみ。それは、長く降り続けた雨に耐えたからこそ得られた、まばゆい!ほどの光だった。『累さんと、楽しい時間を過ごしたい』そんな彼女の、ある種のワガママの勝利とも言えた。だから......「イヤじゃない?」「......まったく。むしろ、もっと......」ルイが抱きしめると、ノエルは彼の腰に手を回し、自身の体を押しつけた。海水がいくら冷えてても、じわりと熱がこみ上がり、あたたまるーそんな緩やかな時間の中で、ふたりは互いを見つめ、微笑みあった。「もっともっと、あなたを感じさせてください......累さん」まえがきはじめまして。Villageの絵の方のむらたたいちです。さて、今回のメモオフ本ですが本編が冬ということもあったのでどうせなら冬じゃないイベントを描こう!という所からヒロイン二人とのそれぞれ同じイベントを行ったらどうなるか?といった感じで作っております。しかし、最後まで見ていただければわかると思いますがSS担当の下村さんやゲストを引き受けてくださった相澤こたろーさんA.oneさんあれ?自分以外公式面子じゃね?むしろいらない子になってない?大丈夫?自分の本なのに肩身の狭さを感じずにはいられない!と、冗談はさておき最後まで楽しんでいただければと思います。むらたたいち(@ta1_murata)メモイフMemories1十2018Village
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